2024/10/18
JUJUの約11年ぶりとなるフルオーケストラコンサート【billboard classics JUJU 20th ANNIVERSARY PREMIUM CLASSIC CONCERT 2024】のファイナル公演が、10月10日(ジュジュの日)に東京・すみだトリフォニーホールで行われた。
指揮の栗田博文と共に、10月1日、2日の神戸国際会館こくさいホールでは日本センチュリー交響楽団と、10月9日、10日には東京フィルハーモニー交響楽団とすみだトリフォニーホール大ホールで開催。そしてこの日、全4公演のプレミアムなクラシックコンサートの千穐楽をJUJUは感無量の思いで迎えた。その思いが歌に溢れだし東京フィル、草間信一のピアノの美しい音が息を合わせ生まれるアンサンブルと表情豊かな歌が交差し、心のひだひとつひとつにまで浸透してくるような素晴らしい音楽が生まれた。
オープニングの「OVERTURE」では「YOU」「いいわけ」「この夜を止めてよ」の美しいメロディが紡がれ、上品なクラシック曲になっている。客席はオーケストラの音圧を感じながら、この日のコンサートがどんな素敵なものになるのか確信したはずだ。黒いドレスを纏ったJUJUが大きな拍手に迎えられ登場し、1曲目は「S.H.E.」だ。スケールの大きなオーケストラサウンドに乗せ、前向きで力強い歌詞を繊細な歌で伝えていく。
「とてもとても楽しみにしていました。クラシックが大好きなのでこのコンサートを開催することができて感無量です。できれば客席で観たかったです」と語ると、1階席から3階席まで埋め尽くされたファンと挨拶を交わし「PRESENT」へ。全ての人へ前を向くきっかけを与えてくれるこの名バラードを“伝える”JUJUの歌がオーケストラの音と共に心に深く沁みていくようだ。「あざみ」は、草間信一のピアノの粒立った音と弦の美しい音が交差して、徐々にオーケストラの豊かな音の波が広がっていく。まるで風の中でJUJUが大きな愛を歌っているような感覚になる。
願うこと、信じることの尊さを切々と歌う「君がついた嘘なら」は、どこまでも切なさが広がる。ドラマティックなストリングスから、迫力あるアレンジが展開される昭和歌謡テイストの「ラストシーン」は、妖艶な歌に引きつけられる。この曲は20周年アリーナツアーでも歌われたが、この日のセットリストはそのツアーの際、ファンからリクエストを募ったものの披露されなかった曲達を中心に選曲されている。歌い終わったJUJUと指揮の栗田が腕を組んで、拍手で送られステージを後にする。
JUJUと4公演を共にしてきたマエストロ栗田は「オーケストラが違うとお客様の体感する感覚も違うので、JUJUさんもその違いを楽しんで歌っていらっしゃったのがよくわかりました。最初は少し緊張しているのが伝わってきましたが、歌い始めればその時の空気感、お客さんとのコミュニケーションを楽しんでいて、4公演全部違う表現でコンサートを作っていたのはさすがだと思いました」とコンサートを振り返ってくれた。
第2部はオーケストラのみでフォーレ作曲の組曲『ペレアスとメリザンド』作品80より第3番「シシリエンヌ」が演奏されると、フルートが印象的で美麗なサウンドがたおやかな時間を作る。
JUJUが登場し「素直になれたら」へ。起伏の大きな美しいメロディをオーケストラの音が様々な角度から光を当て、歌を彩る。ドラマティックな曲がさらにドラマティックになっていく。JUJUは客席にマイクを向け一緒に歌を楽しむ。この日披露された曲たちは、編曲監修の山下康介をはじめ、萩森英明、海沼みきなという編曲家陣が、JUJUが愛し、ファンから愛されている名曲の数々にオーケストラアレンジを施し、新しい息吹を吹き込んだ。どの曲もJUJUの歌を香り豊かで芳醇なものにし、聴き手の心の琴線に触れる音を作りあげていた。
「今年で16回目のジュジュの日です。この20年、皆さんのおかげで色々なタイプの曲を歌わせていただいてきました」と感謝を伝える。ジュジュの日が日本記念日協会から認定された2008年からスタートしたカバーライブ【ジュジュ苑】。これまでジャンルやスタイルを軽々と超え、自由に歌を楽しみ届けてきた。カバーはシンガーJUJUを構成する骨格の大切な一部になっている。この日も2曲披露した。まず「久々に歌う」というBONNIE PINK「Last Kiss」のカバーを情感豊かに歌った。胸に迫ってくる歌と音だ。“大好き”と語ったMy Little Lover「Hello, Again ~昔からある場所~」のカバーは、ハープとオーボエのイントロから音が重なっていき、栗田のダイナミックな指揮に導かれた東京フィルの繊細で力強い音が、開放的で切ないメロディを薫り立て、歌が感動の波を客席に起こす。
「かわいそうだよね」は、平井堅が書き下ろし、吉田羊とデュエットとした人気曲だ。草間のピアノが歌に寄り添う。物悲しさと孤独感が漂ってくる物語性の強い曲に、オーケストラが美しさを纏わせる。高低差のあるメロディをJUJUがエモーショナルに歌い世界観に引き込まれる。「sign」は曲の中に流れる儚さを、JUJUのボーカルが丁寧に掬いあげ、徐々に栗田の指揮もオーケストラの演奏も、歌も熱を帯びていく。その圧巻の表現力はまさにJUJU劇場だ。客席が前のめりになって聴いているのが伝わってくる。
