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【Vol.2】平昌オリンピック開幕特集~開・閉会式で音楽監督を務める音楽家・梁 邦彦に迫る~



梁邦彦

2018年2月9日~26日の間、韓国・平昌で開催される第23回オリンピック冬季競技大会。その開・閉会式で音楽監督を務めるのが音楽家の梁 邦彦(りょう くにひこ)58歳だ。東京に生まれ育った在日コリアン2世で、日本では、シンガーソングライター・浜田省吾のバンドメンバー・プロデューサー・アレンジャーとして10年以上にわたり活動を共にし、その後、1996年に1枚目のソロアルバムを発表、ソロ活動と並行して、NHKの人気アニメ「十二国記」や、2015年1月に公開された映画『アゲイン』など数多くの映像音楽に携わると共に、最近では,WOWOWと国際パラリンピック協会が共同制作し、2020年まで続くパラリンピックドキュメンタリーシリーズ『WHO I AM』の音楽制作も担当している。4月には、ビルボードライブ大阪で押尾コータローと共にライブを行う梁 邦彦の魅力を、現地平昌からのリポートと共に、全4回にわたってお届けしていく。

【Vol.1】世界での活躍~押尾コータローとの出会い

2/16UP!【Vol.2】梁邦彦の音楽に境界線はない

【Vol.2】梁邦彦の音楽に境界線はない

   2月9日に開幕した平昌オリンピックで音楽監督を務めている梁 邦彦は、これまでにも韓国の国を挙げて行われる様々な行事の音楽制作に携わってきた。2015年11月には、ユネスコ設立70周年記念総会オープニングセレモニーでの公演を、パリ・ユネスコ本部で行った。「Thirsting for Peace(平和への渇望)」と題したこの公演では、韓国を代表する詩人コ・ウン氏が紡いだ詩に、梁邦彦が音楽を付けるコラボレーションを軸に、オリジナル楽曲も披露。ステージには、韓国、日本、アメリカのミュージシャン、そして現地フランスの弦楽奏者たちが並び、全世界から集ったユネスコ関係者たちが客席を埋めた。「教育や文化の振興を通じて戦争の悲劇を繰り返さない」というユネスコ設立の理念、ユネスコが重点目標として定めた「文化の多様性の保護および文明間対話の促進」を、まさに体現するかのような公演に、観客はスタンディングオベーションで応えた。



 翌年発表された7枚目のオリジナルアルバム『EMBRACE』では、ロンドンレコーディングが行われ、ロンドン・シンフォニー・オーケストラが参加している。梁 邦彦は、オリジナル・セカンドアルバム制作時より、ロンドンレコーディングを開始、以後映画音楽始め様々な録音で幾度もロンドンのオーケストラと共演してきた。クラシックからハリウッド映画までこなす彼等の演奏が素晴らしいのはもちろん、音楽に対する理解力とセッションに臨む姿勢やマインド、そしてアビーロードスタジオなどの素晴らしいレコーディングスタジオでの収録は、やはり数ランク上の仕上がりになる。そして何より幼い頃からのブリティッシュミュージックへの憧憬もロンドンに足繁く通う要因の一つのようだ。


 このアルバムに収録されている曲「No Boundary」のイメージは、「境界線のない、出入り自由な状態」。 「ある時、境界線というのはもしかしたら自分の先入観で作り出してしまっているのではないかと気が付いた。そして自分の中に作り出された境界イメージは人に自然と伝わってしまう。自分が柔軟な状態でいればミュージシャン始め皆も入って来やすくなり、『皆でちょっとやってみない』という空気になれる。それが自分にとっての『No Boundary』」なのだと梁 邦彦は語った。


▲Yang Bang Ean(Ryo Kunihiko) - No Boundary


 そして梁 邦彦は、6年前から父親の生まれ故郷である韓国・済州島で島を挙げて行われる音楽イベント【Jeju Music Festival】の芸術監督を務めると共に、自らも出演している。夏の終わりの2日間、済州島の美しい自然の中で開催される音楽フェスティバルには、済州島含めた韓国の素晴らしいミュージシャンはもとより、ブラジルや日本からもミュージシャンが集い、去年は宮沢和史&DEPAPEPEも参加した。夏の終わりの2日間、済州島の大自然に包まれ気持ち良く音楽を楽しんでいるミュージシャンと観客たち・・・その光景は毎年開催される【Jeju Music Festival】風物詩となり、野外フェスの醍醐味を感じさせる。

