2025/04/30 17:00
有形ランペイジが4月11日、ビルボードライブ横浜で【有形ランペイジ Live「有異義な時間」at Billboard Live YOKOHAMA 2025】を開催した。
2007年から“ささくれP”と呼ばれいわゆる“ボカロP”活動を始めたサウンド・プロデューサー、sasakure.UK。ボーカロイドを使用した難解な楽曲を、楽器や身体を使って奏でる“形の有る”音楽として提唱するために結成されたのが、有形ランペイジだ。2011年に始動し、同年10月に1stアルバム『有形世界リコンストラクション』を発表。活動休止期間を経て、2017年に再び動き出した有形ランペイジは、2018年12月に初の全曲オリジナル楽曲によるアルバム『有ル形』をリリース。その後もアルバム『ODYSSEY』『自有律』などを発表し、哲学的・寓話的な世界観を発展させてきた。
現在のメンバーはsasakure.UK(Producer / Sampler)、mami(Vo.)、佐々木秀尚(Gt.)、二家本亮介(Ba.)、今井義頼(Dr.)、岸田勇気(Key.)。初のビルボードライブ横浜公演でも5人は、超絶技巧に裏打ちされた独創的なアンサンブルを存分に発揮してみせた。
まずは楽器隊がステージに上がり、インスト曲「-odyssey-」でライブはスタート。今井、二家本、岸田、佐々木、sasakure.UKの順でソロ演奏をつなぐ。華麗にしてテクニカルなフレーズが連なり、観客は手拍子と歓声で応える。そしてボーカリストのmamiが登場し、「世界五分後神話」を披露。シンプルな4つ打ちのリズムを軸に高難度のプレイが絡み合い、まさに神話的と称すべきメロディが広がり、世界の終焉と再生をテーマにした歌が響き渡る。さらに高速のギターフレーズから「ユメノ蔦」へ。疾走するビートと緻密なアレンジ、〈吐き捨てられた身体を/掘り返しては夢を見て。〉からはじまる詩的なリリックが共鳴。そしてホーリーな雰囲気が広がる「人類邂逅」へとつながる。凄まじい演奏力と的確なボーカル表現に圧倒される。
sasakure.UKによる高密度・高強度な楽曲を生身のプレイヤーが演奏し、「こんなことができるの?!」と驚愕する、というのが有形ランペイジのライブの醍醐味ではあるのだが、それは決して曲芸的な面白さではなく、あくまでも音楽的な質の高さに裏打ちされている。そうやって音楽の可能性を押し広げ続けようとする姿勢こそが、このバンドの軸なのだと思う。
ここでmamiがいったんバックステージに下がり、楽器隊によるインスト楽曲が続く。ジャズ、ブルース、ハードロックを有機的につなぐ佐々木のソロ演奏に導かれたのは、アッパーかつスリリングな音像を持つ「Jack-the-Ripper◆」。sasakure.UKがボーカルを取り、煌びやかなシンセと圧巻のベースラインが炸裂した「ウィークエンダーの憂鬱」ではミラーボールがまばゆい光を放つ。「口当たりのよい曲をたくさん用意しましたので、楽しんでいただければ幸いです」(sasakure.UK)という挨拶を挟んで演奏された新曲はミニマル・ミュージック的な要素を取り入れ、このバンドの新機軸を感じ取ることができた。
エキゾチックな雰囲気のメロディが印象的な「マグ・メル」の後は、mamiもステージに上がり、MCコーナーへ。この公演のために用意されたオリジナル・カクテル“ファイブ・ミニッツ・バース”で乾杯し、「有異義な話」をテーマにトーク。最後にsasakure.UKが“去年のリキッドルーム公演のリハのとき、あまりにも演奏がかっこよくて感動した”というエピソードを披露し、客席からは大きな拍手が送られた。
今井がジャンベを叩き、ピンクの照明とともに刹那的・堕落的な恋愛を描いた「α煩悩」からライブは後半へ。原曲に土岐麻子がフィーチャーされている「深海のリトルクライ」では、モチーフである人魚姫の痛みをmamiが存分に表現し、楽曲のストーリーを丁寧に紡いでいく。「フューチャー・イヴ」では疾走感に満ちた未来的なサウンドで観客を魅了した。
起伏に溢れたメロディを的確に描き出し、歌詞のひとつひとつを明瞭に伝えるmamiのボーカルはここにきて、明らかな向上を果たしていた。感情の発露を抑え、楽曲の魅力をストレートに表現する彼女の歌は、今の有形ランペイジのもっとも大事なピースだと思う。
「あっという間ですが最後の曲になりました。有形ランペイジの名前の由来になった、大切な曲です。聴いてください」(mami)と紹介されたのは、『山月記』(中島敦)をテーマにした「タイガーランペイジ」。2010年に発表された「タイガーランペイジ(feat.鏡音リン)」を生バンドで演奏したことがこのバンドの起源。そのコンセプトの斬新さは今もまったく変わっていない――すさまじいばかりの熱量と技術がせめぎ合う演奏を体感し、そのことをはっきりと確信した。
鳴り止まない拍手に導かれ、メンバーが再びステージに登場。まずはインスト曲「nirvana」が披露され、美しいメロディと爆発的なテンションでオーディエンスの高揚感を煽りまくる。さらにmamiも舞台に上がり、「みんなが知っているあの曲を“有異義な時間”スペシャルバージョンでお届けします」(sasakure.UK)と代表曲「トンデモワンダーズ」。〈エビバディ ショウタイム!〉の大合唱が生まれ、心地よい高揚感のなかライブはエンディングを迎えた。
Text:森朋之
Photo:加藤真吾
◎セットリスト
【有形ランペイジ Live「有異義な時間」at Billboard Live YOKOHAMA 2025】
2025年4月11日(金)神奈川・ビルボードライブ横浜 2ndステージ
0. -odyssey-
1. 世界五分後神話
2. ユメノ嶌
3. 人類邂逅
4. Jack-the-Ripper◆
5. ウィークエンダーの憂鬱
6. 新曲
7. マグ・メル
8. α煩悩
9. 深海のリトルクライ
10. フューチャー・イヴ
11. タイガーランペイジ
En1. nirvana
En2. トンデモワンダーズ
[メンバー]
sasakure.UK(Producer / Sampler)
mami(Vo.)
佐々木秀尚(Gt.)
二家本亮介(Ba.)
今井義頼(Dr.)
岸田勇気(Key.)
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