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<インタビュー>Cö shu Nie「何かのきっかけになるのって、ものすごく強いエネルギーのもの」――新しい扉を開いた新曲「Burn The Fire」

インタビューバナー

Interview & Text: 高橋智樹


 〈Burn the fire rage inside/その導線に火をつけろ 殻破れ足枷棄てろ〉……聴く者の衝動をダイレクトに震わせるCö shu Nieの最新デジタル・シングル「Burn The Fire」は、ダンサブルなグルーヴとアリーナ級のスケール感を備えた、Cö shu Nie新次元のロックナンバーだ。が、この楽曲を生み出すに至った方法論は、いわゆる“ロックバンドのロックナンバー”とは一線を画している。ブレイクビーツの生音カバー動画で注目を集めたドラマー、ラッセル・ホルツマンとのコラボによる、ブレイクビーツ/ジャングルビーツ/ブレイクダウンを生ドラムで再現するという異色のアレンジが、この「Burn The Fire」に紛れもないロックの焦燥感と切迫感を与えているし、何より“他の何者でもない自分たち自身”を体現するCö shu Nieのアイデンティティを明確に伝えている。

 9月に行われた約1年半ぶりの全国ツアー【unbreakable summer】を通して「Burn The Fire」を披露し、アレンジをよりいっそう磨き上げたうえでレコーディングに挑んだというCö shu Nie。2024年秋リリース予定の新作アルバムに向けて楽曲を次々に生み出しながら、ライブバンドとしてもさらなる進化を続けている中村未来&松本駿介に、Cö shu Nieの現在地を語ってもらった。

やっと“ほぼ生”でツアーをまわれた

――【unbreakable summer】、僕は9月30日、Zepp DiverCity (TOKYO)のファイナル公演を拝見したんですが、Cö shu Nieの表現の可能性を更新する意欲的なツアーでした。改めて今、ツアーを振り返って思うことは?

中村未来:今回のツアーがすごく久しぶりだったこともあるんですけど……久しぶりに“こしゅらー”(Cö shu Nieファン)たちの顔を見て、私たちの音楽を聴いてくれてた人たちと、また繋がり直せたなって。それと同時に、今回のツアーは新曲もやっていて、Cö shu Nieの移り変わりみたいなものを、自分たち的にもかなりアップデートできている実感もあって。編成も4人になって――ずっとやってみたかったんですよ。夢が叶ったみたいな。やっと“ほぼ生”で演奏できているというのは感動ですね。

松本駿介:このツアーは9月1日から始まったんです。1か月間だけど、この4人でかなり骨太なバンドになれたなあって感じましたね。あと、サポートメンバーがしっかりCö shu Nieを愛してくれているからこそできたなあ、と振り返って思うし。1公演目から熱量が変わらず、どんどん上がっていく感じでできたので。いいツアーだったと思いますね。


――2023年4月の東阪ビルボードライブ公演【A cöshutic Nie Vol.3】も、サポートでピアノとドラムを迎えた4人編成でしたけど、バンドセットではこれまで3人編成で、4人編成でのツアーは今までなかったですよね。ドラムの大津資盛さんも、ピアノ&ギターのbejaさんも、まさに奇跡的な顔ぶれでした。

中村:そうなんですよ。【A cöshutic Nie】になると、あれはあれで別物としてやっているんですけど、バンドセットのライブはそれとも違う、スピーカー芸術的な音の作り方をしているから。「この楽器がここで鳴ったら、こっちの楽器がここで鳴る」っていう――旋律のパズルみたいな感じなので。その分シビアになっていて、だからこそ今回やっとできたのが嬉しいですね。特に私は、すべてのフレーズに関して、何がどのタイミングで来るのか完璧にわかっているので、それがズレてくることに最初は抵抗があって。だから、再現度をとても高めた状態でサポートの2人にはツアーに臨んでもらいました。「ここで音を切って」「ここは伸ばして」みたいなことを、bejaともかなり細かく打ち合わせをしましたし。



Photo: 河本悠貴

バンドって、アンサンブルを見せてなんぼ

――今は同期を鳴らしながらバンド演奏をするケースも普通にあるわけですけど、Cö shu Nieとしてはこの、生演奏から生まれるものを追求したいんだろうな、というのは強く感じました。

