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トロイ・シヴァン 初来日インタビュー

トロイ・シヴァン インタビュー

 俳優、YouTuber、シンガー/ソングライターとして多岐に渡り活動し、ティーンから絶大な支持を誇る南アフリカ出身、オーストラリア育ちの21歳、トロイ・シヴァン。2014年にミュージシャンとして本格的に始動、「TRXYE」、「Wild」の2枚のEPが、米ビルボード・アルバム・チャート5位をマーク。昨年12月には、透明感あふれる歌声、ノスタルジーと最先端のサウンドが交差する、秀逸なデビュー・アルバム『Blue Neighbourhood』を発表した。また、2013年にはYouTubeでカミングアウトし、自分を包み隠さずシェアする姿に多くの称賛の声が寄せられ、翌年TIME誌に“2014年最も影響力のあるティーン”の一人に選出されている。

 そんなトロイが【FUJI ROCK FESTIVAL '16】に出演するために初来日、抜群の表現力と芯の通ったパフォーマンスで観客を虜にした。Billboard JAPANは、フェス後日にトロイの取材を敢行。初めての日本やフジロックへの出演、さらには“究極の夏の1曲”について訊いた。

【FUJI ROCK FESTIVAL '16】のライブ・レポートはこちらから>>>

辛い体験を乗り越えられたからこそ、 同じことを経験している人たちにサポートや愛を与えたい

−−今回初来日ですよね?

トロイ・シヴァン:そうだよ。

−−昨日は1日オフだったそうですが、どこかへ行きましたか?

トロイ:えっと、朝7時にホテルを出て、帰ってきたのが夜11時半頃。予定をガッツリ入れてて、すごく楽しかったよ!朝は代々木公園へ行って、少し瞑想して、それからショッピングへ出かけて、ランチとディナーにはお寿司を食べた。ロボットレストランにも行ったんだ!すごく楽しい、アメイジングな時間を過ごしたよ。

−−フジロックでのライブも大盛況でしたね。大勢の観客が自分が書いた曲をシングアロングしている光景をみて、どんな気持ちでしたか?

トロイ:信じられないよ。行ったことのない国で、みんなが歌ってくれるといつも感動しちゃうけど、日本でも同じことが起こったのは格別だよ。小さい頃からずっと行きたいと思っていた国だから、実際に来ることができた上に、休暇としてじゃなくて…ライブをすることができて、いい反応があった。本当に夢のようだ。

−−これまで俳優やYouTuberとして活動してきましたが、生でパフォーマンスするのは新たな挑戦だったと思います。初めてのライブから自身のパフォーマンスがどのように進化していっていると感じますか?

トロイ:うん、まったく新しいことで、これまでやってきたことは全然違う。初めてライブをやってから、まだ1年しか経ってない。いや、まだ1年も経ってないかな。ここ数か月で、すごく成長したし、たくさんのことを学んだと思う。生でパフォーマンスするのが大好きなんだ。最初は、楽しめるかどうかすらわからなかったし、ちょっと恐い部分もあった。でもレコード契約をしているアーティストにとって、ライブは不可欠なものだ。今となっては、ツアーもライブも大好きで、心から楽しい、って自信を持って言えるようになったよ。

−−楽曲のライブ・アレンジも素晴らしかったです。

トロイ:ありがとう。トラックショーにはしたくなかったし、“ライブ感”のあるショーをやりたかった。とても才能あふれるバンド・メンバーに参加してもらってて、ドラマーのアダムのアレンジメントは圧巻だよね。彼は、本当に素晴らしいよ。ちゃんとしたライブ・パフォーマンスだ、って思ってもらえるようにショーを作りこんでいったんだ。

写真
2016.07.24 TROYE SIVAN @ FUJI ROCK FESTIVAL '16

−−「Lost Boy」でしたっけ?曲の冒頭でカミングアウトする前の葛藤について語っていたのって。

トロイ:ううん、「Heaven」だよ。

−−ああいったことをオープンに話すのは、すごくポジティブなことで、ファンにとっても励みになるな、と。

トロイ:あの曲の冒頭で、観客へ語りかけるのは、ショーの中で僕にとって重要な瞬間なんだ。会場を見渡すと、自分と同じような葛藤を抱えている人たちがわかるから。そういう人たちに向かって手を差し伸べ、コミュニケーションを図りたいと思ってるんだ。僕はここにいるよ、って。辛い体験を乗り越えられたからこそ、同じことを経験している人たちにサポートや愛を与えたい。世界中のどこにいても、メッセージは同じで、みんなに聞いてもらいたいことなんだ。

−−なるほど。ちなみに、今までで一番記憶に残っているファンとのエピソードってありますか?

