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『Synapples2.0』開催記念特集

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 Billboard Japan Music Award 2014にてチャートコメンタリーを寄せ、その独自の目線と鋭い分析が話題になった、音楽プロデューサー・玉井健二氏。自身が代表を務めるagehaspringsが2015年2月に新しいイベント『Synapples2.0 ~no border between sounds~ Produced by agehasprings』を開催する。本イベント初開催を記念し、まだ明らかにされていなかった『Synapples2.0』の全貌を、現在のライブ・シーンについて感じること、そしてその未来の可能性とともに玉井氏が語る、ビルボードジャパンだけでしか読めない特別コメンタリーです。

ライブの原体験について

「Hot Stuff ~DANCE ver.~」
▲ 「Hot Stuff ~DANCE ver.~」 / JUJU

 僕のライブの原体験は中学1年生のとき。地元大阪で見たTM NETWORKでした。百貨店のイベント・スペースで行われたもので、楽器屋でピック1枚でも買えば無料で見ることができたんですね。今で言うならファンクラブ特典のようなものでしょうか。僕は当時彼らのことは全然知らなかったのですが、衝撃だったのは、メンバーよりもサポート・メンバーの方がたくさん演奏していたことや(笑)、楽器以外の機材があんなにステージに乗っていたこと。それを初めて見たライブで体感したんです。弾いていないのに音が出ている……つまりシーケンスが流れていたのですが、それもそこで知った。ライブ自体が、既存の方法論から外に出たやり方だったんですね。後に、それを発案したソニーの丸山茂雄さんに話を聞いたら、「テレビには出してもらえないから、少ない宣伝費の中からやりくりして、ただでライブを見てもらう。それを全国各地でやろうと思った」と。ライブに対して固定観念を持たないという出会いを初めて見たライブで知って、その後彼らが売れていくのを目の当たりにしていくわけですよ。今でもすごく印象に残っているライブですね。そういった経験から僕はライブを見るとき、その場にあるものだけでなく、その場に至るまでの経緯や、やることの意義を考えながら見る癖が付いています。また、元気ロケッツを通じて最新技術を使ってライブ・コンテンツを作っていたとき、海外のいろんな人たちに見せる機会があり評価も得ました。だから、今回僕らがプロデュースするライブ・イベント、Synapples2.0でも、そういうトライアルと、新しい視点というもののかけ算から作っていきたいという思いがあります。

現在のライブ・シーンについて感じること

「ヒカレ」
▲ 「ヒカレ」 / ゆず

 現在は、YouTubeなどの動画サイトが普及したのに比例して、ライブというものの付加価値が上がってきています。入り口が広くなった分、音楽に触れるハードルが下がりました。それにともない、作り手のライブに対しての思いが強くなっていると感じています。大手のイベンターさんが前年比の1.8倍の伸びと聞いているので、数字からもライブの価値が上がっていますよね。

 現在の日本では、ライブと呼ばれているものの鉄板と言える方法論がすごく出来上がっているので、もちろん行くだけで楽しめますし、満足できるものがたくさんあります。しかし、鉄板を作っているスタッフ以外の人が携わって、あるときヒットを生み出すことがあります。僕らが普段行っている音楽制作の現場でもそれは起こります。今ある鉄板を否定するわけではなく、僕らのように、ライブ産業や音楽産業のシーンの中にいてもの作りをしていると、思い付かないようなアイディアが、片足外に出している人から得ることがあります。今回のライブ・イベント、Synapples2.0は、実現するためのハードルが見えているがゆえに手を付けないということを、僕らなりの新しいやり方でできるんじゃないかとずっと思っていたことを具現化したものです。何か、少しだけ違う角度のアイディア盛り込んだフェスを自分自身も見たいなと。そう思っていますね。

