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キーファー 新アルバム『Superbloom』発売&来日記念インタビュー ~「音楽を絶対に止めることはないし、一生やり続けると確信している」



 ロバート・グラスパーに続く次世代ジャズ・アーティストとして注目を集めている気鋭プロデューサー/キーボーディスト、キーファーは幼少期から培われてきたピアノの実力と10代初期からLA ビートシーンで育まれてきたヒップホップのビートメイキングの才能、両者をクロスさせたサウンドで表現させてきた。2017年のデビューアルバム『Kickinit Alone』が米A2IM のベスト・ジャズ・アルバムにノミネートされ、2018年のアルバム『Happysad』でも現地メディアやアーティスト達から高い評価を獲得してきた。そして2019年9月には現在のLAビート・シーンとジャズ・シーンを繋ぐ、新アルバム『Superbloom』をリリース。その新作を携え、10月9日(水)にConpass(大阪)でのソロ・ライブ、バンドセットでは10月12日(土)の朝霧JAM出演・10月14日(月・祝)のビルボードライブ東京での公演と、自身の名義としては初めての来日ツアーを開催する。そんな彼にインタビューを行い、音楽と出会いや向き合い方、新作そして今回の来日ツアーについてなどたっぷり語ってもらった。

音楽を絶対に止めることはないし、一生やり続けると確信している

―調子はどうですか?これからインタビューお願いします。

キーファー:いいよ。今日は6時間ぐらい生徒を教えて終わったばかりなんだ。

―え!6時間もですか?

キーファー:そうそう。この後、ジャパン・ツアーで演奏するための曲のアレンジを仕上げなきゃいけないんだ。今回新しいバンド編成で、リハもするから。楽しみだよ。

―曲はどの程度アレンジを加えているのですか?

キーファー:固定のパートに加えて、インプロヴィゼーションするパートもある。特に新しい曲を演奏する場合、インプロヴィゼーションする部分をあらかじめ決めている。だから、ジャズのフォーマットをイメージしてもらえたらいいかなと思うよ。

―わかりました。幼いころからジャズ・ピアノのレッスンを受け、その後ヒップホップのビートメイキングをされてきたと思いますが、それらにのめり込むきっかけはどんな事でしたか?

キーファー:ピアノに関しては、僕の家族全員演奏ができるんだ。両親が幼い頃から僕ら兄姉に演奏を教えてくれていて、僕が唯一演奏し続けている。母はクラシック・ピアノを習っていて、18歳まで教会で演奏していたから、指使いや音階のエクササイズを学んだり、父からはバッハやベートヴェン、主にブルースの曲の弾き方を教えてもらった。彼は、インプロヴィゼーションも得意なんだ。たしか僕が5~6歳の時に、母から楽譜の読み方や簡単な曲の演奏方法を学び始めたのと同時に、父がブギウギ・ピアノやシンプルなジャズの曲を教えてくれた。そして父の演奏レベルを超えたタイミングで、ジャズ・ピアノの先生につくようになった。それが15歳ぐらいの時。だから、物心ついた頃から毎日やってきたことで、演奏するのが昔から好きだったんだ。

ビートメイキングを始めたのは12~13歳の頃。ちょうどGarageBandが発売された時に、あのクールでカラフルなiMacを買ってもらって、インストールされていた。それがきっかけでGarageBandを使って短い曲を作るようになったんだけど、当時はいわゆるエレクトロニック・ミュージックっぽいものだった。そういった音楽を聴いていたわけじゃなくて、自分としてはファンクっぽいものを作ろうとしていたんだけど。ビート作りにのめり込んだきっかけは 、17歳の頃にJ・ディラの音楽に出会ったこと。聴いてすぐに自分の心に響いて、こういう音楽が作りたいと思わせてくれたんだ。


▲J Dilla - Nothing Like This

―J・ディラの音楽はどのように知ったのですか?

