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<コラム>DOMOTO「愛のかたまり」、“歌われ続ける名曲”が示す存在感――デジタル解禁から見えた、幅広い世代に届く強さ



コラム

Text:Maiko Murata

 2025年1月1日、YouTubeでの生配信で“KinKi Kids”からの改名を発表したDOMOTOのふたり。その発表から11か月を経て、いよいよDOMOTO名義として初の楽曲リリースが発表された。そんな記念すべき楽曲に選ばれたのは、言わずと知れたふたりの代表曲「愛のかたまり」だ。

 叙情的な詩とメロディーにふたりの美しいハーモニーが重なるこの曲は、2001年11月と今から24年も前のリリース、またシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリング曲という位置付けでありながら、幅広い世代からの認知を得ている。リアルタイムで聴いていた世代はもちろん、彼らを慕う後輩たちのカバーで知った若い世代のリスナーも多いだろう。また、作曲を堂本光一、作詩を堂本剛とメンバー自ら手がけており、ふたりの表現者としてのクリエイティビティが発揮された楽曲でもある。

 また、彼らといえば今年の5月5日――ふたりが出会ったとされる記念日に、それまでにリリースされた楽曲356曲すべてをデジタル配信したことも記憶に新しい。この解禁後、集計初週となった5月14日公開のBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では、「硝子の少年」や「ジェットコースター・ロマンス」などを押さえ、彼らの楽曲でもっとも上位を記録したのがこの「愛のかたまり」だったことからも、この曲の支持が確固たるものであることがわかる。

 そしてさらに特筆すべきは、この盛り上がりがリリース直後だけの“懐メロ”的な盛り上がりにとどまっていないことだ。まず前提として、この曲はシングルのカップリング曲、つまりBillboard JAPANチャートにおいてCDセールス指標の集計対象外の楽曲である。したがって、総合ソング・チャートを現在構成する6指標のうち、対象となるのはダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケの5つのみ。指標がひとつ少ない状況で長く“JAPAN Hot 100”にチャートインし続けるためには、この5指標でいかに長く、安定したポイントを積み重ね続けられるかが鍵となる。

 そこで「愛のかたまり」の累計獲得ポイント構成比を見ると、その半分以上が「カラオケ」指標であることがわかる。同曲はデジタル配信やYouTubeでオフィシャル動画が公開されるよりずっと前、つまりカラオケ指標しか集計対象になり得なかった頃から同指標で100位圏内をほぼキープし続けている。また、カラオケ指標の集計が始まったのは2018年12月5日。途中、コロナ禍の影響で集計を中止していた2020年4月15日~6月24日の間を除き、最新の2025年11月26日チャート までの全週でチャートインし続けているため、この約7年間、特定の時期やブームに影響されず安定的に歌われ続けているのが特徴的だ。カラオケでの定番曲、いわば「誰かに聴かせる」場面で選ばれやすい楽曲として大きな役割を持っていることがうかがえる。


「愛のかたまり」累計獲得ポイント構成比
※「UGC」はHot 100チャートを構成する指標に含まれません


 さらに、2024年7月31日公開チャートからは、動画再生指標でも高い順位を記録し続けている。これは、公式チャンネルにて、2023年〜2024年にかけて開催された東阪ドーム公演【KinKi Kids Concert 2023-2024 ~Promise Place~】からの「愛のかたまり」ライブ映像が7月21日(ちなみに、この日は日曜日であった)に公開されたことが大きく影響しているが、MVが存在せず、また2025年5月5日のサブスク解禁まではアートトラックの公開もなかった状況で、昨今のひとつの楽曲に対したくさんの公式映像を公開することが当たり前の他楽曲の中で健闘している状況には注目すべきだろう。


KinKi Kids「愛のかたまり」【from KinKi Kids Concert 2023-2024 ~Promise Place~】


 ダウンロード指標では、各指標の集計対象内にあたる300位圏内に入り続けた週数に着目したい。同曲は5月5日の配信開始から、集計初週となった2025年5月14日チャートでの指標1位(=ダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”での首位)獲得を皮切りに、9月10日までの18週にわたってチャートインを継続。すでにリリースされている曲のデジタル解禁でここまで長くダウンロード指標が動き続けることは珍しく、元々楽曲配信を心待ちにしていたファンだけでなく、ライトなリスナーをしっかり取り込めている証拠だ。加えてストリーミング指標でも、特に8月ごろからは毎週の獲得ポイントがかなり安定しており、配信から半年以上経過した現在も安定して300位圏内をキープ。つまり、一過性のブームではなく“聴き続けている”層が安定して存在することがデータからも明らかなのだ。

 24年前にリリースされた「愛のかたまり」が実に17週連続、通算では24回(※2025年11月26日公開チャート時点)にわたって“JAPAN Hot 100”に入り続けることができているのは、ひとえにこの曲がDOMOTOのふたりのファンだけでなく、歌いたい曲、またふと思い出して聴きたい/ダウンロードしたい曲として、複数のチャネルで世の中に広く浸透しているからに他ならない。この多角的かつ根強い支持は、“JAPAN Hot 100”の複合指標で見るからこそよく伝わるはずだ。

 “DOMOTO”としてのスタートを切る新たな「愛のかたまり」は12月3日、デジタル配信のみでリリースされる。この新しい「愛のかたまり」も“JAPAN Hot 100”でどのようなアクションを見せていくか、楽曲と合わせて期待したい。


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