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<インタビュー>ナオト・インティライミ、真っ白な気持ちで創作した9枚目のアルバム『アドナイン』とは

インタビューバナー

 9枚目のアルバム『アドナイン』をリリースした、ナオト・インティライミ。今年は1月から月1で(と言いながら半年で8曲もの)連続配信リリースをし、コラボ曲も含めて新たなアプローチで楽しませてくれている。そして前作『虹色∞オクターブ』からは約8か月という短いスパンでアルバムを作り上げ、同時に海外での活動に向けた準備も精力的に行っているという。かつてないほどアグレッシブで挑戦的なナオト・インティライミに、今の想いを語ってもらった。(Interview & Text:上野三樹 / Photo:Yuma Totsuka )

「まっさらな気持ちで向き合ってみることにしたんです」

――前作から短いスパンでのアルバムのリリース、配信での連続リリースなど、精力的な活動をされています。ナオト・インティライミは今どういうモードなのか?というところからお話をお伺いしたいです。

ナオト・インティライミ:すごく脂が乗っている状態ですね。デビューから13年が経って、新人でもベテランでもない中堅というカテゴリーに入って。だけど新人のような気持ちでかつてないほどのペースで制作し、リリースをしています。今は世界への挑戦もしながら日本でも活動しているという2つの顔を持っているからこそ、やっていることが濃くなっている感じがしています。


――キャリアを積んでから新人の気持ちになるのは難しいことではないですか。

ナオト:海外での活動としては、まだ新人にもなっていない、新人前夜ですから(笑)。これからラテン・マーケットでデビューをしてどうやってプロモーションしてアーティストとして活動していくかという準備をしている段階ですけど。日本においては時代が一周りしちゃった感じがしてるかな。サブスクへの変換期もあったしコロナという全てをひっくり返すような大きな出来事もあったから、なんだか更地になっちゃったような感じがしていて。だからこそ今までと同じやり方でやっていては時代の流れに置いてけぼりになるなという危機感を感じました。



――時代の流れを鑑みると、新人のような気持ちでやっていかなきゃいけないんだと。

ナオト:まさにそうですね。デビュー当時はアメブロを頑張っていましたが、今はInstagram、Twitter、TikTok、そうしたSNSと向き合うことを諦めかけていたんです。インスタ映えなんて向いてないよなって。でもコロナでライブができないんだったらトライしてみようかなって思ったし。今の時代はリリースの頻度が高いほうがいろんな人にリーチできるんだったら、月に1曲出してみようかって。まっさらな気持ちで向き合ってみることにしたんです。


――そうして今年に入ってハイペースに配信リリースされながら、今回のアルバム『アドナイン』の制作はどのような完成イメージを描きながらスタートしたんですか。

ナオト:1月からバンバン曲をリリースしていったわけだから曲は必然的にたまっていくわけなんだけど。でも配信で出したもののコンパイル盤としてのアルバムなんて全く面白みがないし、今はアルバムの価値も昔に比べたら大きく下がってしまった。今はみんなが好きな音楽を自分のプレートにどんどん乗せて、ビュッフェ形式で楽しむような時代だからね。そんな中でも僕はやっぱりアルバム・アーティストとして生きてきてるから、配信曲もそうじゃない新曲もいろいろ入れて、アルバムとしての物語をちゃんと作ろうという意識はありました。できたものを集めて出しましたというのは絶対に嫌だったので。


――配信された曲の全てが収録されているわけではないですもんね。

ナオト:そうなんですよ。大変ですけどね、月1でリリースするという計画が、結局は3月と6月は2曲ずつ出してて、3週間に1曲出して。もちろん歌うだけではないですから、曲を書いて、アレンジやミックス、マスタリングまで全部監修してやってますから毎日何かしら創ってる感じですね。世界への挑戦もしながらですから、目まぐるしい活動量ですよ(笑)。


