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2025/08/08 18:00

Mel「人生の支えになってくれたら」知られざるエピソードゼロ~1000万回再生突破の背景~2ndフルアルバム『LIFE』制作秘話公開

 2020年に音楽活動を開始し、2021年1月にリリースした2ndシングル曲「彗星と街」はストリーミング総再生回1000万回再生突破のヒット曲に。以降、チルなビートと優しい声で言葉を紡ぐ次世代チル系シンガーとして注目を集めてきたMel(メル)が、2ndフルアルバム『LIFE』を完成させた。

 3か月連続配信されてきた「To me」「フライデー」「神様の空想論」に加え、ドラマ『25時、赤坂で』エンディング主題歌「東京ナイトロンリー」や新曲7曲含む全12曲を収録した本作。そのリリースタイミングで、Melが一体どんな音楽ストーリーを歩み、自らの人生を音楽に乗せてメッセージへと昇華した『LIFE』を完成させるまでに至ったのか。彼本人の言葉とともに紹介したい。

<想定外だったアーティスト人生~「彗星と街」誕生秘話>

 Melはいわゆるプロのアーティストを目指してデビューに至ったアーティストではなかった。音楽を好きになった人の多くがそうであるようにメディアから流れる曲を聴いて、それをきっかけで音楽に興味を持ち始め、いろんなジャンルやアーティストを知っていく中で感化され、自分でも曲をつくってみたいと思い始める。

 「小学生のときにSEKAI NO OWARIさんが好きになって。『ミュージックステーション』で「眠り姫」という曲を披露していたんですけど、一目惚れならぬ、一聴き惚れをしまして。歌詞とかピエロがいるようなファンタジーな世界観が直感的に刺さったんですよね。それをきっかけに音楽を好んで聴くようになりました。中学生ぐらいからはボカロを聴くようになって。テレビで「千本桜」が取り上げられたり、じんさんのカゲロウプロジェクトが盛り上がっていた時期で、そこから派生していろいろ聴いていく中で「こんなにハチャメチャにやっていいんだ?」と衝撃を受けたんです。そのタイミングで歌を歌う楽しさも知っていきました。

 自ら音楽をつくろうと思ったのは、高校の友達の影響でヒップホップやR&Bも聴くようになったんですけど、その流れで高3のときにRin音さん、クボタカイさん、空音さんといったラッパーに感化されたんです。韻や言葉遊び、音への乗り方とかの面白さを知って、そこで得たものは今の自分の音楽にも活かされていると思いますね。」

 そんなリスナーとして様々な音楽に魅了されていく中で、自らも曲を作り始めたMelだが、その時点では「音楽で生きていこう」的な意識はなかったようだ。では、いかにしてMelは多くのリスナーに愛される楽曲を生み出し、自分でも想像だにしていなかったアーティストとしての人生を歩むに至ったのだろう。

 「音楽はあくまで息抜きというか、趣味だったんです。なので、映像系の専門学校に通っていて。その時期になんとなく音楽配信をやってみたら「彗星と街」という曲がTikTokやYouTubeで想定外に聴かれるようになって、気付いたら1000万回再生。そこからですかね。事務所の方から声がかかって、アーティストを自認するじゃないですけど、本格的に音楽の道にのめり込んでいったのは。なので、あのタイミングで「彗星と街」が跳ねていなければ、そのまま映像の道に進んでミュージックビデオなど制作する側のクリエイターになっていたかもしれないです。

 「彗星と街」は、ガレージバンドで音声をペタって貼って、イヤホンマイクを垂らして歌ったものを録音したような、本当に趣味でつくった楽曲だったんですよ。だから、再生回数がどんどん伸びていった状況には、本当に驚きました。ミュージックビデオも誰かに頼むお金はなかったので、地元の近場でいろんな写真を撮ったりして、ちょっとフィルターかけたりして。完全なる手作りだったんですけど、でもそれが結果的にマッチしたと思うんですよね。あと、ちょうどその頃にRin音さんとか、sloppy dimさんとかのチルいラップが流行っていたので、その流れもあって注目していただけたのかなと。

 「彗星と街」以前は、それこそSEKAI NO OWARIさんに近しいファンタジーな歌詞を書くのが好きだったんですけど、友達に「星とか夜とか題材にして、ちょっとオシャレな曲をつくってみたら? 声質的にもそっちのほうが合っていると思う」みたいなことを言われて。自分も面白そうだなと思ったので、いろんな人のそういう感じの曲を聴いたりして、それで今までとニュアンスを変えてつくってみた楽曲が「彗星と街」だったんですよね。なので、その友達のアドバイスがなかったらあの曲も生まれていなかったし、自分の音楽性も違っていたかもしれない。」

<大転機となった初ワンマンライブ「実在したんだ?」>

 「彗星と街」の大ヒットをきっかけに、本格的にアーティスト人生を歩んでいくことになったMel。その後も次々と楽曲をリリースし、着々とファンも増やし続けていくのだが、Melの姿を知る人はほとんど存在しなかった。彼のビジュアルイメージは、友人でもあるイラストレーター・しろくらげが手掛けたアイコンのみ。ライブもしない姿勢を貫いていたのだが、2024年春に大きな転機が訪れる。

 「大々的なライブは、2024年4月28日のワンマン【Mel 1st ONEMAN LIVE『Fiction→Non-Fiction』】が初ですね。なので、すごく緊張しました。学生時代から人前で何かを披露するようなキャラクターではなかったので、最初の数曲は自分のことで精一杯。でも、だんだん「楽しいな」と思えるぐらい余裕が出てきたあたりで、自分の曲を聴いてくれている人たちがこんなに来てくれている」と感動して。素直にめちゃくちゃ嬉しかったです。それまでは「ライブはしません」みたいな人だったんですよ。でも、事務所の人から「Melくん、ワンマンライブとツーマンライブ、どっちがやりたい?」と2択を迫られて。「やらない」という選択肢がなかったんです(笑)。なので、半強制的ではあったんですけど、結果的にやってよかったです。今は「ライブしたい」って思える人になれたので。

