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シャソール 来日記念特集

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 誰かがただしゃべっているだけのに、その言葉がいつの間にか音楽になっている。もしくは、どこかの国の土着的な民族音楽が、いつしかスタイリシュなサウンドに変化している。そんなマジックのような体験を味わえる音楽を生み出す鬼才。それが、シャソールだ。クラシックや現代音楽をルーツに持ちながら、ジャズ、ロック、ダンスミュージック、エレクトロニカなど、様々なジャンルを横断する異色の音楽家。そして彼が料理するのは耳で聞こえる音だけではない。映像さえも自身が奏でる音楽とセッションしてしまうのだ。まもなくビルボードライブでの来日公演を行なう前代未聞の音楽家が、どのように出来上がったのか。ここで簡単におさらいしておこう。

CD
▲『X-pianos』

 シャソールことクリストフ・シャソールは、1976年生まれのフランス人。カリブ海に浮かぶフランス領の島マルティニークが彼のルーツである。4歳ですでに音楽学校でピアノを学ぶなど英才教育を受けていたシャソールは、ティーンエイジャーの大半を音楽に捧げた。そして、ボストンのバークリー音楽院ヘ留学し、その後はテレビや映画、CMなどの音楽を手掛けるようになる。また、演劇やダンスとのコラボレーションや、ロックやポップスのミュージシャンとのコラボレーションなど、早くもクロスオーヴァーな活躍ぶりを見せていく。2004年にはフランスを代表するロック・バンドであるフェニックスのツアーに参加。加えて、同時期にはフレンチ・エレクトロの異才セバスチャン・テリエのアルバム『Politics』でも重要な役割を担った。他にも、ケレン・アンのツアー・サポートや、現代音楽のコンサート、クラブ・ミュージックのリミックスなど、多様なジャンルで彼の名前を確認することが出来る。


 ソロとして本格的にデビューするのは、2012年のこと。これまでに発表してきた音源を集めた作品『X-pianos』では、ロシアの子どもが歌う映像に合わせて曲を作った「RussianKidz」に代表されるように、YouTubeに溢れた映像からインスパイアされて生み出された不思議なサウンドに溢れている。この感覚は、その後に作り上げた大傑作 『Indiamore』(2013年)と『Big Sun』(2015年)にも受け継がれている。他にも、映画音楽やリミックスなどを集めた『Ultrascores』(2013年)、そしてまもなくフィジカル盤のリリースが予定されている続編『Ultrascores II』(2015年)と、ここ数年で充実した問題作を発表してきた。



 シャソールの音楽の特徴といえば、やはり映像の断片やフィールド・レコーディングと、自身のクリエイティヴの融合だろう。ネット上や旅先で拾ってきた音源をサンプリングに使う程度であれば珍しいことでもないが、彼の場合はその音に合わせた上で独自の音楽を作り上げていくのがユニークだ。それは、民族音楽の演奏のこともあれば、鳥の声や街の雑踏をチョイスすることもある。また、人がしゃべる声にも音階を付け、あたかも歌っているように構築するなど、とにかくアイデアに溢れている。オバマ大統領のスピーチを音楽化した、驚愕の動画をご覧になった方も多いだろう。



CD
▲『Indiamore』

 もともとシャソールは現代音楽を学んできた学術派でもあるため、フランス国内の大先輩に当たるピエール・アンリやリュック・フェラーリといった先鋭的な作曲家によるミュージック・コンクレートは耳にしているはずだ。また、ブラジルの異能音楽家エルメート・パスコアールが行った、鳥の声や豚の鳴き声までを楽器にするという手法にも類似点が見られる。しかし、彼はけっして難解なアプローチをすることなく、ジャズやロック、クラブ・ミュージックなどを織り交ぜることで、ポップでカラフルなコンテポラリー・サウンドを生み出しているのがさすがだ。ここまで、現代音楽をポップな世界観で提示したのは、前例がないのではないだろうか。

CD
▲『Big Sun』

 今回の来日公演では、名盤の呼び声が高い『Indiamore』(2014年)と『Big Sun』(2015年)を中心に行なうという。 『Indiamore』は、インドで撮影された映像を元に、ピアノやキーボードなどで肉付けしたという作品。インド音楽特有のエスニックな世界観に、シャソールのモダンでスタイリッシュなセンスがミックスされ、驚くべきサウンド・アートに仕上がっている。また、 『Big Sun』は自身のルーツであるカリブ海のアンティル諸島をテーマにしており、故郷マルチニークのクレオール音楽も題材に使用。南国テイストのコンテンポラリー・サウンドを構築している。いずれも、これまでになかった種類の音楽であるし、ライヴでは映像との完璧なセッションでこれらの音源を再現するという。どんなパフォーマンスを観せてくれるのかは、ぜひ当日を楽しみにしていただきたい。

 シャソールの音楽を聴いた後は、誰かがしゃべる声も、鳥のさえずりも、都会の騒音でさえも、華麗な音楽へと変換できるような気がしてしまう。音楽ではない日常音を、ポップな音楽に変える魔術師。その鮮やかな手口に圧倒されるという至福の体験が、まもなくやってくる。



 

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