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2021/10/30

<ライブレポート>中田裕二、弦カルテットとピアノとの共演で魅せた豊潤な音楽世界

 ソロ・アーティストとして10周年を迎えた中田裕二が10月29日、ビルボードライブ横浜で単独公演を行った。

 今年3月に初のベスト・アルバム『TWILIGHT WANDERERS - BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -』をリリース。6月にはソロデビュー10周年を記念したスペシャルライブをビルボードライブ東京で開催するなど、精力的な活動を続けている中田。【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.4 “中田裕二と弦楽の調べ”】と題された今回の公演では、弦カルテットとピアノと歌による豊潤な音楽世界を描き出してみせた。

 深い青みがかかったスーツ姿で登場した中田は、笑顔で観客に挨拶。ステージ中央に置かれたスツールに座り、ソロ1stアルバム『école de romantisme』(2011年)の収録曲「迷宮」でライブをスタートさせた。さらに「ロータス」(アルバム『NOBODY KNOWS』/2018年)を披露。切なさと華やかさが共存するメロディ、弦楽器の響きが共鳴し、心地よい音楽空間が生まれる。タイトルにちなんだ蓮の花の模様を映し出す照明も美しい。

 最初のMCではまず「ようやくお酒と中田裕二の音楽が合わせられて、お酒を飲まれる方の喜んでもらえていると思います」と挨拶。会場からは温かい拍手が巻き起こった。さらに「(弦楽四重奏との共演は)長年の夢でした」と、四家卯大カルテット(四家卯大/チェロ、沖祥子/バイオリン、下川美帆/バイオリン、菊地幹代/ヴィオラ)とsugarbeans(ピアノ)を紹介。「流麗な感じで演奏していきますので、最後まで楽しんでください」と言葉を重ねた。

 今回のライブの醍醐味は、10年のキャリアのなかで紡ぎ出してきた楽曲に四家卯大による弦のアレンジを施し、原曲の奥深い魅力をゆったりと堪能できること。「バルコニー」(アルバム『école de romantisme』/2011年)では、クラシカルな音響とともにエモーショナルな歌声が広がり、「en nui」(アルバム『LIBERTY』/2015年)では、ラテン的な官能を滲ませながら、どこかエキゾチックな世界へと誘う。楽曲が重ねられるごとに演奏と歌は深みを増し、観客を引き込んでいった。

 「味わってますか?リハーサルからずっと弦の音を聴いてますけど、すごく“耳心地”がよくて」と嬉しそうに話す中田の姿も印象的だった。四家卯大とは、椿屋四重奏の後期から交流があり、何度も楽曲のアレンジを依頼してきた旧知の仲。「バンド時代に1回ライブはやってるんですけど、“またやりたいね”と言いながら、月日が流れてしまい。“弦カルテットと歌を歌う”という夢が今日、叶っています」という言葉からは、このライブに対する強い思いが伝わってきた。

 この後は、中田裕二の多彩な音楽性を体感できるシーンが続いた「BACK TO MYSELF」(アルバム『PORTAS』/2020年)では、解放感に溢れたボーカルによって、客席との一体感を演出。さらに、叙情的な旋律とともに、“君”との切ない記憶を描き出す「薄紅」(アルバム『BACK TO MELLOW』/2014年)、刹那的な男女関係をドラマティックに歌い上げた「輪郭のないもの」(アルバム『DOUBLE STANDARD』/2020年)も。弦カルテット、ピアノによるアレンジによって、“ボーカリスト・中田裕二”の豊かな表現力を改めて実感できたことも大きな収穫。「各々のグルーヴを感じながら、気を読み合いながら歌っていますが、すごく“歌いごたえ”があって。“久々にここまで歌のなかに入り込んだ”という感じがします」というコメントからも、このライブに対する大きな手ごたえが感じられた。

 軽やかで都会的なポップソング「セレナーデ」(アルバム『MY LITTLE IMPERIAL』/2012年)からライブは後半へ。鋭利なストリングと強靭なグルーヴをたたえた歌がぶつかり合う「ユートピア」(アルバム『アンビヴァレンスの功罪』/2013年)ではスツールから立ち上がり、オーディエンスの顔を見ながら熱唱。客席からはハンドクラップの音が鳴り響き、ナチュラルな一体感につながった。

 「少しずつライブができるようになって、改めて思うのは、みなさんの前で生で歌えるというのは、かけがえのない喜びだなと思います」という言葉に導かれた本編ラストは、「STONEFLOWER」(アルバム『LIBERTY』/2015年)。歌、ピアノ、弦が刺激的に絡み合う、妖しくもスリリングな演奏は、このライブの質の高さを端的に示していた。

 アンコールでも、「歌い手が最後に行き着くのは、弦じゃないかなと。今日だけっていうのはもったいない。いつか一緒に旅(ツアー)ができたらいいな」と、弦カルテットとの共演に対する強いモチベーションを表明。そして「齢40になりましたが、音楽探求の旅は続きます」と「終わらないこの旅を」(アルバム『Sanctuary』/2019年)を歌い、ライブはエンディングを迎えた。

 10周年イヤーのラストを飾る“中田裕二と弦楽の調べ”で、豊かな音楽性とシンガーとしての深みを見せつけた中田裕二。この記念すべきステージをぜひ、アーカイブ配信(~2021年11月5日23:59)で追体験してほしい。

※写真は1stステージのものを使用

Text by 森朋之
Photo:Yuma Totsuka

◎配信情報
【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.4 “中田裕二と弦楽の調べ”
ONLINE SHOW LIVE LOVERS from Billboard Live supported by CASIO】
2021年10月29日(金)
神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
配信START 18:30
視聴チケット:2,800円
販売期間:10月15日(金)18:00~11月5日(金)21:00
視聴可能期間:10月29日(金)18:30~11月5日(金)23:59まで
チケット購入URL:https://eplus.jp/yujinakada1029-st/

◎公演情報
【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.4 “中田裕二と弦楽の調べ”】
2021年10月29日(金) ※公演終了 
神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
1st Stage Open 14:30 Start 15:30 / 2nd Stage Open 17:30 Start 18:30

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