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<インタビュー>3年連続のビルボードライブ公演を行う涼風真世、低音から高音まで魅了する歌声を支えてきたものとは──

インタビューバナー

 「七色の声をもつ歌の妖精」と称され、宝塚歌劇団月組トップスターとして一時代を築き、退団後も女優・歌手・声優として幅広く活躍してきた涼風真世が、3年連続で春のビルボードライブ横浜に登場する。2021年に40周年を記念したアルバム『Fairy ~A・I~ 愛』をリリース。奥行きのある低音から透き通った高音まで自在に操り、コーラスまですべて自身の声で収録した渾身の一枚は大きな反響を呼び、その後もさまざまなステージで挑戦を重ね、傑出した歌声に深みが増している。2024年4月19日開催の【涼風真世 The Fairy ~LOVE&HOPE~】(ライブ配信もあり)ではどんな歌声を披露してくれるのか。近年の活動を振り返っての想いや、今年のライブで届けたいこと、声や喉との新たな向き合い方などじっくり語ってくれた。(Interview&Text 小野寺亜紀)

“歌う”ことが大好きで、この仕事が天職だと実感した3年

――40周年記念アルバム『Fairy ~A・I~ 愛』は、涼風さんの40年の想いや唯一無二の声の魅力が詰まっていましたが、今あらためてこのアルバムを手にして感じることはありますか?

涼風真世(以下、涼風):「私は足跡を残せたのだろうか……」と感じる40年だったのですが、アルバムの限定版に付属した「デビュー40周年記念Special Photo Book」(活動年表やロングインタビュー、撮り下ろし写真を掲載)を見ると、自分の過去・現在をたどり、未来を見つめることができましたし、アルバムそのものが、私にとってのターニングポイントになっていると感じています。

――それからの3年を振り返るといかがですか?

涼風:あっという間の3年でした。新型コロナウイルスの影響で1年延期となりましたが、2022年に40周年記念コンサートをビルボードライブさんで実現できたことが、とても幸せでした。コロナ禍の生活であらためて“歌う”ことに向き合い、自分は“歌う”ことが大好きで、この仕事が天職だなと感じた時間でもありました。

――そうなのですね。昨年はシアタークリエで開催された【M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~】に出演され、以前インタビューで「潜在的に演じてみたいと切望していた」とおっしゃったトート(舞台【エリザベート】)の楽曲を長髪のウィッグを着けて歌われるなど、新たな挑戦もありました。

涼風:トートを演じたことは一度もないのですが(笑)、トートとして花總まりさんのエリザベートとデュエットできたことは本当に夢のような時間でした。花ちゃんエリザベートをすんなり受け入れている自分に驚きもありましたし、時空を超えた花ちゃんと私の世界がそこにあった……、という不思議で幸せな感覚を味わったデュエットでした。

――今年はトーク&コンサートイベント【Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-】で、山口祐一郎さんをはじめ、共演経験の多い方々との歌や、舞台裏などのエピソード満載のトークが新鮮でした。

涼風:皆さんとのトークは、初めて聞くエピソードばかり。トークの打ち合わせはなく最初は緊張したのですが、ドキドキが20%、ワクワクが80%という感じでとても新鮮でした。包容力や温かさ、愛らしさのある山口祐一郎さまの、すべてを包み込んでくださるオーラの中で許された貴重な時間だった気がします。

――そんないろいろな舞台を務めてこられた涼風さんのソロライブが、今年もビルボードライブ横浜で行われます。毎年4月という、スタートの季節というのが素敵ですね。

涼風:そうですね。最初にビルボードライブさんからお話を頂いた4月という季節は、皆さんにとっても私にとっても新たなるスタートという感じで、身の引き締まる思いですし、とても嬉しいです。今年は新型コロナウイルスが5類に移行して初めての、マスクの制限なしのライブなので、今からワクワク、ウキウキが止まりません!  昨年から、ライブの前日にファンミーティングと、少し内容を変えた後援会の皆さま限定のライブも開催していて、今年も18日に予定しています。ファンの皆さまと私の特別な時間、今年も思い出をたくさんつくれるよう……頑張ります。


🄫mk@jeepster


――涼風さんにとってファンの方たちの支えは、この3年間も大きかったですか?

