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<インタビュー>カロルG、米ビルボード<ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024>が語る“もっと大きなことを成し遂げる”という決意

インタビュー

Karol G photographed by Vijat Mohindra on Nov, 11, 2023 at The Powder Room Studio in Los Angeles.

 「皆さん、こんにちは。私の名前はカロルGです。コロンビアのメデジンから来ました。【グラミー賞】に出席するのは初めてで、自分の【グラミー賞】トロフィーを持つのも初めてです」

 2024年2月に開催された【グラミー賞】の中継を見ていた、カロルGの数千万人のファンやフォロワー(インスタグラムだけで6,820万人)にとって、今年の<最優秀ムジカ・ウルバナ・アルバム>部門で受賞した時の彼女の謙虚な自己紹介は驚くべきことではなかっただろう。カロルGの率直さと正直さ、そして彼女の音楽の私的な性質は、彼女が多くの人に愛されてきた大きな要因だからだ。それでも、この賞は少し余計な感じがした。



▲KAROL G Wins Best Música Urbana Album For "MANANA SERA BONITO"


 33歳のカロルGは、並外れた2023年を過ごしたばかりだ。米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”でスペイン語アルバムで首位を獲得した初の女性アーティスト(史上2人目)(【グラミー賞】を受賞した『MAÑANA SERÁ BONITO』)となり、米ビルボードのイヤーエンド・チャートで女性ラテン・アーティストの首位を獲得(バッド・バニーとペソ・プルマに次ぐ順位で)、11月の【ラテン・グラミー賞】では<年間最優秀アルバム>と<最優秀アーバン・アルバム>を受賞した(後者は女性初の受賞)。

 カロルはまた、世界的なスタジアム・ツアーのヘッドライナーを務めた初のラテン系女性(そしてまだ数少ない女性の一人)であり、2023年のラテン系ツアー・アーティストの中で断トツの興行収入を記録している。米ビルボード・ツアー・チャート“Boxscore”によると、彼女は20公演で1億5,530万ドル(約234億円)の興行収入と92万5,000枚のチケットを売り上げ、米ビルボードの全ジャンルのイヤーエンド・トップ・ツアー・チャートで11位にランクインした。このリストで彼女より上位にランクインしているのはビヨンセ(55公演)とピンク(37公演)しかいない。(テイラー・スウィフトは2023年のツアー関連数値を報告していない)。

 本名をカロリーナ・ジラルドという彼女は、これでもまだ証明すべきことがあると感じている。彼女は、「多くの人がまだ私のことを知らないし、私が何をしてきたのかも知らないでしょう」と言い、それゆえ【グラミー賞】で、「はっきり示したかったのは……私がたくさんのプロジェクトを計画していて、もっと大きなことを成し遂げるために努力していることを知っていただきたかった」と説明している。

 米ビルボードによる【2024ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック・アワード】の<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>に選ばれたカロルは、スペイン語のみでレコーディングを行うアーティストとして初めてこの栄誉を手にした。彼女は、自身の見事な上昇気流を維持する意欲がさらに高まったと言う。カロルは、「“あれこれ部門の女性”というだけでなく、“この1年の女性”として受賞することはとても意義深く、奮起させられます。タイトルに恥じない1年にしなければならないという大きな責任を感じています」と語っている。ちなみに、カロルの姉であるジェシカ・ジラルドは弁護士で、ハビビ・エンターテインメントのノア・アサド、レイモンド・アコスタと共同で彼女をマネージメントしており、【2024ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック】の役員部門のリストに名を連ねている。

 カロルのチャート上位への道のりは、過去10年間ゆっくりと着実に歩んできたが、2022年に急加速した。【$trip Love】と題された全米アリーナ・ツアーは7,220万ドル(約108億円)を売り上げ、42万4,000枚のチケットを販売した。その結果、2023年2月に『MAÑANA SERÁ BONITO』がBillboard 200で初登場1位を獲得し、初のスタジアム・ツアーとセカンド・アルバム『MAÑANA SERÁ BONITO(BICHOTA SEASON)』のリリースにつながった。こちらは8月に3位に初登場した。

 2024年が始まって以来、カロルは“本当に毎日音楽を作っている”と語り、長年頼りにしているプロデューサー、Ovy On The Drumsを含むコラボレーターと仕事をしている。カロルとはツアー中によく会っているというOvyは、彼女の最新ツアーのラテンアメリカ日程にも同行する予定とのことだ。このツアーは2月8日、メキシコシティのエスタディオ・アステカをソールドアウトさせた3公演(プロモーターのOCESAによると、一晩あたり8万席)の初日から幕を開けた。カロルはラテンアメリカで24のスタジアム公演を行い(報道時点ではほとんどがすでに完売)、その後マドリードのサンティアゴ・ベルナベウ・スタジアムでの3公演を含む欧州の16のアリーナとスタジアムに移動する。

 カロルのツアー・エージェントであり、UTAのパートナーでもあるJbeau Lewisは、昨年米ビルボードに対し、「2021年は劇場でのヘッドライナー、2022年はアリーナでのヘッドライナー、そして2023年にはスタジアムでのヘッドライナーへと飛躍したのは、どのジャンルでも前例がありません。カロルをラテン音楽のリーダーとして語るのは簡単ですが、彼女の成功、特に今年は、テイラーやビヨンセと同列に語られるべきです」と述べている。

Vijat Mohindra

 カロルは、世界にファンが増えれば増えるほど、彼女が次に何をするかという期待値が上がり続けることを痛感している。「今年、私はまったく違うマインドでスタートしました。ビューティー・クイーンの返事のように聞こえるかもしれませんが、私が今いる場所は大きな責任を伴う場所であり、周囲にあるものをよく認識して間違いを犯さないようにすることが要求されます」と彼女は話している。

 その準備のために、彼女は冬休みの間しばらく休暇を取った。これは、“自分の精神状態を黒帯レベルまでものすごく高めるため”の努力と彼女は笑いながら言い、「自分の計画、将来のビジョン、そして(音楽を)リリースし、自分を表現する順序について、とても明確になっているんです」と述べた。

 ドラッグ・カルテルのリーダーだったパブロ・エスコバルの死後、国内が麻薬戦争に明け暮れたメデジンで育ったコロンビア人にとって、その責任感はとりわけ個人的で深い。「父はいつも私たちに、“我々には還元する義務がある。残り物を、という意味でなく、正しいことを”と言っていました」という彼女は、その考えから2021年にコン・コーラ財団を立ち上げ、教育や芸術活動を通じて弱い立場にある女性を支援している。

 彼女は、「スタジアムのステージに立つときに涙が出る理由の一つは、いつかすべてが終わってしまうとわかっているからです。(いつか)家で自分がNo.1だった頃を思い出すんです。それが人生というものです。でも私には、自分で建てた学校や、(財団を通じて)私たちが立ち上げたプロジェクトがあるでしょう。今日も、10年後も、50年後も、私たちが建てたもののおかげで(人々の)人生が変わっていくでしょう」と述べている。

 その一方で、ツアーをしながらもカロルはシングルを発表しており、“新しいサウンドを試すことにとても前向き”で、これは最近ティエストとリリースした曲「Contigo」を聴けば明らかだ。「私は働いているので、とても誇らしく感じています。本当に挑戦に立ち向かっていますし、前へ前へと突き進まなければなりません。自分はとても重要なラテン・アーティストかもしれませんが、まだ世界が前に広がっているんです」と彼女は話している。

By Leila Cobo / Billboard.com掲載

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