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<インタビュー>DEZERT 千秋が語る、バンドと自身のこれまでと変化「本音は、『俺はひとりじゃない』って言いたい」

インタビューバナー

Interview & Text:柴那典


 DEZERTのボーカル、千秋のインタビュー取材が実現した。

 9月23日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにてワンマンライブ【DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT-】を開催する彼ら。6月から8月にかけて開催された全国ツアー【DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”】とこのライブにあわせて、会場限定シングル『僕等の脊髄とブリキの夜に』も発売されている。

 昨年には、SORA(Dr.)がオーガナイザーをつとめた東京・日本武道館でのライブイベント【V系って知ってる?】でも大きな存在感を示し、精力的なライブ活動を繰り広げるDEZERT。改めてバンドの足跡を振り返りつつ、アーティストとしてのスタンスを語ってもらった。

みんながハッピーだと、俺もハッピーなんだな

――昨年末には、SORAさんがオーガナイザーをつとめたイベント【V系って知ってる?】が武道館で開催されました。あれを経て、振り返ってバンドのモチベーションや音楽への向きあい方が変わった部分はありましたか?

千秋:少しずつDEZERTというバンドの芯の部分が変化しつつあった中で、去年のイベントは間違いなくターニングポイントになっただろうし、あれに関してはSORAくんが頑張った部分があるから、僕としては絶対いいふうに終わらせたいというのがあって。どっちかというとオーガナイザーとしてまとめる立場という意識が強くて、今までないプレッシャーというか、責任感が芽生えたのがありましたね。ちょうど昨日は主催イベントがあったんですけど(取材前日の8月17日には、東京・新宿BLAZEで主催イベント【DEZERT PARTY Vol.13】が開催された)、あんなに仕切ってる感じを出すのは初めてで。それがみんなハッピーだし、みんながハッピーだと俺もハッピーなんだなっていう、至極普通のゾーンに10年を超えてなってきたっていうのはちょっとありますね。


――余裕がある感じというか、その経験をもとに引っ張っていけるくらいの感じになった。

千秋:昨日のMCでも言ったんですけど、俺たちがビジュアル系を引っ張るんだっていう、大それたものは持っていなくて。あれは大義名分というか、わかりやすいキャッチーなフレーズだと思うんです。僕らは別に、ビジュアル系は正直どうでもいいんですよ。ただそういう言葉が残ってて、僕らがそのシーンにいる中で、それこそ心の余裕っていうのはありましたね。



Photo:日吉”JP”純平

――2015年頃に、何かを背負うみたいな考えが芽生えた感じだったんですか?

千秋:バンドが調子よかったんですよ。でも、やっと光が見えてきた時にメンバーが辞めることになって。マジですごいクエスチョンマークだったんです。全員の人生の中でいちばん調子がいい時なのに、スタジオでもすごい暗い顔をしてるんです。それは僕が悪かったんですけど。調子がいくら良かろうが心が辛かったメンバーがいて、辞めることになって。僕はメンバーが辞めたらバンドも辞めると思ってたんですよ。身近な人間さえも幸せにできない奴がどうやってバンドをやるんだみたいに思ってたんですけど。でも、Sacchan(Ba.)とSORAくんの顔を見たら「進むっしょ」っていう感じで、戦える人たちで戦うんだみたいな、オラついてる感じもあって。じゃあこれで生きていくのかって、やっと気づいた感じがありましたね。


――DEZERTというバンドの音楽性としては、その頃、どういうことをやっていきたい、どういうところを膨らましていきたいっていうイメージがありましたか。

千秋:最初にやったのが、ゴリゴリなサウンドでサビがキャッチーだったりするものだけど、別にそういう音楽がしたかったわけではなくて。最初は全然違ったし、扇子を振ってる時もあったし、ラップしたいと思ってた時もあるし。その当時の自分の実力と、自分の歌と自分の作曲の感じでいちばんやりやすいのがそこだったっていう。もちろん好きなアーティストにインスパイアされたというのが初期は強かったです。そりゃあ、ローチューニングでドコドコやってるのが好きかと言われたら好きですけど、ただそれを自分でやりたいかって言ったら、別にそうでもないんですよ。ただ自分のキャラクターというか、自分の存在的にそういうゴリゴリしたのがやりやすかった。どうせ俺なんてすぐに辞めるだろうと思ってたから、この衝動をとりあえず吐き出すっていうのでやってたんです。


