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「SQUARE ENIX JAZZ -DEBUT-」が拓く、ゲーム音楽×ジャズの新たなサウンド世界 ~中川英二郎/川村竜/下村陽子/松田洋祐のキーマン4人が対談



 2月に大阪と東京のビルボードライブで開催される【SQUARE ENIX JAZZ -DEBUT-】。スクウェア・エニックスの人気ゲームの音楽が、ジャジーに生まれ変わって“デビュー”する。12月には、2枚目のアルバム(『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』)もリリースされた同シリーズだが、そのアルバムも担当した中川英二郎、川村竜、そして、ゲーム音楽の第一人者、作曲家の下村陽子、そして、スクウェア・エニックスの松田洋祐社長に、それぞれの熱い思いを語ってもらった。

「ゲームは総合芸術」

――まずは『SQUARE ENIX JAZZ』シリーズが生まれた経緯を教えて下さい。


▲『SQUARE ENIX JAZZ Vol.1』

松田:2年ほど前、『BRA★BRA FINAL FANTASY』という吹奏楽のコンサートの打ち上げの席で「BRA★BRAでブラスバンドをやるなら、ビックバンドでもやってくれない?」という話を私からしたんです。その場は大いに盛り上がったんですよ。そしたら、次の年に本当にジャズアレンジを施した『SQUARE ENIX JAZZ -FINAL FANTASY-』をリリースすることになりまして。お客様からも大変好評をいただき、今回、第二弾CDの発売とライブが決定した……という経緯です。


▲12/19 On Sale 「SQUARE ENIX JAZZ Vol.2」PV

――松田さん、下村さんにとって、ゲーム音楽とはどんな存在でしょうか?

松田:ゲームは総合芸術だと思っています。グラフィックやストーリーはもちろん、音楽もとても大事な要素です。音楽を聴いて当時のゲームの思い出がフラッシュバックすることもあるくらいですよね。そういったゲーム音楽をいろいろな形でアレンジしてお客様にお届けできるのは、非常にいい機会だと考えています。

下村:ゲーム音楽は決して主役ではないんです。でも、無くてはならないものであり“縁の下の力持ち”。そう考えながらいつも制作をしています。だから松田社長に“総合芸術”と言われるとすごく嬉しいですね。

――アレンジャーである中川さん、川村さんはどうでしょう?

川村:今おふたりのおっしゃっていた“総合芸術”は僕も思っていたことなんです。自分が今までやってきたゲームでいい作品って何かが突出しているというより、シナリオ、操作性、音楽……全部を含めて心に残ってるものなんですよね。カセットを勝手に使って兄貴に怒られたとか、セーブデータ消しちゃってケンカになったとか、いろいろなことを思い出します。そういった音楽に関われることを誇りに思いますね。

中川:ロールプレイングゲームは長い時間を割いてプレイされますよね。ゲームが好きな方は、ゲームと共に音楽的なセンスも養われていると思うんです。大人になってからゲームの音楽のお手伝いをするようになりましたが「この演奏をしたら、何十回も聴いてくれるんだろうな」と思うと、しっかり届けたいなと。今回はスピンオフではありますけど、ジャズアレンジでも、彼らは想像力で楽しんでくれるんじゃないかなと思っています。

――中川さん、川村さんはどんな意識で今作にのぞまれたんでしょうか。

川村:責任重大だなと。プレッシャーから、日に日に痩せていきました(笑)。原曲の良さを裏切るアレンジもあれば、尊重するような方法もあると思うんです。そのバランス配分はすごく気を付けました。自分が実際にプレイしていたゲームの音楽だったので、愛情がちゃんと伝わるようにしたいなと。

