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Rails-Tereo 『Piano Pop Life』インタビュー

Rails-Tereo 『Piano Pop Life』 インタビュー

アーティストへの楽曲提供をはじめ、数々のCM音楽やジングル、サウンドステッカー、イベントBGMなどの制作も行うモリカワヒロシ(vo,key)によるソロプロジェクト Rails-Tereo(レイルステレオ)。
思春期に布袋寅泰の音楽に出会い、ブラックミュージックからCM音楽まで幅広く音楽を吸収しながら、あくまで鼻歌でうたえるメロディにこだわるという生粋のポップアイコンが完成させたニューアルバム『Piano Pop Life』について。

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ふと口ずさみたくなるフレーズを心がけている

レイルステレオ2nd Full Album「Piano Pop Life」15秒CM
▲レイルステレオ2nd Full Album「Piano Pop Life」15秒CM

--過去作も含めてRails-Tereoにはピアノのイメージが強くありますが、個人的には山下達郎さんやマイケル・ジャクソンの影響が強いのかなって感じました。

モリカワヒロシ:達郎さんとか小田和正さんとか、マイケル・ジャクソンもめちゃめちゃ好きですし、スティーヴィー・ワンダーとかモータウン辺りはかなり好きですね。
僕は中1の時に布袋寅泰さんの『GUITARHYTHM II』に出会って、高校からブラックミュージックも聴くようになって。大学を出てからは大手CDショップで3年間働いていたんですけど、その時に色んなジャンルを聴き漁りましたね。ジャズとかワールドとか色んなものを聴かせてもらって、面白いものは全部吸収しようと。

--そうした音楽はJ-POPの主流とは違う所がありますよね。

モリカワヒロシ:過去にメジャーで出すというお話をいただいたことがあるんですけど、事務所側としては売れないと話にならない。流行に沿ったものを作りたいという意向があって。僕としては後々ちゃんと残るもの、自分が恥ずかしくない作品を出していきたいという想いがあったので、その時はけっきょく出なかったんですよね。

Rails-Tereo 『Piano Pop Life』インタビュー

--過去作の『30's Pop Icon』というタイトルは、ご自身の年齢のことを表しているんですよね?

モリカワヒロシ:30歳の時に作ったアルバム。30歳が示すポップアイコンはこれですよ、っていう意味合いを込めて付けたタイトルですね。

--先ほどのお話の時に流行に寄せていれば、もっと早いスタートが切れた。そこで話を断るというのは、それなり以上の勇気や決断が必要だったとも思うのですが?

モリカワヒロシ:そうですね。…………なんで断ったんやろ?(笑) いやでも、これは今でも変わらないですけど、自分が納得できる良いものを……って生意気なんですけど(笑)、僕自身が考えている面白い音楽。年齢と共に面白く感じるものも変わってくると思うんですけど、当時思っている面白い音楽とのギャップがあったんだと思います。

--例えば最近のアイドルでは、急激な転調をフックにしている曲が多いですよね。ただ、モリカワさんの作る楽曲は展開が上品で、そういう所とは違う音楽の盛り上げ方を提示してくれているように感じます。

モリカワヒロシ:今、本当に転調が流行っているとは思いますし、流行っているからこそ僕がやらなくてもいいっていうのもあります。僕の場合は生活の中に溶け込んでいく音楽というか、楽しい時、嬉しい時に思わず鼻歌でうたってしまいたくなるような、自然なフレーズ。
……っていうのを常に考えて作っているので、メロディラインはあんまりカクカクしたり飛んだりしていないんですよ。続いて横に流れていくような、ふと口ずさみたくなるフレーズを心がけているので、考えないと歌えないようなフレーズは極力避けています。

Rails-Tereoの音楽の核はポップ

Rails-Tereo 『Piano Pop Life』インタビュー

--モリカワさんは楽曲提供なども行っていますが、Rails-Tereoの音楽との違いはあるのでしょうか。

モリカワヒロシ:全然違うんですけど、そこって難しい所なんですよ。提供する上でも僕の色がゼロなんだったら作る必要はないのですし。そのバランスは今も把握しきれていないかもしれないですね(笑)。

--では、Rails-Tereoの音楽の核になる部分を言葉にするのなら?

モリカワヒロシ:やっぱりポップであるということ。ポップの定義って色々あると思うんですけど、さっき言ったように生活に溶け込んでいくような、シンプルな感じとか。覚えやすさ、キャッチーさ、自然に出てくるようなものを目指してやっているので、そこは全然変わらないですね。

--前作『Pop Sings Pop Things』では、インディーズながら5曲でタイアップを獲得するという評価を受けました。CMで起用される背景の中には、そのワンフレーズで視聴者に何処まで印象つけられるかが問われる所はありますよね。

モリカワヒロシ:やっぱり耳に残りやすかったのかなっていうのは自分でも感じますけど、スタッフの方が一生懸命にお話ししながらまわってくれた結果だとも思います。ただ、別に狙って作っていたワケではなくて、全部曲があって後からCMの話が来るパターンだったのでラッキーだったなって。