涼風:とても大きかったです。自分が皆さまに影響を与えているというよりは、私が皆さまからの温かい影響を受け、“生きている”と実感しています。

――昨年のライブでは「お客様のお顔がよく見える」とおっしゃっていた覚えがありますが、ビルボードライブ横浜の印象についてお聞かせください。

涼風:2年前のライブのときに初めて足を踏み入れて、「なんて素敵な空間なんだろう」と、ここで歌える喜びをとっても感じました。どの劇場もそういう感動や気持ちはあるのですが、今の涼風真世にピッタリの空間というか、一番心地いい会場のような気がします。スタッフの皆さんの温かさもそうですけど、私の気持ちを届けるうえでも心地いい……。そして2年前は、コロナ禍からのリスタートの場でもあったので、やはり特別な感動が心に残っています。

――昨年のライブは【The Fairy ~新たなる一歩~】と題して、女優として一歩踏み出された頃のミュージカルナンバーから、宝塚歌劇の楽曲、声優を務められた『るろうに剣心』の緋村剣心の曲など幅広い選曲でした。

涼風:ミュージカルの楽曲は、宝塚退団後に培った、自分の新たな声(ファルセット)との出合いの場でもありました。そして緋村剣心の「不殺(ころさず)の誓い」は男役で培った声を新たに見つめ直し、低い声をつくり直してお届けした一曲です。また、オリジナルの歌は役柄を演じるのでもなく、男役の声をなぞるのでもなく、今の「歌手・涼風真世」としての素の声をお届けする想いで歌いました。

――自ら作詞された「A-YU-MI(歩み)」や、「空だけはそこにある」を歌われましたね。この2曲は特に涼風さんご自身を表しているように感じる素敵な曲です。

涼風:ありがとうございます。「A-YU-MI(歩み)」は、今回のライブでも音楽監督とピアノを担当してくださる三枝伸太郎さん作曲。彼はまだお若いのですが、昭和の時代も生きてらっしゃったのではと思うぐらい、キャパシティーが広く、安心感があり、私の気持ちをとても汲んでくださるんです。200%の信頼をあずけています(笑)。

――今年も信頼を寄せるメンバーでつくるライブなのですね。

涼風:はい。私の周りの方は私に対して「No(ノー)」という言葉を使う方がいないんです。皆さん私の相談に対して「Yes(イエス)」もしくは「努力します」と。皆さん宇宙人なのかもしれない、なんて思います。「チーム妖怪」と呼んでいるのですが、懐が深く、頼りがいのある方々の集団です!

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懐かしのCMソングから、男女両パートを歌い分けるミュージカルナンバーまで

――今年のライブはどのように準備を進めていかれたのか教えてください。

涼風:昨年のライブが終わった直後から、私の中では「来年はこういうことをやりたい」「こんな歌を歌いたい」という思考へ変化していって……。43年目に歌いたい楽曲を考えたとき、やはり涼風真世の3オクターブの音域を考えて選曲しました。自分の武器でもある低い声から高い声までを聴いていただける曲として、ミュージカル楽曲では男性パートと女性パートをご披露する2曲を歌おうと考えています。

――それは涼風さんならではですね!  ほかにもこだわりの楽曲はありますか?

涼風:今年のライブでは、昭和・平成を振り返るというのも私のなかのひとつの流れなんです。昭和生まれということもあり、普段口ずさむ曲は昭和の歌が多くて、それを企画として出し、懐かしのCMソングをメドレーで歌います。


🄫mk@jeepster


――初めて歌われる歌も?