――ハードな音と刹那的でインパクトのある歌詞の言葉が特徴になっていたと思うんですが、それは衝動的なものが大きかったと。

千秋:衝動のみですね。あとは、自分のできないことはやらないっていう感じでしたね。打ち込みに関してもあえてやらなかったですから。ギターとベースしかできなかったので、それだけでやる。そこからどんどん学んで、DTMやピアノができるようになって、変わっていく。だから僕的に音楽性を変えたつもりはなくて。できることをやるっていうだけですね。歌詞についてはありますけど。


“言いたいことを具現化しようとがんばった”アルバム『TODAY』

――歌詞が変わったというのはいつ頃だったんですか。

千秋:これは完全に2018年ですね。この事務所(MAVERICK DC GROUP)に入って『TODAY』というアルバムを出した時です。


――どういう意識の変化がその時にあったんでしょう?

千秋:ボイトレですね。実は初めてボイトレに行ったんですよ。ずっと喉を壊してたっぽくて、ビジュアル系とは全然関係ない先生を紹介いただいて。その先生はなかなか厳しい先生で。ボコボコ言われるわけですよ。ビジュアル系を知らないから。でも、歌い方とかは何も否定されず、楽曲を聴いて「あなたさ、なんでこんな言いたいことがありそうなのに何を言ってるかわからないの?」と言われたんですよ。それで「たしかに」と思って。言いたいことがあるのに、それをシャウトとか歌い方でごまかしたりしてたなって、ハッと気づいて。そこから先生に「どうやったら伝わるようになるんですか?」って、イチから学んだんですよね。平仮名から。たとえば「あ」はこういう口で「な」はこうでとか。それまでは感覚的な感じでいきたかったんですけど、バレちゃうと思って。そこでちょっと日本語を勉強したんですよね。そこから『TODAY』というアルバムの制作に入ったんですよ。あのアルバムに関しては全然納得いってないですけど、どうしたら日本語が伝わるんだろうかと考えたのが、完全に2018年からですね。そこから今までずっと勉強中で。かなり難しいですけど。


――『TODAY』というアルバムは、音楽性が変わったというより、表現に対しての向き合い方が変わったというところがある。

千秋:そうですね。伝えたいことが昔からあったんだっていうのに気づいたから、改善しないといけない部分があるじゃないですか。僕の感覚的に、あそこで激しいまま、ゴリゴリのシャウトも入れたまま言いたいことを言うっていうのは難しかったんですよ。当時は「なんで方向性変えたの?」みたいに結構言われましたけどね。そこはあんま気にならなかったですけど。言いたいことを感覚的に言っていたものを具現化しようとがんばったのが『TODAY』ですね。全然納得いってないですけど、でも間違いなく、ターニングポイントになりましたね。この事務所に入って一発目(の作品)だったし。


――作品が変わったことによって、ライブの手応えみたいなものも変わった感触はありました?

千秋:手応えは全然なかったですね。『TODAY』のツアーは全然ダメだった。ファイナルでSORAくんと喧嘩しちゃったし。そりゃ急には変われないですよ。レコーディングはいけるけど、ライブになったら昔の癖が出てきちゃって。その癖を直すのに2年かかるって言われたんです。人間の身体の細胞が入れ替わるのが2年なんで。反応は悪くはなかったんですよ。動員も全然減らなかったし、むしろちょっと増えたくらいで。でも、その次のホールツアーがコケたんですよね。その頃にちょっとメンタルが狂ってきて。伝えようって言ったものの、やはりそんなに人は急に変われなくて。「言ってること間違ってるのかな、俺?」みたいになってましたね。



Photo:日吉”JP”純平

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コロナ禍を経て、メンバーの関係性が変わった

――2020年のコロナ禍になったら、そもそもライブもバンド活動も止まるわけで、動員とか、そういうことではなくなるわけじゃないですか。でも、DEZERTは【DEZERT SPECIAL LIVE 2020 "The Today"】として11月にLINE CUBE SHIBUYAでライブを行っています。振り返って、あのときのライブにはどんな記憶がありますか?

千秋:ここもかなり大事な時期でしたね。間が空いたことによって、正直メンタルがリセットされたんですよ。そこで僕としては、機材を揃えて音楽を勉強しようみたいな時間があって。LINE CUBE SHIBUYAに関しては、新たな気持ちで登場した気持ちがありますね。当たり前ですけど声が出せないわけですから、ノリも関係ないし、ステージ上の俺らが全てっていう。また新たな自分というか、ステップアップするための場所なんだろうなっていうのがありましたね。


――コロナ禍以降なので動員のそもそもの基盤が全然違うとは思うんですが、DEZERTというバンドの存在感がここ2、3年で少しずつ大きくなっていっている、何かを任される、何かを引っ張ってくれるバンドであるという、周りからの期待やイメージみたいなものも増えていったように思います。このコロナ禍って、どういう期間だったと思いますか?

