Text & Interview: Mariko Ikitake
Photos: 森好弘

　THE BEAT GARDENの約5年3か月ぶりとなるCDシングル『Happy Ender』がリリースされた。サポートDJとして全国をともにしてきたkowta2、そしてUがSNSで見つけた現役大学生のKAIが加入した5人新体制シングル第一弾だ。ビートらしさはそのままに、ハイトーンが持ち味のKAI、そしてヒップなラップパートなど、新たな発見がたくさんある。

　すでに5人で新たな歩みを進めている彼らだが、意外にもメンバー加入は思いがけず決まったことのようだ。5人の決意が込められた応援歌「Happy Ender」は新たな“はじまり”を宣言するグループの代表曲となるだろう。

左上から時計回り：藤掛昌斗、kowta2、U、渡部怜、KAI

──5人体制の発表には大変驚きました。いつ頃から、グループ内でそういうお話は出ていたんでしょうか？

U：去年の8月半ばぐらいですかね。その頃に僕がKAIの声に出会いました。メンバーとマネージャーに言う前に、人柄も知りたくて連絡を取ってみようと、インスタをフォローしたら、すぐフォローバックしてくれて。「声がすてきだったので連絡しました」ってDMしたら、「ありがとうございます」って礼儀正しく返信してくれて、すぐに「大事な話があるので会えませんか？」って送ったら、「ぜひ聞きたいです」と。

──その大事なお話っていうのは、メンバー加入のお誘いだったんですか？

U：まだ僕の中では100％じゃなかったんです。ご縁もあると思うし、リアクションを見たかったのもあって、そう仕掛けてみました。公式マークが付いてるから信じてもらえるかなって。でも、後からKAIに聞いてみたら、ちょっと怖かったらしいです。

KAI：怖かったです。でも、気になっちゃうタイプなので、10分も経たないくらいにすぐ返事しちゃいました。

U：交差点の前で待っていたら、後ろから声をかけられて、振り向いたらプリンを持ってKAIが立ってたんですよ。SNSで顔を出していなかったので、どんな子かまったく知らなかったんですけど「いい子だな」っていう印象を受けました。お店に入って座って話しても堂々としていたので、早速「THE BEAT GARDENに入らない？」って言ったら、そこはさすがにちょっと驚いて。でも、「THE BEAT GARDENなら」って返してくれたよね。

KAI：今までにも何度か事務所からスカウトされたことがあったので、今回も同じように事務所のスカウトかなと思っていたんですけど、まさかグループ加入のオファーだとは思わなくて。

U：みんなを呼んで、5人でそのまま一緒にご飯を食べました。

──ほかの方々は、なんとなく5人になる話は聞いていた？

U：俺が会いに行く段階では、KAIの声は聞かせてたよね。

藤掛昌斗：はい。電話がかかってきたときに「お、これは可能性あるぞ」って思いました。でも、俺は行ったとしても、手を出せないかもしれないって思う自分もいたんです。でも、会った瞬間、すぐに手を出してました。自分が最初に手を差し伸べてましたね。それくらいKAIの人柄の良さを感じたというか。

U：その瞬間、めっちゃ覚えてる。

渡部怜：何より声がきれいだって聞いていました。すごく礼儀も正しいし、2～3時間ぐらい一緒にご飯を食べていたら、5人でいることがすごく自然に感じるようになりました。

──Uさんとのお食事会だと思ったら、メンバー全員が集まるという。そのときには、もうkowta2さんの加入は決まっていたんでしょうか？

kowta2：決まってました。（発表までは）サポートという立場は変えず、控えめに過ごしていました。

U：メンバーになるというゴールは決まっていたんですけど、明確な日にちが決まっていなくて。kowta2にとって最高の舞台となるタイミングがワンマンライブだと思ったので、その準備を整えていたところで、KAIに出会ったんです。

──新たなメンバーとなる“声”をずっと求めていたんですか？

U：いや、求めていたわけではないんです。僕ら3人でこれからも曲を書いて、ここからまだまだ上を目指して歩んでいくことに意味があるっていうスタンスで、3人でやっていくつもりでした。もちろんkowta2がサポートDJとしていてもらうのは不可欠だったので、4人ではありますが。ただ、そのために新しいボーカルが必要だとは考えてはいなかったんです。

自分の勉強のためにも、ここ2～3年、たくさんの“声”を聞いてたんです。KAIの由薫さんの「星月夜」のカバーを聞いたときに、「これだ！」と思って。kowta2が入ることは決まっていたから、kowta2が許してくれれば、2人が入るっていう発表を同時にしたら話題になるだろうし、2人にとってもいいかもしれないと思って、kowta2に相談したら「もちろん、いいよ」って即答してくれました。

──8月半ばのお声がけから発表の11月までに、約3か月でがらりと変わったんですね。

KAI：怒濤でした。

U：やばかったね。KAIが加入してすぐにこの曲作りが始まり、歌詞を書きながら、撮影やフィッティング、あとは中止にはなってしまいましたが、Shibuya WWWでのお披露目ライブ用に既存曲を18曲ぐらい覚えて、コーラスのレコーディングもするという日々を送っていました。

