Billboard JAPAN


Special Contents

ユセフ・カマール 初来日記念特集~ジャズxクラブ・ミュージックの最先端をゆく注目デュオ

top

 日々活性化される新世代のジャズ・シーン。ヒップホップやR&Bへの接近や、スピリチュアル・ジャズへの回帰などと並んで注目しておきたい傾向といえば、70年代ジャズ・ファンクの再評価ではないだろうか。どうしても難解になって行きがちなジャズの世界では、ダンス・ミュージックと絶妙に繋がることで新しいジャンルを切り開いている。そんなダンサブルでファンキーなジャズを奏でるアーティストの最先鋒が、ユセフ・カマールだ。まもなく来日公演でその全貌を見せるジャズの新星の魅力に迫ってみたい。

 次ページにて、オープニングDJとして公演に出演する松浦俊夫による“ユセフ・カマール来日に向けたプレイリスト”も公開!

 ユセフ・カマールは、まるでソロ・アーティストのような名前ではあるが、実際にはカマール・ウィリアムズとユセフ・デイズによるユニットである。カマール・ウィリアムズは、別名をヘンリー・ウーという中国系のサウンド・クリエイター。彼はロンドンを拠点に活動しており、ハウスやブロークン・ビーツの鬼才ディーゴの直系ともいわれるトラックを発表して話題を集めていた。キーボードを中心に様々な楽器を操ることができるマルチ・ミュージシャンとしえも評価が高い。一方のユセフ・デイズは、ユナイテッド・ヴァイブレーションズというオルタナティヴなアフロ・ジャズを演奏するカルテットを、兄弟を含むメンバーとともに結成してドラムスを担当。ストリート・ライヴも含めて、アンダーグラウンド・シーンでは話題のグループだが、そのグルーヴを担うリズムマスターでもある。



▲「London Bridge ft. Conrad The Scoundral」United Vibrations


 このユセフ・カマールは、もともとカマールのバンドにユセフが参加したことをきっかけにユニットとして発展。DJのジャイルス・ピーターソンに評価され、2016年にブラウンズウッドからアルバム『ブラック・フォーカス』でデビューを果たした。アルバム・ジャケットを見るとアラビア語があしらわれているし、グループ名からも中東テイストの音楽性なのかと思わされるだろう。おまけに、アルバム・タイトルもあいまって、ブラック・ムスリムを連想してしまうかもしれない。しかし、実際にはもっとフリーな空気感を感じさせるジャズ・ファンクやクロスオーヴァーといったところだろうか。



▲「Black Focus」Yussef Kamaal


 例えば、アルバムの冒頭を飾る「ブラック・フォーカス」では、グルーヴィーなリズムトラックの上をトランペットの音色が舞い、スカイハイ・プロダクション期のドナルド・バードを思い起こさせる。また、「ロウライダー」ではロニー・ジョーダンのようなギターが聴こえてきて、まるで90年代のアシッド・ジャズ・ムーヴメントに戻ったかのようなファンキーなトラックがクールだ。

 他にも、70年代のエレクトリック・マイルス、ソウルやファンクを取り入れていた頃のハービー・ハンコック、神秘的かつテクニカルだったマハビシュヌ・オーケストラ、コスミックな味わいのロニー・リストン・スミスといった先達の幻影が浮かび上がるようなサウンドが、次から次へと表れていく。とはいえ、けっして懐古趣味で終わるのではなく、今のジャズやダンス・ミュージックとして成り立つような新鮮なサウンドに仕上がっているのだ。そこは、最先端の音楽シーンを肌で感じてきた2人ならではといえる。



▲「Calligraphy (Brownswood Basement Session)」Yussef Kamaal


 ユセフ・カマールのアルバムは非常によく出来ているのだが、彼らの本質を知るならば録音物だけではわからないのかもしれない。というのも、アルバム自体も通して聴くと、セッションによって生み出されたライヴ感のあるものだし、実際YouTubeにアップされているライヴ映像を見ると、さらにグルーヴが強化しているように感じられる。そうなると、やはりライヴを観てみないと、ユセフ・カマールの魅力を理解したいとはいえないのではないだろうか。

