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<対談>尾崎世界観×あの 互いのファンの共通点そしてコンプレックス対処法を話し合う



尾崎世界観の悩みの羽インタビュー

 悩みをテーマに隔月オンエアしているラジオ番組『尾崎世界観の悩みの羽』。クリープハイプの尾崎世界観がリスナーやさまざまな職業の人の悩みを聞いていく本プログラムの6月12日放送回に、あのがゲスト出演した。

 ゆるめるモのメンバーとして活動後、アーティストとしてソロデビューしたあのは、現在モデルや俳優、タレント、ラジオパーソナリティなど、多岐にわたって活躍中。そんな彼女が抱える悩みに耳を傾ける尾崎世界観が差し出したアドバイスとは。

尾崎世界観:お久しぶりです。初めてお会いしたのはO-EASTであったイベントライブでしたよね? 6年ぐらい前ですかね。そこから『#ハイ_ポール』という、尾崎世界観が声を担当する深夜番組に来ていただきました。そして先日、YouTubeにアップされた『読むクリープハイプ』という企画で、「二十九、三十」の歌詞をあのさんに朗読していただいて。本当にありがとうございます。映像監督は、あのちゃんがすごく丁寧だったし、「ファンになった」と言ってました。

あの:最近で一番緊張した仕事でした。朗読も初めてだったし、しかも好きな曲の歌詞だったんで。

尾崎:朗読をやってみてどうでしたか?

あの:本当に緊張……大人がいっぱいいるし、「怖っ!」みたいな。

尾崎:活動のなかで何に一番緊張しますか? 人なのか、仕事の内容なのか。

あの:あんまり緊張しないんですけど、あの朗読の日はめっちゃ緊張しました。クリープハイプが好きっていうのもあったし、「自分の解釈とか自分の言葉の言い方で正しいんだろうか?」みたいな。そう考えたら、緊張に繋がっちゃいましたね。


尾崎:最近はバラエティーをやったり、音楽もやったり、いろんな活動をしていくことは自分にとってはプラスになっていますか?

あの:音楽やってる時とバラエティーやってる時は、全然違うので、あんまり何も……バラエティーは無傷みたいな感覚。何をしても。

尾崎:音楽に対してはどうなんですか? アイドルグループからバンドという形態になって、何か大きな違いはありますか?

あの:ありますね。ゼロから作っていくのはアイドルには絶対なかったことで、作る過程みたいものも楽しみたくてやってるんで、そこは違うかなって。

尾崎:じゃあ逆に、アイドル時代のよかった点はありますか?

あの:なんだろう……アイドルやってる時は本当にずっとしんどかったんですよね。お客さんとの距離は今より近くて、チェキ会とかでコミュニケーション取れるし、そういう意味では一人一人を対面で感じ取れるのはアイドルの良さでもあった。あとは、考えることが少なかったかもしれないです。6人の中の1人だから、「自分見られてないし」みたいな。

尾崎:当時から、バンドマンっぽいアイドルという見られ方をしていたけれど、その頃からバンドをやりたいっていう気持ちがあったんですか?

あの:最初にアイドル始めちゃったんですけど、元々はバンドをやりたかったんです。だからか、ロックっぽいとかバンドマンみたいと言ってもらえることも多いです。

尾崎:アイドルだけどそういう表現をしてたからこそ注目してもらえたのかもしれないし、かえってそれがよかったのかもしれないですね。最初からバンドをやっていたら今にたどり着いてない可能性もあるし。そもそも、バンドに憧れを持ったのはなぜですか?

あの:お父さんがバンドをやってギターを弾いてたから、小さい頃から憧れがありました。弾くのが楽しいと思ったりもしたし、そういう音楽で表現してみたいっていう願望はあって。

尾崎:ギターを弾いて歌うっていうのは、体と結びついてる感じがありますよね。自分も最初そうだったかな。簡単に弾けないから、すごく難しいものにとらわれながら、曲を作ったり歌ったりすることで、自分の足りなさがすごく緩和されるというか。最初はギターを弾けないということが救いでしたね。ギターを弾き始めた頃はどうでしたか?

あの:もう難しすぎて。アイドルの時に、「1~2週間後にステージでやるから、これやってきて」って言われたのがきっかけで、めちゃくちゃ複雑なコードで、ワケわからなくて。

尾崎:その時に歌った曲は何だったんですか? 自分たちの曲?

あの:アイドルの曲でした。自分たちの曲なんだけど、ギターが1人だけいるみたいな、よくわかんない構成で。プロデューサーも、それでやらせたかったんだと思うんですよ。でも、全然できなくて。必死に練習して、一応ステージには立ったけど、(ギターに)嫌なイメージ、難しいっていうイメージがついちゃって。最初から挫折してました。

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尾崎:アイドルグループの中にいると、ギターを弾いてはいるけれど、“本当にギターを弾いてる人”として見てもらえないというか。「頑張ってるね」という目で見られるから、フラットな目じゃないと思う。今はバンド活動をしていて、アイドル時代のお客さんとの違いを感じますか?