キーファー:当時21歳だった姉のボーイフレンドが、マッドリブとかJ・ディラにハマっていて、彼から色々教えてもらったのと同時期に、大学でジャズを専攻していた僕より少し年上でクールな友人たちが、感謝祭とかクリスマスで地元に戻ってきた時に、ロバート・グラスパーとJ・ディラを薦めてくれた。交友関係が異なる複数の友達が薦めてるんだったら間違いないと思って聴いてみたら、僕も即ハマって毎日愛聴するようになった。ピート・ロックもその内の一人だね。僕にとって、 ピート・ロック、 J・ディラとマッドリブが御三家という感じだな。

―その後、プロとして音楽を演奏しようと決心したのは?

キーファー:音楽は一生演奏し続けると思っていたけれど、フル・タイムでやりたいと決めたのは17~18歳ぐらいの時か、その少し後ぐらいかな。実は、僕ものすごく怠け者で、部屋もめちゃめちゃ汚くて(笑)……子供の時、両親は洗濯部屋に行くために、毎回僕の部屋の中を通らなければならなかったんだけど、部屋があまりにも汚くて、あるとき父親に「お前が怠け者なのは分かった。クローゼットにすべてぶち込んでも何でもいいから、とにかく人が通れるぐらいの道を作るクリエイティブな方法を考えろ」と言われた。この言葉は、その後も何度か異なるシチュエーションでも言われている。

例えば、両親は僕の携帯代を払ってくれなかったから、普通に仕事をして稼ぐか、それが嫌だったら、音楽を作るなり、ライブをするなりクリエイティブな方法で解決しろと言われた。そしてやるんだったら最高の結果を出せって。 うちは3人兄姉なんだけど、 僕がやや変わっていて、怠け者だというのを父親は認めていた。その分、他のエリアで頑張らなければならなかったってわけ。今の僕があるのは、両親の理解があったからでもある。もちろん当時からは大分マシになってて、今は部屋もそこそこ綺麗にしているけれど(笑)。自分の好きなことにはとにかく全力で取り組み、得意になれという教えがあったらなんだ。


▲『Superbloom』

―最新アルバム『Superbloom』、前作『Happysad』、そしてEP『Bridges』と間をあけずにリリースし続けていて、多作な人をイメージしていたので驚きです(笑)

キーファー:生まれながらの怠け者気質だけど、今はその正反対。特にここ1年間は、僕なりにものすごく頑張ったと感じてる。願わくば今のペースをキープできたらと思っている。この1か月間で教え子が50人ぐらい増えて、全部で180~200人ぐらいいるんだけど、彼らに教えつつ、毎年アルバムをリリースして、何度かツアーができれば申し分ない。それができるキャパシティが自分にあることがわかったからね。得意じゃない部分は、マネージャーやツアー・マネージャー、エージェントに任せていて、ガールフレンドのクリスティーンはレッスンのスケジュール管理をしてくれている。次々に作品をリリースできているのは、自分がすべきこと、そして他の人に頼めることを、うまく調整できるようになったのが大きいと思う。

―なるほど。毎日欠かさずにレッスンも曲作りも行っているのですか?

キーファー:昔は毎日やっていたけど、今は週に6日ほどにとどめてる。3~4時間教えて、あとは曲を作って。2~3日レッスンをサボると、ものすごく罪悪感を感じて、自分の人生の目的を果たしていないんじゃないかって気分が沈んで不安になるんだ。人生は限られているということを自覚しているから、できる限りのことをしなければないという想いに駆られている。中でも、人に教えるということは自分にとって大切なことで、最も自分が貢献できるエリアだと思っているんだ。


▲Kiefer - What A Day

―そういった活動のインスピレーションや原動力となっているのは?