中村:そうですね。やっぱりバンドって、アンサンブルを見せてなんぼだと思っているので。グルーヴが生まれるし。同期と言っても私が弾いているので、そういう意味でのグルーヴはあるんですけど、やっぱり作った時のものと「今、生で起こっていること」との差があると思うんですよ。演奏のタッチ感とかも全部含めて。そういうものが、全部活きてくると思いますね。プレイヤーの演奏になると、もう全然違う。それはずっとやってみたかったことで。全然まだまだ、やっと第一歩って感じですけど、すごく大きい一歩だと思いますね。


――そんなライブの中で、今回の新曲「Burn The Fire」も披露されていました。音楽的にはものすごく緻密な要素が絡み合っていながら、ダイレクトなメッセージも込められていて、全体としてはスケールの大きなロックナンバーとして響くという、不思議な構造の楽曲ですよね。

中村:そうですね。ブレイクダウンまでやってますからね。


――ブレイクビーツありジャングルビーツあり……というこのリズムも、生で叩いてるんですよね?

中村:生でやってるんです。もちろん、最初は打ち込んでたんですけど、「これ、生でできたら最高だな」と思って。私、「このドラマーやばいな」みたいな情報交換を友達とずっとしてるんですけど。その中でも、今年のフジロックにも来ていたキャロライン・ポラチェックの後ろで叩いてた、ラッセル・ホルツマンっていうドラマーが――ブレイクビーツを生で演奏して、それをSNSにアップしている人で。その人に頼んでみようと思ってお願いして、フジロックも観に行って。今回、実際に叩いてもらいました。


――ライブでこの曲を演奏する前のMCで、「ツアー途中まではデモ版、最後の3公演は完成版」と話していました。どの辺が変わったんでしょうか?

中村:もう、全然違います。シンセの音色も違うし、アレンジの入り方も違うし。シーケンスのベースが変わってるんですよね。フレージングも変わって、生ベースのフレーズを右左のスピーカーで足したりして……。基本的な構成とかは最初から変わらないんですけど、(その他が)どんどん変わっていったので。メンバーにも、途中から完成版での演奏に変えてもらいました。さらにライブでは、音源に入ってないギターを足したりしていたので。この曲自体はすごくロックなのに、音源にはあんまりギターが入ってないんですよね。


――ああ、確かに。イントロの印象的なリフにはギターの存在感がありますけど、ギターの音圧で押すようなタイプの曲ではないですよね。

中村:でもロック曲でしょ? 「SAKURA BURST」もすごくロック曲なんですけど、音源にはギターは入ってないんですよね。ギターは好きなので、入れられるところにはガンガン入れていくんですけど……使い方が変わった感じですね。「Burn The Fire」のギターはほんと、おいしいとこ取りをしてる感じなんですよね。隙間もあって、面白い音作りになっていると思います。



――で、ブレイクビーツを生でやってるからこその焦燥感もあって。

中村:そうですね。生き急ぐ感じというか。で、サビで広がる感じ。

松本:音色も結構こだわったもんな?

中村:そう。サビも(ドラムを)叩いてもらっていたんですけど、(音を)抜きましたもんね。


――このメッセージが際立つために、必要な音とリズムが鳴っている、っていう必然性がありますよね。

中村:メッセージ的におふざけなしなので、真っ当にやるべきだなと思って。自分のスタイルで、何かを真似るんじゃなく。もちろん、いろんなものから影響を受けているし、ルーツとかはあるんですけど。ただ、自分たちのスタイルでやるべきだなと思ったので。真っ当にやりました。「自分たちのスタイルで、やったことないことをやる」という感じですね。


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人を突き動かすのは、やっぱり人の心だと思う

――この曲のサビでは、ライブハウス一面に拳が突き上がるという、ダイレクトでエモーショナルな名場面が生まれていましたし、Cö shu Nieのライブにおいても新しい扉が開いた感覚がありました。

中村:そうですね。前回の「no future」もかなりダイレクトだと思うんですけど、「Burn The Fire」はさらにこう、感情がスパーンとまっすぐ飛んでいくような曲に仕上がったと思います。でも、こういうふうに言い切ることや、強いメッセージって、本当に奮い立たせる時に必要なものだなと思って。ずっとこんな強くは思っていられないと思うけど……何かのきっかけになるのって、ものすごく強いエネルギーのものだと思うから。だからこそダイレクトな、着飾ってないメッセージと言葉で歌うことがすごく大事だな、と思って書いた曲です。人を突き動かすのは、やっぱり人の心だと思うし。そういう部分で、書き切れたかなと思っています。



Photo: 河本悠貴

――この曲が監督(中村)から上がってきた時、しゅんす(松本)さんはどう思いました?