千秋:希望がないんでしょうねって、すごい僕は実感しましたね。業界というか音楽に対して。何が当たるかも分からない時代になったし、仕掛けて売れる時代でもないし。ノウハウが通用しない世界になって、コロナでお金もなくなって、事務所も、個人でやってた人たちも、生きることに必死みたいな感じになってて。希望はたぶんないんですよ。特にこの業界は身近で見ててそうだろうなと思う。でも「俺らはあるで」っていう。正直、結果が伴ってないというのはずっと言ってるんです。説得力っていうのは大事で。俺らくらいの認知度や影響力じゃまだまだダメだなと思ったんですけど、誰も旗を振りたがらないんですよね。でも、そこでSORAくんの存在感が大きくなったのがありますね。SORAくんが楽しく叩いてる時はいいライブだし。逆に俺がメンタル落ちてたりめっちゃ辛そうに歌ってるとき、めっちゃ盛り上がってたりするんですよ。ちょっとムカつくんですけど。そこから(SORAが)役割として、やっぱりコロナ禍で色々考えたんでしょうね。もともとドラムだけじゃなくて持ってる才能はあるから、それこそプランニングだったり、宣伝だったりを出すようになって。それがどんどんできるようになってきて、認められるようになってきたから、調子がついてきて。昔なら俺の考えとは違うと思って潰してたんですけど、SORAくんに任せるようになった。それはメンバーも実感してると思います。この2、3年はSacchanやみーちゃん(Miyako/Gt.)に任せることも増えた。それでかなり風通しが良くなりましたね。


――なるほど。バンド内のメンバーの関係性が変わった。

千秋:やっぱ、リスペクトが生まれるんですよね。SORAくんもああいうことを成し遂げたわけだし、結果が出たことでリスペクトもされる。そうするとこっちをリスペクトしてくれるようにもなるというか。それがメンバー内であったと思ってて。それによって書く楽曲がかなり変わってきたっていうのもあります。



Photo:日吉”JP”純平

――曲はどう変わったという感じがありますか?

千秋:きっと、本当は僕ひとりで生きたい感じだったんですよ。この何年かずっと、俺はどうなんだ、俺の本当は何なんだみたいに自己分析をしてて。「あ、俺って、すごい寂しがり屋やん」って思って。みんな知ってるんですよ。もともとひとりでやりたがる傾向があって。昔から、仲間に裏切られていなくなるのがすごい嫌なんですよ。だったらひとりでいいよっていうスタンスを格好つけてやっていた気がする。でも本音は、30を超えて言うのもあれだが、「俺はひとりじゃない」って言いたいなって。そうなった時に、ファンって結構自分と似てる子が多いって勝手に思うんですよ。昔から、後ろのほうで棒立ちしてる人は俺なんだと思ってたぐらいだから。ってことは、みんなもそう思ってる人いっぱいいるだろうなって。自分たちの楽曲を聴いて「共感する」とよく言われるってことは、きっと俺と同じ感覚を持ってるってことだから。尖ってるんですよね。きっと本当はひとりが嫌いなんだろうなって。そういう気持ちが徐々に芽生えてきた。ただ、急には僕もそういうことを歌えないです。僕らが唯一できることは、ライブで直接何を伝えるかっていうことで。本当は、俺たち仲間だよな、明日から頑張ろうの一言なんだが、そんなんじゃ柵の向こうにいる俺と同じ感覚を持った人たちは納得してくれないんで。2時間かけて、今日俺たちはひとりじゃないっていうことを実感しようという方向に変わりました。で、その大まかな枠組みの中で、曲によって、セットリストによって、言いたいことを繋げていく。もちろん全然違うことを言う曲もあっていいんですけど。ライブっていうのはそういうものになりました。アルバムは別ですけど、ライブ自体はそういう空間だって。これは変わらないと思います。「俺のショーだ」とか思ってる時期もあったんですけど。ひとりじゃない、ひとりじゃ嫌だというのを認識する会と思ってるんで。もちろん、曲を聴きに来てる、曲だけ好きとか、振りだけ好きとか、それでもいいんですけどね。僕はそういう風に思ってる。どの空間、武道館だろうがなんだろうがそう思うので。ここはあなたたちの場所、来ていい場所だと、徐々に本音で言えるようになってきている。それはメンバーのおかげかもしれないですね。メンバーがかなり寄り添ってくれた部分はあるので。冗談も通じるし、みんな多才だし。


全員を幸せにするつもりでステージに立たないといけない

――今回のツアーでリリースされた会場限定のニューシングルでは、1曲目「君の脊髄が踊る頃に」はデジタル配信されていますが、2曲目の「僕等の夜について」は、現時点では会場でCDを買わないと聴けないわけですよね。そういうリリースのやり方も、今話していただいたようなことと関連していたりするところはありますか?

