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オブ・モンスターズ・アンド・メン 『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』 インタビュー

オブ・モンスターズ・アンド・メン『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』 インタビュー

 今年最大の新人と謳われたラナ・デル・レイのデビュー作『ボーン・トゥ・ダイ』、フランク・オーシャンの話題作『チャンネル・オレンジ』などを抑え、今年の米ビルボード・アルバム年間チャートにて見事56位を記録。本拠地内外でのセールスやツアー集客力に優れたアーティストに贈られる"2013年ヨーロピアン・ボーダー・ブレーカーズ賞"を受賞、今もっとも期待されるアイスランド出身のインディ・ポップ・バンド、オブ・モンスターズ・アンド・メン。

 どこか懐かしく、ハッピーで心地よい…楽団風ヨーロピアン・バンド・サウンドで、本国でのデビューから約1年で世界中を魅了した彼らが、遂に日本デビュー!1stアルバム『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』、アメリカでの成功や2013年1月に控える初来日公演などについてドラム、メロディカ、グロッケンシュピールなどを担当するアルナル・ロウゼンクランツ・ヒルマルソンに訊いた。

バンド結成の経緯

Of Monsters and Men @ Musiktilraunir 2010
▲ Of Monsters and Men
@ Musiktilraunir 2010

――まずバンドの生い立ちについて訊きたいのですが、元々はヴォーカリストのナンナのソロ・プロジェクト"Songbird"として始まり、現在の6人編成となったそうですね。メンバー紹介の意味も含め、今の編成に至るまでの経緯を教えてください。

アルナル・ロウゼンクランツ・ヒルマルソン:そう、ヴォーカルのナンナは、元々アコースティック・ギターを弾きながらソロ・パフォーマンスをしていた。そこにエレクトリック・ギターで加わったのが、ブリニヤル。二人はデュオとしてしばらく演奏していて、次にナンナのボーイフレンドの友人だったラッギが参加した。そして彼らも数か月間トリオとして活動していたんだ。ナンナが地元のアイスランドで行われた国内の音楽コンペティション"Musiktilraunir"にエントリーした時に僕が加わり、4ピースとして出場した。その時は、もっと静かなアコースティックなサウンドだったんだ。そのコンペティションで優勝してから、ライブを精力的にするようになったんだけど、演奏中に観客が大声で話すと曲が聞こえなくなってしまうことがとても気になっていた。だから、それをかき消せる様なパワフルなバンド・サウンドにしたくて、メンバーをもう2人増やして、6人編成に落ち着いた。でもピアノを演奏していたメンバーは、最近辞めてしまったんだ。

――ではバンド名のオブ・モンスターズ・アンド・メンの由来は?ジョン・スタインベックの小説『二十日鼠と人間(Of Mice and Men)』からとったものなのですか?

アルナル:そのコンペに応募した当時、バンド名がなくて、すぐに考えなければならなかった。何かいいアイディアがないかナンナがラッギに相談したら、彼はその頃マイスペースで、オブ・モンスターズ・アンド・メン名義でコミックを公開しようとしていたんだ。それを彼女に伝えたら、気にいったらしくこの名前になった。バンド名は、僕達が書く曲にも大きく影響している。もちろんメンバー全員、本のことは知っているし、ラッギも多少はそのことが頭にあったと思うよ。

――バンドの魅力の一つにナンナとラッギの息がピッタリなヴォーカルの掛け合いが上げられますが、これは自然と?

ラグナル・"ラッギ"・ソウルハッキソン:まったく計画されたことではなかったよ。最初から自然と息は合っていたけど、歌い方やパフォーマンスの仕方などお互いのことをもっとよく知ることによって、だんだんレベルが上がっていったのは間違いないね。だからこれからも、もっともっと良くなっていくと思う。

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デビュー作『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』

オブ・モンスターズ・アンド・メン『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』 インタビュー
▲「Little Talks」MV

――デビュー作『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』の作曲は、主にナンナとラッギの間で行われているそうですね。

アルナル:そうだね、主に彼らが書いていて、僕も3曲に携わっている。

――具体的にはどのように行われているのですか?

アルナル:リハーサル・スペースに各自アイディアを持ち寄って、他のメンバーのアイディアも加えながら、みんなで話し合いながら作っていくよ。

――アルバム・タイトル名の『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』も含め、アルバムには動物、想像上の生き物だったり、自然のモチーフが多く登場しますが、これらを題材にした物語を曲にするのは?

アルナル:動物やふわふわしたものが、メンバー全員好きだからね。僕の実家では犬を5匹飼っているんだ!

――では、アイスランドでのレコーディング時について教えてください。

アルナル:レコーディングは、すべてライブ・テイクで行おうと思っていたから、スタジオを2日間しかブッキングしていなかった。朝早く起きて、夜の12時ぐらいまで何度も曲を演奏して、一番いいテイクを選んで行った。翌日もほぼ同じことの繰り返しだね。作品の基礎となる演奏部分を録音し終えたら、今度は違うスタジオで2か月間に渡って色々な楽器の音を重ねっていった。その時はみんな大学へ行ったり、仕事をしていたから時間がある時にね。

オブ・モンスターズ・アンド・メン『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』 インタビュー
▲「Mountain Sound」Live MV

――その後アイスランド以外でリリースされたアルバムには新たにレコーディングされた「マウンテン・サウンド」と「スロウ&ステディ」の2曲が追加されていますね。この2曲は2000年代のトム・ウェイツの作品やノラ・ジョーンズの『ザ・フォール』のプロデューサーも務めたジャクワイア・キングとともに制作されたそうですが、彼のようなベテランと仕事をしてみてどうでしたか?