キーファー:心にもないことを言ってると思われないように言葉にするのが難しいんだけど、自分のスピリットの核で感じているのは……人生はものすごく美しいものだということ。音楽を教えたり、演奏したり、音楽について話していると……ゴメン、なんかすごくエモーショナルになってきちゃった。音楽を通じて見ず知らずの人々に出会い、根本的にはみんな同じだと学ぶのと同時にその違いを知ること。個々の違いを認め合うとともに、みんな同じだと認識すること。その機会を毎日僕に与えてくれるのが音楽なんだ。

音楽を教えることは、共感性を高める最も有効なレッスンであるとともに、それを毎日やることはとてつもないチャレンジでもある。僕が思うに、多くの人が音楽を学びたがらないのは、才能がないからではなくて、考え方や固定概念がネックになっているから。大体の場合、自分のことを信じられなかったり、または自分の欠点に目を向けられないというのが原因で、自分が成長すべき部分に気づいていなかったり、プライドが高すぎるんだ。

僕が人を教える時も、自分のエゴが邪魔をすることが多々ある。生徒に対してフラストレーションが溜まり、僕のエゴ対生徒のエゴになることもあるし、教えている方なのに不安を感じることもある。でも、毎日自分に言い聞かせてる。「この子は自分のようになりうる可能性もあるし、僕もこの子のようになっていたかもしれない」とね。例えば、僕の父親は幼い頃にレッスンを受けていた時にインプロヴィゼーションは悪いものだと教えられていた。僕の生徒がプロの音楽家になるかはわからないけれど、うまい具合に励ますことができれば、その子に子供ができた時に音楽家の道を歩むことを後押しするかもしれないって。だから可能な限り、日々出会う人と共感しようと努力していて、それを毎日行うことでインスピレーションを受けているんだ。

音楽を絶対に止めることはないし、一生やり続けると確信している。自尊心を高めてくれ、自分が正しいことしていると感じさせてくれる。自分にとって、それが何なのか見つけることを誰もが志すべきだと思うね。僕はそれが音楽だというのを幼くして知ることができたから、とても恵まれている。これが自分がするべきことだと心の底からわかっていて、それ以上のインスピレーションは必要ないんだ。

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1番の挑戦は、自分のサウンドやアイデアがきちんと伝わるように、ラップトップでレコーデイングして、ミックスすることだった

―『Superbloom』へ話を戻しますが、今作で新たに取り入れた要素や試みたアプローチはありますか?

キーファー:1番大きな変化は作品のムードだと思うね。過去最高に活気があって、「Golden」をはじめ収録曲すべて鮮やかで、変わっている。俗に“チル”っぽいと言われる曲も色彩豊かに仕上がっている。僕の音楽はよく“チル”と敬称されることがあって、それはそれでいいと思っているんだけど、個人的にはそうだとは思っていない。例えば「10,000 Days」はよくそう表現されるけれど、とても生き生きとして、美しくて、カラフルな響きを持った曲だし、「Golden」もそうだ。「Frozen」はややタフな印象で、「May 20」は風変り。「Good Looking」はとても快活な感じだね。だから全体的にエネルギーがあって、明るい印象の作品になったと思う。


▲Kiefer - Golden - Superbloom

―あなたが人気企画「Against The Clock」に参加した際の映像を見たのですが、キーボードを弾きながら、曲作りを始めることが多いのですか?

キーファー:大体の場合、インプロヴィゼーションから始めて、メインのアイデアへ辿り着くのに30分ぐらいかかるって感じかな。これ、みんなに言っていることなんだけど、『Against The Clock』の時は、本当に何の準備もしていなかった。彼らが撮影を始める30秒ぐらい前にアイデアを考え始めて、そのビート作ってから最初に思いついたアイデアを次々と形にしていったんだ。普段曲を作っている時も、最初のアイデアを採用することの方が多いね。それが必ずしも音楽の正しい作り方ってわけじゃないし、もとより正しい作り方なんてないと思うけど…。ここ2年間はそうやって作るのが好きだね。最近少しばかり最初の衝動に従うのではなく、時間を取って考えるようにしているけれど。とはいえ、自分が好きな曲作りの手法の一つであることは間違いないね。


▲Kiefer - Against The Clock

―異なる種類の音楽を融合させた曲作りを行うようになったのは自然なことでしたか?