 それまでは、曲を聴いてさえもらえれば、僕自体が表に出て行かなくてもいいと思っていたんですよ。でも、今は自分の曲を愛してくれている人たちに会いに行くのも大事だなって。ちなみに、1stワンマンのときは、お客さんもそれまで僕の姿を見たことがなかったから「実在したんだ?」みたいな空気だったんです。もしかしたら「誰? スタッフ?」と思った人もいたかもしれない(笑)。でも、1曲目を歌った瞬間にみんなの空気が変わったんですよね。「あ、本人だ」って。そういう意味でも、表に出て行ってよかったです。

 今まで公開してきたミュージックビデオは、僕が映っていても横顔よりちょい後ろから撮っている、なんとなく顔が分かるぐらい感じだったんですけど、今回のアルバムリード曲「Week」のミュージックビデオは、たまにがっつり映っているんですよ。今はそこにあまり抵抗がなくなっていて。顔出ししたほうがいろいろ動きやすいのかなと思うようになりました。ストーリー性のあるミュージックビデオなので、ちょっと演技チックみたいなことにも初挑戦していますし、きっとファンの皆さんも楽しんでくれるんじゃないかと思います。」

<この『LIFE』が人生の支えになってくれたら嬉しい>

 ライブでファンと出逢い、直接的に音楽コミュニケーションを取るようになったことで、Melの音楽人生は変わっていく。「彗星と街」以降の夜に家の中でひとり聴くチルのイメージ。それは軸として大切にしつつも、今回の2ndフルアルバム『LIFE』は外へ飛び出していくようなイメージの楽曲も多く、夜だけでなく朝や昼に聴いても心地好い印象を受ける。アルバムリード曲「Week」に関しては、アッパーな応援ソング。この音楽的かつ表現的な広がりには、彼自身の人生観が大きく反映されているようだ。

 「それこそ「Week」もアッパーな曲調になっているんですけど、あの曲は「応援ソングを書いてください」と前々からファンの方からリクエストされていて。でも、僕は夜に似合う曲をつくるアーティストだし、自分にはそぐわないだろうと思って避けてきたんです。その中でも「眠らない僕ら」「ため息とコーヒー」みたいな、ちょっと背中を撫でてくれるような応援ソングだったらつくれるんだなと気付いて。で、その方向性でちょっとアッパーでやってみたら、Melらしさは損なわずにつくれるんじゃないかと。で、ちょうど忙しい時期だったりしたので、自分に向けての応援ソングとして書いてみようと思ったのが発端で「Week」は生まれたんです。だから、わりと僕の心を歌っている曲でもあるんですよ。

 でも、自分だけじゃなくて、いろんな人の支えにもなるような曲になったらいいなと思って。なので、みんなが抱えている悩みとかを考えながら書きましたね。不安とかありつつも、忙しすぎてそれを片付けている暇もない人って多いと思うんですけど、それならソレを抱えて生きていこうよ。捨てる必要もないから。そうやって視点を変えることで前向きに生きられるんじゃないかなと思って書いた、僕なりの応援ソングですね。あと、ライブも意識しました。ライブを始めてからアッパーな曲を歌いたいなと思っていたので、この曲でみんなと盛り上がれたらなって。

 アルバム『LIFE』全体としては、前作『ノンフィクション』よりバランス感は大事にしつつもトーンアップしている。明るさが増した印象はありますね。そんな中でもバラードがあったり、めちゃくちゃオートチューンをかけている曲もあったりして、すごく聴き応えのあるアルバムに仕上がったなと感じています。Mel=夜のイメージを大事にしてきたんですけど、今作は朝昼夜って感じで。あと、前作は自分の経験談という意味で『ノンフィクション』と名付けたんですけど、今作はこれから生きていくにあたってとか、今いるまわりの人たちとの関係とか、それに対してどう思うのか、どうしていくのか。自分の人生観みたいな歌詞を書くことが多かったので、いちばん『LIFE』というタイトルがピッタリだなって。その『LIFE』を独り言じゃなくて伝える。メッセージに昇華しているところもこのアルバムの特徴かなと思います。

 なので、聴いてくれる人たちにとって、この『LIFE』が人生の支えになってくれたら嬉しいです。いろんな人たちの日々の営みとも重なると思うし、人の気配がちゃんとするアルバムになっていると思うので、1曲1曲を自分の人生に当てはめていろんな解釈をしてほしいですね。で、まだ決まってはいないんですけど、このアルバムの曲たちをライブで直接届けたいと思っているので、その際はぜひ遊びに来てほしいです。」

取材&テキスト:平賀哲雄

◎リリース情報

2ndフルアルバム『LIFE』
2025/8/8 Digital Release
HPI Records
収録曲:
01.Interlude
02.Week
03.フライト
04.サマーメイド
05.To me
06.フライデー
07.神様の空想論
08.Down
09.Twinkle city
10.東京ナイトロンリー
11.アンドロメダ
12.片手
Jacket designed by Yoshiki Fujioka

◎Mel 2nd Album『LIFE』Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=q6mrK3qzJhY

◎Mel Official HP
https://www.horipro-international.com/artist/hpi-records/mel/
◎Mel Official YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC_q2kW4tB8_QxX7DZpa9I-w
◎Mel Official X
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◎Mel Instagram
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