ryokunihiko ryokunihiko


 ドイツで250年近い歴史を持ち、ベートーヴェンの大合唱にはじまる彼の作品ほとんど、そしてワーグナーその他大勢のクラシック大作曲家の楽曲を管理している世界的音楽出版社・ショットミュージック(SCHOTT MUSIC)も梁 邦彦の音楽に興味を示している。2012年に企画された、会長のペーター・ハンザー・シュトレッカー氏の70歳を祝う【Petrushk Project】には、世界から70人の作曲家が彼の誕生プレゼントとして楽曲を提供、梁 邦彦もそのうちの一人として作曲&提供した。ペーター・ハンザー・シュトレッカー氏は梁 邦彦についてこのように語っている。「彼は音楽という言葉で、故郷と世界の人々を繋げ幸せにしている。音楽に国境はない。彼は音楽の親善大使なのだ」と。



平昌現地レポート from 梁 邦彦 DAY:2/10sat

 開会式から一夜明け、少しだけ落ち着きました。4年前のソチオリンピックの閉会式での次期開催地紹介セレモニーでも音楽監督を務めたとはいえ、今回は手掛ける音楽の規模、関わる人員の数も比べものにならず、本番直前まで聖火ランナーや諸々の変更が続き、その検討と修正が延々と続く。この過程はまさに「格闘」でしたが、関わった全員が力を合わせ、GOALにたどり着いたその瞬間は感慨深いものがありました。(まだ閉会式がありますが…)

 皆さん、開会式はご覧になりましたか?当日僕が見ていたのは、ムン・ジェイン大統領の丁度一階下、プレス関係者のど真ん中で、中継画面にも小さく映っていました^^ すぐ隣、アイルランドのプレスカメラマンがあの寒さの中、素手で撮影しているのに驚いていたら、急にこっち向いて「死ぬほど冷たい〜」といったので僕のホカロンあげた^^




今回の開会式で僕が担当した部分は・・・

▲オリンピック賛歌
ドイツでも活躍する若きソプラノ界のホープ:ファン・スミさん。典型的なクラシック、フルオーケストラタッチのオリンピック賛歌に仕上げました。彼女はこれから益々伸びていくことでしょう。



▲韓国と北朝鮮の女子アイスホッケー選手から、
キム・ヨナさんへのバトンタッチが感動的だった聖火ランナー入場から聖火点灯シーン

 聖火走者入場時は爽やかなイメージで始まり、2人の第4走者達がスロープを登るシーンはスリリングでドラマティックな演出。そして、ようやく頂上に辿り着いた時、キム・ヨナがサプライズでスケーティング。ここは氷上を滑る妖精を、高音部弦楽器と女性コーラスで幻想的に。そしてクライマックスの聖火点灯は、火のリングを伝わり聖火台に点火される瞬間までを壮大なスケールで描きました。この一連のシーンは、絶え間ない変更と修正が繰り返された部分で本当に苦労も多かったけど、タイミングバッチリで点火した瞬間は本当に感動的でした。




▲100人以上のパフォーマーが華やかなライトアップの中で舞い、
絶え間なく花火が打ち上げられたグランドフィナーレショー「Wish Fire」

 このシーンの冒頭に登場したのは、主に海外で活躍中のダンスグループ「Just Jerk」。続いて様々な花火と花火パフォーマー、そして現代舞踊チームのパフォーマンスが全てシンクロした、一大絵巻。シーンが目まぐるしく変化し、音楽をそのタイミングを合わせ作り込んでいくのは至難の業でしたが、徐々にタイミングが合い始め、ジャストのタイミングで大花火グランドフィナーレで開会式の幕を閉じました。



 総じて、フルオーケストラ&混声合唱団から「キレッキレ」ビート上でのパフォーマンスまで、僕にとって未体験ゾーンのスケールでしたが、参加して下さった100人を越える素晴らしいミュージシャン、そしてエンジニアや多くのスタッフのお蔭で完成に至ることが出来ました。今回の参加ミュージシャンは日韓にまたがっています。Korean Symphony Orchestra、韓国の伝統楽器奏者、日本から混声合唱団、ロック、ポップス含めた幅広いジャンルのミュージシャン達合計100人以上。隣国のオリンピック音楽に参加した日本のミュージシャンが皆口を揃え、「頑張って!成功願ってるからね!」と懸命に演奏してくれる姿、胸を打たれました。音楽でつながっているのは幸せなことです。