 この春いよいよ初来日公演を行うユセフ・カマール。アデルの作品にも参加しているベーシストのトム・ドリエスラー、シンガー・ソングライターとしても活動するギタリストのマンサー・ブラウンという、『ブラック・フォーカス』参加メンバーとのステージとなる予定だ。ライヴでアルバムの楽曲を再現することで、新たな進化を見せてくれるだろう。そして、さらにその先にあるジャズやダンス・ミュージックの新しい方向性も見せてくれるような気がするのだ。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンによって次々と開かれてきたジャズの新しい扉。これからは、ユセフ・カマールが先陣を切ってその役割を果たしてくれるだろう。



▲「Black Focus TOUR TRAILER」

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 松浦俊夫による“ユセフ・カマール来日に向けたプレイリスト”公開
  3. Next >

“ユセフ・カマール来日に向けたプレイリスト” selected by 松浦俊夫

 ユセフ・カマール来日記念特集の第2弾として、公演にオープニングDJとして出演する松浦俊夫にApple Musicプレイリストの作成を依頼。「ユセフ・カマールの音楽を聴く上で、知っていればさらに楽しくなるだろう」という観点で、13曲をセレクトして貰った。

 ドラムンベース・レジェンド=4ヒーローから、ザ・ハッドハンターズ、ドナルド・バード、ロニー・リストン・スミスといったクラブ・ジャズの古典アーティストも含む、スピリチュアルかつバウンシーな選曲。メンバーのヘンリー・ウー(=カマール・ウィリアムズ)やユセフ・デイズ(United Vibrations)の参加曲も含まれており、彼らの音楽へ連綿と続いてきた、ワールドワイドなジャズとクラブ・ミュージックの交感が感じられるプレイリストだ。

関連キーワード

TAG

Special Contentsmore

ジョン・メイヤー最新作『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング』発売記念特集
ジョン・メイヤー最新作『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング』発売記念特集
4年ぶり通算7作目の最新作を徹底解説
Anly 1stアルバム『anly one』インタビュー
Anly 1stアルバム『anly one』インタビュー
伊江島出身の20歳は、初めてのアルバムで何を歌いたかったのか
A Closer Look at Spotify Live
A Closer Look at Spotify Live
注目のアーティストのライブセッションを世界へ発信する人気プログラム“Spotify Live”の第一弾国内アーティストの配信がスタート。一体どんなプログラムなのか?一つずつ紐解いていきましょう。
NGT48『青春時計』インタビュー
NGT48『青春時計』インタビュー
NGT48、いよいよメジャーデビュー。
少女たちの熱くてピュアな想い―――解禁。
甲斐よしひろ インタビュー
甲斐よしひろ インタビュー
「エド・シーランもそうですけど、 いま本当にシンガーソングライターが要求されている感じがします」
特集:萩原健一~デビュー50周年!日本随一のロックンローラー
特集:萩原健一~デビュー50周年!日本随一のロックンローラー
日本を代表する俳優でありながら、カリスマ的なロック・シンガーにスポットを当てる。
スコット&リバース最新作『ニマイメ』発売記念特集
スコット&リバース最新作『ニマイメ』発売記念特集
約4年ぶりの2枚目!新作の魅力を豪華なゲスト・ラインアップの紹介とともに紐解く
大塚 愛『LOVE HONEY』インタビュー
大塚 愛『LOVE HONEY』インタビュー
歌うことの楽しさも取り戻した大塚 愛による、待望の新アルバム『LOVE HONEY』完成。
 サバイバル化が進む音楽シーンにおける彼女の生き方。そして本音と夢。

Chartsmore