2025/02/21 18:00
米オハイオ州出身の5人組ロックバンド、ソフトスポークン(Softspoken)が、3rd EP『Martyr』(マーター)を完成。初となる日本国内盤をリリースする。2016年の結成以来、ダイナミックでアグレッシブ、エモーショナルでメロディックなサウンドを武器に着実にファンを増やし、進化を遂げてきた彼ら。特に日本とは繋がりが深く、バンドの創設者であるギタリストのクリス・ウェジントンは、日本での留学経験をもち、ALT(外国語指導助手)として岐阜で4年間暮らしていたこともある。昨年は日本ツアーを開催し、アメリカでは日本のアーティストのツアーに帯同。日本人の妻との里帰りを兼ねて来日中のクリスと、アメリカからリモート参加のボーカル担当のサム・シューアーの2人に話を聞いた。
ーーBillboard Japanでは初インタビューとなります。バンドの成り立ちから教えてほしいのですが、ソフトスポークンはそもそもクリスが日本にいた時にソロプロジェクトとしてスタートしているとか。
クリス:そう、実は日本に来る前に、もう音楽を辞めようと思って機材などは全て処分してしまったんだけど、ギターは時々、嫌なことがあった日など自分のために弾いていた。そのうち曲を作りたいという気持ちが強くなり、アメリカに帰ったらまたバンドをやりたいと思い始めて、曲を書き貯めていたんだ。それがソフトスポークンに繋がっている。
ーークリスとサムは、高校時代からの知り合いだそうですね。
サム:学校は違ってたけど、同じエリアに住んでいて、お互いバンドをやってる仲間として2006年ぐらいから顔見知りだった。同じイベントで対バンしたりもよくしていた。クリスとは最初に出会った時から意気投合という感じで、こうして今でも良い関係が続いているんだ。
ーー音楽的な背景についても共通点がありましたか?
クリス:年齢も音楽シーンも同じ中で育った感じで、同じような音楽を聴いてたし、センシズ・フェイル(Senses Fail)とかサムが大ファンだったし、僕にとっても初めて夢中になったポストハードコア、ヘヴィミュージックのバンドのひとつだった。あとアンダーオース(Underoath)からの影響も大きいよ。
ーー地元オハイオ州のシーンの影響というのは?
クリス:どちらかと言うと、オハイオ州シンシナティのシーンからはあまり影響を受けていないと思うな。オハイオにはメタルコア系が多くて、デヴィル・ウェアーズ・プラダ(The Devil Wears Prada)、ミス・メイ・アイ(Miss May I)、プロット・イン・ユー(The Plot In You)とか。でも僕たちはどちらかと言えば西海岸のポストハードコアの方から影響が強いんだ。
ーーソフトスポークンが他のバンドとここが違うという点を挙げるとすれば?
クリス:難しい質問だけど、僕が個人的にいつも言ってるのは、ダイナミクス(強弱や抑揚)に焦点を当てていることかな。耳に馴染みやすいサウンドだけど、でもハッとさせるような驚きを秘めている。ポップソングのように聴こえるかもしれないけれど、何か引っかかるものがある。それがダイナミクスということじゃないかな。他のバンドとの最大の違いだと思うんだ。
サム:僕も同じことを考えていたよ。例えば僕はスクリームすることもあれば、低音から高音まで歌ったり、さまざまなスタイルを取り混ぜている。それがダイナミクスで、僕たちがずっとやろうとしてきたことだと思うんだ。それを如何に上手く使いこなすかだよね。
ーーサムは、どこでスクリームをして、どこで歌うのか、どのように決めていますか? 他のバンドのメンバーからも提案されたり?
サム:そうそう、全て他のみんなから言われてやってるだけ…というのは冗談だけど、一定のパターンはあると思うな。スクリームの後、歌で次第に盛り上げから、コーラスで美しく歌い上げるとか。
ーー最新EP『Martyr』(マーター)には、この2年間に発表してきた楽曲と新曲が収録されています。改めて自分たちの歩みを振り返って如何ですか?
クリス:一番古い曲「Lovetok」から振り返ると、あの曲は久々のリリースだったんだけど、すごく特別な感じだった。ビデオにもお金を掛けたし、マーケティングに注力したし、真の意味でのスタート地点だったと思うんだ。その後の活動も含めて凄く誇らしく感じているよ。
サム:ファンとの交流サイトを作ったり、曲についての解説ビデオを制作したり、初めての試みもたくさんやってきた。
ーー“Martyr Journey”(※)と題されたデジタルコンテンツを公表されていますが、あれも自分たちで?