トロイ:パッと頭に浮かんだのが、ライブ中最前列にいた女の子が、僕だけが見えるように「私はレズビアンで、それを明かすのはあなたが初めて。」っていうサインを掲げて、僕が見た瞬間にそれを閉じたことかな(笑)。そして泣き出しちゃったんだ。でも、それってアメイジングなことだよ。知ってるように、僕自身経験があることだし、カミングアウトする瞬間が同性愛者の人間にとってどれほど重要な瞬間か理解してるから。僕のような、実質見知らぬ人にそれを託すなんて、すごくハートウォーミングだし、感動しちゃうよ。

−−では、曲作りを始めたのは、いつ頃ですか?告白的な詞のスタイルから、小さい頃から日記をつけていたのかな、とも思いました。

トロイ:うん、つけてたよ。その当時は、ソングライティングという風には捉えてなかったけど、よくヴァ―スみたいなものを書いてた。本格的に曲を書き始めたのは、16か17歳の時かな。

−−これまで書いた曲の中で、一番パーソナルな内容なのは?

トロイ:あ~、難しいな。全部パーソナルで、君が言ったみたいに告白的なんだけど…「Lost Boy」かな。内容もすごく“リアル”でしょ。

−−早い段階で書き上げた曲だったのですか?

トロイ:アルバム制作の中盤ぐらいかな。


▲ HEAVEN (Live on the Honda Stage at the iHeartRadio Theater LA)


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音楽を通じて一体感を感じられることで意気が上がる

−−では、自分のサウンドはこれだ、と確信したのは?

トロイ:1st EP「TRXYE」をリリースした直後だな。あのEPは、僕の成長の基盤として重要な作品なんだ。実際に音楽を作るのって、頭で考えるより数倍難しい。頭の中で、なんとなくサウンドを浮かべ、自分が求めてるサウンドは理解していたけれど、それを具現化するのって困難なこと。まさに終わりのない戦いって感じだよ。ソングライティングって、辿れるコースが幾千ともあって、自分が正しい道を歩んでないんじゃないか、っていう不安が都度ある。だから、常に軌道修正しながら、曲と戦っているような気がするんだ。

 詞、メロディ、構造、プロダクション…どの部分であれ、曲の印象をガラっと変えてしまうことが可能だし、自分の元々のアイディアから離れてしまうこともある。時には、そこから素晴らしいアイディアが浮かぶこともあるよ。偶然の出来事から、これまで自分には作ることが可能だと思っていなかったもの、あるいは自分が作りたいと思ってもみなかった素晴らしい曲が生まれることもあるわけだから。でも、大体の場合は、ちょっとテンションが下がっちゃうような、自分らしくないものが出来上がる。自分らしいサウンドを見い出すまで時間はかかったよ。と言っても、今でも完全には見つけ出せていないけど。でも、だんだん自分が貫きたい音楽に忠実になれるようになった。それが、「TRXYE」と「WILD」EPの中間だったと思うんだ。

−−アルバムでは、ジャック・アントノフ(ファン.、ブリーチャーズ)などと共作していますが、他のソングライターとの曲作りするのは?

トロイ:すごく楽しいよ!僕の場合、9割ぐらいは誰かとの共作なんだけど、コラボや他のクリエイティヴな人たちと共同作業するのって、最高にエキサイティングなんだ。その時にしか起こりえない魔法のような瞬間もあるし、それをその人とシェアすることができる。そして、ちょっとでも成功を収められると、携わったみんなにとって喜ばしいことだから。たとえば、この前韓国で2万人の前で「YOUTH」をパフォーマンスした時の映像を、曲に一緒に書いた親友たちに送ったんだ。彼らとガレージであの曲を書いたことを思い起こすと、すごくクールでシュールな光景だからね(笑)。


▲ WILD ft. Alessia Cara


−−コラボと言えば、アレッシア・カーラをフィーチャリングした「WILD」はどのような経緯で?