松本:まず「ギターリフかっこいいな」っていうのがひとつと……ドラムのリズムが、打ち込みの時点ですごくかっこよくて。ストレートで細かくないギターのリフと、細かいビート感とが相まっていて面白いな、と同時に、「ああ、つまりベースはメロディックなものじゃなくて、ドラムとのコンビネーションなんだな」と感じました。新しい雰囲気が出たなあって。特に、サビで白玉(ロングトーン)がくることはあまりないので、すごくワクワクしました。デモを聴いてまず思ったのは、「ライブで早くやりたいな」って。「音源を完成させたい」よりも「ライブで早くやりたい」と思ったのは、結構珍しくて。曲の完成形を見る前に、とりあえずライブでやりたいなあ、と感じさせるぐらい、生の感覚を掻き立てるような曲でしたね。

中村:ラッセルのドラムもすっごくかっこよくて。テイクが来た瞬間「よっしゃー!」って思いましたね。

松本:「イメージしてたあの音が届いた」感じはするよな。“ネット世界で見るすごく上手い人の音”って、実際に生で叩いてもらうと、イメージしていたものとはちょっと違ったりするんですけど。「ああ、本当にこの音が出せるんだ!」っていうのは衝撃でしたね。海外のドラマーとリズム隊を組むのは夢でもあったんで。それを今回叶えてくれたのは嬉しいですね。



Photo: 河本悠貴

――アレンジ面でも緻密に神経を張り巡らせてはいるんだけど、それが「私たちはこれだけ細かい工芸作品を作りました」ではなくて、曲がどれだけダイレクトに飛んでいくか、という点に集約されていく、という意匠の凝らし方になっているわけで。そういう監督の情熱の傾け方に、Cö shu Nieのアーティスト性を感じました。

中村:嬉しいです。「音楽がどう飛んでいくか」というところって、やっぱり音楽を発信する身としてはすごく大事だと思うし。そういうところと、「みんな、わかるよな?」っていう細かい部分の探求とは共存していけるなと思うので。自分たちの美学を追求して、遠くまで飛んでいけるような音楽を生み出していこうと努力している、っていうところはあります。――奇跡が起こると思っているんですよね。“できる限りのことをすべてやるとロックが解除される扉”があると、自分では思ってます。あと、今作っているアルバムのテーマにも通じるんですけど……小さい頃に持っていた無敵感とかは、ほとんどが大人になっていくうちに失われていって、「こうあらねばならない」とか「これをしてないから自分は最低だ」みたいになっていくんですけど。そうじゃなくて、もっともっと深いところで、自分を愛することができるんじゃないか、と思っているので。そういう「愛する行為」が、自分の思っていることを追求することと似ている気がして……この曲はそれを体現している気がします。いつも、書いている曲に引っ張られるところがあるんです。「no future」を書いてる時なんかはもう、何もしたくなかったですけど(笑)。

松本:今回は強めの、“先導者”だからね(笑)。

中村:「私がすべてを引っ張っていく!」みたいな気持ちになってるし。それと同様で、アルバムの大きなテーマ――生き辛い世の中だけど、自己愛を高めて、「生まれたからには生きていこうぜ」っていうスタンスでやっていけるような感じに、マインドを持っていきたいなって。大人になったら、たくさん自分をジャッジしてるでしょ? 自分のことを嫌になることも多いし。そこで根本的な愛が育っていったらいいんですけど……そういうところを、これからでも取り戻せるんじゃないかと思っています。


新イベント【こしゅあん】での“試み”

――そして、「ライブをやると、またライブがやりたくなる」と話していたMCそのままに、11月からは新たにイベント【Cö shu Nie presents「Underground」】、通称【こしゅあん】がスタートします。「クリエイターやファンとともに、独自のシーンや世界観を創り上げていこうとする試み」とのことですが?

中村:はい。今回も企画書をしっかり作って、「こんなことをやりたい!」って。ワンマンライブをやるんですけど、それと同時に、今まで関わってくれたクリエイターの方々とのインスタレーションとか、私がどういうふうに曲を作っているかとか……1回目はトークイベントの形にしてるんですけど。曲を作る過程を、データを見せながら紹介するみたいなこともいずれやってみたいですね。


―― 一見、Cö shu Nieの音楽の種明かしのようでいて、さらに謎が深まるかもしれないですね。

中村:そう。でも、全部繋がってるので。面白いと思いますね。


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