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特集:鈴木茂『BAND WAGON』~“怪物的”ソロ作の魅力とは?

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 日本のロック・シーンを代表するギタリスト、鈴木茂。日本語ロックの歴史を変えたスーパー・グループ、はっぴいえんどのメンバーとしてデビューして以来、50年近くに渡り第一線で活躍してきた。なかでも、1975年に発表した最初のソロ・アルバム『BAND WAGON』は、シンガー・ソングライターとしてもギタリストとしても、誰もが認める屈指の名盤として絶大な人気を誇っている。この6月には、ビルボードライブ本作の全曲演奏ライヴを行うことが決まった。ここでは、あらためて『BAND WAGON』という怪物的なアルバムの魅力に迫ってみたい。

CD
▲『HAPPY END』

 1972年12月31日にはっぴいえんどを正式に解散した後、細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂という4人のメンバーは、それぞれ個別に活動を始めた。大瀧はCMソングを手がけつつ自身のレーベル、ナイアガラを立ち上げ、松本は作詞家やプロデューサーとして第二の道を歩み始めていた。鈴木は細野とともに、松任谷正隆や林立夫らを誘ってキャラメル・ママを結成。後にティン・パン・アレーと改名し、荒井由実を筆頭にセッション・ミュージシャンとしての活動を広げていた。

 そんな矢先、裏方ではなく自身の個性を全面に生かしたソロ・アルバムを作ろうと思い立ち、単身で米国西海岸に乗り込んでいく。はっぴいえんどのラスト・アルバム『HAPPY END』ですでに海外レコーディングの経験があったとはいえ、まだまだ海外録音は珍しい時代。しかも、本人以外はすべて現地のミュージシャンというなかで、四苦八苦しながら『BAND WAGON』は生み出されたのだ。

西海岸で話題のプレーヤーたちによる華やかなサウンド

 参加メンバーも今考えると非常に豪華なメンツが集まっている。当初は、ジェイムズ・ジェマーソン、チャック・レイニー、ジェームス・ギャドソン、ジム・ゴードンといったベテランたちをオファーしていたが、すべて都合が付かなかったという。その代わり、当時の西海岸において注目されているミュージシャンが多数駆けつけたことで、結果的に勢いのある作品に仕上がった。

 サンタナのダグ・ローチ(ベース)を軸に、スライ&・ファミリー・ストーンのグレッグ・エリコ(ドラムス)と、タワー・オブ・パワーのデヴィッド・ガリバルディ(ドラムス)、デイヴ・グルーシンの弟でもあるドン・グルーシン(キーボード)、サンタナやアステカに参加していたウェンディ・ハース(キーボード)などが集結。また、リトル・フィートのツアーが終わったタイミングということもあって、リチャード・ヘイウッド(ドラムス)、ビル・ペイン(ピアノ)、ケン・グラッドニー(ベース)、サム・クレイトン(コンガ)も参加することになった。そして、『HAPPY END』にも関わっていたカービー・ジョンソンがホーン・アレンジを担当し、華やかなサウンドを生み出している。

本格的なアレンジ、ギタリストとしての個性

 では、『BAND WAGON』は具体的にどうすごいのだろうか。まずはなんといっても、その圧倒的なグルーヴ感を持つサウンドだろう。「微熱少年」や「100ワットの恋人」あたりを聴けば分かる通り、タワー・オブ・パワーに通じる当時の西海岸の空気がたっぷり詰め込まれたベイエリア・ファンク・サウンドが構築されている。「八月の匂い」で聴かれるアーシーなファンキー・ロック・ビートや、「人力飛行機の夜」のようなヘヴィ・ファンクも見事だ。ホーン・セクションが効いたサザン・ロック・テイストの「銀河ラプソディー」や、リトル・フィートが得意とするニューオーリンズ・サウンドを取り入れた「夕焼け波止場」など、変化球もしっかりと入れ込んでいる。そういった本場の本格的なアレンジの上で、鈴木茂のテクニカルなギターが素晴らしく冴えているのだ。とくに、スライド・ギターは、彼が心酔するローウェル・ジョージに匹敵する味わいがあり、まだ20代前半とは思えない堂々たるプレイを堪能できる。

 演奏ということでいえば、2曲収められたインスト・ナンバーで、ギタリストとしての個性もしっかりとアピールしている。パーカッシヴでタイトなファンクのリズムに乗せて縦横無尽のプレイを聴くことができる「スノー・エキスプレス」は、90年代のレア・グルーヴの時代にDJたちから再評価されたことでも有名な一曲。また、「ウッド・ペッカー」でのウェスト・コーストらしさに満ちた伸びやかなトーンも気持ちいい。これらのインストが挿入されることで、ギタリストとしての個性をより強く打ち出している。

シンガー・ソングライターとしての鈴木茂

 加えて、シンガー・ソングライターとしての魅力も申し分ない。冒頭の「砂の女」でのヴォーカルとギターの絡み合うスタイルは、ジョージ・ハリスンの「マイ・スウィート・ロード」にインスパイアされたそうだが、まぎれもなく鈴木茂印としか言いようがないし、この感覚は他のヴォーカル曲全体にも通じている。盟友でもある松本隆に歌詞を依頼したことも正解で、はっぴいえんどの流れをくみつつも、さらに洋楽的でスタイリッシュなイメージを作り出すことが出来た。このエッセンスは、ハワイアンやボサノヴァに傾倒していった次作の『LAGOON』でさらに開花することとなる。

 『BAND WAGON』はたんに鈴木茂の代表作というだけでなく、日本のロック・シーンにおいて代替えできないオリジナルの作品であり、今の時代でも色褪せることなく光り輝く傑作である。そして、今現在、ファンクやサザン・ロックやウェスト・コースト・サウンドを取り入れているシンガーやバンドにとっては、かけがえのないお手本となるはずだ。その有効性がどれほどなのかは、ビルボードライブでの再現ライヴでぜひ確かめていただきたい。

鈴木茂「BAND WAGON」

BAND WAGON

2017/03/22 RELEASE
CRCP-20542 ¥ 2,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.砂の女
  2. 02.八月の匂い
  3. 03.微熱少年
  4. 04.スノー・エキスプレス
  5. 05.人力飛行機の夜
  6. 06.100ワットの恋人
  7. 07.ウッド・ペッカー
  8. 08.夕焼け波止場
  9. 09.銀河ラプソディー

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