今後のライブの可能性について

「ヒロイン」
▲ 「ヒロイン」 / back number

 普段僕がプロデュース・ワークでやっていることもそうですし、元気ロケッツで何かをやるときもそうですが、どんどん思い描いていることに技術が追いついてくるんです。そういう繰り返し。“こういうのがあったらいいのにな”というのが数年後に出てきてそれを使う。そして、それを見たことがなかった人が何を感じるのか。さらに、それを感じていただいて、その人にどうなってほしいのかまで考えてプロデュースしていく。そういうことを毎日考えてやっていく中で、ライブというコンテンツが占める割合も増えてくると思います。

 僕の概念としては、音楽にはCDというパッケージがあって、アルバムやシングル、ベスト盤やライブ盤など、さまざまな形がありますが、もっといろんな可能性があるのではと思っています。例えばサブスクリプションだったり。無形にすることでいろんな可能性を増やしていくことができると思っています。だから、ライブも違う視点を足すことで、極論を言うと“ライブ”と呼ばなくなる日が来るかもなと、よく仲間内で話しているんです。便宜上今はライブという言葉を使いますし、フェスとも言うのですが、近い将来は短い時間の旅のようになるのではと。2~3時間で何を体感してもらうか、何を得てもらうかということですね。だから、遊園地のアトラクションが近いのかもしれない。実際今後、音楽がアトラクション化していくこともあるでしょうし、アトラクションに音楽がもっと有意義に使われることもあるでしょう。今がそこに至る過渡期だと思っています。

 もう1つの視点としては、元気ロケッツのように、長いストーリーが軸にあり、そこに1つのメッセージがあって、それを視覚化したり音像化するコンテンツ。元気ロケッツは映画を作っているような気分でやっているんですけど、例えば1つのライブにそういう切り口でやってみたらどうなるんだろう?という思いがありました。それがSynapples2.0の発想の原点でもあるのです。

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Synapples2.0における新技術

「LIVE EARTH」
▲ 「LIVE EARTH」 / 元気ロケッツ

 “3.5D THE LIVE”に集約しているのですが、いわゆるバーチャル・アーティストの限界点が1つ変わりました。これまでのバーチャル・アーティストの限界は、リアルタイムに連動でき得ないことだったんです。例えば、元気ロケッツのホログラムでは、ステージ上でパフォーマンスするのはリアルタイムでしたが、そのホログラムの中に登場させる人物やキャラクターは事前に作り込まなくてはいけません。極論からいうと、それをどれだけ感じさせないで再生するかが基本的な構造でした。今回僕らがやろうと思っていることは、キャラクターは事前に構築しますが、そのキャラクターが当日どんなライブをやるかは、僕らも分からないのです。細かくは言えませんが、このキャラクターが歌ったり踊ったり息をしたり、しゃべったりすることは、完全にリアルタイムの出来事。つまり、リアルタイムにキャラクターの動きを投影できる新技術なんです。その場その場の演出の仕方や動き方、その瞬間の発想で具現化できる。そこが一番大きなことで、これは日本ではまだ見ることはできません。大げさなことを言うと産業革命が起こったと思っています。少なくともイノベーションですから。音楽制作においてAVID Pro Toolsが出てきてチャンネルという概念がなくなったように、シンセサイザーが出てきてフルオーケストラがいらなくなってしまったように、それに匹敵する技術革命を、今回お目にかけられると思っています。

 もう1つの特徴は、そのキャラクターを当日どう動かしてどうパフォーマンスさせるかは、誰にでもできるんです。誰かではなくてはいけない、という要素はない。初日見た人が二日目に自分の思うように動かすこともできる。そういったことは将来的に大きな可能性がありますよね。リアルタイムに操作することができる。近い将来やってみたいですね、2日目はお客さんの中から抽選でそのキャラクターでライブすることができるということを(笑)。

Synapples2.0のストーリー

「HEAVENLY STAR」
▲ 「HEAVENLY STAR」 / 元気ロケッツ

 僕らは元気ロケッツのときからそうなんですが、“時間軸を越える”というのが好きなんですね。今回のストーリーは、僕らと違う時代に生きている女の子が主人公で、別の時代のアーカイブから自分の好きな曲をピックアップして、自分の好きなようにカバーしているという設定です。僕らも400年前に立てられたお城を見てインスパイアされ、新しい物を作り、それが200年後の未来に注目されることもあるかもしれないですよね。そういう視点で物を作っていくということの1つの切り口がSynapples2.0のコンセプトでもあるんです。その部分と、リアルタイムに僕たちが毎日身を削っていろんな人たちに認識してもらっている音楽と、違う時代に生きている子が、良いなと思うことがシンクする。それを具現化するというのが今回のイベントの1つの視点です。

