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セキュリティー・プロジェクト来日記念特集 ~ピーター・ガブリエル初期作品をライブで聴ける貴重さとは

Secutrity Project

 ピーター・ガブリエル作品の音楽世界を体現する随一のユニット、セキュリティー・プロジェクトが2017年4月に東京と大阪のビルボードライブで来日公演を開催する。ピーター・ガブリエル・バンド、キング・クリムゾン等の元メンバーが集ったスーパー・グループについて、そしてなぜピーター・ガブリエルの作品をプレイするのか、ロック・ファン注目のステージを前にプログレ系全般の音楽ライターでライナーノーツも務める舩曳将仁氏に解説してもらった。

77年~82年までのピーター・ガブリエル作品を体現するユニット
セキュリティー・プロジェクト結成までの軌跡

 2017年4月、ついにセキュリティー・プロジェクトが日本に上陸し、ビルボードライブに出演する。ピーター・ガブリエルの初期のソロ曲の数々を、ライブとして体験することができるまたとない機会の到来だ。

 セキュリティー・プロジェクトは、ジェリー・マロッタとテリー・ガンを中心に結成されたバンドである。ジェリー・マロッタは、ピーター・ガブリエルのソロ・デビュー作『ピーター・ガブリエル』(78年)に伴うヨーロッパ・ツアーのバンド・メンバーに起用され、それ以降も『ソー』(86年)までの4枚のアルバム及びツアーに参加するなど、ガブリエルから高い信頼を寄せられていたドラマーである。他にもホール&オーツ、インディゴ・ガールズ、トニー・レヴィンなど、数多くのアーティストと共演している。

 トレイ・ガンはキング・クリムゾンのロバート・フリップが主催するギター・セミナー、ギター・クラフトの出身者で、ウォー・ギター、チャップマン・スティックといった特殊な弦楽器の使い手として知られている。フリップの妻トーヤのソロ・アルバム、フリップとトーヤを中心としたサンデー・オール・オーヴァー・ザ・ワールドに参加後、ダブル・トリオ編成で復活したキング・クリムゾンのメンバーに抜擢される。キング・クリムゾンでは、『スラック』(95年)、『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』(00年)、『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』(03年)に参加したほか、ソロやKTUなどで数多くのアルバムを発表している。



▲The Security Project live at BBKings, NYC August 2012


  セキュリティー・プロジェクトは、ピーター・ガブリエルの初期のソロ曲をライブで聴かせるというコンセプトで結成された。そのアイディアを発案したのは、ジェリー・マロッタとトレイ・ガンの共通の知人だったという。マロッタとガンは、元ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンとロバート・フリップによるアルバム『ファースト・デイ』(92年)のレコーディングで顔を合わせていて、互いに知った仲だったが、当初ガンはセキュリティー・プロジェクトのアイディアに難色を示していたらしい。簡単に言ってしまうと、ピーター・ガブリエルのトリビュート・バンドである。それをやる必要があるのかと。

 だが当時のピーター・ガブリエルはライブで初期のソロ曲を取り上げることが少なく、ファンにフラストレーションを与えていたことも事実だった。そこで彼らは、12年8月11日、ニューヨークのB・Bキング・ブルース・クラブ&グリルで、たった1日だけのイベントとしてライブを行なうことに決める。


 その時のメンバーは、ジェリー・マロッタ、トレイ・ガンに加え、ピーター・ガブリエルと活動経験のあるキーボード奏者ラリー・ファストが参加。また二人目のキーボード奏者として、IBMのエンジニアとしてソフト開発に携わっていたという異色の経歴の持ち主であるデヴィッド・ジェムソンが参加している。ギターには映画音楽などを手掛けているファズビー・モース、ヴォーカルにはジョシュ・グリーソンというメンバーだった。セットリストは『ピーター・ガブリエルⅣ』(82年)の発表30周年を記念して、同作からの曲を中心としていた。

 これが思いのほか好評だったことから、セキュリティー・プロジェクトは、13年2月にアメリカでショート・ツアーを行なう。この時にはラリー・ファストが抜けていたが、14年2月にはさらに長い日程でツアーが行なわれるなど、セキュリティー・プロジェクトが本格化していく。



▲The Security Project rehearsals -- Woodstock, NY Nov. 2013


 15年2月にはヨーロッパ・ツアーが実現する。ジェリー・マロッタとトレイ・ガン、デヴィッド・ジェムソンは不動で、ギターにはシュリックバックに在籍したマイケル・コッツィが参加。シンガーはジョシュ・グリーソンから、ジェネシスのトリビュート・バンド、カーペット・クロウラーズのブライアン・カミンズに交代している。セキュリティー・プロジェクトのコンセプトとして、77年~82年までのピーター・ガブリエルの曲をライブで披露するということが明確に打ち出された。16年5月にもアメリカ・ツアーを行なうなど、確かな支持を集めている。

 海外では、15年のヨーロッパ・ツアーの音源が『ライヴ1』として16年に発売される。続けて、16年5月のアメリカ・ツアー音源が『ライヴ2』として発売されたが、『ライヴ1』と選曲がひとつとして重複していないところにも彼らのこだわりを感じさせる。

 と、ここまで書いてきて、ピーター・ガブリエルの初期ソロ曲をライブで聴けるということが、それほどすごいことなのか?と思う方がいるかもしれない。これが、すごいことなのだ。



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ピーター・ガブリエルの初期の曲をライブで聴きたいという欲求