千秋:ありますね。僕的には、「君の脊髄が踊る頃に」よりも「僕等の夜について」のほうがリード曲なんですよね。で、まず初めにライブに来てくれてる人に歌いたいって思ったんですよ。これを聴いてライブに行くっていうより、まずライブで聴いてほしいなっていう。なので、まずはLINE CUBE SHIBUYA公演までは、ライブに来た人だけが聴けるというのでいいんじゃないかと思います。ただ、次のアルバムには絶対に入れます。このツアーだけの特別な曲じゃないとは言っていて。これは俺が言いたいことのひとつだから、アルバムには絶対入れるけど、初めに君たちに聴いてほしいという。だからこういう形になったって感じですね。


――「僕等の夜」っていうのは、つまりはライブのことを指し示すメタファーだったりしますか。

千秋:そうですね。そういうことです。


――今話していただいたような、なぜライブをやるのか、ライブをどういう場にしたいのか、どういうものを持って帰ってほしいのかみたいなことを MCで言うだけじゃなくって、ちゃんと曲にして形にしたいっていう思いもあったということでしょうか。

千秋:そうですね。僕結構、ライブでMC(事前に)考えていかないんですよ。7割ぐらい無駄なことしか言ってないですけど、やっぱり3割ぐらいは自分でも本音が言えたっていう感じがあって。その言葉を次の日にメモってたりするんですよ。僕、藤原基央(BUMP OF CHICKEN)先生の言葉ですごい好きなのが、「いい言葉は忘れないからメモらない」みたいなこと言っていたことがあって。それが格好いいと思って、俺もそれをしてて。すぐメモらず、次の日、次のライブでメモっていって。そういうので曲の歌詞ができたんですよ。それで、前回のツアーで言ってることを散りばめたような曲がこれだった。で、今はもうひとつこの曲と対になる曲があって、それが合体してアルバムになるかなという感じですね。


――ライブを見た印象として、基本DEZERTって、ゴリゴリしたヘビーなサウンドなんですけど、突き放されている感はあんまりなくて。フロアのファンたちと居場所を作っているような感じがある。そういうマインドが共有されてるからなんだなと思いました。

千秋:もっとうまく共有したいというのが僕の今のテーマですね。やっぱり優しい言葉が増えてくると、逆に傷つく人が増えてくるんです。人を傷つける言葉しか言ってなかったら、それ前提で来るんで、案外何が起きてもみんな傷つかないんです。でもこのマインドセットで行くとやっぱりいろんな意見が増える。ただ、やりがいは感じてますね。無理かもしれないけど、全員を幸せにするつもりでステージに立たないといけない。ちょっとしんどいですけど、今はそういう気持ちですね。


刺激を受けたアーティスト

――ちょっと違う角度からの質問なんですが、たとえばSORAさんに話を聞いた時は、たとえばK-POPが今すごく人気があることとか、他ジャンルの音楽やエンターテイメントをすごく意識するみたいなことをおっしゃっていて。千秋さんはどうでしょう、そういう違うシーンへの意識って考えたりはしますか?

千秋:ああもう僕、ビジュアル系を聴かないんで、そもそも。他のジャンルしか聴かないですから。偏見も何もないし。今さらビジュアル系が云々ってそもそも思ってないし、あんま気にしないですけどね。ステージセットも、次(LINE CUBE SHIBUYA公演)はSORAくんとSacchanが話していて。僕がやるべきことっていうのは、この気持ちをぶれさせないこと。エンターテイメントだと思うとそういう感じでカッコつけちゃうんで。“僕たちはひとりじゃないんだクラブ”を大きくしていく。それを理解してくれているメンバーとかスタッフがエンターテイメント化する。だから他ジャンルとかどうでもよくて。ビジュアル系っぽいからこうとかは、もうそれこそ歌い方も含めて気にならないですよね。みんな好きですね。米津玄師もYOASOBIも好きだし、ラップも好きだし、K-POPも好きだし。エモロックも好きだし、今までのようにメタルも好きだし。


――いろんな音楽を聴いているという前提で、いちリスナーとしてここ最近で刺激を受けたものって、たとえばどんなアーティストが挙げられますか?

