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2018/05/14

凛として時雨の“現在”が轟いた【Five For You】あとに残るは静寂と闇

 会場が暗転し、凛として時雨のメンバーが揃って姿を現した。一気に膨れ上がった歓声が、空気に溶け込むように消えていく。そして次の瞬間、この静寂を呑み込むように「Ultra Overcorrection」の破壊的なイントロが耳をつんざいた――。

 4月30日のZepp Tokyo。ライブ冒頭からハード且つソリッドな世界観を構築したこの楽曲は、最新アルバム『#5』の出だしを飾るナンバーでもある。インディーズ1stアルバム『#4』に続く形で「#」を冠しながらも、過去の延長線上にある“現在”に焦点を当てたこの作品。【凛として時雨 Tour 2018 "Five For You"】と題されたリリースツアーは、アルバムと同じ楽曲で幕を開け、アルバムの楽曲を中心に構成され、アルバムと同じ楽曲で幕を引く。彼らはステージ上でも“現在”を轟かせてみせたのだ。

 結成して15年。当初から高い演奏技術が評価されてきた凛として時雨だが、たゆまず進化し続けてきたからこそ奏でられるアンサンブルがそこにはあった。序盤はTK(vo,g)が機材トラブルに見舞われ、その対応に少し時間をもっていかれる場面があったものの、ピエール中野(dr)が機転を利かせてドラムソロを披露。TKと345(vo,b)の掛け合いが疾走感を生む「High Energy Vacuum」へとスムーズに繋がり、奇しくも臨場感を高める結果となった。

 さらに、「I was music」や「DISCO FLIGHT」といった代表曲も織り交ぜられ、会場は早くも熱狂状態。そんな中で訪れた一度目のピークは「Chocolate Passion」である。6拍子のAメロから展開される様々なリズムは確かにチョコレートアソートのようだが、可愛らしい言葉とは対照的な鋭いサウンドだ。一転、ステージ後方の暗幕が開き、映像が投影され始めてからは、衝動よりも幽玄さが強く押し出された。凛として時雨を象徴するかのように<伝えようのないこの虚しさも 時と雨が繋いで消し去っていく>と歌われる「ten to ten」では、呆然と立ち尽くす人たちの姿。ダイヤモンドダストが見えそうなほどの凍てついた空気の中、私たちの胸だけがさらなる熱を帯びていく。

 この余韻を残し、TKと345は一旦ステージ袖へ。一人残ったピエール中野はユーモア溢れるMCを繰り広げたわけだが、これは次に予定されているドラムソロへの布石でもある。本人曰く“日本のアンセム”をBGMとして選んだところ、TKと345から「シュール過ぎてたぶん伝わらない」と指摘を受けたため、事前に説明しておくことにしたらしい。その選曲とは童謡「どんぐりころころ」で、誰もが聞いたことのあるイントロが流れ始めると会場が大いに沸いた。チャイルディッシュな歌声に対して大人気ないほどの激しいスティック捌き、まったく“ころころ”ではないスピード感で転がされる打音。ドラムセットにはLEDライトが仕込まれており、ソロの間は色を変えながら鮮やかに輝いていたが、それこそ「光速」と形容したくなるほどの妙技である。

 光といえば、重低音が際立つ「DIE meets HARD」にて、リリックと同じ“ハチミツ色”に染まった場面も印象的だったが、鉄板に空いた銃弾の穴から流れ込む陽射しのようだったり、溶岩を冷やすべく降り注ぐ豪雨のようだったりと、ライティング演出は美しいものばかりであった。ミラーボールが「Who's WhoFO」で回転したことは全員の知るところだが、天井を見上げた人はどれだけいただろう。まさに<奇跡 奇跡 UFOの到来>、幾筋かの青いビームを集める球体は、凛として時雨が密かに呼び出した未確認飛行物体のようにも見えたのだ。

 光が音に合わせられているのではなく、音が光を導いている。そう感じられるほど、凛として時雨の支配下にあったということかもしれない。目まぐるしい展開を繰り広げる「EneMe」から、名曲「Telecastic fake show」なども含め、特に終盤は非現実感が強く、繊細な一音一音から成る耳に痛いほどの轟音は、その痛みを気持ちいいと思ってしまうような自虐的な陶酔感すらもたらした。この不思議なひと時、長いようで短いひと時に終止符を打ったのが「#5」になるわけだが、締めのワンフレーズを345が歌う音源とは異なり、最後に響き渡ったのは、TKの<もう いっそのこと君を殺してしまいたい>という悲痛なシャウトである。

 3人はハウリングを響かせたままステージを去っていく。もちろん、凛として時雨にアンコールはない。徐々にフェードアウトするその音に、光が優しく寄り添っていき、あとに残るは静寂と闇、それだけだった。

TEXT:佐藤悠香
PHOTO:河本悠貴

◎セットリスト
【凛として時雨 Tour 2018 "Five For You"】
2018年4月30日(月・祝)東京 Zepp Tokyo
01. Ultra Overcorrection
02. High Energy Vacuum
03. Who What Who What
04. I was music
05. DISCO FLIGHT
06. Tornado Mystery
07. Chocolate Passion
08. a symmetry
09. ten to ten
10. DIE meets HARD
11. Who's WhoFO
12. EneMe
13. abnormalize
14. Telecastic fake show
15. TK in the 夕景
16. #5

◎ツアー情報
▼追加公演
【凛として時雨 Tour 2018 “Five For You” ~Vacuum The Hall Edition~】
6月01日(金)大阪・フェスティバルホール
6月11日(月)東京・東京国際フォーラム ホールA
トレーラー映像:https://youtu.be/4haN9CZXgLQ

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