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<インタビュー>ソングライター2人が語る“Homecomingsっぽさ” 『失恋めし』主題歌でギターポップに回帰した理由



 Homecomingsが、1月14日にニューシングル「アルペジオ」を配信リリースする。本楽曲は、リリース同日よりAmazonプライム・ビデオにて配信がスタートするドラマ『失恋めし』の主題歌として書き下ろされた、心がふっと軽くなるようなミドルナンバーだ。

 今回、ビルボードジャパンでは「アルペジオ」のソングライティングを担当した畳野彩加(Vo./Gt.)と福富優樹(Gt./Cho.)にインタビューを実施。バンドのルーツである「ギターポップ」に回帰した理由や、普段の楽曲制作について、そして“失恋めし”エピソードを語ってもらった。また、2022年初めのリリースということで、メジャーデビューを果たした2021年のことも振り返ってもらった。

「アルペジオ」でギターポップに回帰した理由

――「アルペジオ」はドラマ『失恋めし』の主題歌として書き下ろした曲なんですよね。

福富優樹(以下、福富):はい。まず、お話をいただいてから、企画書を読み込んだり自分でいろいろ調べたりしながら歌詞を書いて。その歌詞を畳野さんに共有して、「こういう曲調がいいんじゃないか」と相談しながら進めていきました。

畳野彩加(以下、畳野):「ギターポップ」というワードが上がっていたよね。そういう曲を1曲作ってみようか、というところからイメージを膨らませていって。

福富:そうそう。作曲の作業を畳野さんにやってもらって以降はみんなでスタジオで合わせてアレンジを詰めていくのが今までのやり方だったんですけど、2020年以降は制作の形を新しくして、それぞれが家でフレーズを考えてくる形になりました。この曲もその作り方ですね。

▲ドラマ『失恋めし』予告編

――昨年リリースしたアルバム『Moving Days』もそういう作り方でしたよね。

福富:この作り方が自分たちに一番合っている気がしています。ミュージシャンミュージシャンしている4人じゃないので、スタジオで会話しながらセッションしていくみたいなことがあんまり得意じゃないんですよ。

畳野:スタジオだと自分が演奏しているから客観的に聴くことができないじゃないですか。それよりかは、自分で演奏したものを録音して、その場で確認して、客観的に判断して、一人ひとり練ってくるという方が多分性格的に合っているのかなと思います。

福富:あと、4人でセッションしていると足し算になりがちなんですけど、このやり方だと引き算ができるんですよね。それが面白い。スタジオで作った場合、その音源をレコーディングスタジオに持っていって、「結局これ要る? 要らん?」みたいな判断を後からするんですけど、今のやり方だとその判断をアレンジの時点でできるからレコーディングもスムーズですね。自分たちにとっていろいろなことが理に適っている気がします。

――あと「ギターポップ」というワードが出てきましたが、『Moving Days』での幅広いアプローチを経て、シンプルなギターポップに帰ってくるのはバンドにとって自然な流れだったのでしょうか?

福富:そうですね。ギターポップはアルバムでやっていなかったことでもあるし、でも自分たちのルーツでもあるので「そういえば最近やってなかったなあ」という感じもあります。あとは、このドラマにはギターポップが合うんじゃないかと思ったからですね。花屋さんが出てくるんですけど、僕の中では花屋さんって何となくギターポップのイメージなので。

畳野:とはいえ、ちゃんと新しさもあります。なるちゃん(石田成美・Dr./Cho.)は自分のドラムに新しいものをどんどん取り入れていっているので、今までにやったことのあるリズムだったとしても、新鮮さのある感じになってる。ほなちゃん(福田穂那美・Ba./Cho.)のベースは感覚的にやっている部分もあると思うんですけど、レパートリーが増えているし、音符の感覚がどんどん豊かになっているような感じがしていて。

福富:2人が、新しい要素や僕らでは思いつかないフレーズをちゃんと入れてくれるんです。

畳野:そういう新しい感覚を取り入れながら、デモがどんどん完成されていくのがすごく楽しかったです。

“Homecomingsっぽさ”を支えるボーカルスタイル、曲作り

▲Homecomings「アルペジオ」

――この1年でアウトプットの幅が広がった実感もあるのでは?