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CM音楽の魅力とJ-POPの制約

イオンバイク 東北限定テレビCM
▲イオンバイク 東北限定テレビCM

--そういえばこの前、気づいたら家で「走り出す」を口ずさんでて、ちょっと悔しかったです。

モリカワヒロシ:それなんですよ(笑)。僕、小さい頃に持っていたCDってCMソングばっかりなんですよ、「勇気のしるし~リゲインのテーマ~」とか。「鉄骨娘」とか「熱血キッドの唄」とか東京バナナボーイズさんの作品は凄く好きだし、耳に残りますよね。15秒で勝負しているというか、サビでどれだけインパクトを残せるのかは、そういう所から影響を受けていると思います。菅野よう子さんも凄いですよね、天才やと思います。

--そういえば以前、菅野さんは楽曲を作る上では制約がある方が面白いと仰っていました。例えるなら、冷蔵庫の残り物で何処まで美味しい料理を作れるか、みたいな。

Rails-Tereo 『Piano Pop Life』インタビュー

モリカワヒロシ:それ、分かるなァ~……。音楽ってある種、制約されたものだと思うんですよ、特にJ-POPは。やっぱりフリーではないですし、スタイルもある。J-POPの枠の中でどれだけ面白いものができるかっていうのは、確かに料理にも似ていますし。

クラシックでも、ソナタ形式があったり二部形式があったりとしますよね。そのスタイルの中でどれだけいいものができるかっていうのと一緒で、J-POPにもAメロ~Bメロ~サビとあって、その中で恋愛の歌をうたったりとか、日本語で作ったりとか。歌ものと呼ばれるような、目には見えない制約がありますよね。

--Rails-Tereoの音楽は面白い音が鳴っていますし、生音だけに固執しているワケでもない。音楽の自由な広がりを感じる中で、ある種J-POPの制約に則ったメロディがあるんですよね。

モリカワヒロシ:曲の作り方は何パターンかあるんですけど、例えば最初から最後までアレンジを僕が作ってバンドに持っていくパターンもあれば、弾き語りを聴いてもらってせーのでお任せするパターンもあればと色々あるんですよ。1フレーズからみんなで広げていく時もあるし、サポートメンバーの技術力を信じてやっていますね。

その人にしか出せない音ってあるじゃないですか。最終的には曲ありきなんですけど、この曲ならこの人が合うとか、作るものを主体としてやってもらってます。そうやってその人じゃないとできないことを引っ付けていって、最終的に僕が配置を決めていく。言うたらグラデーション作りというか、遊びをやっている感じですね。
アレンジの記述はTeam Rails-Tereoになっているので、関わって下さった方々はみんなTeam Rails-Tereoなんです。作詞作曲の核は僕なんですけど、それをテーマに遊ぼうよっていうのがRails-Tereoのスタイルなんです。

生きていく楽しさや醍醐味は、人と人が繋がること

Rails-Tereo(レイルステレオ)/MUSIC4TOWN
▲Rails-Tereo(レイルステレオ)/MUSIC4TOWN"SP"四番町スクエアライブ on

--そういう意識はライブにも反映されていますよね。以前、ネットで見た野外ライブでのハッピーな雰囲気が印象的でした。

モリカワヒロシ:あれは滋賀の商店街の中広場みたいな所だったので、僕のお客さんというよりは通りがかった人の方が多い。そういう人たちに足を止めて聴いてもらうことがポイントになってきますよね。

--そんな時にこそ、一発で覚えられるキャッチーなメロディというのは大きな武器になりますよね。

モリカワヒロシ:やっぱり僕の中の大きなテーマとして、生活の中で楽しい時とかに歌ってもらえるっていうのが、音楽をやり始めたスタートの気持ちなんですよ。自分の音楽で人が楽しくなったら最高だと思って。
今回の『Piano Pop Life』っていうタイトルは、自分の好きな楽器のピアノ、鼻歌でうたえるようなキャッチーなポップ。そして、人生観とか生き方とか命に関してとかを歌っている曲が多いことからライフって付けたんです。

生まれたら亡くなるタイミングが必ずやってくる人生の中で、どうやって生きていくか。毎日のことは普通なんですけど普通じゃない。僕自身が体験した訳じゃないですが震災もそうだし、その当時僕は祖父母が亡くなったこととかが重なったりして、当たり前だけど当たり前じゃないって状況を目の当たりにしたんですけど、それと同じように感じることはこの2~3年、日本全国にあったと思うんですよ。
その中で生きていく楽しさや醍醐味は何なのかを考えた時に、人と人が繋がることが一番なんじゃないかと。それに対して音楽のアプローチはもっと考えられるし、一番手っ取り早いアイテムが音楽かもしれない。そこを軸に考えた時にできたのが『Piano Pop Life』ですね。

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音楽ってライフワークにできる数少ない職業

レイルステレオ「走り出す」
▲レイルステレオ「走り出す」

--また、本作はパッと聴くとラブソングがたくさん詰まった作品だと思いがちなんですけど、歌詞を読んでみるといわゆる恋愛ものは少ないですね。

モリカワヒロシ:ただ単に男性女性のって所だけではなくて、もう少し大きな所。読み方によっては男女間の話にも捉えられたりとか。そしてこれは前作もそうなんですけど、シンプルな言葉を選んで小学生でもすぐに覚えられる言葉にしようと思って。

