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世界一流のワーグナー歌いたち、集う 新国立劇場“リング”第2夜『ジークフリート』初日開幕

 新国立劇場で、6月1日よりワーグナー『ジークフリート』が開幕した。世界的ヘルデンテノールのステファン・グールドが、世界各地で50回以上歌っている当たり役ジークフリートを務め、ブリュンヒルデはワーグナー・ソプラノとして人気絶頂のリカルダ・メルベートが出演する。

 ラインの川底に眠る黄金から作られた『指輪』を巡って神々の欲望と意図が交錯し、運命的に結ばれたジークムントとジークリンデの間に産まれた少年ジークフリート。「恐れ」を知らず、腕に物言わせるこの少年が、養父ミーメに唆されて大蛇となったファフナーを仕留めて指輪を手に入れ、森の小鳥に導かれ、炎の岩山に眠る戦乙女ブリュンヒルデと結ばれるまでの物語だ。

 ドイツの巨匠ゲッツ・フリードリヒ晩年のプロダクション(98年フィンランド国立歌劇場初演)での上演は、奇をてらった演出が多いワーグナー演出のなか、美しく明快なことで知られる。舞台を大きく横切るラインが特徴的で、人物たちの「立ち位置」や心理状態をそこからも読み取ることが出来るだろう。難解な“リング”のイメージを飛び越え、自然に物語へといざなってくれる。

 また今が旬の世界一流のワーグナー歌いたちは、歌い手であると同時に一流の役者でもある。グールド演じる少年ジークフリートの両親を知らない不安と、粗暴さに潜む不安定さ。ただ立っているだけでも威厳と強権を感じさせる、圧倒的な存在感のヴォータン役グリムスレイ。ラインの黄金を狙う兄弟、ミーメとアルベリヒの対話シーンのリズミカルさは、物語の深刻さをいっとき忘れさせてくれるほどのコミカルな空気を纏っている。大地の女神エルダの叡智と深い悲しみ、そしてその娘である戦乙女ブリュンヒルデが「人」に堕ちる悲痛な叫びからの愛を知る変化。1人の若者の成長物語としてだけではなく、それぞれの神々の立場は実に「人間的」で、その物語が私たちと地続きであることを思い起こさせる。

 2015/2016シーズンからスタートした「ニーベルングの指環」は、3年がかりで全4作を上演する大型プロジェクトであり、現オペラ芸術監督、飯守泰次郎氏のワーグナー作品への精通あってこそのシリーズだ。公式サイトではこの飯守泰次郎オペラ芸術監督による、“リング”恒例の「音楽講座」動画がアップされており、ピアノ演奏しながら示導動機を中心に作品の読み方をレクチャーしてくれる。劇場に足を運ぶ前に見れば、耳から目から描かれるワーグナーの世界により深く浸れることだろう。 

◎公演概要
新国立劇場 2016/2017 シーズンオペラ【ワーグナー 楽劇『ニーベルングの指環』第2日 ジークフリート】
2017年6月1日(木)~17日(土)
新国立劇場オペラパレス
文:yokano 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

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