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【Live Music Hackasong 参加企業インタビュー】レコチョク



LIVE MUSIC HACKASONG 企業インタビュー

 2016年7月に創立15周年を迎えたレコチョク。音楽の聴き方が大きく変化する中、レコチョクが目指すものは何なのか。「人と音楽の新しい関係をデザインする」というコーポレート・アイデンティティに込めた思い、そして2017年1月26日に最終発表を行うハッカソン【Live Music Hackasong】で目指すものについて話を聞いた。

全員が無料で音楽を聴くような世の中になるとは思っていません

−−御社では2002年から音楽ダウンロードサービス“レコチョク”、2012年から定額制音楽配信サービス“dヒッツ”をスタートされました。その間に、音楽の聴き方は大きく変化しましたが、御社内でも変化はありましたか。

松嶋陽太(事業システム推進部長):レコチョクは、もともと着うた®からスタートし、携帯電話でのサービス展開をメインに国内の音楽配信サービスを牽引するように需要を伸ばしてきました。2009年にはクラブレコチョクという無料会員組織を立ち上げ、現時点でスマートフォンとフューチャーフォンあわせて、1,000万人の会員を保有しています。YouTubeの台頭や様々な配信サービスのローンチなどによって苦戦した時代もありましたが、その時代に適した需要をくみ取りながら、dヒッツやレコチョクBest、新たに体験型音楽プラットフォームとしてWIZYを立ち上げたりなど、音楽の聴き方の変化にあわせて私達もシフトしながら展開してきています。

−−2015年から、様々な有料音楽ストリーミングサービスがスタートしました。それらのサービスと、御社のサービスの違いは何でしょうか。

松嶋:やはりJ-Pop中心に人気楽曲を多く取り揃えているというのが、大きな特徴の1つだと思います。今後は、音楽ファンが最も聴きたい曲をいち早く聴くことができたり、今まで出会ったことのない曲といかに出会えるようにするかが、差別化のポイントになっていくでしょう。レコチョクは、2012年からスタートさせた強みと、過去のデータを活かして、より定額制音楽配信サービスのシェアを獲得していきたいと思っています。

−−ただ、日本では多くの定額制音楽配信サービスがスタートしたにも関わらず、未だ浸透しきれていない状況です。定額制音楽配信サービスを、日本に定着させるために必要なことは何でしょうか。

松嶋:当社だけでなく各社にとって大きな課題だとは思いますが、一つの岐路を入れたところで市場が急に拡大するようなサービスではないと思っています。定額制の音楽配信サービスというのは、B to Cだけではなく飲食店や美容店、イベントスペースなど様々な場所に可能性がありますので、B to B to Cも意識した展開によって、より裾野を広げていきたいと思っています。たとえば、先日ニンテンドースイッチ(2017年3月発売予定)とパートナーを組むことを発表しました。新しいデバイスに対しては必ずアプローチを続けていきたいと思っています。今、流行っているデバイスに、レコチョクとしてどうサービスを提供していくかということには、常にアンテナを張っていますね。

−−今後、新たなデバイスとの取組として、どのようなものが考えられそうでしょうか。

松嶋:言えないことの方が多いですが(笑)、音楽とかけあわすことができるようなデバイスや場所に対しては、常に感度を高くしているんだというイメージは持っていただければなと思います。まだまだ新しいデバイスは生まれてくるでしょうから。

−−市場を拡大するには、YouTubeなど無料の音楽配信で聴いているユーザーを、どうやって有料のサービスに取り込んでいくかも大きな課題の1つだと思います。

松嶋:トレンドを短期で見ると、無料の音楽配信に流れているように見えるかもしれませんが、全員が無料で音楽を聴くような世の中になるとは思っていません。もう少し中期、長期で市場を見ていけば、どこかに対価を支払うという仕組みは引き続き継続していくと思うので、もう少し長い目で見る必要があるのではと考えています。あとはレコチョクが配信市場の拡大に注力していくというだけでなく、アーティストをサポートするというアプローチからも携わっていきたいと考えています。音楽市場全体を拡大していくということにスコープを当て、定額制音楽配信サービスも伸ばしていきたいですね。

−−アーティストやファンを育てるという意味では、先ほどおっしゃった体験型音楽プラットフォームサービスWIZY(https://wizy.jp/)が2016年8月からスタートしましたね。

松嶋:今は音楽市場の売上が鈍化し、一方で、ライブや体験型のサービスの需要が増え、音楽の楽しみ方も多様化してきています。なので、レコチョクとしてアーティストとファンがお互いの持つ夢を実現し、共創という新しい体験ができるようなプラットフォームを作りたいと思いました。これからはWIZYを通じて、アーティストとファンの夢や想いをつなぎ多くのプロジェクトを実現そこからビジネスに発展していければと思っています。

−−先日、レコチョク・ラボ(http://recolab.jp/)がきゃりーぱみゅぱみゅのサンフランシスコ公演を、vantage.tv社とともにVRコンテンツ制作のために収録したというニュースがありました。(http://www.billboard-japan.com)今後は、VRコンテンツの制作にも力を入れていかれるのでしょうか。

松嶋:今はまだVRの市場は把握しきれていないので、どの程度の市場規模なのか、観客の反応はどうなのかを見極めているという段階です。なので具体的に何年までにVR配信をスタートさせるかという決定には至っていませんが、ニーズがあれば投資していく予定です。

−−今回、Billboard JAPAN×Cip協議会のハッカソン【Live Music Hackasong】に参加いただくことになりました。御社も2016年2月に初めてハッカソンを主催されていますね。

松嶋:2014年の1月に、CI(コーポレート・アイデンティティ)を、新たに「人と音楽の新しい関係をデザインする。」に変更しました。音楽市場の活性化に貢献するには、音楽を配信するだけではなく、音楽と何かを掛けあわせることで生まれる面白いものって、まだまだ沢山あると思うんです。なので、ハッカソンを通じて、面白い組み合わせを生み出すことももちろんですが、「レコチョクは音楽と何かを掛けあわせることで、面白いことを実現しようとしているんだ」という思いを伝えたいと思いました。

−−前回のハッカソンで、製品化や実装に繋がったものは生まれましたか?

