Special
<コラム>Kroi「SPIN」が世界で支持される理由 『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』と共鳴した、バンドの“ルーツ”と“前衛性”

Text:森朋之
Photo:Kaito Ono
Kroiの新曲「SPIN」が、キャリア最大のグローバルヒットを記録している。
9月24日のデジタル・リリース直後より、世界各国から歌唱/演奏カバー動画が続々と投稿されるなど、アメリカをはじめとする海外リスナーから大きな注目を集めている同曲。「世界でヒットしている日本の楽曲」をランキング化するBillboard JAPANのグローバルチャート“Global Japan Songs Excl. Japan”では自身初の首位、それを国/地域別で抽出した“Japan Songs(国/地域別チャート)”ではアメリカ、ブラジル、イギリス、フランスの4か国で首位を獲得、他4つの国でトップ20入りを達成[いずれも2026年10月8日公開チャート]。欧米を中心に、世界規模での高い支持が記録にも表れている。
アニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』(9月25日よりNetflixにて毎週1話ずつ配信)のオープニング主題歌として制作された「SPIN」。この楽曲が世界中の音楽ファンを魅了している理由を紐解いてみたい。
「SPIN」がKroi史上最大のグローバルヒットを記録している最大の要因はやはり、アニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』とのシナジーだろう。『ジョジョの奇妙な冒険』の第7部にあたる「スティール・ボール・ラン」は、19世紀末のアメリカを舞台に、総距離6,000キロの“人類初の乗馬による大陸横断レース”を描いた作品。下半身不随の元天才騎手・ジョニィ、鉄球の回転を操るジャイロを軸に、多額の賞金を狙うライバルたちとの争い、国家規模の陰謀などが絡み合うスリリングなストーリーが展開されていく。予備知識なしでも楽しめる物語になっていて、『ジョジョ』ファン以外の視聴者にも大きな注目を集めている。
楽曲「SPIN」は「スティール・ボール・ラン」の世界観と密接にリンクしている。幕開けは、強烈なドライブ感を生み出すベースラインとまるで馬の蹄の音のようなパーカッション。アレンジの基調を担っているのは、往年の西部劇を想起させるウエスタン調のサウンドだ。マカロニ・ウエスタンの金字塔『荒野の用心棒』の劇伴でも知られるエンニオ・モリコーネ、そして、モリコーネが手がけた「夕陽のガンマン」をカバーしたザ・ベンチャーズへのリスペクトが強く感じられるフレーズを織り込むことで、「スティール・ボール・ラン」の映像との親和性を高めているのだ。アメリカの精神の象徴とも言える西部劇の要素をダイレクトに取り入れたことが、この曲が全米で支持を広げていることの大きな要因になっているのは間違いない。
アニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』ノンクレジットオープニング
ここで強調しておきたいのは、「SPIN」における古き良きアメリカの音楽のテイストは、もともとKroiの音楽性に含まれていたということ。タイアップに合わせて無理に西部劇的なサウンドを持ってきたのではなく、以前から培ってきたメンバー自身のルーツや指向と合致したからこそ、「SPIN」と「スティール・ボール・ラン」はこんなにも刺激的なケミストリーを生み出しているのだ。ファンク、ラテン、ヒップホップ、オルタナティブ・ロックなど、多彩にして雑多な音楽要素を自由に取り込んでいるのもこの曲の魅力。80年代の終わり頃にアメリカで発生したロック、ヒップホップ、ブラックミュージックの融合は、日本でミクスチャー・ロックとして受容され、独自の発展を遂げてきた。Kroiの音楽性にはその潮流が確実に含まれていて、「SPIN」のアレンジ、サウンドメイクにも強く作用している。おそらく海外のリスナーの多くは「日本にはこんなユニークなサウンドを持ったバンドがいるのか」という新鮮な驚きとともにこの曲を受け止めているのだろう。
続いては歌詞。そもそも「SPIN」というタイトル自体、「スティール・ボール・ラン」の根幹にある“回転”という概念と強く結びついている。主要キャラクターであるジャイロは鉄球の回転を操り、多くの敵と戦いながらレースを進めていくのだが、彼のバディ的な存在であるジョニィにとっては、回転の謎を解き明かすことが自分の人生をやり直すことに直結していて“回転=運命を切り開く”というテーマへとつながっている。たとえば〈競技を超え 都度美学磨くようになる/己の本意だ〉〈まだあるフロンティアは内側〉といった「SPIN」の歌詞に、「スティール・ボール・ラン」に込められた哲学、そして、「回転を信じろッ! 回転は無限の力だ それを信じろッ!」というジャイロの名ゼリフとの連なりを感じるのはきっと筆者だけではないはずだ。さらに特筆すべきは、「SPIN」の歌詞が「スティール・ボール・ラン」と離れた場所でも成立していること。自分らしく生き抜くためには、自らの力を信じ、アクションを続けるしかない――そんな普遍的なメッセージもまた、この曲が国境を越え続けていることの理由だろう。
SPIN / Kroi
さて、いろいろと書き連ねてきたが、最後にひとつ。「SPIN」という楽曲を通して筆者がもっとも強く感じたのは、『ジョジョ』の世界観とKroiはとてもよく似ているということだ。ストーリー、キャラクター、作風を含め、徹底して前衛性・作家性を貫きながら幅広い読者を獲得し、世界規模の支持を得てきた『ジョジョ』。そしてKroiもまた、メジャーシーンのど真ん中で活動しながら、音楽性、ファッション性、ライブのスタイルなどにおいて既存のフォーマットを逸脱し続けている。両者の必然的な出会い、そのなかで自然発生的に沸き上がったクリエイションこそが「SPIN」の求心力であり、世界的なバズにつながっているのだと思う。彼らのポテンシャルを考えるとやや遅い気もしないではないが、ついに世界に発見されたKroi。ここからの躍進を想像すると心がグルグルと回転するような興奮を覚えてしまう。
リリース情報
シングル「SPIN」
- 2026/9/24 DIGITAL RELEASE
2026/10/28 RELEASE
関連リンク
関連商品
