中川:ジャズとひとことで言ってもいろいろなスタイルがあって、ビックバンドという15人くらいの編成の場合もあれば、ロックに寄った音楽もあります。自分がアレンジするなかで「どのジャンルのジャズに当てはめたら、メロディがカッコよく聴こえるか」を意識しました。ジャズ屋は簡単に曲を壊すことができるんです。逆に言うと、シンプルなメロディをシンプルに演奏するのは、難しいことなんですよね。メロディがなくなる状態まで音を出せてしまう。でも、今回のCDを聴いてくれる方の中には、おそらくジャズに慣れていない方もいるので、聴きやすく、分かりやすく……という点を自分なりに気を付けたつもりです。聴いてて楽しいなって思ってくれたらいいなと。

川村:(中川)英二郎さんがおっしゃる通り、ジャズは多様化していて。100人いれば100通りのジャズがあるのがやっかいなところなんです。でも「みんなが納得するジャズってなんだろう?」ってことはあまり考えませんでした。「自分の好きにやらせてもらったものが、ジャズです」と、自信を持ってアレンジさせてもらっています。


▲『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』

下村:私は(『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』で)「APOCALYPSIS NOCTIS」(『ファイナルファンタジーXV』)、「Legend of MANA~Title Theme~」(『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』)の2曲をアレンジしていただいたんですが、特に前者は“どうやったらジャズになるんだろう?”と思っていたんです。壮大なコーラスが入っていて、クラシカルな曲なので。でも聴いたら「なるほどジャズだ!」と。アレンジというものはまるで着せ替え人形のお洋服みたいだなと思っているのですが、着たことのない素敵な服を着させてもらえた! という喜びがありました。もっと色んな曲も聴いてみたいですね。

――下村さんの楽曲は2曲とも中川さんがアレンジされていますね。

川村:僕が下村さんの曲を選ばなかったというわけではないんですよ(笑)。(下村さんの楽曲を聴いて)英二郎さんから「イメージが沸いたからできる」って言われたときは、「まじか!」と。いちゲームファンとして聴いてみたいなと思ったので、ぜひということで中川さんにお任せしました。

下村:……「APOCALYPSIS NOCTIS」、大変じゃなかったですか?(笑)

中川:そんなことなかったですよ。竜さんと選曲を考えていたとき、ゲーマー目線で曲を選んでいった竜さんと違って、僕は曲を選びきれなかったんです。その中でも比較的「APOCALYPSIS NOCTIS」 は最初のほうに決まって。“これはできる”と思いました。

下村:それは嬉しいです。私、お酒を飲んでいる時やドライブ中にジャズを聴くことは大好きなんです。自分の曲はこってりしているので、お酒飲んでいるときには聴きたいと思わないんですよ(笑)。普段から好きだけども、自分では書けないということもあって、ジャズというジャンルに繋がる機会があまりなかったんです。自分の曲がリラックスして聴けるものになったら嬉しいなと、この機会をすごく楽しみにしておりました。素晴らしいアレンジをしていただいてありがとうございます。

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「ジャズは生き物」「その日にしか生まれない音楽」

――中川さん、川村さんが、今作の楽曲をアレンジする際に意識されたことを教えて下さい。

中川:譜面だけを起こしてアレンジをしようとすると無理があるんです。自分の身体から出てこなくて、もう少し理論的になってしまう。だから、まず僕は何回も曲を聴くんです。覚えるまで聴いて、メロディだけが身体に残るような状態にする。頭の中でメロディがループできる状態にして、セットアップ完了。ゲーマーと同じ感覚にすることが大切かなと思っています。時間はかかってしまうんですけど、それができるようになると、下村さんのおっしゃるような着せ替えがやりやすくなるんです。

川村:僕が意識したのは、メロディを大切にすること。そこは自分のポリシーでした。メロディはいじらないで、どこまで自分の音楽性を提示できるかというところを目標にしてました。。

下村:なるほど……。

――松田さんは、収録されている楽曲を聴いたときどのような印象を持ちましたか?

