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大河内康晴(SOUND CoUTURE inc.)インタビュー  音楽が人々の感情に及ぼす効果とは



インタビュー

 ある空間において、流れているBGMがそこにいる人たちの感情に及ぼす影響はとても大きい。例えばレストランで食事している時、いつもよりも会話が弾み「ここにいてもいいんだ」と思えるような居心地の良さを感じる時はないだろうか。あるいは馴染みのインテリアショップで買い物を楽しむはずが、なんとなく「アウェー感」のようなものを覚えてしまって、すぐにその場から立ち去りたくなる時などもある。様々な要因が考えられるが、ひょっとしたらその時に流れていたBGMに原因があったのかも知れない。

 株式会社サウンドクチュール代表取締役の大河内康晴氏は、音楽が人々の感情に及ぼすそのような効果を考えながら、空間にフィットしたBGMをセレクトする「サウンド・スタイリスト」。これまでにロンハーマン千駄ヶ谷の1周年パーティーやサンワカンパニー40周年イベント、TOYOTAが手がけるカフェ『LEXUS MEETS...』のBGMを手がけてきた。ショップやイベントのコンセプトや、その空間の雰囲気、客層などに合わせて的確な音楽をセレクトし、居心地の良い空間を提供している大河内氏。そうした音楽を鳴らすスピーカーへのこだわりも、並々ならぬものがあるようだ。

 自宅ではSonos Oneを、仕事ではSonos Play:5とSonos Subを併用しているという大河内氏。「サウンド・スタイリスト」である彼が、Sonosを愛用する理由はどこにあるのか。ストリーミングとの相性の良さでも定評のあるSonosだが、最早リスニング・スタイルのスタンダードとなったストリーミングは、大河内氏のライフスタイルにどのような影響を与えたのだろうか。


我々の仕事はいわば「空間にフィットする音楽をセレクトする」こと

−−「サウンド・スタイリスト」とは、どのようなお仕事なのでしょうか。

大河内康晴:具体的には、店舗やイベント会場の空間、ブランディング、ターゲット層など、全てにフィットする音楽をセレクトします。例えば、20代女性に向けたパンケーキ屋さんのBGMと、30〜40代のエグゼクティブがお酒を飲みに行くラウンジ系のお店のBGMは当然変わりますよね。そこを考えるのが我々「サウンド・スタイリスト」の仕事です。

−−選曲、ということではDJにも似ていますね。

大河内:DJはその場の雰囲気に合わせてリアルタイムで選曲していきますが、我々の仕事はいわば「空間にフィットする音楽をセレクトする」というものです。DJと音響の間の仕事というべきでしょうか。そういうことを専門にしている人は、これまで日本にいなかったんですよね。僕の場合、たまたま友人にインテリアショップやアパレルショップ、レストランなど「ライフスタイル」に関わる仕事をしている人が多くて。お店とお客様のライフスタイルに相応しい音楽を必要としていながら、それをどういうふうにセレクトしたらいいのか分からないと。そういう人たちを手伝う仕事を始める上で、何かしら名称が欲しいなと思って「サウンド・スタイリスト」と名乗り始めました。最初は恥ずかしかったんですけどね(笑)。でも、的確なBGMをセレクトしたことによって実際の売上が上がったという声をいただいています。

−−お店のBGMが売上に影響すると。それは何故なのでしょうか。

大河内:例えばお酒を飲むようなお店では、ベースやドラムなど低音がブーストされた音楽を中心にセレクトします。というのも、低音がお腹に響くと喉が乾くんですよ(笑)。逆に中高域に集まる音……ピアノやギターなどの音は、人の声と同じ周波数帯域なので会話を邪魔してしまうんですよね。ヒップホップやR&B、ジャズなどがクラブで大音量でかかっていても、意外と人の話し声はよく通ることってありませんか? それは、低音がズンズン鳴っている割に、中高域がうるさくないからなんです。しかも低音がお腹を温めてくれるから、お酒もよく出るというわけです(笑)。