 そして2月17日には、開会式の音楽制作にも携わってくれた韓国と日本のミュージシャンたちと共に、カンヌンアートセンターで「文化オリンピック」の一環となる単独コンサート【Echoes for PyeongChang】があります。この日は、韓国では旧正月の休暇中であり、オリンピックの氷上競技のメイン会場があるカンヌンでは午前中から男子フィギュアスケートフリーの競技が行われる日でもありますが、夜のコンサートにも大勢の人に足を運んでもらえると嬉しいです。(チケットは既にSold Out^^;)4年間努力を積み重ねてきたアスリートたちの健闘とオリンピック・パラリンピックの成功を心から祈りつつ、僕も17日のコンサートからから25日の閉会式までしっかり駆け抜けたいと思います。



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【Vol.1】世界での活躍~押尾コータローとの出会い

  梁 邦彦がソロ活動を始めてから、今年で22年目を迎える。音楽家としてのキャリアは更に長く、大学時代から様々なアーティストのツアーサポートやプロデュースを行い、1996年にソロアルバム「The Gate Of Dreams」を発表。オリジナルアルバムだけではなく、映画、アニメ、ゲームなど様々な映像音楽の制作にも携わり、その活動は多岐にわたる。2002年に韓国で行われた、釜山アジアンゲームのテーマ曲として梁邦彦の楽曲「Frontier!」が使われたことを契機に韓国で注目されるようになり、2014年にはソチ冬季オリンピック閉会式での次期開催地紹介セレモニーの音楽監督・作曲・演奏を務め、2015年にはパリユネスコ本部で開かれた、ユネスコ設立70周年総会のオープニングセレモニーでの作曲・演奏を担うなど、国際的なプロジェクトに関わる機会も増えている。



 2017年10月27日に韓国で発売されたアルバム『Echoes for PyeonChang』は、平昌オリンピックの音楽監督に任命された梁 邦彦が、これまでに出会った様々なアーティストとオリンピックについて語らう中で、平昌を応援する気持ちや期待を一つの形に出来ればとの想いから呼びかけ、実現したものだ。参加アーティストは、ロック、クラシック、韓国の伝統音楽=国楽、コーラスグループとジャンルを越え、更には国境をも越えて、日本から押尾コータロー、DEPAPEPEが加わり、オリンピックの成功を願う気持ちがひとつの形となった。


▲ ECHOES FOR PYEONGCHANG



 押尾コータローとの出会いは、約1年半前。梁 邦彦がMBSラジオの押尾コータローの番組に出演したことがきっかけとなり意気投合、アルバムへの参加だけでなく、去年11月にソウルで行われた梁 邦彦のライブへの押尾コータローゲスト出演へと繋がっていった。インストゥルメンタル音楽でアジアを中心に活動を続けているという共通点もあり、共鳴しあう2人の演奏が、韓国でも多くの人を魅了した。



平昌現地レポート from 梁 邦彦 DAY:2/6tue


▲OBS(Olympic Broadcasting Services) の中継車室内。
歴代のオリンピック中継を担当している Robert(右)とStephan(左)
「彼等は、僕がソチオリンピック閉会式で演奏したことを覚えてくれていた!」


 1月31日にソウルから平昌に入って早一週間。平昌現地は、昼間でも平均マイナス10℃という極寒。しかし、連日開会式に向けた熱気を帯びたリハーサルを繰り返しながら、ムードもかなり盛り上がっています。

今回の開・閉会式の音楽監督は4人。伝統的な音楽のエキスパートが2人、現代的な音楽を担うのが僕ともう1人います。全体での音楽の分量は果てしなく多いため、それぞれが担当箇所の音楽を長い期間をかけて作り上げてきました。誰がどのコーナーを担当しているかなど具体的なことはお伝え出来ないのですが、様々なパフォーマンスと音楽が重なりあい、スケールの大きなショーが展開されます。

テーマは、「Passion & Connected」そして「平和」。「Passion=情熱」は、アスリートたちはもちろん、オリンピックそのものが持つ情熱。「Connected=つながる」は、世界の人々が横につながっていくことの大切さ。そして、大きなテーマとして「平和」があって、やはり38度線というものがある環境の中で開かれるオリンピックであるからこそ、「平和」というものの大切さを感じてもらいたいと・・・。



▲ここから全世界に向けてオリンピックの映像&音声が発信される。(https://www.obs.tv


開会式まであと3日と迫り、昨日の深夜から今朝未明までは極秘未公開リハーサル。午前0時の気温はマイナス18℃。まさに「凍てつく」とはこのことですが、極寒をものともせず、作業は午前4時まで続きました。制作陣全員がベストなものをお見せ出来るよう渾身の力を振り絞り、最後のスパートをかけていますので、2月9日、夜8時から行われる開会式を、是非楽しみにして下さい。

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