Homecomingsが、東名阪ワンマンツアー【Tour Moving Days】のツアーファイナルを、7月23日東京・渋谷CLUB QUATTROにて開催した。

　コロナ禍やメンバーの引っ越しを経て制作されたHomecomingsの最新アルバム『Moving Days』。日々の生活で起こる些細な出来事や、放ってしまいがちな小さな心の揺れを丁寧に描いた本作は、混沌の中で見過ごしていた“ささやかでも大事にしたいこと”を思い出させてくれるのと同時に、“自分が自分であること”を肯定する勇気をくれる。この日のライブも、そんなアルバムのモードを引き継ぎ、たおやかなサウンドの中にも芯の強さを感じる演奏を届けてくれた。

　今回のツアーは、Homecomingsにとって2020年12月の日本橋三井ホール公演以来、およそ7か月ぶりのワンマンライブとなる。ツアーファイナルの舞台となる渋谷CLUB QUATTROは、2015年に自主企画【NIGHT OF PAPER TOWN】を開催したり、コロナ禍に入る直前に行われたJAY SOMの日本ツアーにゲスト参加した際にも出演した、バンドにとってゆかりのあるライブハウスだ。

　下手から畳野彩加（Vo./Gt.）、福田穂那美（Ba./Cho.）、石田成美（Dr./Cho.）、福富優樹（Gt.）の順に並び、「Cakes」からライブがスタート。4人が奏でる穏やかなグルーヴの中で、キラキラと光るギターの音色と、福田・石田による涼しげなコーラスが、瑞々しさを演出する。この日のライブは全席指定で、オーディエンスはアンコールまでイスに座りながらの鑑賞となったが、座りながら体揺らす人や、指を鳴らしてノリノリに楽しむ人など、それぞれ思い思いにHomecomingsの音楽を楽しんでいたのが印象的だった。

　福富が昨年末以来にワンマンライブを開催できたことへの感謝をオーディエンスに伝え、『Moving Days』より変化について歌った「Herge」をプレイ。本曲では畳野がギターをキーボードに持ち替え、エレクトリック・ピアノがグルーヴィーなトラックに花を添える。畳野のソウルフルに歌い上げすぎない歌唱も、この曲が持つ独特な浮遊感をより際立たせる。また、コロナ禍の影響もあり、初めて“宅録っぽい”曲に挑戦したという「Tiny Kitchen」や「Blanket Town Blues」は、音源より音数が減ったからか、さらにノスタルジックな雰囲気が増していた。

　続いて、福富が敬愛する漫画家が亡くなったことから書き上げた曲だという「Continue」を披露。演奏前のMCで福富は、この楽曲について「隣の人に優しくできたらいいな」という思いが込められていることを語った。「ムカつくことがあったらもちろん怒るし声も上げるけど、“優しさ”をめちゃくちゃ大事にしてみるというのも手段の一つなんじゃないかと思っていて。それを僕達は音楽でやってみて、1ミリでもいいから社会が良くなるきっかけになったらいいなと思ってます。僕たちもいろんな映画とか音楽とか小説からきっかけをもらってきて、自分達もそういうものを作ろうと思ってできたのが『Moving Days』なんです」。

　ライブも終盤に差し掛かり、「MORE SONGS OF PAIN」「Blue Hour」「PERFECT SOUNDS FOREVER」と、胸を空くようなギターポップが続く。柔らかな音色を使ったゆったりとしたテンポの曲が多かったここまでのパートとは異なり、力強く、推進力のある演奏でオーディエンスを鼓舞していく。そして本編ラストソングは、シューゲイザー・バンドさながらの轟音で締めくくられた「Here」。〈いつかこぼれおちたときは このうたが手を伸ばしている〉という一節は、まるでHomecomingsから手渡されたお守りのようで、終演後にはあたたかな気持ちが胸に残った。

　アンコールでは、Homecomingsのマネジメントを担当している「カクバリズム」の先輩バンド＝YOUR SONG IS GOODのサイトウ"JxJx"ジュン（Key.）が登場。『Moving Days』よりサイトウが参加した「Moving Day pt. 2」と、2014年リリースの1stフルアルバム『Somehow,Somewhere』より「I WANT YOU BACK」を一緒に演奏する。畳野の呼びかけにより客席は総立ちになり、会場は多幸感溢れるムードに包まれた。さらにWアンコールでは「HURTS」を披露し、この日のライブは終了。畳野が「また会いましょう」とフロアに声をかけ、4人は何度も手を振ったりお辞儀をしながらステージ去っていった。

◎公演情報
【Tour Moving Days】
2021年7月23日（金・祝）
東京・渋谷 CLUB QUATTRO
＜セットリスト＞
01. Cakes
02. Songbirds
03. Pedal
04. Herge
05. Good Word For The Weekend
06. Summer Reading
07. Tiny Kitchen
08. Smoke
09. Blanket Town Blues
10. Continue
11. MORE SONGS OF PAIN
12. Blue Hour
13. PERFECT SOUNDS FOREVER
14. Here
En1. Moving Day pt. 2
En2. I WANT YOU BACK
WEn. HURTS