松嶋:それは、今後の課題です。なので今回の【Live Music Hackasong】は、私達もメンターとして参加することで、製品化やサービス実現まで繋げていければ良いですよね。ハッカソンで面白いアイディアが生まれたとしても、どうしても権利などの問題によって、サービス化できないケースもあります。ただ、だからといって現実的なアイディアばかりを考えるのではなく、忍耐強く「こんなに面白いものがあるんだよ」っていうことを発信し続けることも重要だと思います。

−−私達も今までハッカソンを見てきて、実用化について同じような課題を感じてきました。なので、今回のハッカソンは長期間にわたって開催し、かつ企業様にももう一歩踏み込んで参加していただくことで、よりサービス化への道を作っていきたいなと思っています。

松嶋:そうですよね。ハッカソンの会場ではすごく盛り上がりを見せていても、その次のステップに繋がりにくいというのが現状です。最近 レコチョクではエンジニアが発信するブログをリニューアルしたので(http://techblog.recochoku.jp/)、それらを通じて「こんな面白いアイディアが生まれたんだよ」ということを発信したり、より世間に知ってもらう機会を増やしていくというのが1stステップなのかなと思っています。もちろん実用化するには、権利も含めて様々な課題があるとは思いますが時間をかけてでも、続けていきたいなと思っています。

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新しい音楽体験を研究開発し、「こんな楽しみ方があるんだ」ということを発信し続けていきたい

−−今回、参加いただく【Live Music Hackasong】ですが、御社のAPIとはどのような内容なのでしょうか。

福山泰士(システム・アーキテクトグループ):レコチョクが商用で使用している500万曲以上の楽曲データを提供するWeb APIです。アーティストのデビュー年などを含むプロフィール情報や、楽曲データ、試聴音源などですね。

−−御社はシンクパワー様と、IBM様の技術とともに参加されることになりました。

松嶋:歌詞データと、IBM Bluemixを組み合わせたら面白そうですよね。IBMさんのWatsonを使ってみたいなと思ってお声掛けしました。

−−これらの技術が、ライブとどう繋がっていくのか楽しみです。

松嶋:レコチョクの技術がどんな風に使われるのかというより、音楽と何を組み合わせたら面白いか、世の中のデバイスをどう活用していけるのかということに興味があるので、音楽業界全体にとって有意義で面白いサービスが生まれたらなと思いますね。

福山:例えば、サイトの中にイベントやライブを立ち上げることができたら面白そうですよね。パラメーターが一定の値に到達したら、サイトが変化したり何かをもらえたり。もしくは会場内の盛り上がりと、Webサイトを連動させて、サイトの見せ方を変化させるとか。やはり、音楽事業会社に勤めているせいか考えると、どうしてもマネタイズできる方法ばかりに考えが偏ってしまいますね(笑)。

松嶋:権利や音楽を取り巻く環境を知っていると、型にはまったアイディアしか浮かびませんが、ハッカソンでは思いもよらないようなアイディアが誕生したりするので、とても楽しみですね。

−−今後、御社で取り組まれることなどあれば教えてください。

松嶋:音楽をIT技術と組み合わせることで、もっと新しい体験を実現できると思います。レコチョクは、音楽配信のイメージは強くても、ITやテクノロジーのイメージが薄いので、新しい技術の開発にも携わっているんだということを発信していかなければと思っています。あとは、事業としての取り組みだけではなくVRコンテンツ制作のように、新しい音楽体験を研究開発し、「こんな楽しみ方があるんだ」ということを発信し続けていきたいと思っています。

−−では、今後は音楽事業よりIT事業に力を入れていかれるということでしょうか。

松嶋:どちらかに偏るというより、両方です。レコチョクではプロフェッショナルなIT人材がいる音楽事業会社を目指しています。なので、1年もすれば、「レコチョクって、ITに強い会社なんだ」っておっしゃる方もいるかもしれません。

−−音楽以外のコンテンツを発信されることもありますか?

松嶋:それは、ありませんね。軸足を音楽に置くことが変わることはありません。ただ、そこから何と組み合わせるか、何を実現していくかについては、より一層考えていきたいと思います。

−−では、今後 御社内でアイディアが生まれてからエンジニアに相談し、サービス化するだけでなく、エンジニアから「こんなものも作ってみたい」というアイディアが生まれ、それに向けて権利の許諾をどうとっていくかを考えるという流れも生まれてくるかもしれませんね。

松嶋:それは、やった方が良いでしょうね。アイディアからスタートして、さまざまな問題点をクリアし、そのサービスが実現し、音楽業界全体の市場拡大につながれば良いなと思いますし、そうなることを信じています。現実的な課題は常にありますが、諦めずにハッカソンなどで発信し続けることで、「これが実現すればみんな喜ぶよね」という部分が伝われば、新しい可能性も必ずあると思いますから。

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