--リード曲の「走り出す」も、シンプルな言葉の組み合わせで、今の自分をいかに表現するかに挑戦した楽曲だと思いました。

モリカワヒロシ:井上陽水さんとかCHAGE and ASKAさんとか、昔はもっと抽象的かつ文学的というか。ボブ・ディランの影響からスタートされている方は、言葉遊びも含めた歌詞というのが素晴らしかったと思うんですね。でも、最近はそういう言い回しをすると「わからへん……」っていう(笑)。もっと分かりやすくっていうのが主体になってしまって、言葉遊びがタブーみたいになっているように思うんです。

だからといってそこに則るワケではなく、まっすぐの中にも変化があるというか。寄り道しても結果的にまっすぐだったらアリかなって。だから今回はできるだけできるだけシンプルに、飾らないように。タイトルを読んだだけで、どんな音楽か想像できるようにしようと思いました。

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--ただ、2曲目の「Walkin'」からは違う側面も出し始めますよね(笑)。派手さだけで終わらないというか、上品な音作りにトライしている楽曲だなと。

モリカワヒロシ:無理な話ではあるんですけど、古くならないものを作りたい。温故知新という言葉が凄く好きで、古いものがあって今があるというのは強く感じています。歳を取っても聴き直したくなるようなもの。いうたら細く長くしたいっていうのもあるし、音楽ってライフワークにできる数少ない職業だと思いますし。

--確かに聴き応えがあって長く楽しめる作品になっていますが、現在のシーンとしては、これまで以上に派手さばかりが注目される傾向があるようにも思います。

モリカワヒロシ:J-POPってある種、ガラパゴス化されているというか、独自の文化すぎる所はあると思うんですね。フランスとかアメリカでは、そういう日本の文化が面白いという見方もあるようですけど。
ただ、過去にそれだけ良いアーティストがいたワケですし、最近でもSuperflyさんみたいに実力のあるアーティストがちゃんと売れたりしてますから、そこはタイミングかなって。だから良いものはちゃんと提示していかなければいけないと思います。

人が求めているものは時代時代にあると思いますから、完全に無視することはできない。それも一つの制約だと思うんですね。他人が求めている部分に対して、どうアプローチしていくのか。それがさっき話した制約に対する答えなのかもしれないですね。

音楽は“驚安の殿堂”にしてはいけない?

Rails-Tereo 『Piano Pop Life』インタビュー

--では、最後に本人が思う『Piano Pop Life』の聴き所を教えて下さい。

モリカワヒロシ:……試聴機に入っていたらとりあえずトラック1を聴いて下さい(笑)。

--個人的には「Singin' about you」もリード的な楽曲だと思いましたし、音楽好きには「Dancin' in the darkness」や「Say Hello Say Goodbye」あたりが刺さりそうですよね。

モリカワヒロシ:なるべく同じような曲調にならないようにっていうのは心がけましたね。けっきょくどんなことをしても最終的にRails-Tereoっていう型に落とし込めれば大成功って所でやっているので、そういう意味では上手くいったのかなって。

--では、春の散歩にオススメの1曲とかはどうでしょうか?

モリカワヒロシ:それなら「Say Hello Say Goodbye」ですかね。フンフン言いながらゆっくり歩きたい感じというか。……だって「走り出す」だと汗だくでダッシュしてる感じですし(笑)。

--そういえば「走り出す」の次の曲が「Walkin'」っていう並びも面白かったのです。リスナーが勝手に色々考えて楽しめる所も、この作品の魅力ですよね。

モリカワヒロシ:今回は隙間があるというか、人が入っていける余地がある。自分を投影しやすい作品だとは思っているんです。音楽を箱だと捉えてもらえると分かりやすいと思うんですけど、その箱に対する許容量ってあると思うんですよ。それが少なければ少ないほど自由度が高まるというか、耳にも一つ一つのフレーズが入っていきやすい。よくやってしまいがちなのが、音を詰め込みすぎててゴチャゴチャして、……ある種ドン・キホーテ的な?(笑)

--驚安の殿堂的な(笑)。

モリカワヒロシ:シンプルなんですけど、ちゃんと聴こえるというか。例えば空間デザインとかって、ものが無い所に面白さがあったりするじゃないですか。そういう所を楽しんで欲しいですね。

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レイルステレオ「Piano Pop Life」

Piano Pop Life

2013/04/24 RELEASE
SSCX-10491 ¥ 2,096(税込)

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Disc01
  1. 01.走り出す
  2. 02.Walkin’
  3. 03.冷たい雨
  4. 04.Dancin’ in the darkness
  5. 05.Say Hello Say Goodbye
  6. 06.Precious
  7. 07.Listen to myself ~心の扉~
  8. 08.Singin’ about you
  9. 09.春色模様
  10. 10.走り出す -GIRA MUNDO MIX-

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