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女性は生きづらい?ジェンダーギャップ調査2023~Billboard JAPAN Women In Music



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 ビルボードジャパンが2022年よりスタートした【Billboard JAPAN Women In Music】。音楽業界のチャートやフェスなど、様々な場面においてジェンダーギャップが存在することに着目し、音楽業界そして社会全体のジェンダーギャップを是正していこうという取り組みだ。ワークショップや、インタビュー連載、ライブシリーズなど、様々なタッチポイントを設け、パートナー各社とともにブラッシュアップを続けている。

 昨秋、ジェンダーギャップをテーマにしたアンケートを実施。その調査結果を報告する。

レコード会社で働く人たちのジェンダー比

 まず、1つ目の調査はレコード会社で働く従業員のジェンダー比率だ。



図1:全スタッフの男女比
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図2:年代別の男女比
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図3:雇用形態別の男女比
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 図1では、従業員全体の男女比を示した。それによると、男女共同参画局が発表している「産業別就業者の女性比率」の全産業とほぼ同じ、女性45% 男性55%であることが分かった。また、年代別男女比では20~30代は女性が多く、40代を境に男性が多くなるという結果に。

 そして、雇用形態別に見ると正規雇用の男女比はほぼ同じだが、非正規雇用は女性が多く、管理職、役員に関しては男性が多くを占めることが分かった。なお、2023年7月に厚生労働省から発表された「令和4年度雇用均等基本調査」によると、正社員・正職員の男女比率は男性が73.1%、女性が26.9%で、本調査の参加企業の方が正規雇用における女性の割合が高かった。また、管理職の男女比においては、厚生労働省の調査では22.9%と本調査結果とほぼ変わらない結果となっている。

 本調査を通じて、40代までの正規雇用、非正規雇用では女性比率が高い一方、おそらく40代以上が多くを占めているであろう管理職、役員は女性比率が低いことが分かった。ライフステージの変化によって、女性が昇職しづらいという社会問題は、音楽業界においても共通の課題であると言えるだろう。

※調査対象数:15社(有効回答数:8社)
※調査方法:当社からメールにて調査票を送付し、オンラインにて回収。
※今回のアンケートでは人数ではなく、各社の男女比率のアンケートを実施したため、本結果は各社の人数の推定値に基づいたものとなっており実際の結果とは異なっている場合がございます。

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  2. 「ジェンダーギャップに関するアンケート調査」
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ジェンダーギャップに関するアンケート調査

 続いて、2つ目の調査はジェンダーギャップをテーマにしたアンケート結果だ。ビルボードライブの来場者721人に対し、アンケートを行った。まず、回答者の性年代および職業は以下の通り。なお、以下の通り回答者の各性年代の人数は異なるため、アンケート結果を分析する際に、カイ2乗検定など統計学的な手法を使用し各質問項目の相関関係を検証した。

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Q1.普段の生活で、ジェンダーギャップを感じることはありますか?

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 年代別に見ると60代以上より、20代や30代の方がギャップを感じているという結果になった。なお、性別によって感じ方に大きな違いは見られなかった。

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 また職業別に比較すると、専門職が最もギャップを感じており、無職および会社役員は最もギャップを感じていないという結果になった。ただ、いずれも68%~80%がギャップを感じていることから、職業によって感じ方に大きな差は見られなかった。

Q2.どのような場面でジェンダーギャップ(男女格差)を感じますか?(複数回答可)

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 ジェンダーギャップを感じる場面について、男性が最も感じるのは「仕事の内容」であり、次いで「昇進や給料など、仕事における待遇面」だったのに対し、女性は「家事の分担」が最も多く、2番目は男性と同じく「仕事における待遇面」、3番目は「子育て」という結果に。比較的、男性は仕事について、女性は家庭と仕事の両方でギャップを感じていることが分かった。

Q3.「男性(女性)だから」「女性(男性)らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?

「男性だから」「男性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?

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「女性だから」「女性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?

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「男性だから」「男性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?(年代別)

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「女性だから」「女性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?(年代別)

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 生きづらさに関する質問については、男性は「いいえ」が多い一方、女性は「はい」が多いという異なる結果に。

 さらに年代別にみると、男性は年齢を重ねるにつれて、生きづらさを感じる人が減少し、女性は30代、40代が生きづらさを最も感じていることが分かった。

「男性だから」「男性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?(職業別)

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「女性だから」「女性らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?(職業別)

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 また、職業で見てみると会社員・会社役員は、男性より女性の方が生きづらさを感じており、他の職業は生きづらさについて性差は見られなかった。Q2とQ3の回答を照らし合わせると、男性より女性の方が生きづらさを感じており、30~40代の家庭と仕事の両面におけるジェンダーギャップが要因となっているようにみえる。

Q4.日常生活において「女性(男性)であること」が、どう影響すると感じていますか?

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日常生活において「男性であること」が、どう影響すると感じていますか?(年代別)

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日常生活において「女性であること」が、どう影響すると感じていますか?(年代別)

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 男性よりも、女性の方が、自身の性別を不利だと感じていることが分かった。また年代別に見てみると、男性は30代と40代は「やや有利になる」と「とても有利になる」と感じている人が半々だったが、50代、60代と年齢が上がると「やや有利になる」と「とても有利になる」の方が多い結果になった。一方、女性は、20代は「やや有利になる」と「やや不利になる」が半々だったが、30代になると、「やや不利になる」と「とても不利になる」の合計が78%という結果に。それ以降も、不利になると感じている人が半数以上を占める結果になっている。

「男性(女性)だから」「女性(男性)らしさ」という固定概念やプレッシャーにより、生きづらいと感じることはありますか?