−−会話も弾んで口も乾きますしね。

大河内:テンポもゆったりとしているから、居心地が良くて長居できる。逆に回転数を上げたいお店では、フロアスタッフがせわしなく歩いていても足音が目立たないような、そして会話と音楽が混じり合うような、中高域に音が集まった楽しげなBGMをセレクトする。アコギのカッティングが爽やかな楽曲などですよね。どこへ行ってもジャック・ジョンソンが流れている現象は、実はそんな理由だったりするんですよ。ラウンジではヌジャベスがかかりますしね(笑)。

−−なるほど。ビートの強弱やテンポ、周波数帯域などが人の感情に大きな影響を及ぼすのですね。確かに「アウェー感」というか、「何となく居心地が悪いな……」と感じる時って、BGMに理由があるケースは意外に多い気がします。

大河内:そうなんです。その空間にフィットする音楽というのは、曲調だけではない様々な要因があるわけです。

−ちなみに、これまでにどのようなお店を手掛けてこられたのですか?

大河内:最近だと、日比谷ミッドタウンにある『LEXUS MEETS...』。12時間分のBGMをご用意させていただきました。朝、日比谷の自然光が入る時間帯は、爽やかなアコースティック・サウンドが流れ、昼間はバンド編成のオーガニックなフレンチポップ、夜は低音が効いたヒップホップやR&Bという具合に「ドライブミュージック」としても相性の良さそうな音楽を、時間帯ごとにセレクトしましたね。しかも、朝、森の中を車で走り、夕方にはハイウェイで街へと戻ってくる……みたいなストーリーも念頭に置きながら。

−−ディティールにもこだわっているのですね。

大河内:それと、名古屋の中川運河沿いにある『バーミキュラ ビレッジ』のBGMも手掛けました。この時は「30代のお料理好きな女性」と、「シングルライフを楽しんでいるお洒落な男性」をイメージしながら、男性も女性も居心地が良く過ごせるような楽曲をセレクトしましたね。この時は、33時間分のプレイリストを作成しています。



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音楽が悪目立ちすることなく、空間にフィットさせることが大切

−−そんな大河内さんが、Sonosと出会ったのはどのような経緯だったのでしょうか。

大河内:表参道『HAY』に併設されたカフェのディレクターが知り合いで、Sonos Japanのマネージャーを紹介してくださったんです。それでお話しさせて頂いたときに、『HAY』のインテリアやブランディングとも相性の良いSonosのデザイン性にすっかり魅了されてしまって。オーディオ専門スピーカーのような威圧感もないし、かといって存在感がないわけでもない。絶妙なバランスで空間に溶け込んでいるというか。「サウンド・スタイリスト」は、選曲で主張するDJとは違い、音楽で人を包み込み居心地の良い空間にするのが目的ですから、そういう意味でもSonosと僕らは非常に相性がいいなと思いました。

−−プライベートとお仕事、両方でSonosをお使いだそうですね。

大河内:はい。自宅ではリビングルームにSonos Oneを置いているんですけど、自分がスタイリングした音楽をヘッドホンではなくスピーカーで聴いたときに、空間の中でどう響くのか?をいつもチェックしていますね。それと、新しい音楽をチェックするとき。僕はApple MusicとSpotifyに登録しているのですが、そこから流れる音楽をSonosのスピーカーで聴いて、空間での聞こえ方を確認しています。

−−家でも常にお仕事のことを考えているのですね。

大河内:そうなんです(笑)。仕事の際は、BGMだけではなくてそれを鳴らす機器を一緒にご紹介する機会があるときはSonosをお勧めしています。Sonosにはイコライザー機能も搭載されているので、空間やお店の雰囲気に合わせて調節できるんですよね。さっきのお話にも通じますが、例えばお店でお客さま同士の会話がよく聞こえない時って、曲全体のボリュームを小さくするのではなく、中域をちょっと削れば解決する場合もある。逆にお客様の食欲をそそるために、スピーカーの低域を少し持ち上げるということもできるんですよ(笑)。

−−音質をカスタマイズ出来るのは魅力的ですよね。

大河内:ちなみに空間の広いお店では、Sonos Play:5をお勧めすることもあります。イベント会場ですと、サブウーファー(Sonos Sub)もあるとさらに良いですね。先日、ロンハーマンさんの10周年のイベントを手掛けたのですが、その時もSonosで音楽を鳴らしました。Sonosはサンタバーバラ、ロン・ハーマンはロサンゼルスのブランドなので、同じカリフォルニア州出身ということでストーリーとしてもバッチリだなと(笑)。