あの:ちゃんと曲を聞きに来てくれてる人が圧倒的に増えたなって。もちろん「会いたい」とかで来てくれる人もいるけど、「この曲に救われてます」って言ってくれる人が増えたことが、バンドを始めて、ソロ活動してよかったって思います。

尾崎:どういうところで一番それを感じますか? 今はお客さんが声を出せないし、限られた中でアーティストに気持ちを伝えようとしてくれていると思うけれど。

あの:泣いてくれる人が多くて。自分が生きてるだけ、普通にしているだけで救われたって。それこそDMとかから、「あのちゃんがステージに立って歌を届けてくれるだけで、明日も笑って生きていけるよ」って言われたりすると、やっぱりこっちも救われる。

尾崎:クリープハイプにもそういうお客さんがいてくれて、不思議な気持ちになります。泣くって、そんな簡単にできることじゃないし、自分はそもそもできないから。何かを見て涙を流すって、本当にかなりのレベルの表現をしていると思うし、それを見ると、「このままじゃいけない、もっと頑張らなきゃな」と毎回思いますね。

 でも、そういう人を見て、“そっち系のお客さんがいるバンド”だと思う人が結構いて。「クリープハイプのお客さんはメンヘラでしょ」とか、「病みたい気分だからクリープハイプ聴こう~」とか。なんでそんな言葉が出てくるのかなって。あまり感情を動かしたことがない人なんだなと思います。例えば1から10まで感情があったとしたら、9とか10に行ったことのない人はそれが怖いし、そういう人を見るのも怖い。だからそれを揶揄することで、自分を守っているのかなと思います。

あの:めっちゃ思いますね。僕のファンも本当にそう言われてばかりで、かわいそうだなって。あのちゃんのファンをしてるだけで、「メンヘラ」とか「病みたいだけ」とか、結構けなされてる場面が多くて、こっちもしんどくなっちゃって……ごめんっていう気持ちになるけど、それでも応援してくれて、自分の音楽に救われたっていう事実をちゃんとその子の中で肯定できるような活動をしていけたらいいなと、僕は心の奥では思ってる。

尾崎:確かに。ごめんという気持ちはもちろんあるけれど、謝っちゃうと、それを否定することにもなる。でも、そういった意味では、バラエティーで活躍しているのを見て、その魅力に世間が気づいているのは、ファンの方々にとっても救いなのかなと思いますけどね。「あのちゃんのライブ見て泣いてる~」と言っていたような人が「あの子、面白かった」と言っていたりもするだろうし。でも、これは一生向き合わなければいけない問題だと思う。こういう音楽をやっているから、そういうファンがいるという勝手な決めつけとどう付き合うか。ただ、絶対に分からないと思うんですよね、外から見て、勝手に箱に入れようとするような人達には。

あの:そうなんですよね。

尾崎:仕事をしていくうえで、共演者やバンドメンバー、大人もいっぱいいるなかで、今は思うところはありますか?

あの:僕を信じて接してくれてるっていうのは日々感じてますね。勝手に思ってるだけかもしれないけど、「信じてくれてるんだな~」って思いつつ、自分もその気持ちに返さないと、と思うことはあります。

尾崎:そうか、じゃあいい感じでやれているということですよね?

あの:うん、いい感じ。

尾崎:今、ソロとバンドで2つの音楽活動をされてますが、どういう棲み分けなんですか?

あの:バンドはわりと自由に好き勝手系で。ソロはチームで「こういう曲がいいんじゃないか」とか話したりすることもあって、自分がやりたいことを具現化してくれるし、いろんな人と一緒にやって、自分の可能性を他のアーティストさんに広げてもらうというか…「楽しい!」みたいな感じです。

尾崎:バンド活動をやるうえで、付き合っていく人には、今まで他人に対して思ってきた感情と違ったものが芽生えたりするんですか?

あの:うーん、やっぱり人と人なんで、難しいし、めっちゃくちゃ衝突する……。

尾崎:衝突することもあるんだ。それはすごくいいことなのかもしれないですね。

あの:尾崎さんは衝突することありますか?

尾崎:今はもうないかな。メンバーも気を遣ってくれているというか、物事が決まってきているというか。それは悪い意味じゃなくて、やることが決まってきて、それぞれがそれを突き詰めて。「あ、これ練習してるな」ってリハで見ただけでわかるし。メジャーデビューした直後は、自分ができていないことをメンバーにぶつけてしまったこともあって。単純にみんな下手だったから。バンドって、上手くなるのが面白いんですよね。やればやるほど上手くなる。あと、お客さんに恵まれてるのも大事。ライブ中はお客さんをずっと見ていたほうがいいですよ。メンバー同士を見てパフォーマンスをする人たちもいるけれど、まったく興味なくて、クリープハイプはお客さんばかり見ていますね。

あの:確かに、みんなまっすぐ前を向いてる。

尾崎:一番勉強になるし、そこだけ見ておけば間違いないと思う。

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尾崎さんが僕の悩みを曲にしてくれたら
僕は救われます(笑)

尾崎:それでは、あのちゃんが今悩んでいることを聞いてみたいと思います。

あの:うふふ(笑)。いっぱいあるんですけど……いっぱいあるのをまとめちゃうと、大変生きづらい(笑)。

尾崎:あはは!