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 最後に、これまでの3つの質問の相関関係を見てみると、ジェンダーギャップを感じている人は、感じていない人に比べて、生きづらさを感じている人が多かった。そして、男女ともに生きづらさを感じている人は自分の性別を不利だと感じている人が多いことから、生きづらさと、ジェンダーギャップには相関性があることも分かった。

 これまでの調査結果から、ライフステージの変化が起きやすい30代の女性のうち70%、男性の64%が生きづらさを感じていたこと、1つ目のアンケートに回答した企業に所属する30代は女性が57%、男性は43%を占めていたことから、レコード会社に所属する30代の約67%が生きづらさを感じている可能性があると、推測できる。

 また世界の音楽市場では、デジタルの売上が全体の7割を占める一方、日本はストリーミング売上が増加しているとはいえ、いまだCDが過半数を占めている。そしてCDセールスの多くはボーイズグループの作品が占めており、彼らを支えるファンダムの中心は女性だ。ビルボードでは、女性アーティストのライブやメッセージを通じて、この【Billboard Women In Music】に取り組んできたが、女性をエンパワーする方向と実態に、ねじれが生じているかもしれない。女性であることに生きづらさを感じているのであれば、それは大きな社会的損失だ。そして、それを解決することに対しては、男性にとっても女性にとっても異論はないのではないだろうか。そのためのアクションは、どうあるべきだろうか。

 ビルボードジャパンでは、このような調査の発信も含めて、この問題に向き合い、様々な取り組みを行っていく。

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  2. 「ジェンダーギャップを解決するために、必要なアクションとは?」
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Q4.ジェンダーギャップ(男女格差)を解決するために、どのようなアクションが必要だと思われますか?ご自由にお書きください。

 今回のアンケートの自由記述では463人の方から回答を受けることが出来た。最後に、その一部を紹介する。なお、筆者個人としては異論もあるご回答も頂いたが、あえて除外せずに取り上げさせて頂いた。ご協力頂いた皆様に心から御礼を申し上げます。


・昇進や昇給など、育児などで現場から離れれば、男女関係なく遅れるのは当然です。男性が女性がではなく、法整備や会社の福利厚生、約款整備で多種多様な選択肢を充実させ、格差のない、もしくは格差を許容できる制度整備が必要であると考えます。(30代・男性・会社員)

・相互理解、当事者意識の醸成、自身にあるバイアスに自覚的になること。(30代・女性・会社員)

・男女の違いを、お互いが理解し受け入れること(30代・男性・専門職)

・年代的なこともあるかと思いますが、まずは固定観念をなくす事が最低限のスタートラインだと思います。先日文房具コーナーで、小さな男の子がピンク色のペンやノート、キラキラのシールなどを選んでいるところにお店の方が『男の子用コーナーはこっちにあるよ』と、声をかけて青や緑色のコーナーを案内していました。小さな頃から好きなものを否定せず、尊重して大切にしてあげることが必要なのでは?と思いました。(40代・女性・会社員)

・対立を生まない対話(40代・男性・会社員)

・男性の働き方を変える(働きすぎ)(40代・女性・会社員)

・好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとはっきり言えるなど、何事にも主張ができ、またそれを尊重できる教育の場。(40代・男性・会社員)

・子育てにおける社会インフラの整備、ジェンダーギャップ以上に子供を産む女性と産まない女性、結婚しない女性など、子供の有無による女性間でのギャップそのものが大きい。産まない選択をする事がジェンダーギャップをなくそうとする社会において有利に働くことも、かえってジェンダーギャップを感じる要因となっていると思う。(50代・男性・会社役員)

・とにかく男性の意識改革、家事・子育ての分担、長時間労働(飲みニケーション含む)の短縮、性教育の充実、高齢男性中心の自民党政治を終わらせること‥その他書ききれないです。30年前、私が結婚を考える頃、そのうち選択的夫婦別姓制度が始まるから、と言われていましたが、それすらまだ実現されていません。どれほど色々不便を強いられているか。どうして日本はここまで格差が大きいのか。今20代の娘の将来を考える絶望的な気持ちになります。(50代・女性・職業その他)

・教育現場と家庭での意識改革(50代・男性・会社員)

・ジェンダーギャップを意識するから格差は増える。男女に差はあって当然なので、それを無理に変えようとしないのが1番良い(50代・女性・主婦)

・国会議員の女性比率を決めている外国の例の様に、歴史的等の理由で歪んだ男女比の存在する事項に関して、激変緩和措置として段階的に男女比を50:50になるように法律などで強制的に歪みを矯正する。(60代・男性・自営業)

・ジェンダーギャップを具体的に見えるようにすること(60代以上・女性・会社員)

・互いを尊重すること。(60代以上・男性・自営業)

・体格の差や生理の有無など、性差はどうしてもあるものであり、それを理解し、お互いの立場を思いやり、協力することが必要。(60代以上・女性・会社員)

※調査対象:首都圏近郊の男女
※有効回答数:721人
※調査方法:当社からメールにてアンケートフォームを送付し、オンラインにて回収。

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