Billboard JAPAN


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【#BJMA】2014年ビルボードジャパン・チャート解析/ジェイ・コウガミ

【BJMA】特集


「デジタルネイティブ時代」の音楽チャートを考える


 今年の9月に行われた音楽とテクノロジーのカンファレンス「THE BIG PARADE」で米国ビルボードのチャート・ディレクター、シルビオ・ピエトロルオンゴに現代の音楽チャートの未来について伺う機会がありました。米国では音楽アルバムチャートにSpotifyやBeats Musicなど音楽ストリーミングの再生回数を取り込んだり、Twitterと連携したリアルタイムの音楽チャートを実現させるなど、売上やラジオでのエアプレイが中心だった従来のチャートから変化しています。その背景には、「リスナーの消費動向を時代に合わせて反映」するチャート作りを目指すことで、音楽をより身近にするというポリシーがあるとピエトロルオンゴ氏は語ってくれました。

 今回リニューアルするビルボードの音楽チャートでは、Twitterの口コミデータという「リアルタイムの話題性」を融合して音楽ファンの声を反映しています。つまり、音楽の消費が「購入」だけの時代が終わり、「音楽消費が多様化している」と誰もが意識している時代性をTwitterという指標で表現したチャートと言えます。つまりこのチャートが示しているのは、人が音楽に「アクセス」することも消費の一つとして捉えられたという事実であって、これはある意味で音楽業界における大きな変化です。

 このデータとチャートは、成熟した音楽業界に新しい音楽の価値観を問い直す状況を作ってくれるかもしれません。なぜなら、音楽を取り巻く環境と業界は今後「デジタルネイティブ」世代と対峙する時代がやってきます。「フリー」や「シェア」「リアルタイム」などといった行動原理が反映された音楽消費は、さらに多様化の方向に進むはずで、そうなった時「人が何を聴いているか知りたい」という願望を叶えるツールとしての役割を音楽チャートが担ってくれる気がします。

 売上が1位の音楽か、常にSNSで投稿されている音楽か。そのどちらが正しいかに答えはありませんが、それ以上に大切なことは、あらゆる手段を使って「音楽を日常化させる」ことが今の日本には必要だろうと感じます。ファンが感じた音楽への情熱を生活のなかでSNSから伝えることが、もっと音楽を求める生活へとつながるようになってほしいですし、これまでの音楽ファンも、TwitterやYouTube、ニコニコ動画から音楽を知り聴く若者世代も「音楽を聴いて幸せ」と思える日常を本気で考える時期が来ていると考えています。

 海外ではすでに述べた通りビルボードとTwitterが連携してリアルタイムの音楽トレンドをチャート化する世界初の取り組みがすでに始まっています。また今年10月にTwitterは、ツイート内で音楽を再生できる「オーディオカード」を発表し、SoundCloudやiTunesと連携を始めました。このように音楽でも「リアルタイム性」や「消費者の声」がこれまでにないほど無視できなくなり、リスナーを意識したプロモーションやアーティスト活動が生まれ始めています。チャートだけでなくテクノロジーが実現するこの流れは、日本の音楽ビジネスの未来にもヒントを与えてくれるかもしれませんし、好きな音楽の聴き方の可能性を迫り来るデジタルネイティブ世代の時代に再発見することとなれば、新旧の価値のリミックスが実現できるように感じます。

BJMA2014


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ジェイ・コウガミ 音楽ブロガー:All Digital Music。世界の最先端音楽テクノロジー情報をいち早く提供するブログ「All Digital Music」を運営中。ブロガーとして、世界中の音楽サービス、音楽スタートアップから、ミュージシャン・レーベルのデジタル戦略、企業の音楽マーケティングなど、海外経験を活かし日本では紹介されない最新トレンドを幅広く紹介。ブログ運営に加え、ハフィントン・ポスト・ジャパン、ブロゴス、ヤフージャパンで音楽業界関係者やIT業界に向けて最新のデジタル音楽に関する記事執筆を行いデジタル音楽の啓蒙を行う。さらに雑誌の寄稿、講演、ラジオ出演などで活躍。アメリカ オレゴン州ポートランド育ち。日本初ITx音楽のハッカソン「Music Hack Day」審査員。

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