あの:もともと声にコンプレックスがあったんですけど、最近テレビとかに出るようになって、「声が受け付けない」とか「喋らないほうがいい」とか言われるようになってから余計……人格否定とかもされるんですよ。人と話すとかコミュニケーションも苦手だったのに、余計苦手になってきてしまって……。

尾崎:ものすごく応援してくれる人と、めちゃくちゃ嫌な奴がいるということですね。具がないんだよね。サンドウィッチのパンだけあって、真ん中の具がほしいんですよね(笑)。

あの:そう! 極端なんですよね。

尾崎:それはずっとついて回るよね……。

あの:自分を肯定できるほど、声に魅力を感じていないし……。あと言葉とか、SNSでの発信とか、テレビでの発言、ラジオもそうですけど、言葉が全部曲がって伝わっちゃうんですよ。それがすごく嫌で。言葉が曲がって伝わってほしくないからこそ、まず頭で考えちゃって、ストップしちゃって、なかなか言葉が出てこなかったり、言いたいことをはっきり言えなかったり……言葉を大切にしているのに、言葉に苦しめられちゃう感覚もすごくあって。

尾崎:大切にしているからこそね。特に今は簡単にネットニュースにもなるし……。

あの:尾崎さんは声のことを曲にしてたり、昔Twitterも一回やめたりしたことがあったじゃないですか。そういうのがあるから、今日は尾崎さんのカウンセリングを受けにきた、みたいな気持ちで(笑)。尾崎さんって、僕とかファンの方たちが普段言えないようなことを歌詞にしてくれてて。自分自身すぎて、自分じゃ歌詞に昇華できないから、尾崎さんが僕の悩みを曲にしてくれたら、僕は救われます(笑)。

尾崎:あはは。確かにね。

あの:ファンの方も、たぶん救われるんじゃないかなと思って。今日はテレビとかじゃ言わない悩みを話させてもらってます。カウンセリング。

尾崎:カウンセリングね。一緒に悩むことしかできないんだけど。悩みを解決するといっても、ズバッと言って「そうですね」ってなる人もいるけれど、自分はそうじゃない。同じところに分かってくれる人がいると安心するというか、修学旅行の日に、夜遅くまで起きてる同級生を見て安心するような感じ。そうか、声に対する悩みは同じですね。

あの:うん。

尾崎:音楽もやりながらテレビを続ける、今はそれがいいような気がしますけどね。テレビに出れば、きっと違和感や悔しさもあると思うから、それを音楽に反映するのはどうですか? これまでに、テレビに出て得たものを何か音楽に反映させることはありましたか?

あの:全部だいたい鬱屈としたものですね。イライラとか、そういうものは音楽に昇華できるけど、ほかは結構割り切っちゃってる部分もある。批判とかを音楽に落とし込むようにはしてるけど、そこまでうまく昇華できている気がしていなくて。尾崎さんは、そういうの上手いから……(笑)。

尾崎:上手いというか、上手くなっていっちゃう(笑)。「よし!」って思うのは1回、2回くらいまでで、「社会の窓」っていう曲を作った時は「やれたな」って思ったけれど、あれ以降、その時の感動はもうないんです。悔しいし、言われるのも腹が立つから、それを曲にはするけれど、流れ作業みたいになっちゃう瞬間もあって……。あのちゃんにも一回書いてみてほしい。そういう歌詞や言葉を、ファンは何より待っているだろうし。楽器と一緒で、言葉も上手くなっていくから。何回も何回も書いて、それでも書ききれていない気持ちがあったら、それをもっと分析する。どれだけ頑張っても書ききれないんだけど、だからこそ100%はないということに自分も救われています。

あの:なるほど。

尾崎:これだけやってきても、まだまだ足りないって思っていて。言葉って、不自由に思うことも多いけれど、同時にすごく面白いんです。

あの:音楽に落とし込んでも満足できてないっていうのは、どんだけ長くやってもあるってことですよね?

尾崎:ありますね。それが大事だと思う。書いてはいるけれど、それでもたどり着かない。もう水みたいな感じで無限にある。それはいいことだと思いますね。あと、バンドメンバーとのケンカもほどほどに……いい具合で保っていられるといいけど。

あの:そうですね(笑)。

尾崎:カウンセリングもそろそろ終わりの時間が近づいてきましたが、どうでしたか?

あの:いろいろ聞けてよかったです。スッキリしました(笑)。

尾崎:ありがとうございます。よかったです(笑)。

あの:満足しないことが、いいことだっていう。声はコンプレックスですけど……。

尾崎:本当に悔しいけれど、これしかないし。でも、たまに「じゃあ、なんでこんなにお客さんが来てくれるんだよ」って思うこともあって。その不思議な感覚に生かされているのかもしれない。引き続き、お客さんに感謝しながら頑張っていきましょう。あと、骨も大事に。

あの:はい。骨を大事にします(笑)。すみません、こんな顔で~(笑)。

尾崎:早く完全体になってほしいです。ありがとうございました!

あの:完全体でまたお会いしましょう。ありがとうございました。

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