 ピーター・ガブリエルは、68年にイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド、ジェネシスでデビューする。シンガーを務めた彼は、女装してキツネの覆面をかぶったり、爆発するマグネシウムとともに登場したり、イボイボだらけの着ぐるみ姿になったり、宙づりになって空を飛んだりと、観客の度肝を抜くシアトリカルなパフォーマンスでカルト的な人気を誇った。しかし、75年にジェネシスを脱退。ガブリエル在籍時のジェネシスは、来日公演を行なうことがなかった。

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 77年には、キング・クリムゾンのロバート・フリップらの協力を得て初ソロ作『ピーター・ガブリエル』を発表する(英7位、米38位)。同作に伴うヨーロッパ・ツアーからジェリー・マロッタが参加していることは先述の通り。78年に発表した『ピーター・ガブリエルⅡ』は英10位、米45位。80年の『ピーター・ガブリエルⅢ』は英1位、米22位。82年の『ピーター・ガブリエルⅣ』は英6位、米28位とヒット作を連発する。



▲Peter Gabriel on The South Bank Show 1982 (Making of Security/ PG4)



▲『Peter Gabriel 4 (Security)』

 日本では便宜上タイトルにローマ数字が付けられているが、海外でのタイトルは4作ともに『PETER GABRIEL』。海外ではジャケットに関連して、1作目は『カー(car)』、2作目は『スクラッチ(scratch)』、3作目は『メルト(melt)』、4作目は『セキュリティー(security)』と呼ばれていて、セキュリティー・プロジェクトは、この4作目の通称から命名されている。

 ピーター・ガブリエルはアルバムを発表するごとにツアーを行なっているが、初来日は86年のことで、しかも【ジャパン・エイドというチャリティー・イベント】に伴うものだった。次の来日は88年だが、こちらはアムネスティ主催のチャリティー・イベントで、東京ドーム1回きり。ピーター・ガブリエルが正式にソロ・ツアーで来日するのは94年のことで、同ツアーでは初期の曲が数曲しかセットリストに含まれていなかった。それ以降、彼の来日公演は実現していない。ついに日本のファンは、ピーター・ガブリエルの初期の曲の多くをライブで体験することができなかったのである。

 海外のファンの間でもピーター・ガブリエルの初期の曲をライブで聴きたいという欲求は高まっていた。それに答えたのがセキュリティー・プロジェクトであり、彼らが13年以降もコンスタントにツアーを行なっているのは、ファンからの熱い支持があってこそといえる。

写真


 16年には、ピーター・ガブリエルとスティングがジョイント・ツアーを行なった。イベント的性格ということもあってか、いつもより多めに『Ⅲ』『Ⅳ』からの曲がセットリストに加えられていた。しかしジョイント・ツアーの来日は実現しなかったし、ピーター・ガブリエルの年齢を考えても、おそらく今後も彼の来日公演が行われる可能性は低い。ピーター・ガブリエルの初期の曲をライブで聴けるということが、日本のファンにとっていかに貴重な体験といえるかがわかってもらえただろうか。

CD
▲『ライヴ1+2』

 セキュリティー・プロジェクトの演奏技術の高さに関しては改めて書くまでもないだろう。アレンジに関しては、最新技術を駆使して原曲の雰囲気を再現しながら、彼らならではの鋭さを加えて表現している。先に紹介した『ライヴ1』と『ライヴ2』が、日本ではWOWOWエンタテインメントから2CDにカップリングされて発売されているので、まずは同作で彼らのパフォーマンスの見事さと本気度の高さを確かめてみて欲しい。


 実は16年10月のツアーから、シンガーがブライアン・カミンズから女性シンガーのハッピー・ローズに交代している。彼女はトレイ・ガンのアルバムに参加していたボブ・マーラーの妻である。といっても、これは単なる情実人事ではない。ユー・チューブに彼女をシンガーとしたセキュリティー・プロジェクトによる「ゲームズ・ウィズアウト・フロンティアーズ」のパフォーマンス映像がアップされているが、彼女は同曲のオリジナルでピーターが歌っているパートと、ケイト・ブッシュが歌っているパートを一人でこなしている。4オクターブの声域があるというから、そのような離れ業も可能なのだろう。


▲セキュリティ・プロジェクト 2016 U.S. ウィンター・ツアー 最新映像 / Security Project 2016 U.S. Winter Tour


 その16年10月のツアーのセットリストを見ると、『ピーター・ガブリエルⅢ』と『同Ⅳ』の曲を中心に、ジェネシス『眩惑のブロードウェイ』の曲のメドレーや、『ソー』からの「レッド・レイン」など『Ⅳ』以降のソロ曲なども交えたものとなっている。ほかにもケイト・ブッシュ「マザー・スタンズ・フォー・コンフォート」がセットリストに加えられていたようだ。ケイト・ブッシュもソロで日本ツアーを行なったことがないアーティストで、またピーター・ガブリエルと縁が深いこともあり、もしも彼女のソロ曲がライブで披露されるなら、ファンには嬉しいボーナスとなるはずだ。

 ピーター・ガブリエルの初期ソロ作の曲を、ライブ・パフォーマンスで体験する。日本のファンの多くが望んでも叶わなかったことが、17年4月、セキュリティー・プロジェクトによって実現する。いったいどの曲がセットリストに加えられるのか、どのようなアレンジで披露されるのか、4月が来るのを心待ちにしておきたい。



ジェリー・マロッタ&トレイ・ガンからビデオメッセージが到着!

▲Security Project Video Message for Billboard Live Tour 2017


セキュリティ・プロジェクト feat.トレイ・ガン&ジェリー・マロッタ「ライヴ1+2」

ライヴ1+2

2016/11/23 RELEASE
IECP-20258/9 ¥ 4,500(税込)

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