――めちゃくちゃエネルギッシュですよね。

ナオト:ちゃんと体作りもしながら健康的にやっています。マイアミで活動をしているときは、朝起きて散歩して、スムージーを作って。日本と時差があるから午前中にいろいろな作業をしてからジムに行って、帰ってきて午後は海外向けの作業をして夜はライブ・セッションをする。早寝早起きしてそういうルーティンで生活することが健康の維持には必要だと思ってるから。



――海外向けの活動をするときには、ある意味、日本で活動するときとは違う筋肉を使うみたいな感覚があるんでしょうか。

ナオト:そういう感じはありますね。ラテン向けにやっている音楽は、日本でやっているものとは全く違います。向こうで活動をしているからこそ、J-POPが恋しくなったりするんですよ。J-POPの素晴らしさも今まで以上に感じるし。日本と海外での活動の両方をやっていることで、自分の音楽的にも精神的にもすごく良い作用を生んでいると思います。


――1曲目の「サマータイム マジック」なんて、日本の夏の風景がたくさん描かれていますもんね。

ナオト:まさにそうです。その曲はマイアミのAirbnbで1人で作っていて、だからこそ日本の夏のノスタルジーを歌いたいなと思ったんじゃないかな。アルバム制作の最後に創った曲なんですけど、全曲並べて「これで行こう!」ってなったところに「でも何か足りないな」と思って、時間がない中で「サマータイム マジック」を向こうでバッと書いて、アレンジャーさんにお願いしている時間もないから15年ぶりに自分で打ち込みをして歌って、という状況でしたね。だからこそすごく濃い今の自分の音や言葉をタイムリーにパッケージできました。


――マイアミで日本の夏のひまわりや花火をイメージしながら、どんなことを想っていたんですか。

ナオト:今年の夏は特別な夏になるっていう気持ちでした。1つは僕がファースト・アルバム以来12年ぶりに夏にアルバムを出すということ。もう1つはキャリア史上初めて夏にツアーをするということ。ナオト・インティライミは夏のイメージが強いかもしれないけど、夏フェスとの兼ね合いもあったから夏にツアーはしてこなかったんです。こんなスペシャルな夏はないな、一生忘れられない夏になるだろうなっていう気持ちでこの曲を創りました。でも今回は曲調としては「海!太陽!夏!」みたいな感じじゃなかったね、自分もそんなに若くなかったんだろうね(笑)、ちょっと憂いも帯びた、等身大の夏の曲ができました。20代のティライミには書けない歌です。


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「今作の『アドナイン』は新ティライミになった気がします」


――2曲目の「memo」では弱音を素直に吐き出している心情がリスナーの心にもまっすぐに届くような仕上がりです。

ナオト:ありがとうございます。デビュー当時のイケイケなときは、もうちょっとエネルギッシュでポジティブな歌が多かったかもしれないけど人生を経てこういう曲も書けるようになりました。今の海外での挑戦だって、マイアミで活動して華やかに見えるけど、笑われることも馬鹿にされることも悔しいことも、すごくあります。上手くいかないことの方が圧倒的に多いからね。これまではもうちょっと、おまっとぅり男を押し出してた部分もあるかもしれないけど、今はヒューマンな部分もさらけ出しているかもしれないです。特にファンクラブの人たちに向けてはマイアミから生配信とかよくやってて、一切カッコつけずに、「何かいい報告があったらいいんだけどね、まだ何も起きてないんだよ」っていう日々をさらけ出していますから(笑)。





「memo」リリック・ビデオ


――今回はコラボ曲もたくさん収録されていますが、ナオトさんが他のアーティストと積極的にコラボをする理由はどういうところにありますか。

ナオト:理由はやっぱりコロナ禍があって、TikTokをやってみたことかな。やってみたら意外に向いてるかも?ってなって、フォロワーが最初は200人だったのが57万人までいく過程でいろんな若い世代の素晴らしいアーティストとの接触が増えてきて。TikTokライブでまだ『紅白歌合戦』に出る前のYOASOBIや「ドライフラワー」でブレイクする前の優里とかとコラボをすることで、そうしたつながりや、次世代の音楽の素晴らしさを知ったんです。それに、海外ではフィーチャリングコラボはすごく盛んに行われていて、コライトで曲創りすることも多いから、もともとやりたいなと思っていたところにそういう時代の流れがきたところもあります。なので特別なことをしているという感覚はあまりなくて、すごく自然なことです。