福富:やれることがいろいろと増えてきたなかで、Homecomingsは、‟Homecomingsっぽさ”があるようでないバンドなのかなと思いました。逆に言うと、いろいろな曲があることこそが“Homecomingsっぽさ”なのかもしれないです。

――確かに、どんな曲調でもHomecomingsの曲として受け取れる感じはありました。そう思える理由はいろいろあると思いますが、一つの大きな要因が畳野さんの歌だと思うんですよ。感情を放出するタイプのボーカルではないけど、リスナーからすると「歌がいつでもここにいてくれる」「だから安心できる」という感覚があって。

畳野:嬉しいです。

――そのボーカルスタイルはどのように培っていったものなんですか?

畳野:何かをモデルとしているわけではなく、自然と今の形に収まったような感じですね。だから「こうしています」と上手く言えないんですけど、感情的に歌い上げるスタイルではないだろうなという感覚は何となくあります。他の方から嬉しい言葉をいただいて「あ、そうなんだな」と実感したり、その時々で曲に合わせた歌を歌っていったりするなかで、今のスタイルが定着してきているのかなと。『WHALE LIVING』(2018年リリースの3rdアルバム)で初めて日本語詞の曲を作って、あの頃はまだ探り探りだったんですけど、『Moving Days』を経て何となく自分のスタイルが見えてきたような感じはします。

――福富さんは、歌詞を書く時「畳野さんの声で歌ってもらうなら」ということも考えていますか?

福富:あ~、どうだろう……。声についてはそんなに意識していないかもしれないです。声は時期によって結構変わるからね。

畳野:そうですね。私は結構変わっちゃうタイプなので。

福富:ただ、彩加さんのメロディに乗ることはすごく意識しています。インタビューだと伝わりづらいと思うんですけど、彩加さんの書くメロディってこういう感じなんですよ(腕を前に伸ばしてから元に戻すしぐさをしながら)。

畳野:言葉にしてよー(笑)。

福富:(笑)。何て言ったらいいんやろ……上にすとんと上がっていくというよりは、くるんとカールするような感じ? リズムにせよ音程の上がり下がりにせよ、メロディの節々にカールする部分があるので、それを意識しながら歌詞を書いています。ここでこういう言葉を使ったら多分クルッとなるんやろうな、みたいな。

――そのカールしている部分というのは今回の「アルペジオ」にもありますか?

福富:この曲で言うと、例えば〈ポーズ〉という言葉がそうですね。音が上がりきらないというか、ちょっとカールしているじゃないですか。

――なるほど、少し分かった気がします。

畳野:私は曲を書く時、なるべく今まで行っていないところに行くように意識しているんですよ。毎回毎回、それは絶対に意識していて。メロディにしても、コード進行にしても今まで使っていないものをどこかしらに入れる。それが今言っていたような“カールしている”感じに繫がるのかな?

――因みに“今まで行っていないところに行きたい”という意識はどういった想いから?

畳野:これはHomecomingsの姿勢にも繫がる部分なんですけど、制作となると、何か新鮮なことがないと自分の中であんまり膨らまなくて。私自身「あ、これは面白いかも 」というアイデアがないと前に進めない性格なので、メロディやコードが新しいところに行きたがるのもその一環だと思いますね。

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2人の“失恋めし”は?

――ところで、福富さんの“失恋めし”は、同志社大学の近くにある松乃屋というお蕎麦屋さんで食べた焼きそばなんですよね。

福富:はい。京都ってチェーン店ではない街のお蕎麦屋さんがいっぱいあるんですよ。僕は温かいかけそばが好きだったので、お昼は毎日それを食べていたんですけど、夜は当時付き合っていた方と一緒に違うものを食べに行って。夜ごはんにかけそばは何か違うって感じ、わからん?