KAI：でも楽しかったし、今もすごく楽しいです。

──5人で全国をまわるリリースイベントを行われていますが、実際、どういったお声や反応がありましたか？

U：発表直後は「なんで新しいボーカルを入れなきゃいけないの？」っていう意見も正直ありました。「3人が決めたことだから信じます」っていう意見と半分半分で、全部に目を通していたら、僕、ちょっと言いたくなっちゃって。ファンの皆さんとは正直に話し合える仲なので、誰かがグループから抜けるわけじゃないし、まだ何も聞いていない状態で否定しないでほしいって配信で言いました。僕らは自分たちがやりたい音楽をやっていくし、みんなが求めるものにももちろん応えていきたいし、そう思いながら一緒に歩んできたよねっていう気持ちと、これからもいい曲を作っていくっていう思いを伝えました。何回かリリイベをしましたが、今ではもう反対の声を上げる方は一人もいないですね。この2人が覆してくれて、ファンのみんなもすごく喜んでくれてます。まだ始まったばかりなので、ここから大きくなっていきます。

──新たなスタートとなる「Happy Ender」は、怜さんのラップも聞きどころですよね。なかなか怜さんのパートが出てこないと思っていたら、ラップで驚きました。

怜：もともとラップが好きで、そこから音楽にハマっていったんです。それこそ僕がラップしてる姿を2人（Uと昌斗）が見て、グループを組むことになったんですよ。3人から5人に変わるこのタイミングで、より自分の強みややっていきたいこと、THE BEAT GARDENというイメージから一歩離れて、僕個人の個性も出していきたいと思っていて。新しい自分を表現していきながら、それをTHE BEAT GARDENにも還元させたいっていう気持ちが、今、強いです。

──kowta2さんも怜さんも、もともとダンスをやられていたので、今後はそういう面がもっと見られそうでしょうか？

怜：はい、TikTokでは僕のラップパートに合わせてkowta2がダンスを踊ってくれています。

U：今までは“3人で1人のシンガー”として歌い、リスナーに寄り添うことが活動の軸にあったんですけど、これからは5人じゃないとできない音楽を表現していくと思います。イヤホンから聞える音楽をそのままライブでやるタイプじゃないので、ライブの面ももっと突きつめていきます。

──楽器も弾けて、ダンスもできて、DJもいて。いろいろな調理方法が考えられますね。この歌振りには何か意味がありますか？

U：曲を作っている段階で、僕は誰がどこを歌うかを完全に決めていました。ワンコーラスできる前から2番のAメロは怜のラップにすると決めていて、フローも1番と同時に制作していきました。あと、昌斗はファルセットが強いので、昌斗には2番のBメロでファルセットのみのフレーズを歌ってもらっています。今までだったら自分の声がサビのメインとなるところを、これからKAIもメインになることも考えています。僕のトップキーが、ちょうどKAIの下ハモになるので、ぴったりなんです。このレンジでハモれる男性グループは意外といないので、そこがひとつ、このグループの強みですね。

──タイトルは、“ハッピーエンドを迎える僕ら”という意味でしょうか？

U：僕の中では新しい結末っていう意味ですね。この5人になったという新しい結末を思い描いていくという意味でもあるし、たとえ毎日がつまらなくても、たった一つの出会いで新しい結末は迎えられることをリスナーに少しでも感じてもらえたらうれしいです。ここから先にあるものが絶望だとしても、仮に希望だとしても、俺は絶対にここにいるっていう意思表明をしています。5人でしかできない音楽と言いましたが、それが万人受けしないかもしれない。KAIとkowta2は覚悟を持ってグループに入ってくれたので、そういう覚悟を込めた第一声をKAIに歌わせています。

──託された部分を受け取って、KAIさんはどう感じましたか？

KAI：全体的に自分とリンクするところがたくさんあって、デモの段階で1,000回ぐらい聞きました。それぐらい自分が入り込める曲でした。今ライブで歌っているときも鳥肌が立つときがあります。

──ほかの皆さんも共感するところはありましたか？

怜：僕は「ありふれたおまえの生き方は誰かのジェネリックだ」っていう、ラップの部分が好きです。自分も5人体制になって変わりたいし、変わらないと意味がない、固まったものを現状打破したいっていう気持ちがあるので、ここが今の心情とすごくリンクしています。

──曖昧とアイマイミーマイン、会いと自分のI、身とMEなど、うまくできてますよね。

U：本当にうまいですよね。って僕が書いたんですけど（笑）。僕はKREVAさんが大好きで、KREVAさんのラップって語尾だけじゃなく文節全てが韻を踏んでるじゃないですか。母音がうまくはまったと思うし、〈会いたいMEまで会いに行けるんはこの身だけ〉なんかは、僕が一番思ってるぐらい、ほんまに気持ちがこもってます。実はラップを書くのもめっちゃ好きで、普段楽屋でフリースタイルしてます。結構、強いんですよ（笑）。

