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特集:コシミハル~時代も国境もジャンルも超越し、不思議な世界を作り出す

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 時代も国境もジャンルも超越し、不思議な世界を作り出すアーティスト、コシミハル。歌曲、ジャズ、シャンソン、ミュージカルといった様々なノスタルジックな音楽を掘り起こし、自身のフィルターを通して新鮮に響かせる歌声は、他に例を見ない個性的な存在だ。この秋には初のビルボードライブ公演が決定しており、そのステージ上では20世紀初頭の音楽が現代に蘇るという。ここでは世界的に見ても稀な存在であるコシミハルの足跡を追ってみたい。

 コシミハルこと越美晴は、東京出身。父親がファゴット奏者、母親が声楽家という音楽一家に生まれ、物心付く前から家には音楽が溢れていた。3歳の時にはピアノを始め、8歳ですでに作曲をしていたというからかなり早熟だったようだ。また、クラシックを学んではいたが、それよりもシャンソンに惹かれ、譜面を買っては自宅で弾いて歌っていた。

 成長するに従ってオリジナルの楽曲を弾き語りするようになり、あまり深く考えずに出場したオーディション番組『君こそスターだ!』で、デビューのきっかけを掴む。1978年に本名の越美晴名義でRCAから発表したデビュー・シングル「ラブステップ」は、ラテンのリズムを取り入れたポップ・ソング。ニューミュージック・シーンの新鋭として注目を集めた。竹内まりや杏里などが続々とデビューし、渡辺真知子や庄野真代などが続々とヒットを飛ばしていたという時代背景もあり、彼女もそういったくくりの女性シンガーとして紹介されることも多かった。また、ピアノ弾き語りというスタイルから、“女性版・原田真二”などと呼ばれることもあった。

 シングルとしては、「気まぐれハイウェイ」(1979年)や「マイブルーサマー」(1979年)といったシティポップ路線の楽曲がスマッシュヒット。1979年には、坂本龍一や山下達郎など錚々たるミュージシャンが参加したファースト・アルバム『おもちゃ箱 第一幕』をリリース。『On The Street - Miharu 2』(1980年)、『Make Up』(1981年)と、当時のスタジオ・ミュージシャンを起用したアーバンな雰囲気でコンスタントにアルバムを発表するが、自身が求める音楽性ではないということを理由に一時活動を休止。テクノ・ポップへの転向を試行錯誤するうちに、細野晴臣と出会うことになる。

 アルファ・レコード内の\ENレーベルに移籍して発表した第一作『TUTU』(1983年)は、細野がプロデュースを担当。ベルギーのテクノ・ポップ・グループ、テレックス全面参加した「L'AMOUR TOUJOURS」を目玉に、日本の先鋭的なミュージシャンを多数配することで大きく方向転換した。もちろん、越美晴自身のアレンジ・センスも大いに磨かれた。続く『Parallelisme』(1984年)も同様のスタイルで制作が進められ、完全にテクノ・ポップの歌姫としての立ち位置を作り上げた。

CD
▲『ボーイ・ソプラノ』

 細野とのタッグは継続し、1985年には彼が立ち上げたノン・スタンダード・レーベルに移籍。そこで発表したアルバムが『Boy Soprano』だ。本作はクラシック音楽をポップフィールドに落とし込んだ画期的な作品で、ヴォーカル・スタイルも一新。たんにテクノ・ポップというだけではくくりきれないシンガーとしての魅力を打ち出した。続く『echo de MIHARU』(1987年)は、往年の映画音楽を中心にノスタルジック路線を継承。さらに研ぎ澄まされたソプラノ・ヴォイスが印象的に響く。

 1989年にファンハウスへ移籍すると同時に、名義をカタカナのコシミハルへと変更。その頃からシャンソン、ジャズ、クラシック印象派の歌曲などをカヴァーするサロン・コンサートを始め、彼女特有のノスタルジック志向を完成させたのがこの時期といえるだろう。アコーディオンのcobaが全面参加した『Passpied』(1989年)、CDブックとして制作された『心臓の上』(1990年)、個性的なオリジナル楽曲で固めた『父とピストル』(1991年)サティやミヨーといったフランスの歌曲を集めた『La voix de Paris』(1992年)、自作曲のみで構成された『希望の泉』(1992年)といった傑作を続々と生み出した。

CD
▲『シャンソン・ソレール』

 古いシャンソンをカヴァーした『Chanson Solairer』(1995年)を発表した直後の1996年には細野晴臣とのデュオ・ユニット、Swing Slowを結成し、アルバム『Swing Slow』をリリース。残念ながらこのユニットは、1枚のみで終わってしまったが、ジャジーでスウィンギーなレトロ・ポップを展開した。続いて、西部劇へのオマージュ作『REDEO de PARIS』(1997年)も発表。同じ頃から、音楽とバレエを合体させたステージ作品の「Musique-hall」をプロデュースするなど、多岐に渡った活動で注目を集めた。

CD
▲『覗き窓』

 細野晴臣が新たに立ち上げたレーベル、daisy worldに移籍し、2000年に3年ぶりの新作『ペリカン通り殺人事件』を発表。続く2001年には、1930~40年代にヒットしたジャズやシャンソンに特化した『Frou-frou』、2003年にはオリジナルとカヴァーをミックスした『CORSET』と充実した作品をリリース。レトロな楽曲とモダンなアレンジを伴ったコシミハル・ワールドを、完全に確立することとなった。

CD
▲『マダム・クルーナー』

 その後しばらく活動休止状態が続くが、2008年に5年ぶりのオリジナル・アルバム『覗き窓』を発表。そして、再び5年後の2013年には往年のシャンソンやジャズのカヴァーを中心に据えた『Madame Crooner』をリリースする。2015年には同様のコンセプトで細野晴臣なども参加した『MOONRAY』も発表した。いずれもこれまでの作風を踏襲しつつ、選曲やアレンジなどで新たな挑戦を続けている。

 今回ビルボードライブで行われる「マダム・クルーナー5」は、ベルリンの芸術フェスに招待されて行われた公演を再現したもの。フランク・シナトラ、フレッド・アステア、マレーネ・ディートリッヒといった20世紀初頭の名曲をピックアップし、ピアノ・トリオをバックに現代に蘇らせるという試みの企画だ。すでに6月に北沢タウンホールで実施済みではあるが、今回は村井邦彦がゲストで登場。ザ・タイガースや赤い鳥に数々の名曲を書き下ろし、荒井由実やYMOを世に送り出したプロデューサーでもある村井とは、アルファ・レコード以来の付き合い。村井メロディを歌ったり、トーク・セッションなども予定している。J-POP界の重鎮とのコラボレーションによって、コシミハルの美学がどのように浮き彫りになるのか。あらためてその独特の世界を、じっくりと堪能して欲しい。



 

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