松田:これまでもコンサートなどで色々なアレンジの曲は聴いてきましたが「へぇ、こういう風になるんだ」と、非常に新鮮でしたね。私自身、音楽はライブがいちばんだと思っているので、ライブの場でどういった演奏になるのか、すごく楽しみです。

――ビルボードライブでゲーム音楽がジャズアレンジで演奏される……というのは、スクウェア・エニックスとしてもゲーム音楽の歴史としても異例のことですが、お話を聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

松田:正直ビックリしました(笑)。「え、本当に?」と。

中川:ゲームとビルボードって対極的なものだと思うんです。コンサート会場とは違う、物凄く敷居の高い場所に感じるんじゃないかなと……きっと来られる方は秘密クラブに来たような感覚になるんじゃないかなぁ。

川村:大人の階段を登る感じがありますね。

下村:でも、オシャレな曲調ですけど、ライブになったら絶対アツいんだろうなと。それがライブの魅力ですよね。アドリブがたくさん出てくると思うので楽しみです。でも、実は私自身もビルボードに行ったことがないんです。だから私も大人の階段を登るのかな……(笑)。

――では、2月のライブに向けてメッセージをお願いします。

松田:「ジャズ・クラブ」でのライブという形式はスクウェア・エニックスとしても初の試みで、どうなるか私自身もとても楽しみです。一緒に歴史の証人になっていただければ嬉しいです。

下村:ゲーム音楽のオーケストラコンサートを開催すると「初めてオーケストラを聴いた」という方がいらっしゃるんです。今回も初めてジャズのライブを見る方や、これをきっかけにジャズにハマる方もいらっしゃるんじゃないかな。とにかく楽しんでいただければ。

川村:おそらくCDとは違う演奏になるので、くれぐれも「間違った」とは思わないでほしいなと(笑)。ミュージシャンたちは皆さんのエネルギーを演奏に変えるんです。その日にしか生まれない音楽になると思います。お待ちしております。

中川:ジャズは生き物です。非常に熱いエネルギーが届くと思います。インプロビゼーション(即興)を楽しんでもらえれば嬉しいです。

「いつか、ニューヨークあたりで…」

――最後に、ゲーム音楽にまつわる皆さまの“今後の展望”を教えて下さい。

松田:ゲームにとって音楽は欠かすことのできないものです。スクウェア・エニックスのゲームの音楽は、非常に高い評価をいただいていて、我々にとってはある種“伝統”のようなものだと思っています。そのゲーム音楽が色々なスタイルで演奏されて楽しんでもらえるというのは、すごく大事なことです。こういった新しいスタイルのものは、これからもやっていってもらいたいですね。また、今後新しいゲームも出てきますが、こういう形でプレイヤーの皆さんにアレンジして広めていただけると、会社としても非常に嬉しいです。

下村:Vol.3をぜひ出してほしいですね。こういった企画で、数多くのゲーム音楽がある中で自分の曲を選んでいただけるのは、名誉なことで、励みになります。どの曲を今後聴きたいかと言われると今すぐには浮かばないんですが、制作サイドやファンの皆様から「下村陽子のあの曲聴きたいよね」って話があがって、また曲をアレンジしていただけたらと。受け身ではありますけど、私自身はアウトプットはしきっているので……。いい形でお化粧と着せ替えをしていただけたら嬉しいです。

川村:下村さんをはじめ、自分が好きな作家さんたちの曲に、プレイヤーとしてだけではなくアレンジャーとして接することができるのは本当に光栄なことです。Vol.3だけとは言わず、末永く企画していただきたいなと思っております。僕自身も“これやりたいな”って曲があるので、表に出すことができたら嬉しいです。

中川:ゲーム音楽は近年では教育の場でも用いられているほどポテンシャルのあるものですし、海外にも楽しんでいただけるお客さんが沢山いるはずなので、今後は海外展開もしていけたらいいですね。この作品を持って、竜さんと一緒に海外のステージに立てたら……嬉しいですよね。

川村:海外のご飯、美味しいものが多いですからね。

中川:そっちか(笑)。

松田:いつか、ニューヨークあたりでライブができたら良いですよね。

下村:そのときは私も行きたいです!

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