クリス:そう、全て自分たちの手でやったよ。そのあたり、D.I.Y.精神が根底にあるから。すごく時間は掛かったけれど(笑)。
ーー「TWYLAM」と題された最新曲では、どんなことを歌っていますか?
サム:音楽活動をやっていると、最も大切にしたい人を傷つけてしまうことがある。あと僕の考えていること、やろうとしていることを理解してくれない人がいたりするんだよね。悪口を言われたり批判されたりすることがよくあって、この曲はそういうことを歌っている。謝るところはちゃんと謝り、その後は前進あるのみっていう気持ちを歌っている。
ーー「Invincible」のミュージック・ビデオには、アニメ『インビンシブル~無敵のヒーロー~』のカットが使われていますが、元々あのアニメにインスパイアされた曲なのですか?
クリス:実はその逆なんだ。元々は依存症と闘っている人にインスパイアされている。他の人たちに見放されても自分を信じよう、諦めるんじゃない、負けるなというメッセージを贈っている。ちょうどあのアニメのシーズン3が始まるタイミングなので、ビデオに使ってみようと思いついたものなんだ。
ーー著作権もクリアされている?
クリス:うん、曲の権利は僕たちが持っているし、画像はフリー素材だから大丈夫。Amazon Primeがダメって言わない限りはね(笑)。
ーー「I Against Me」には、エレクトロニックな音色もたくしこまれています。ジャンルを超えて新しいサウンドを開拓しようというのは、常に意識していることですか?
クリス:そうだね、新しいことにオープンでありたいという気持ちは、常にもっている。あの曲も、さっき話したダイナミクスの一例じゃないかと思うんだ。ギタリストの僕は、ギターを入れられる隙間を見つけたら、ついつい入れてしまいがちなんだ。それを我慢して作ったのがあの曲で、普段とは違ったアプローチを試みている。プロデューサーはエヴァン・マクキーヴァーという人。いつものキャメロン・ミゼルとは違っている。2人は同じスタジオのお隣さんなんだけど(笑)。
ーー先ほど話に出た「Lovetok」では、TikTokなどのSNSについて歌われています。どのような経験から生まれたのですか?
サム:あの曲はコロナ禍に作ったもので、あの頃って誰もがネットに依存して生きていたよね。キーボード戦士って感じで(笑)。みんながインスタグラムの閲覧数や“いいね”の数を気にして、Spotifyの再生数に一喜一憂して。そういう数のゲームにうんざりして書いたものなんだ。スマホ以外にも、もっと広い世界があるってことがメッセージ。SNSには良い面も多いけど、悪いことにも嵌まりやすい。もろ刃の剣なんだ。
クリス:勿論僕たちも数字は気にしているけど、あくまでもそれはファンとの繋がりを作るため。SNSをきっかけにライブに来てくれるかもしれないし。それがゴールかな。
ーー昨年5~6月には、クリスにとってホームカミングとなる来日ツアーも行われました。如何でしたか?
サム:超クールだよ。全てのライブが最高だったけど、Scylaとやったライブがおそらく自分としても一番良かったかな。
クリス:僕は日本に住んでいた時もバンドでプレイしたことはあったけど、アメリカから日本に帰ってプレイしたのはあれが初めてだった。全てが夢のようで、東京のライブも良かったし、名古屋は特に最高だった。僕が教え子や友人も来てくれて、会場は3STAR IMAIKEだったんだけど、あそこではよくプレイしていたから。日本人の妻をもつ僕にとっては日本は第二の故郷なわけで、いろんな想い出がたくさんあるよ。
ーーSurvive Said The Prophetや花冷え。など日本のバンドのアメリカツアーにも参加されましたよね。
クリス:実は今日この後、Survive Said The ProphetのYoshと会って曲を作るつもりなんだ。日本のバンドとはすぐ仲良くなれるし、通じ合えるものがある。Yoshは英語が流暢だし、他のメンバーも地に足が付いてて、いい人たちだから。花冷え。も、あのキャラと派手なコスチュームでステージに立っているけど、一旦ステージを降りたら超ナイスな人たちなんだ。その時々の機会を最大に楽しんでいるのがいいよね。成功の秘訣だと思うな。
ーー今後コラボしたい日本のアーティストはいますか?
クリス:Survive Said The Prophetは勿論、花冷え。とも何かやりたいな。
Text by 村上ひさし
◎リリース情報
EP『Martyr』国内盤
2025/2/21 RELEASE
3,080円(tax in.)
※日本でもメンバーシップ(無料)限定で日本語字幕を付けたものをDay1からDay7まで公開中
https://softspoken.bitfan.id/contents/219656
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