――「ひそかに絶好調(with wacci)」も、日本人らしい感覚が歌詞に描かれた斬新な1曲だと思います。橋口さんとネタ帳を見せ合って作ったそうですが、他のクリエイターとネタ帳を見せ合うってすごいことですよね。

ナオト:ほんとだね。もう真っ裸になる感覚だよね。僕のネタ帳からグッチが「ひそかに絶好調」っていうワードを「めっちゃ面白いっすね」って拾ってくれて。そこからもし自分1人で曲を書いても、やっぱりこうはならないよね。彼のワードセンスだったり音楽的知見が入ってできた曲。僕の作業部屋に来てもらって、お茶飲みながら「最近どうよ?」から始まって、本当にゼロから作っていって、その日のうちにできました。こういうことも若い頃なら難しかったかも。お互いをリスペクトしながら創れた感じがして、すごく楽しかったです。





「ひそかに絶好調(with wacci)」リリック・ビデオ


――「愛してた(feat.れん)」や「EQ(feat.Rin音)」など、若い世代のアーティストとのコラボを通じて感じたことは?

ナオト:れんの歌の節回しとか、Rin音のフロウとか、やっぱり僕らの世代とは違うから新たな刺激をもらうし、曲も全然違う色になって大きなクリエイティビティを生むなと感じています。聴いてきた音楽も、好きな音楽も違う、そういう意味ではどの世代でも全てのアーティストにリスペクトがあります。それは日本のアーティストでも、アフリカのアーティストでも同じように、自分と違うものに対して、面白いなと思うから。それはアーティストだけじゃないかもしれない、人に対して、自分と違うということだけですごく尊いものに感じるし、好奇心が持てるんです。そうした僕の旅人精神もコラボをやる上で大きいかもしれないですね。





「愛してた(feat.れん)」ミュージック・ビデオ





「EQ(feat.Rin音)」リリック・ビデオ


――今回のアルバム『アドナイン』はナオトさんのキャリアの中でどういう位置づけの作品になりそうですか。

ナオト:最初に新人の気持ちって言ったけど、ほんとに今の新たな気持ちで作ったアルバムで、ジャケットを白にしたのも、さあ今から何色にしていこうか? みたいな気持ちもあります。これまでCDでリリースしてきたシングルという形態だと出す頻度とかコストを考えたり、やっぱりザ・シングル曲みたいな曲を出していかなきゃって気負うような長い時代があったんですけど。今回は配信だったからこそいろいろチャレンジできることがありましたし、トライアンドエラーができた。前作の『虹色∞オクターブ』はこれまでのティライミを踏襲した作品だったけど、今作の『アドナイン』は新ティライミになった気がします。


――いいですね(笑)。ナオトさんが今後、挑戦していく海外進出ではどんなことがしたいですか。

ナオト:今年の1月1日にファンの皆様に文章で今年は世界への挑戦を本格的にしますとお伝えしたんですけど、良きタイミングでマイアミからラテン・ミュージックのシーンでリリースなどできたらと思っています。海外では日本でのキャリアなんて関係ない、ノウハウもないから1人で切り拓いていくしかないです。19歳のときに「どうやったら日本でデビューできるだろう」って毎日ワクワクしてた、あの気持ちです。そういう意味で今もすごく充実して、いいモチベーションでいられています。人生そんなに何回もチャンスってないだろうから、これが最後のチャンスだって思っています。いつかラテンのチャートにランクインすることを夢見て。いよいよ、花咲かせますよ!


ナオト・インティライミ「アドナイン」

アドナイン

2023/07/19 RELEASE
UMCK-1751 ¥ 2,970(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.サマータイム マジック
  2. 02.memo
  3. 03.With
  4. 04.ひそかに絶好調 (with wacci)
  5. 05.Secret
  6. 06.愛してた (feat.れん)
  7. 07.EQ (feat.Rin音)
  8. 08.パッキャマラード

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