涼風:あります。ぜひ楽しみにしていただければ! 皆さまにも“あの日、あの時”を一緒に振り返っていただき、心に響くメロディをともに口ずさんでいただけたらと思っています。先ほども申し上げた通り、今年はマスクの制限なしのライブなので、昨年までは「花は咲く」も「心の中でご一緒に歌ってください」とお伝えしましたが、ぜひ今年は皆さまも口ずさんでいただければと思っています。

――同じく昨年も披露された「地球の涙」は40周年記念アルバムで書き下ろされた曲で、涼風さんと宝塚時代からご縁のある演出家の小池修一郎さんが作詞を、SUGIZOさんが作曲をされた曲ですね。「この地球が 叫んでる」という歌詞など、今聴くとさらに深く迫ってくるものがあります。

涼風:時代を超えていろいろなことを投げかけられている歌詞とメロディですよね。私に携わってくださる方は、生が終わったのちの天界まで見据えて、今を生き、未来を見つめていらっしゃる方が多いのかもしれないと感じています。

――いろいろなものは残っていきますし、“今”だけではないということですね。ライブのタイトルにある “LOVE&HOPE” に込めた想いも伺えますか。

涼風:いつも私を応援してくださっている方々が、私に“愛”と“希望”を与えてくださっているので、その“愛”と“希望”をお返しできたらと思って、このタイトルにしました。

――皆さんからの“愛”と“希望”をいつも頂いている、と感じてのタイトルだったのですね。

涼風:はい。あらためてそう感じたのが、ビルボードライブ大阪とビルボードライブ横浜という空間でのライブです。コロナ禍を経て再出発した“あの日、あの時”でした。自分を見つめ直す大きなきっかけになりました。

――40周年アルバムにも“愛”という言葉が入っていますし、やはり涼風さんにとっては大きな意味のある言葉なのですね。

涼風:がむしゃらに突き進んできた日々を、変わらず応援してくださった皆さまとの時間はとても大切で、歳を重ねても変わらないものがあるのだなと深く感じています。若い頃とは変わらない気持ちでいても、やはり喉も声も変化していってるんです。よく『変わらないね』とおっしゃっていただくのですが、変わってるんですよ(笑)。63歳という身体、喉の衰え……。だからこそ、発声やトレーニングを自分なりに見直しています。

――「衰え」とおっしゃいましたが、今年の【Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-】でミュージカル【貴婦人の訪問】から大ナンバー「正義」をまた歌われたとき、さらにパワーアップしているのを感じました。

涼風:ありがとうございます(笑)。以前はがむしゃらに「歌えるだろう」と突き進み、「どうしてこの声が出ないんだろう」と課題にぶつかれば、ボイストレーニングの先生にご相談し、舞台を務めていたのですが、最近は自分の声を自分が理解し、自分で深めることが大事なのだという原点に立ち返っています。筋肉は何歳になっても鍛えると再生すると思うので、あらためて喉の筋力、体力をつけ直しています。

――具体的にどんなことをされているのですか?

涼風:いつもキーボードをそばに置き、「寝起きにこの声が出るな。昼間はこの声だな」とか、「今日は地声がこの音域で、ファルセットはこの音からだ」とか、自分のコンディションによって変わる声の変化を発見していきます。声ってすごくデリケートなんです。力が入るとかたくなってしまうので、なぜ喉の筋肉の収縮が起きるのか、深く追究するようになりました。昨年のファンミーティングの際には、筋肉のほぐし方や、発声の仕方なども披露しました。

――40年以上歌い続けてこられた涼風さんならではのレクチャーですね!

涼風:私だけのボイストレーニングを生み出したのかもしれないです(笑)。

――今年のライブでもまた深化した歌声が聴けそうで楽しみです。19日のセカンドステージではライブ配信も予定されています。最後に現地でのライブや配信を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

涼風:懐かしのCMソングメドレーやミュージカルの曲、宝塚時代の歌、そして歌手・涼風真世の曲まで多岐にわたるセットリストになっています。「昔、妖精。今、妖怪」の涼風真世が(笑)、皆さまと会場の空間や配信を通して、生のライブを分かち合える特別な時間にできたらと思いますので、ぜひ楽しんでください。


🄫小林邦寿


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