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2023/05/06

<ライブレポート>根本要/馬場俊英/槇原敬之/佐藤竹善ら【風ハミ】で療養中のKANへエール

 4月29日、大阪・靭公園センターコート特設会場にて、FM COCOLOが主催する【靭公園 MUSIC FESTA FM COCOLO風のハミング~番外編~『勝手にハミング』】が開催された。

 本公演は”都会の真ん中で、大人のための音楽祭”をコンセプトに、2011年秋にスタートしたスペシャルコラボレーションライブ。同局でレギュラー番組を担当する根本要(スターダスト☆レビュー)、KAN、馬場俊英がホストを務め、毎回豪華なゲストが登場する恒例の野外イベントで、今年で11回目の開催を迎える。

 今年はイベントの中心メンバーのひとり、KANが病気療養のため欠席。毎年恒例のイベントを続けるべく、そしてKANへエールを送るため、今年は“番外編”としてイベント開催を決断することに。当日は彼の不在を支える“仲間”として、シークレットゲストに佐藤竹善、槇原敬之が登場。当日は生憎の雨模様ながら、会場には約5700人もの観客が集結。音楽の愛とパワー漲る一日を堪能した。

 開演直前にはFM COCOLOのDJマーキーが「“風ハミ”のスピリッツを踏襲しつつ、“番外編”として、いつもとはちょっと違うイベントを楽しんで」とアナウンスすると、まずはオープニングアクトに、兄弟ユニット「吉野天狗」の名前を呼びあげる。

 聞き慣れないアーティストの名に観客は戸惑いを見せるも、ステージに現れた人物を見た途端、一気に会場が和む。その兄弟とはホスト役の2人、“カナヤン”こと根本要と、“トシ坊”こと馬場俊英。ハッピ姿に手ぬぐいを首に巻き、コッテコテの関西弁で「よっしゃ行くで~!」と、「大都会(クリスタルキング)」「あずさ2号(狩人)」などを披露。例年、洋邦楽のカバーメドレーが定番となっていたが、“番外編”でもイベントの魅力をたっぷりとアピールする2人。しかもノリツッコミ&寸劇ありの笑いもしっかり届けるステージに観客は大喜び。最終曲には、力強く拳を突き上げ「YAH YAH YAH(CHAGE&ASKA)」を熱唱し、トップバッターを見事に走り抜けていった。

 本編は馬場俊英のソロステージから。1曲目「君はレースの途中のランナー」で、力強く柔らかな歌声、心を鼓舞する言葉を綴っていく。実は、デビュー前からKANの熱心なファンだったという馬場。いつか“風ハミ”でKANに歌ってほしい曲をと、「何の変哲もないLove Song」のカバーを披露。リスペクトと愛が込められた歌唱のあとには、「スタートライン~新しい風」で人間臭くも生命力に満ちた楽曲で心のパワーチャージも。コラボステージではスターダスト☆レビューにインスパイアされた楽曲をと、ご機嫌なメロが跳ねる「金曜日の天使たち」を根本要とともに披露。

 雨脚が強まってきた会場に、1人目のシークレットゲストとして佐藤竹善(Sing Like Talking)が呼び込まれる。2013年の“風ハミ”出演以来、2度目の登場となる彼だが、ファンの間ではかなりの雨男として有名で、開演前には「これだけ雨が降ってるなら、ゲストは竹善さんじゃ?」と、予想する人もいたほど。コラボでは「スーパーオーディナリー」を馬場と披露。馬場の深みのある歌声と佐藤の透明感ある歌声、2人の絶妙なハーモニーに観客はじっと聴き惚れている。