トロイ:彼女は本当にスウィートで、心優しくて、大好きなんだ。僕が彼女の曲「Here」をカヴァーしたら、彼女がヨーロッパ・ツアー中に僕の曲「YOUTH」をカヴァーしてくれて、お互いの曲を永遠とカヴァーし続けるって、冗談言いながら話したり、テキストしたりしてて、盛り上がってて…。「じゃあ公式に何か一緒にやろう」って、話になって、ツアー中に彼女があのヴァースを書き上げて、レコーディングしてくれたんだ。すごく気に入ってるよ。

−−今後、ソングライターとして、他のアーティストのために曲を書いてみたいと思いますか?

トロイ:もちろん!それって、僕にとって大きな目標の一つでもあるから、絶対やってみたいんだ。超ポップな曲が書きたいな~。フィフス・ハーモニーが歌ってくれるような曲。

−−いいですね~。ちなみに、フジロックで会ったと思うのですが、イヤーズ&イヤーズのオリーとのコラボはどうでしょう?声の相性も良さそうですし。

トロイ:実現したらいいね~。僕たち、すごく仲も良いし。実は、昨日ロボット・レストランにも一緒に行ったんだよ。彼のことは、本当に大好きだし、才能溢れるアーティストだと思う。素晴らしいシンガーでもあるし…

−−ダンスもユニークで、最高ですよね。

トロイ:うん、本当に魅力的なパフォーマーだよ。ライブ中は、いつも彼に釘づけだよ(笑)。

写真
2016.07.24 TROYE SIVAN @ FUJI ROCK FESTIVAL '16

−−“Blue Neighborhood”三部作を制作するなど、楽曲を視覚的に表現することにも深いこだわりがあるようですが、映像という表現方法に惹かれる理由は?

トロイ:本質的にクリエイティヴな人間だから、モノを作るのは大好きなんだ。長い間、自分がアウトプットしてきたプラットフォームがYouTubeってこともあるし。知ってるとおり、YouTubeは視覚的で、編集や撮影するのが好きだし、もちろん演技も大好きだから、撮影現場っていう環境にも惹かれる。フォトシュートもそうだよ。だから曲を作って、その曲のために可能な限りクールなヴィジュアルを制作するのは、僕にとってとてもエキサイティングなことなんだ。ストレスが溜まる作業ではあるけれどね。たくさんの人々やお金がその1日のためだけに費やされるわけで、そんな中で曲へ視覚的に息を吹き込まなければならないから。上手くいくときもあれば、いかない時もあるし。でも、最終的には楽しむことができてるよ。

−−独自のユニークなスタイルを持っているという点で、尊敬するアーティストはいますか?たとえば、ボウイやプリンス、ビョークなど。

トロイ:その3アーティストは、すでにいい例だよ。う~ん。多分最初にそう感じたアーティストは、ロビンだね。彼女のことが大大大好き。ポップ・ミュージックは、スマートでクレバーなものにもなり得る、って僕に教えてくれたのは彼女だから。初めて「Dancing On My Own」を聴いたときは衝撃的で、完璧なポップ・ソングと言っても過言ではないよね。現在進行形で面白いことをやっているし、ライブ・パフォーマーとしても謎めいていて、最高だ。たくさんいるけど、最初に浮かんだのはやっぱりロビンだな。

−−戦争や貧困など様々な問題を抱える現代社会において、トロイが考える音楽やクリエイティヴィティーの重要さとは?

トロイ:陳腐に聞こえるかもしれないけど、音楽は世界的言語で、人々を一つにする力がある。この2日間で、2つの音楽フェスティヴァルに出演したけれど、一体感が感じられたし、ステージ上の“魔法”のようなパフォーマンスを観ながら、友達や愛する人と楽しい時間を過ごせる、世界中で最もハッピーな場所のような気がした。そういうのには、すごくインスパイアされる。君が言ったみたいに、現代のような不安ばかりの、壊れた世の中だからこそ、音楽を通じて一体感を感じられることで意気が上がる。そう思えるものがまだ存在しているということは喜ばしいこと。音楽はその大切な一部だと感じるよ。

−−では最後に、トロイの“究極の夏の1曲”を教えてください。今年の曲じゃなくてもいいですよ。

トロイ:あぁ、何だろう~。フィフス・ハーモニーの「All In My Head (Flex)」かな。ひと夏を象徴したという意味では、ケイティ・ペリーの「Teenage Dream」だな。というか、あのアルバムすべて。とてもアイコニックな作品で、どのシングルも素晴らしくて、サマー・ソング満載だったから。


▲ Blue Neighbourhood Trilogy (Director’s Cut)


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