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2018/12/28 10:00

音楽ビジネス×スタートアップ、Techstars Musicが約300名の音楽・エンタメ業界関係者向けに可能性を語る

 世界各地の音楽関連技術のスタートアップ企業を支援しているTechstars Musicの最高責任者ボブ・モクジドロウスキー氏が来日し、12月10日に開催された<レコチョク カンファレンス2018>で、音楽ビジネスとスタートアップの可能性についてプレゼンテーションを開催した。

 Techstarsは、世界の45あまりの国で起業家を支援するプログラムを運営するアクセラレーターだ。Techstars全体で今までに1,600社がプログラムに参加しており、そのうち86%の企業が今も活動を継続しているという。そして、様々な業種に支援しているTechstarsの中で、音楽に特化したプログラムを実施しているのがTechstars Musicだ。

 Techstarsの特徴は、大手の企業と協業しながらアクセラレートしている点だ。音楽関連スタートアップを支援するTechstars Musicでは、ソニー、ワーナーミュージックグループ、レコチョク、エイベックス、Bill Silva Entertainment、QPrime、Royalty Exchange、Concord Music Group、Silva Artist Managementが協業企業として参加している。モクジドロウスキー氏は、今後「年間で2~5件の優秀なディールに参加することで、2020年末までには音楽関連スタートアップにおいて世界最大の投資実績を作っていきたい」と意気込みを見せた。なお、Techstars Musicが投資対象とするのは、音楽ビジネスを展開している企業ではなく、音楽業界の問題を解決することができる会社だという。スマートフォンが広く普及した今、才能の発掘からファンとの交流まで、市場を世界へ広げることが可能となった。同氏は、「ブロックチェーンや、ジェスチャー、トーキング、AIなどの技術を使うスタートアップに投資することで、既存のチケット販売やライブビジネスの課題を解決していく」と述べた。

 Techstars Musicのもう一つの特徴は、拠点をロサンゼルスに置きながら世界中の企業に投資をしている点だ。同氏は「素晴らしい人材は、世界中に平等に存在しているが、資本はそうではなくチャンスは不平等だと言えるだろう。資本には限りがあり、出資後にどこまで投資し続けられるかは課題が残るが、発展中の国や地域に対して、音楽業界の問題解決やマーケットの成長に向けて、積極的、そして継続的に投資をしていきたい」と締めくくった。

 また、モクジドロウスキー氏のプレゼンテーションの後、エイベックス(株)の加藤信介グループ執行役員、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントの古澤純シニアマネージャー、(株)NTTドコモ・ベンチャーズの稲川尚之代表取締役社長が、それぞれ登壇し、スタートアップへの投資実績や、社内のアクセラレーションプログラムを紹介。最後に、(株)レコチョクの加藤裕一社長は「テクノロジーが全ての産業において進化する中、音楽業界においても重要なビジネスパートナーになってきている」と述べ、2019年はデータベース、メディア、レコメンド、マネタイズを鍵にスタートアップ企業との連携や協業も本格化、また、新たなサービスのローンチも予定していると締めくくった。

 日本でも、エンタテインメントをテーマにしたハッカソンや、オープンイノベーションが活発化しているが、加えて既存の大企業とスタートアップ企業の協業が、さらなる発展のキーになるということを感じさせられるプレゼンテーションだった。