 いつの時代にも大切なことはあって、それは自分という存在は何なんだろうか、何が本当で何が本当でないかと、考え続けること。そして、どんな時代でもきっとこれだけは気持ち良いんだろうなということは変わらないと思います。例えば風が心地良いとか、唄声に聴き入ってしまうとか。それを時代を超えてつないでいくということをSynapples2.0でやりたいですね。このプロジェクト自体もそうですし、ライブ自体も同じ発想なんです。

Synapples2.0のオリジナル曲「Rebirth」について

「Synapples2.0」
▲ 「Rebirth」 / Synapples2.0

 物事は輪廻していて、どんなに時間が経っても変わらないものがあります。しかし同様に、時間が経たなくても変わらざるを得ないものもあります。そうやって物事はぐるぐる回っているなと日々感じているのですが、このSynapples2.0で描きたかった世界観が、時間という概念を飛び越えたところと今との接点を具現化していくことなので、そういうことをテーマにした曲です。

 楽曲に関しては、人間の特徴として“切ない”というのがありますが、“切ない”の語源は“節が無い”と書くらしいです。つまり次が無い。次がないという恐怖感と、物事は必ず繰り返されるという希望、宿命というのをひと言で言うと、“切ない”という言葉だと。でも“切ない”というのは、決して悪い気分ではないし、“切ない”から僕たちには大事なものが認識できる。認識させてくれる作用が“切ない”なのかもしれない。だから“切ない旋律”にこだわっています。もう1つは抗おうが従おうが時は刻んでいくということで、グルーブは重くタイトに4つで刻んでいくようにしました。その切なさと宿命をサウンドでも表現しています。

今回のイベントテーマ“tone”に込めた想いとそこに広がる景色

「Hold me, Hold you」
▲ 「Hold me, Hold you」 / JUJU

 今回のイベントでは “tone”というテーマのもと、2015年の今まさに日本の人の心をとらえているアーティストたちに出演していただいています。そして最先端技術を駆使した新しいコンテンツと混じりあう演出をしていくので全体を通して観たときに、ただアーティストが出てきてライブをする、と言うことにはなりません。

 今回、予定していた2日目“flow”の開催は、主催者都合による諸々の事情から残念ながら中止となってしまいました。2日目を楽しみにしてくださっていた多くの方々やアーティストの皆さん、関係者の方々に対して、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです。この2日目“flow”には、1日目を体感したあとに、もう1歩先の未来を高い精度でイメージさせてくれるようなアーティストたちが登場することになっていました。初日を経たその先をイメージできる時間にならないかなという思いで、“tone”と“flow”という分け方をしました。今回実現できなかった、「僕たちが描く、感じる、想像しているすぐそこの未来を一晩具現化してみる」というイベント“flow”は、いつの日か必ずみなさんに届けたいと心から思っております。

 新しい物に興味はあるけど、興味しかなく行動しない場合がありますよね。僕らは新しい物にいつもトライしていますが、それだけではなく何が人の心を引き付けるのか、引き付けられたことでその人に何が起こるかを毎日研究し続けて作っています。その1つの集大成とも、出発点とも言える今回のSynapples2.0は、まず見てもらえれば間違いなく感動してもらえるアーティストが出てくれています。そしてもう1つは、それをただ再確認するのではなく、そこに見たことのない新しい景色が広がっているわけです。そのかけ算は、見たことがないものになっているし、必ず見る価値のあるものだと思っています。新しいだけで何もなかったとはならないし、何度も見たアーティストだからいいやともならないです。その両方の意味で、音楽に対して少なからず興味を持っている人は絶対にその場で体感してほしいですね。

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