「デビューした頃はライブが怖くて仕方なかった。でも色々なライブを皆さんが受け入れてくださって、皆さんが私をライブ好きにしてくれました」と、ライブアーティストとしての礎を築く大きな力になったファンに感謝していた。20周年の今年は2月の【スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~】に始まり、6月からは約3年ぶりの全国アリーナツアー【JUJU 20th ANNIVERSARY ARENA TOUR 2024 「YOUR REQUEST」】を開催、そして今回のオーケストラコンサート、さらに11月には東京・BLUE NOTE TOKYOで【JUJU JAZZ LIVE 2024 at BLUE NOTE TOKYO】を開催と、様々なスタイルでのライブ尽くしの一年になる。こんなアーティストは他にはいない。
本編ラストは「こうして皆さんとお会いできることは奇跡的なことだと思っています。最後に歌う曲は皆さんへの感謝を伝えたくて作った曲です」と「I」を披露。オーケストラの音に包まれながら、まるで一人一人の耳元で歌い届けているようだ。大きな拍手が送られ、栗田のエスコートでステージから去っていく。
鳴りやまない拍手に応えて再びステージに登場すると、栗田から大きなバラの花束がプレゼントされる。ジュジュの日のサプライズだ。JUJUが笑顔で「(花束を)持って歌う!」と、大切な曲「奇跡を望むなら…」へ。ハープが奏でられ、曲が持つストーリーが浮かび上がってきて、JUJUの歌と誰もが知るメロディがブレンドされ、一人一人の心の中に浸透していきそれぞれの物語になる。ダイナミックなオーケストラの音がその物語を豊潤なものにし、感動を連れてくる。
アンコールラストはアッパーな「STAYIN’ ALIVE」だ。客席は総立ちになり、指揮の栗田も客席側に向き手拍子を煽る。テンポが速い曲をオーケストラが演奏すると音圧とグルーブで心が躍る。JUJUもドレスの裾を翻しながらエモーショナルな歌で客席を熱くさせ、まさに大団円。JUJUと栗田、草間、オーケストラに降り注ぐような大きな拍手が送られる。メンバーを見送り、ステージで一人客席を見渡し深々と挨拶をするJUJU。そして「またすぐお会いしましょう」と再会を約束し、ステージを後にした。その言葉通り7年ぶり8枚目のオリジナルアルバムのリリースと、来年5月からの全国ホールツアーの開催も発表している。
オーケストラコンサートの見どころのひとつは、シンガーとマエストロが顔を見合わせ、音と声のタイミングを合わせる瞬間だ。普段のライブでは見ることができない、人と人が息を合わせる。つまりそれは約60人のオーケストラ一人一人とも心を通じ合わせるという特別な瞬間だ。全ての演奏を終えたマエストロ栗田は「一言で言うと楽しかったです」と充実した表情で語ってくれ、改めてJUJUというシンガーについて聞くと「自分の姿勢、音作りの方法もリハーサルで色々とやり取りをさせていただきました。いい意味で個性的でしっかりと自分のカラーを持っている。バンドとシンフォニーオーケストラとやるときの“タイミング”を明確に持っていて、やはり20年というキャリアが成せるわざだと感じました。オーケストラコンサートは今回が2回目だそうですが、前回の経験を活かし、模索しながらも体感して楽しんでいて、本当の大人のボーカリストだと思いました」と絶賛していた。
JUJUもMCで「オーケストラともまたやりたい! 言霊ってあるから口に出して言っておきます!」と再演を希望していた。またスペシャルなアレンジで各地のオーケストラと様々な“響き”を是非聴かせてほしい。
text:田中久勝
photo:キセキミチコ(KISEKI inck)
◎セットリスト
<第1部>
M1 OVERTURE(You/いいわけ/この夜を止めてよ)
M2 S.H.E.
M3 PRESENT
M4 あざみ
M5 君がついた嘘なら
M6 ラストシーン
<第2部>
M7 組曲『ペレアスとメリザンド』作品80より第3番「シシリエンヌ」
M8 素直になれたら
M9 Last Kiss
M10 Hello, Again ~昔からある場所~
M11 かわいそうだよね
M12 sign
M13 I
EC1 奇跡を望むなら…
EC2 STAYIN' ALIVE
◎公演情報 ※終演
【billboard classics JUJU 20th ANNIVERSARY PREMIUM CLASSIC CONCERT 2024】
2024年10月1日(火)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2024年10月2日(水)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2024年10月9日(水)東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
2024年10月10日(木)東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
出演:JUJU
指揮:栗田博文
ピアノ:草間信一
管弦楽:
【兵庫】日本センチュリー交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲・監修:山下康介
編曲:萩森英明、海沼みきな
公演公式サイト
https://billboard-cc.com/archive/juju-20th
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