千秋:Mr.Childrenですね。2枚組のベスト盤(『Mr.Children 1992-1995』『Mr.Children 1996-2000』)を昔から聴いてるんですけれど、あれを出した2001年の桜井(和寿)さんと、今の自分の年齢が近いんですよ。そう考えて、「終わりなき旅」とか、よくよく聴いてみるとマジやべえと思って。そういうことを思った今年上半期でした。あとはBUMP OF CHICKENの『ユグドラシル』というアルバムを、何回聴いたかわからないくらいなんだけど、改めて聴いたらなんか涙が出てくる感じがして。新たな出会いというか、昔から好きなものの本質を理解しようとしてめっちゃ聴いてました。ノリやすい曲っていうのも聴くんですよ。そういうプレイリストもあるんですけど、やっぱ最終的には歌詞ですよね。その点ではミスチルはすごいなって、改めて思いましたね。BUMP OF CHICKENも昔から歌詞が好きなんですけど、やっぱりすごいなっていうのもあります。バンドってそうじゃなくっちゃなと思う部分もあります。言いたいことがあって、共感されたいっていうのでわざわざ音を歪ませている部分があると思うんで。人と違う衝動をどう昇華していきたいのかっていうのが、多分パンクでもあるだろうし。それを踏まえて、「終わりなき旅」とか、改めてすごいなって思いましたね。ずっと迷ってるんだって。何十年経ってもこれは名曲なんだろうなあと思うと、そういう曲を作りたいなぁと思ったりもしますね。


――最初から一貫してビジュアル系というくくりは特に意識されてないとおっしゃっているのは、今話していただいたような自分のクリエイティブの感覚が根っこにあるんですね。

千秋:僕の持論ですけど、ほとんどの人が、ビジュアル系って見た目が格好いいから好きになっているって勘違いしてるんですよね。俺はそう思ってなくて。X JAPANもLUNA SEAもたぶんそうなんですけれど、ちょっと人と違うこの感覚が嫌だなと思ってる人が、それをわかってくれてるアーティストがいるというので引っかかったと、俺は思ってるんです。見た目がきれいというより、どこか人と違うものがあってそれを誇りに思っている人か、それを隠してる人か、昔忘れられない傷を持ってる人とか、やっぱりそういう人が多いと僕は今まで思っているから。でも、そこは意識しますよ。隔たりがないとは思いません。「ウェーイ」ってツーステップで踊ったりするのは違うと思ってます。


――なるほど。今お話しいただいたようなことを文字にするのは意味があるなと思います。というのは、動員が増えたとか再生回数が伸びたとか、単に数字が増えたということじゃなくって、マインドの部分で「この曲は自分のことを歌ってる」とか、「このライブは自分の居場所だ」と思える人が増えるということであるということになるわけで。そうやって思ってくれる人がひとりでも増えるっていうことに、めちゃめちゃ価値があると。

千秋:そうだと思います。それこそ武道館とかアリーナになってくると、それだけじゃダメっていうのもわかってるんですよ。わかってるんですけど、一歩ずつの中には、寂しがり屋クラブ、寂しいと言えない人たちの会を大きくして、もっと力を強くして、誇りを持てるようになりたい。今はバンドマンも誇りを持てないんでしょうね。昨日も後輩と飲みましたけど、好きなんだけど、心底誇りを持ってますと言えてないですよね。そこには俺らの責任もあったから。俺らがもっと引っ張っていければよかったんですけど。これはビジュアル系とか関係ないよとは言えないです。ビジュアル系に引っかかる人は絶対に、何かちょっと違う衝動を隠し持ってる人だと思うから。たとえば、トー横キッズとかいるじゃないですか。内情知らないですけど、全員ビジュアル系好きだったらいいと思います。


――マインドとしては重なり合うところがある。

千秋:なんでそこにアプローチできないんだろうと思います。行き場のない人たち、居場所のない人たちの居場所が、なんでライブハウスにならないんだろうっていうのは、すごい課題です。でも、そこはきっと届くはずなんだ、俺は本当にこう思ってるし、そう思ってる人は来いよ、ウェルカムだぜっていうスタンスは死ぬまで変わらないと思いますね。


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