−−その時は、どのような選曲古いラテンやメキシコの音楽から始まって、徐々に現代へと時計の針が進んでいく感じでエレクトロなダンス・ミュージックを混ぜていきました。サウンド・スタイリストのスタッフ数人で、その場の雰囲気に合わせて即興でセレクトしていく「DJスタイル」を披露したんです。ロン・ハーマンのカラーリングは「白と青」というイメージだったから、私たちのDJブースにはSonos Play:5の白を2台とSubを置き、フロアにはSonos Play:5とSonos Oneを設置しました。全部で12台くらい持ち込んだかな。通常、DJをやる場合はもう少し大型のパワード・スピーカーを使用するのですが、そこはあえてデザインにこだわりSonos押しでいきました。おそらく、会場を訪れたロン・ハーマン好きのお客様にも、Sonosのデザイン性や音質をアピールできたと思いますね。

−−ご来場のお客様から、選曲に対して何か反応はありましたか?

大河内:ロン・ハーマンのイベントに限らず、BGMを私たちが手がけるようになってから、「この曲はなんですか?」と尋ねられることがすごく増えたという声はよくいただきますね。かといって音楽が悪目立ちしているわけではなく、ちゃんと空間にフィットした居心地の良い雰囲気を作り出せてはいると思います。私たちは「サウンド・スタイリスト」ですので、DJのように選曲に自分の色を出すのではなく、あくまでもその場の雰囲気に寄り添うことが大切ですので。

−−ところで、Sonosはストリーミング音楽を楽しむのに最適なスピーカーですが、ストリーミングは大河内さんの生活をどのように変化させましたか?

大河内:やはりプレイリストの影響力は大きいですよね。アルゴリズムによってオススメの音楽をどんどん教えてくれるので、プレイリストを通じて自分が求める音楽を見つけやすいですよね。

−−特に、お気に入りのプレイリストってありますか?

大河内:それが、僕は仕事柄「お気に入り」というものがないんですよ(笑)。「好きなアーティストは?」と聞かれるのが一番困ってしまう。お店に合わせて様々な音楽を知っていないといけないので、なんでも聴くようにしているんです。朝、SpotifyやApple Musicを立ち上げたら、まずはアットランダムに未知の音楽をどんどん聴き進めるようにしていますね。リスニング傾向が偏らないよう、敢えてあまり得意じゃないジャンルのプレイリストから辿っていくこともありますよ。

−−あらゆるジャンルに精通していなければならないお仕事なのですね。

大河内:僕は今『レコールバンタン』で「食と音の関係」をテーマにした講義を持っているんです。将来、お店を出したいと考えている生徒たちに、どんなBGMを流せばお客さんにとって居心地のいい空間になるかを教えているんですけど、生徒からは「どんなふうに音楽を見つけたらいいか分からない」と言われることもあって。そういうときは、僕が普段やっているリサーチ方を教えています。例えば、「ゆったりとしたラウンジ系の音楽を見つけたい」と思ったときは、YouTubeで「relax lounge music」とキーワードを英語で打ち込む。そうすると、プレイリストがズラーっと出てくるんです。そこから、自分の目指すお店に合った音楽を見つけていく、ということも出来るわけです。

−−Apple MusicやSpotifyのプレイリストでも、気分に合わせたプレイリストを探す事もできますよね。本当に便利になりました。

大河内:今は、音楽に関する専門的な知識がなくても音楽をディープに掘ることが出来る。しかもそれを、みんなで「共有」する時代になったというのが最も大きな変化なのかなと思います。

−−では最後に、Sonosで聞くのにおすすめのジャンルを教えてください。

大河内:ストリーミング時代の新しい音楽との相性がものすごくいいですよね。今、音楽はパソコンや、スマホに接続したイヤホンで聴かれることが多いので、マスタリング現場でもそれに対応したマスタリングが施されています。テープを回していた時代に作られたレコードなら、それこそビンテージのアンプやスピーカーで聴いた方がいいのでしょうけど、2010年以降の音楽をストリーミングで聴くならやはりSonosがおすすめです。


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