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<インタビュー>ルネ・マルタン、音楽の起源を探す旅を、それぞれの楽しみ方で

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 5月3日から5日までの3日間、丸の内の東京国際フォーラムを中心に今年も【ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024】が開催される。世界最大級となる本クラシック音楽祭は、今年で東京開催17回目となる。4年振りにフランス・ナントのオリジナルテーマと足並みを揃える、2024年のテーマは「ORIGINES(オリジン)——すべてはここからはじまった」。

 今回、青春をジャズとロックに捧げていたという【ラ・フォル・ジュルネ】アーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタンにインタビュー。おすすめ公演から、音楽の歴史全体を見渡すような、今回の壮大なテーマについても、詳しく話を聞いた。(Interview & Text:山下実紗)

※本文の括弧内の番号は、ホール-公演番号

音楽の“オリジン(Origines)=起源”を辿る冒険へ

――2023年の【ラ・フォル・ジュルネ TOKYO】は、コロナ禍を経て4年ぶりの開催でした。そして2024年は、久しぶりにフランス・ナントのオリジナルテーマ「ORIGINES(オリジン)」と足並みを揃えての開催となります。東京公演への意気込みはいかがでしょうか。

ルネ・マルタン:ナントは大成功だったと言っても過言ではないでしょう。会期中は皆さん「すごい、こんなの知らなかった!」と発見の日々だったと思います。その発見の中には知らない曲やジャンルだけではなく、若手のアーティストの発掘というのもあります。東京公演でも大きな反響がもらえるのではないでしょうか。初来日アーティストもたくさんいますので、楽しみにしていてください。


▲LFJ2024ナント開催の様子

――“オリジン(Origines)=起源”は、様々な発見がありそうなテーマです。選ばれた経緯を教えてください。

ルネ:今年は東京での初開催から20年経つんです。だから、この20年のコンサートで提供してきた作曲家たちを一堂に集めたら、どんな感じになるのかということを考えたいと思いました。

 まず、作曲家の一覧表を作りました。そうしたらまさに「これは西洋音楽の歴史そのものではないか」と思ったのです。クラシック音楽の起源と言われる、中世から今日の作曲家までが並んでいて。そこで「12世紀の音楽から今までのことを、全部語ってみたらどうか」と考え、このテーマにしました。

 中世のトルヴァドール——吟遊詩人が、当時、練り歩きながら音楽を奏でていたのを再現するところから始め、ルネサンスに移ってイタリアの音楽になっていく。バロック期になると、ヴィヴァルディの《四季》は外せない。そしてモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン……と、だんだん外せない人だらけになるわけです。

 【ラ・フォル・ジュルネ】の一つの柱として、“新たな発見をしてもらう場”というものがあります。プログラムの独特さに驚かれる方も多いでしょう。来ていただけるご家族連れ、お子様方、またクラシック音楽ファンの方には豊かな経験を新発見、再発見していただけるのではないかと思います。様々な好みに、全部対応できるようなラインナップにしたつもりです。

―― 伝統音楽の公演なども、音楽のオリジンを探究するという目的で選曲されたのでしょうか。

ルネ:伝統音楽とくくられるものは、今までの著名な作曲家も含めて、みんなが影響を受けた音楽だと思っています。このような音楽は【ラ・フォル・ジュルネ】でも今回初めてお届けします。私にとって、素晴らしい冒険です。


▲ルネ・マルタン(c)Kaori Nishida

真冬のナントを熱狂させた【ラ・フォル・ジュルネ2024】

――2月4日に、同テーマで開催されたナントの【ラ・フォル・ジュルネ】が閉幕しました。会期中の様子をお伺いさせてください。

ルネ:来場者数は過去最高で、雰囲気は最高でした! 会場から出てくるお客様は「すごく驚いた!」という感じでした。

――その中でも、マルタンさんが特に盛り上がったと思う公演を教えてください。

ルネ:レ・イティネラント(C-124, D7-136, G409-347)というア・カペラトリオのコンサートです。3人の女性歌手が音楽史全体を語る感じで、とても詩的ですし、音楽性も豊かです。感性に訴えかけ、心の琴線に触れるようなコンサートでした。


▲レ・イティネラント(c)IsabelleBANCO

 日本でも、様々な聴きごたえがある公演がありますよ。亀井聖矢さんによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(A-115)ですとか、リヤ・ペトロヴァという素晴らしいヴァイオリニストのコンサートもあります(A-214, D7-332)。24歳のサックス奏者、ヴァランティーヌ・ミショーという方もいらっしゃいます。そういった才能あふれる若者たちに会いにいくという機会にもなればと思います。

 ナントに出演したアーティストが東京で公演することもあるので、新しいアーティストたちを楽しみにしていてください。大反響が巻き起こるのではないでしょうか。モーツァルト(A-313)、ベートーヴェン(A-112)、ショパン(A-312)のピアノ協奏曲たちや、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(A-113)もオススメです。

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どんな人でも楽しめるクラシック音楽祭を実現する【ラ・フォル・ジュルネ】

――2月15日に行われたトーク・サロンを拝見しました。

ルネ:とてもたくさんの公演を、おすすめしました!

