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2026/03/06 16:00

Duettiがいかにして小さなカタログから大きな価値を見出すか「権利を集めることではなく世話をすることだ」

 米ロサンゼルスを拠点とするインディペンデント・ミュージシャン、ジェシー・バレラが「No Reservations」の作曲に取り掛かったのは、家を購入し、第一子が誕生したばかりの頃だった。バレラがこのネオソウル楽曲と、iPhoneで撮影したミュージック・ビデオをYouTubeで公開したのは2023年2月のこと。数か月のうちに、この楽曲はバレラにとってYouTube上で最も成績の良い作品となり、2026年2月時点で430万回以上の再生数を記録している。

 この楽曲の成功は、以前にもバレラと取引があったDuettiなどのカタログ投資家たちの注目を集めた。その1年前、インディペンデント・アーティストの個々の楽曲の原盤権や出版権を買い取るDuettiは、バレラによるシャナイア・トゥエイン「Still the One」のカバーの権利を購入していた。条件は非公開だが、バレラによると、彼は自身のミュージック・ビデオ数本分の制作費を賄うことができたという。それがきっかけとなり、彼は「No Reservations」の原盤権をDuettiに売却し、その収益を2025年のアルバム『Gentle Noise』の制作資金に充てることになった。

 「フルアルバムのレコーディングと時期が重なったため、タイミングは完璧でした」とバレラは語る。「自分がアーティストとしてやりたいこと、成し遂げたいこと、そして活動を続けていく上で、これは理にかなっているんです」

 2022年設立のDuettiは、こうした数千に及ぶ楽曲を数千ドルから数百万ドルの金額で取得してきており、月に約80曲およびカタログのペースで成長を続けている。The Raine Group、Flexpoint Ford、Nyca Partners、Viola Ventures、Roc Nationといった株式投資家からの1億ドル(約157.8億円)の支援と、2つの資産担保証券(ABS)からの2億500万ドル(約323.4億円)、さらに追加の融資を背景に、Duettiとその投資家たちは、音楽のロングテールの将来価値に大きく賭けている。

 彼らの戦略は3本柱から成る。他の音楽カタログ会社と同様、Duettiは買収を通じて成長している。しかし、同社が取得しているのは、ほとんどの投資家が依然として「よりリスクが高い」と見なす音楽資産(わずか2年前にリリースされた知名度の低いアーティストの楽曲など)であるため、Duettiはデータ・エンジニアリングと予測技術に多額の投資を行い、社内で楽曲の評価や将来の成長予測を行えるようにしていると、Duettiの共同創設者兼CEOであるリオール・ティボンは語る。そのテクノロジー・プラットフォームは、最も有望な楽曲を大規模かつ費用対効果高く取得するのに役立ち、取得後は管理や印税徴収の改善にも使用されると同氏は付け加える。一方で、マーケティング・スタッフは、楽曲のスローダウン版やスピードアップ版、リミックスなどを用いてストリーミングの活性化に努め、これらをDuettiがアクティブに管理する3,000のプレイリストに配置したり、インフルエンサーやデジタル・サービス・プロバイダーに売り込んだりしている。

 「我々はカタログの金銭的およびその他の価値を理解することに特化しており、それを次のレベルへ引き上げる方法を知っている会社です」とティボンは言う。「単に権利を金銭的に集約するだけではありません。マーケティングや印税徴収を通じて音楽の権利を適切に管理、保護し、毎日これほど多くの新しい音楽が生み出される世界で、それらが確実に生き残っていけるようにすることなのです」

 Duettiはインディーズ音楽カタログの経済性に関する信頼できるデータソースとしての実績に磨きをかけるため、最近立て続けにレポートを発表している。1月には米ビルボードの協力を得て、Duettiの周辺にいるインディペンデント・アーティスト、マネージャー、弁護士の視点から、音楽カタログの評価額や投資家心理の状況について年2回調査する「Music Finance Index」を立ち上げた。2月には、「2025年 音楽経済レポート(Music Economics Report)」を発表し、ストリーミング音楽で年間100ドル(約1.57万円)から35万ドル(約5,523万円)を稼ぐアーティストが、いかにして耐久性のある収益を生み出すカタログを構築できるかについての調査結果を示した。同社はこれを、ストリーミング再生数の減少が年間10%未満のカタログと定義している。

 同レポートによると、バイラルヒットした楽曲は、ゆっくりと成長する楽曲よりも最初の3か月間で多くの収益を上げる可能性があるが、6か月から9か月以内にはどちらの資産もほぼ同じ額の収益を生み出す結果になるという。また、最大の成功を収めるためには、エレクトロニックやヒップホップは春に、オルタナティヴは夏に、クリスチャン・ミュージックやカントリーは冬にリリースするようアーティストに指南している。さらに、年間3曲以上リリースするアーティストは、リリース後1年目の1曲あたりの平均収益が18%高かったことも判明した。そして、駆け出しのアーティストにとっては、YouTubeで2か月連続の成長を見せることが、他のストリーミング・プラットフォームで同様の成長期間を経験するよりも、カタログの耐久性と高い相関関係があると同レポートは強調している。

 スタートアップであるDuettiは、これまでに6.35億ドル(約1,002億円)を資金調達しているが、その大半は負債の形態である。その負債のうち2億ドル(約315.7億円)以上は2つのABSによるものだ。保険会社などの機関投資家に販売されるこれらの証券により、Duettiは従来の銀行の与信枠から受けるよりもはるかに低い金利で資金を調達できる。例えば、市場で最も低い金利のローンを提供する米国中小企業庁(SBA)でも、2月のローン金利は11.75%から14.75%であった。対照的に、ABSの発行で30億ドル(約4,735億円)以上を調達したコンコード社(Concord)は、支払う金利が6%未満であるとCEOのボブ・バレンタインは述べている。

 しかし、コンコードのような音楽証券化の大半は、何十年も前の有名アーティストによるヒット曲を裏付けとしており、それゆえに安定した収益率を示してきた。Duettiは、より新しい楽曲を裏付けとしたABSを発行した初めてのカタログ会社であった。ABSから調達した資金は、その裏付けとなる楽曲の価値を反映しているが、他のこの種の証券化と同様、もし裏付けとなる楽曲が今後数年間で価値を失えば、同社はキャピタル・コールに直面する可能性がある。ただ、そのような事態はDuettiにも、他のどの音楽会社にもまだ起きていない。

 デット投資家と話す際、ティボンは1万ドル(約157万円)の収益を生み出すために、1つの楽曲にどれだけの個別リスナーとストリーミング数が必要かを常に指摘するという。定期的に証券化され、債券市場で販売される自動車ローンなどの他の資産と比較して、楽曲は理論上、評価するためのデータ・ポイントが数百万も多く存在する。

 「おそらく、ブルース・スプリングスティーンのカタログの価値に納得する方が簡単でしょう」とティボンは言う。「しかし、私たちは証券化が可能であること、カタログが私たちが考える通りの価値を持っていること、そして私たちが安定しており、成長を続けていることをすでに2度証明しているのです」

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