キーファー:ある意味そうだね。だって、この曲は50%ジャズにしようとか考えて曲作りをしているわけじゃないから。自分が聴いて、気に入るような曲を作るだけ。1番の挑戦は、自分のサウンドやアイデアがきちんと伝わるように、ラップトップでレコーデイングして、ミックスすることだった。これがちゃんとできるようになるまでに3年ぐらいかかった。21~24歳の頃、毎日4時間から8時間ぐらいビートメイキングして、それらを自分の納得できるサウンドにラップトップを使って落とし込むという作業がとにかく大変だった。

―あなたが拠点としているLAでは、ここ数年の間にジャンルの垣根を越えた新たなジャズのムーブメントが起きました。こうした状況になった背景には何があると思いますか?そしてそれは現在のシーンにどのような影響を与えましたか?

キーファー:う~ん、説明するのが難しいな。でもロウ・エンド・セオリーの影響は確実にあると思うね。あとノレッジ、カマシ・ワシントンやテラス・マーティンなどが注目を浴びたことで、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロニック・ミュージックを融合させた音楽がものすごく人気になった。それをうけてプロデューサーとミュージシャンの二足の草鞋を履くアーティストが増えし、過去最高ぐらいの勢いに達している。キーボードを弾くプロデューサーが増えて、その中の多くは僕が教えてる(笑)。逆にミュージシャンはビートメイキングを学んでいて、実はそういった人々も僕は教えていたりする。多分1,000人ぐらいはいるんじゃないかな…楽器とラップトップを同時に使って音楽を作っているのは。昔は、フライング・ロータス、サンダーキャットとあと数人いたぐらいだったけど。これがムーブメントによるポジティブな影響。


▲Kamasi Washington - Street Fighter Mas

その反面…実はこのことについてちょっと前に友達と話していたばかりだったんだけど、僕がこのシーンに深く足を踏み入れたのは2013年ぐらいで、当時はすごくクレイジーだった。ロウ・エンド・セオリー・シーン最盛期の後半ぐらいで、 誰かしら知り合いが演奏するイベントがあったから、 毎週のようにロウ・エンド・セオリー、ザ・ハイ・ハット(The Hi Hat)、 ザ・ヴァージル(The Virgil)などに足を運んでいた。で、行くと30~40人ぐらいクールなプロデューサーやミュージシャンと顔を合わせてた。僕が一番よく覚えているのは、ある時Mndsgnのリンゴが遊びに来いよってものすごくカジュアルに誘ってくれたライブに行ったら、ラインアップがノレッジ、ラス・G…RIP安らかに、SAMIYAM、アール・スウェットシャツという錚々たるメンツで、バックステージに行くと素晴らしいプロデューサーが何人も普通にいるんだ。こういうのって当時は日常茶飯事だった。で、 ある時Mndsgnのリンゴに「最近ああいうのないよね」ってボヤいたら、「そりゃそうだ、みんなツアーに出てるから」って言われて(笑)。 昔はローカルなシーンだったから、近所で毎週そういったアーティストが同時に見られた。でもみんな有名になって、常にツアーしているから、一緒に演奏したりする機会は稀になった。僕が、シーンから少し遠ざかっているだけなのかもしれないけど。だから、ハイブリッドな音楽を作る人は増えたけれど、中核の人々がシーンからいなくなってしまったから、1カ所に集中したシーンではなくなったのかな、と感じるね。

―そんな中、LAのシーンの中で注目している、もしくは好きなミュージシャンはいますか?

キーファー:僕のルームメイトのポール。Hetherという名で活動しているんだけど、すごくいい作品を作っている。あと今みんなが注目しているデヴィン・モリソン。JDベックとDOMiも最高。JDベックは今15~16歳ぐらいなんだけど、世界を代表するドラマーで、18歳のキーボード・プレイヤーのDOMiも素晴らしい才能の持ち主だ。よくデュオ・ショーをやっていて、モノネオンとも演奏したりしている。今後みんな絶対に人気がでると思うよ。


▲Kiefer - Against The Clock

―加えて、最近よく聞いている曲やアルバムがあれば教えてください。

キーファー:マッドギブス(フレディ・ギブス&マッドリブのユニット)の『バンダナ』はよく聞いているよ。

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ベストを尽くし、最高の演奏をするから、ぜひライブを観に来て、楽しんで帰ってくれたら嬉しいよ

―近年リリースされたアンダーソン・パークのアルバムに楽曲のプロデュースで参加されてます。これはどういう経緯で行うことになったのですか?