――私は、初日の【0歳からのコンサート】(A-111)がとても楽しそうで、興味を惹かれました。誰もが知っている“名曲コンサート”ではなく、体を動かして楽しむという選曲ですね。

ルネ:赤ちゃんたちに、豊かな時間、ご褒美をもらったような時間を過ごして欲しいと思って選びました。マルケスの「ダンソン No.2」という曲や、「ウエストサイド・ストーリー」からシンフォニック・ダンスなどを奏でる予定ですので、贅沢なコンサートになると思います。これらはリズム感がとてもあって、色鮮やかで、子供が音を聞いてニコって笑ってくれるような、一緒に歌いたくなるような作品ですよね。

――子供に聞いて欲しい音楽について、マルタンさんならではの“こだわり”を感じました。

ルネ:そうですね。子供はすぐに飽きてしまうので、ハッと思わせる音楽や楽しそうな曲を選ばなくてはと思っています。子供にとって、音が鳴ることが「パーティだ! お祭りだ! 何か嬉しいことが起こってるんだ!」って思ってくれるような公演にしたいですね(笑)。

――子供だけではなく、大人から子供までどんな人でも楽しめる音楽祭を【ラ・フォル・ジュルネ】では実現していますね。

ルネ:“クラシック音楽”という言葉を聞くだけで、すごく壁が高くなり、「これは私向きではないかもしれないな」といった先入観を持つ方もいらっしゃると思います。そういう障害物を全部とっぱらって、音楽は誰にでも身近にあるものって思って欲しかったのです。

 20年前、東京で【ラ・フォル・ジュルネ】を初開催した時に驚いたことがあります。それは、日本とフランスのお客様の反応が全く同じだったことです。国民性や国境は、全く関係ないんだと感じいました。アーティストからも、東京で演奏すると、ベルリンなど世界中の大都市で演奏しているのと同じ感覚になるということを耳にします。音楽には言葉の壁がないということですね。

――Billboard JAPANの読者向けに、今回のおすすめ公演を教えてください。

ルネ:トロンボーン奏者・中川英二郎のTRAD JAZZ COMPANYが、北村英治(cl)、外山喜雄(tp・vo)をゲストに迎え、ジャズの“オリジン”のひとつであるディキシーランド・ジャズを披露してくれます(C-123)。またロックフェスでも大人気のBLACK BOTTOM BRASS BANDは、ジャズの起源のひとつと言われるニューオリンズ・スタイルで演奏します。躍動感と祝祭感いっぱいのひとときになりそうです(D2-237)。


▲中川英二郎TRAD JAZZ COMPANY

 そして日本のジャズ界のレジェンドとも言えるピアニスト、山下洋輔さんも【ラ・フォル・ジュルネ】に初登場してくれます。ラヴェルのボレロなど、テーマ「ORIGINES」にちなんだ楽曲をモチーフに演奏してくれるとのことなので、楽しみですね。(C-326等)


▲Black Bottom Brass Band

 また、先ほど紹介したフランスの若い女性サックス奏者、ヴァランティーヌ・ミショーの公演はとてもおすすめです(C-223)。スウェーデンの作曲家アンデシュ・ヒルボリの、すごく不思議で面白い、びっくりするような作品を演奏してくれます。またヴァランティーヌとその弟、パーカッショニストのガブリエル・ミショーも登場する公演(G409-147, G409-246)では、才能あふれる2人の演奏を堪能できる時間になると思います。

――最後に、Billboard JAPAN読者へメッセージをお願いします。

ルネ:Billboard JAPAN読者の皆様は、とても好奇心旺盛で、いろんなジャンルの音楽がお好きだと思います。今年の【ラ・フォル・ジュルネ】に、ぜひ足を運んでください! ここにしかない雰囲気を体感できたり、知らなかったアーティストを発見できたり、すごく驚かれるでしょう。きっと一緒に来たご友人たちと「ラ・フォル・ジュルネに行けてよかったね」という感想をお持ちになると思います。お待ちしています。

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