──昌斗さんのパートの〈強がった分 独りきりの夜は長くなるから〉も色々と考えさせられるところでもありますよね。3人が一緒に過ごしてきた時間が濃かったからこそ、Uさんが書く歌詞だけど、それぞれの言葉として聞こえる気がしました。

昌斗：等身大だなと思いました。今もまだそうなんですけど、本当にとんとん拍子じゃないので。でも、こうやって自分たちが楽しいと思えていることとか、KAIやkowta2が入ってくれたことに幸せを感じているし、幸せに変えていけるのは自分だけだとも思うので、自分たちに向けての応援歌でもあるし、自分たちが歌う意味がある曲だなって、すごく思います。

──学生のKAIさんは、音楽を仕事にしたいという夢は昔からあったんですか？

KAI：ずっと音楽が好きだったので、漠然とこれを仕事にできたらいいなとは思ってました。僕は小さいときから音楽に傾倒するミュージックキッズで、憧れのミュージシャンからもらった感動や幸せな気持ちを、僕も与える側になりたいってずっと思ってたのですが、それを実現させるためのビジョンが見えてたわけでも、それを形にする勇気もなかったです。背中を押してくれたのがU君、昌斗君、怜君、kowta2君だったので、本当に感謝してます。

──3人から5人になったことで新しく生まれたビジョンや可能性は出てきましたか？

U：今までステージを平面で見てたんですけど、高さを意識していなかったのでそこを工夫していこうかなと。例えば、DJ台の上に乗ってヘドバンするとか、DJ台からバク宙をするとか。横に4人並ぶとステージが狭くなるし、kowta2も前に出てくる場面があるので、空間をうまく使うために新しくお立ち台を作りました。あとはステージから客席に飛び込むとか。2人飛び込んでも3人ステージに残ってるので構成は成り立つのかなと。最悪5人全員が飛び込んでも大丈夫っていう（笑）。

KAIとkowta2が入ったことで、怜君も昌斗も新しいスイッチが入った感じがあるので、ライブで誰が一番ネジを飛ばせられるかもメンバー内で勝負です。いい意味で、過去のTHE BEAT GARDENを超えられるように2人には思い切り勝負を仕掛けてほしいですし、旧BEAT もNEW BEATには負けないですから。

日本で王道と呼ばれるように

──2曲目の「She」はKAIさんが作られた曲です。昔から音楽作りはされていたようですが、本曲はTHE BEAT GARDENのために書きおろした曲でしょうか？

KAI：THE BEAT GARDENで歌うために書いた曲なんですけど、今回はなじませるよりかは、なじんではみ出すというか。ちょっと異物感を残して、普段の自分のまま作りました。いつもは英語で曲を書いて、音重視なのですが、今回もサウンドは重きを置きつつ、いつもよりももっと気持ちが入りこめる言葉を入れました。メロディーができたときに、これは失恋ソングだなって感じたので、音がよりきれいに聴こえるような切ないリリックを慎重に選んではめていく作業を、いつもより時間をかけて、みんなにも聴いてもらいながら作っていきました。

──kowta2さんも楽曲制作に参加されたり、ライブでアレンジのきいたフリースタイルが見られたりしそうでしょうか？

kowta2：サポートDJっていう立場から、本メンバーなったので、そういう可能性はありますね。DJとしていろんなジャンルをかけてきた経験があるので、例えばヒップホップの中でもジャンルがいっぱいあるから「こういうのがいいんじゃない？」とか、「ここに動物の鳴き声を入れたらどう？」っていう会話はしましたね。

U：「このラップ、ださくない？」ってkowta2によく聞きました。kowta2は音楽の知識が一番深いので、kowta2が大丈夫って言ってくれたものは安心します。あと、実は次からグッズのプロデュースをkowta2にやってもらいます。

──この5人でどういったことを実現していきたいと考えていますか？

U：日本だとスタジアムツアーです。アジアや海外にも行きたいんですけど、まずはTHE BEAT GARDENらしい曲で、日本で王道と呼ばれるように頑張ります。ファンに寄り添う部分、ファンから求められる部分に耳を傾けることはすごく大切だと思ってますし、それも引き続きやっていきながら、自分たちがやりたい音楽も突きつめて、日本でメジャーになることが目標です。それが実現できたら、今、思い描いてる夢は全部叶うんじゃないかなと思ってます。

昌斗：3人のときからやりたいことは都度3人で話しながらやってきました。THE BEAT GARDENが作るものがひとつのジャンルという意識でやってきて、これからもその延長でやっていきますし、5人になったからこそできる隙間、余裕のようなものもでてくると思います。僕はライブに注力していきたいので、アグレッシブにやっていきますし、ライブでもっと楽器を弾きたいですね。

KAI：僕は最強のボーカリストになって最高の形でグループに還元することですね。絶対にスタジアムに立ちます。絶対に！

kowta2：僕は、DJといえばkowta2と呼ばれる存在になれたらいいなって思ってます。あとは……もっと客席に出ることですかね。DJはその場にいることが多いので、DJの概念をぶっ壊します。

怜：ラップという新たな表現方法をもっと探りたいです。クリエイティブを積み重ねたら、可能性がもっと広がるとも思っています。