 佐藤竹善のソロステージでは「KANちゃんの応援で歌えることが光栄。こういう温かな状況がみんなにもあればいいな」と、大好きな曲だという「カレーライス(KAN)」をカバー。日常のなんてないところに隠れた愛おしさを言葉にするKANのリリックセンスの素晴らしさを改めて感じると共に、佐藤の歌声との相性の良さに魅了されてしまう。さらにこの日は、Sing Like Talking 西村智彦もギターで参加。自身もがんの闘病中だったが病を克服し、先日ライブに復帰したばかり。KANへエールを送ろうと、2人が選んだ曲は「Human」。思わず心がほっこりとする歌詞の世界観、哀愁を誘う西村のギターの旋律に心が解されていく。その後、佐藤は根本と「君住む街へ(オフコース)」を丁寧に歌い届け、想いを歌に乗せていく。

 ステージに再び吉野天狗が姿を現し、DJマーキーを呼び込むべく「マーキー!!」と何度も叫ぶと…「ワテのことでっか~?? 靭に戻ってまいりました~」と、聴き慣れない声で返事が聞こえ、ステージに登場したのはもう一人のスペシャルゲスト、“マッキー”こと槇原敬之だ。2016年以来3度目の出演、しかも寸劇からのサプライズな登場に観客は大盛り上がり。根本とのコラボ曲に選んだのは、FM802でDJを務めていた『FUNKY STUDIO 802 MUSIC GUMBO』で起用していた「REGRETS(KAN)」。「KANさんが元気になるように祈りましょうね。歌の力を信じてる」と、歌でエールを送る。

 ソロステージでは「北風」「僕が一番欲しかったもの」など、伸びやかで柔らかく、芯の強い歌声で聴かせる。“風ハミ”の会場は360度ぐるりと見渡せるステージとなっているため、出演者は曲ごとに向きを変えて歌うのだが、槇原は目の前の観客と「どこから来はったんですか? 竹善さんのライブ良かったですよねぇ。僕も負けんようにせんと!」と、ほっこりするやり取りも。馬場とのコラボでは名曲「世界に一つだけの花」を歌唱。観客の色とりどりのレインコートが歌詞の世界観に花を添えるようで、まるで花時雨のような景色に心が和む。

 イベント後半、まずはスターダスト☆レビューのソロステージ。名曲「今夜だけきっと」からグッドメロディを響かせると、「クレイジー・ラブ」では抜群の演奏力で情熱たっぷりに奏で、「不思議なチ・カ・ラ」で美しいコーラスワークを聴かせるなど、バンドの魅力をこれでもかと見せつけていく。さらに、「Spice of Life」では情感たっぷりのバンドサウンド、心打ち震わせるリリックで会場を盛り上げると、「すべての悲しみにさよならするために(KAN)」では、胸を締め付ける美しいハイトーンボイスで観客の心を捉えて離さない。

 ステージ最後は「Spirit Of Love」(Sing Like Talking)、「夢伝説」(スターダスト☆レビュー)、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」(馬場俊英)、「どんなときも。」(槇原敬之)と、出演者の名曲陣をセッション。美声が響きわたるステージはとにかく贅沢で、観客はみな総立ちに。「愛の歌」では観客と一緒に大合唱も。 今年からマスク着用での声出しが解禁されていることもあって、360度に広がる客席から響くハーモニーは力強く、頼もしい存在に感じ取れて、出演者の歌声も一層大きく、躍動感に満ちあふれていく。最後は「想いはひとつ! みんなの大合唱を届けよう」と、「愛は勝つ(KAN)」へ。この日のイベントでセレクトされたのは、どれもKANへの思いが溢れた楽曲ばかり。そんなたくさんの愛が満ち溢れた全28曲のステージが終わると、客席からは大きく温かな拍手が届けられた。

 ようやく声出しが解禁され、みんなでハミングする、本来の魅力を取り戻しつつある“風ハミ”。今年は番外編ながら、来年へと繋ぐバトンはしっかりと継がれたはず。来年こそ、太陽が輝く空の下、“風ハミ”フルメンバーと観客、みんなで大合唱できる日を楽しみにしたい。

 なお、この日のライブの模様は2023年5月6日FM COCOLO『KANと要のWabi-Sabiナイト』にて放送が予定されている。

Text:黒田 奈保子
Photo:田浦ボン、キシノユイ