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2015/04/09

Album Review: レネ・パウロ 1930年生まれの伝説が奏でる美しきピアノ・アルバム、老練な指使いをじっくりと堪能

 時計の針を目一杯巻き戻し、60年代のハワイへ飛ぶ。ホノルルのナイト・クラブに忍び込むと、店内の中央には白いピアノ。そして、そこから流れてくるのは、誰もが知っているスタンダード・ナンバー。甘美なメロディは潮風に乗って、夜の帳へと消えていく……。

 レネ・パウロは、1930年生まれの伝説的なピアニスト。10代の頃からハワイでプロとして活躍し、ジュリアード音楽院で本格的にクラシックを学んだ実力派だ。朝鮮戦争の頃は、米軍専属のピアニストとして日本に滞在し、渡辺晋(ナベプロの創始者)率いるシックス・ジョーズでも演奏していたという。好景気を迎えた60年代のワイキキでは、毎晩のようにクラブやピアノ・バーでその腕前を披露し、レコードも数え切れないくらい録音した。

 その頃に弾いていたであろうジャズやミュージカルのスタンダードばかり集めたアルバムが、新作『スターダスト~スウィート・メロディー・フォー・ハワイ~』だ。「ムーン・リバー」、「虹の彼方に」、「二人でお茶を」、「星影のステラ」といった有名な旋律ばかりを集め、繊細かつ流麗なソロ・パフォーマンスを披露してくれる。カーメン・キャバレロのようにきらびやかな装飾音をふんだんに使った演奏から、ジョージ・シアリングを思わせるクール・ジャズ風のプレイまで、卓越したテクニックは年令を感じさせないフレッシュな印象。しかも、どの曲にもどこかトロピカルなイメージを受ける心地良さに溢れているのだ。じっくりと老練な指使いを堪能しても良し、おだやかな気分になるためのBGMにしても良し。いずれにしても、これからの季節に重宝しそうな美しいピアノ・アルバムだ。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『スターダスト~スウィート・メロディー・フォー・ハワイ~』
レネ・パウロ
2015/03/25 RELEASE
2,700円(tax incl.)

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