畳野:わかる。まあ、何も乗ってないしなあ。

福富:そうそう。だからパートナーの方とかけそばを食べることはあんまりなかったんですけど、その人と別れた時に「夜でも食べられるなあ」と思って。それで大学の近所のお蕎麦屋さんに行って「かけそば下さい」と言ったら焼きそばが来たんですよ。注文を聞き間違えられたみたいで。それって誰かと一緒にいたらめっちゃ面白いじゃないですか。でも一人やし、そのまま食べるしかない。その感じも含めて寂しくもなったし……しかもその焼きそばがめっちゃ美味しくて、「お蕎麦屋さんやけど焼きそば美味しいんだな」という発見もあって。その時のことをすごく覚えているんですよね。失恋せんかったらこんなことなかったなあと思うので、もしも僕が1話脚本を書くとしたらその話になるんやろうなと思います。

――畳野さんには“失恋めし”ありますか?

畳野:考えてみたんですけど、思いつかなくて……。

福富:恋愛に対する考え方でよく“名前をつけて保存”か“上書き保存”かって言うけど、それで言うと畳野さんは“上書き保存”タイプというか。

畳野:わりとすぐにアップデートしちゃいます。携帯も買い替えちゃうし。

福富:携帯を買い替える時って普通引き継ぎをしますけど、畳野さんはあれをしないんですよ。クラウドに保存しているわけでもないから、昔の写真が一切なくて。

畳野:そうじゃないと新しくなった感じがしないじゃないですか。携帯を新しくしたのに中身が一緒なのが気持ち悪くて。

福富:そういう意味では僕らって真逆かもしれない。僕は全部憶えておきたいと思うタイプなので、写真も残すし文章に書くこともあるけど、畳野さんは過去のことを振り返ったり感傷に浸ったりする感じじゃないよね。

畳野:そう。今を生きているので(笑)。

福富:それに、僕は歌詞を書く人だから、もしかしたら自分から感傷に浸りにいっている部分もあるもかもしれないし。

畳野:確かに。それはあるかもしれないね。

2021年は「バンドとしてちゃんと成長していけた1年」

――「アルペジオ」が2022年最初のリリースですが、2021年はHomecomingsにとってどんな1年でしたか? 

福富:いい人にいっぱい出会えた1年でした。メジャーデビューできて、関わる人が増えていったのが楽しくて嬉しかったです。自分たちはずっとインディーっぽいところでやってきたし、インディーっぽいものがそもそも好きやし、「これは今まで自分たちが大事にしてきたものと違う」「でも少しは我慢しないといけない」みたいな感じで嫌な思いをすることもあるかもしれないと身構えていた部分もあったんですよ。だけどそういうことが全くなかった。それはやっぱり周りのスタッフの方々のおかげだと思いますし、コロナ禍ということで限られた形でのプロモーションだったのも大きかったのかな。身構えていた分それが嬉しかったし、ありがたかったです。

畳野:本当だったらもっと忙しい1年になったかなと思うんですけど……。

福富:ライブが中止になったりもしたからね。

畳野:そう。ツアーも東名阪だけで、いつもはもっといろいろな街に行くんですけど、2021年はそれができなくて。CDをリリースしたあとのお店まわりもそう。売っている場所を実際に見て「あ、発売したんだな」と実感するということが今回はまったくできなかったんですよね。だからいつもと違うリリースではあったんですけど、ラジオとかで自分たちの曲を流してもらえたり、今この状況でできる範囲のことをすごくやってもらって。実際に自分が足を運ばなくとも、アルバムが広まったことを実感できたのは、メジャーのスタッフさんのおかげだなと思います。
 あと、ライブが減っても、メンバーと一緒にいる時間が減らなかったのがよかったですね。制作をしたり、プライベートでも4人で一緒にごはんを食べてくだらない話をしたり。なので、コロナがありつつも「何もできなかった」という感じではなく、バンドとしてちゃんと成長していけた1年だったと思います。

――3月から全国ツアー【Somewhere In Your Kitchen Table】を開催することが始まりますね。ツアーは約3年半ぶりだとか。

福富:そうなんですよ。今回のツアーで行くところは最近なかなか行けていなかったところばかりなので、「久しぶりに会いに行く」という感覚が強いですね。去年唯一欠けていたことと言えば、聴いてくれている人と直接会う機会が少なかったことなので、今年は少しずつそれができればと。無事に開催できたらいいなと思います。

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