アルナル:プロデューサーとレコーディングしたいという思いはあったので、僕達の方から彼へ声をかけた。その時点で出来上がっていたバンドのサウンドを気に入ってくれたので、快くこの2曲をレコーディングするのを手伝ってくれた。名前が挙がったノラ・ジョーンズ、トム・ウェイツやキングス・オブ・レオンなど僕達が好きなアーティストを大勢手掛けていたし、とてもエキサイティングだったよ。才能豊かで、いい影響を与えてくれたね。1週間前に実際に会うことが出来たんだ。

――リード・シングルである「リトル・トークス」のミュージック・ビデオも素晴らしい出来ですが、この映像はどのようにして作られたのですか?

アルナル:こんな作品にしたいというアイディアは既にあって、何人かの監督に映像化する具体案を作ってもらったら、WeWereMonkeysっていうカナダの映像制作会社が見せてくれた写真やコンセプトが気に入った。そして僕達が想像していた作品に一番近いと感じた。ヴィジュアル面では彼らの影響がとても強いけれど、僕たち自身も実際にブルースクリーンの前で演技をしたり、顔にペイントを塗ったり色々なことをして制作過程に参加したよ。

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米ビルボード・チャートでの好記録、アルバムの反響

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▲ SXSW Recap

――デビュー作が昨年9月にアイスランドにてリリースされてから約1年、今年4月にはアメリカ、イギリスなどでリリースされ、米ビルボード・アルバム・チャートでは、初登場6位を記録しましたね。

アルナル:バンドの代言をすることは出来ないけれど、個人的にはとても驚いている。こんなにも色々なことが起きるとは、2年前には想像も出来なかったから。ましては、アメリカのチャートで好記録を出するなんて考えてもいなかったね。でも僕は、こういうことはあまり考えないようにしているんだ。もちろん嬉しかったけれど、そういうことばかりに気をとられているのも良くないからね。一つ一つ受け止めていって、自分が一番長けている音楽を演奏するということに集中している。

――成功した反面、困った点もあるのでは?

アルナル:彼女や家族と過ごす時間が少なくなってしまったというのはあるね。アイスランドと言う小さな島の出身で、このバンド加入前には、あまり島から出たことがなかったから特にね。彼らや犬たちのことは、毎日想っている。でも親友5人と自分が大好きなことが出来るのは素晴らしいことだし、ツアーの照明を担当しているのは、僕のいとこなんだ。

――今年は多くの主要音楽フェスティヴァルへ出演し、現在は大規模なアメリカ・ツアー中と言うことですが、今年印象に残っている出来事は?

アルナル:初めてアメリカでライブをした今年3月の【SXSWフェスティヴァル】かな。一番最初のショーは、小さな自転車屋で行われたんだけれど、大勢の人が観に来てくれて、曲の歌詞も知っていた。不思議な気分だったね。今でも鮮明に憶えているよ。

母国のアイスランド

――アイスランドは、そのヴァラエティ豊かな音楽性や濃密な音楽コミュニティで世界的に評価が高いですが、アイスランド出身ということの利点は?

アルナル:アイスランドの音楽シーンは、ユニークだと感じてくれている人が多いね。とても濃密で、僕たち自身も周りにいる多くのバンドにもインスパイアされている。小さなコミュニティということもあって、多くのミュージシャンは色々なバンドで演奏していて、みんなお互いのことを知っている。それも重要な影響の一つだ。友達のバンドと同じようなサウンドになってしまうことを避ける為に、他とは違うことをすることによって自分の音楽が進化して特別になっていく。活火山もあって、自然に溢れているから国自体に惹かれる人も多くいると思うね。だからこの素晴らしい国出身であるということは、バンドの活動を手助けてくれていると感じるよ。

――今注目している、または面白いアイスランドのバンドがいたら教えてください。

アルナル:僕の好きなバンドの多くはアイスランド出身で、Lay LowSoleyはいいね。彼らは僕たちとツアーもしたことがあって、他のバンド・メンバーも大ファンだよ。あとは、今度一緒にツアーをするアイスランドのフォーク・ロックを代表するMugison。今度是非インタビューをしてあげてよ(笑)。

――2013年1月には、東京にて初来日公演を行いますが、楽しみにしていることは?

アルナル:日本へ行くのは初めてで、ずっと行きたいと思っていたから、すべてを楽しみにしているよ。すごく遠い場所っていうイメージだったけど、実際は飛行機を1回乗り換えるだけで行けるんだね(笑)。僕自身のもっている東京のイメージが本当にそうなのか、時間があれば、色々見て歩きたいね。 多分間違っていると思うけれど(笑)。

――では、ライブはどのようなものになりますか?

アルナル:バンドと観客、一緒に楽しめるショーになると思うよ!観客には出来るだけライブに参加してもらいたいと思っているから、一緒に歌って、手拍子をしたり、ダンスしたり、ちょっとワルツもするかもね(笑)。

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