キーファー:3~4年前ぐらい…まだ『マリブ』がリリースされる前に、フリー・ナショナルズのDJなどを担当しているカラム・コナーと何かのライブで出会った。その後キーボードを弾いてほしいって誘ってくれて、次第に仲良くなって、一緒にスタジオ入りするようになったのがきっかけ。その頃、僕は作ったビートをSoundCloudで公開するようになったんだけど、それをすごく気に入ってくれて、曲を書く下地にいくつか提供してくれって言われたんだ。一つは、そのままSoundCloudにアップされていたものが使われていて、他の2つは僕とコナーが彼のスタジオで作ったものだね。


▲Anderson .Paak - King James (Official Audio)

―普段は自分のために曲を書くことが多いと思いますが、そういった経験から学んだことはありますか?

キーファー:他のアーティストの作品に参加する機会があるとき…自分の好きなトップ・ドッグ関連とかから声がかかることがあると、まずは車に乗って、制作が行われているスタジオに向かうことが第一。成功の90%は現場にいることとかじゃなかったっけ?もちろん、その前にちゃんと下準備はするけど。そしてそれ以前に、毎日コツコツとピアノに向かい、自分を向上させるという意識を持ち、チャンスをものにすることが大切だね。そういった人たちとのセッションへ足を運んで後悔したことはない。たとえ疲れていても、頑張って参加することに意義があるんだ。

―コラボと言えば、EPの「Bridges」に収録されている「Orange Crayon」や「Cute」をはじめ、『Superbloom』からシングルとしてリリースされている「Be Encouraged」や「May 20」でもMason Londonによるアニメーション動画を配信しています。とても印象的な映像になってますが、この取り組みはどうして始めたのですか?

キーファー:彼のイラストをアンダーソン・パークがインスタグラムにリポストしてて、「これ誰だろう」って気になったから、色々作品を見てみたら驚異的に素晴らしくて、当時『Bridges』の制作を行っていたから、彼にビデオを作ってくれるか相談してみようってなったんだ。みんな、それまでメイソンが作ったアニメーションを見たことがなかったから、どんな仕上がりになるかすごく興味を持っていた。彼はものすごく才能があるし、趣味もいいし、勤勉だから、きっと素晴らしいものになるだろうって僕は確信していたけれど。文字通り、僕が色々な場所でピアノを弾いてる映像を作ってくれという指示しか与えなかった。


▲Kiefer - "Be Encouraged" - Superbloom

―シチュエーションは、特に指定していなかったんですね。

キーファー:そう、これは僕の哲学の一つ。アーティストに、創作方法を指示したら絶対にダメ。自分が必要としているものは伝えるけど、そのやり方までは口出ししない。その人を起用した意味がなくなってしまうから。僕がピアノを弾いていて、「ロバート・グラスパーみたいに弾いてくれよ」って言われたら、「じゃあ、ロバートに弾いてもらえば?」ってなるわけだし。僕は何年間も自分の技術を磨いているから自分らしくしか弾けないし、もしロバートみたいに弾いてくれと言うんだったら、何年もその練習してからになる。だから、自分がアーティストとして受けたい扱いをメイソンにもしただけの話だよ。彼はものすごく自由に創作するし、ビデオのディテールはとても巧妙だ。僕が加えてほしかった変わったディテールも難なく、完璧にこなしてくれから、時間がかなり余って100以上のディテールを追加する余裕があったんだ。各ビデオに10~20分費やしてじっくり観ても足らないぐらい。それを7本も作ってくれたんだから、感服したよ。

―特に気に入っているものはありますか?

キーファー:RVに乗ってるビデオかな(「10,000 Days 」)。あれは最高。でも一番好きなのは、『Bridges』のリリースの時に作ってくれたビルボードのやつ。夜空から日が昇る様子に合わせて空の明るさが変化していくのが、本当に素晴らしい。全部好きだよ。彼は本当に素晴らしいアーティストだ。


▲Kiefer - 10,000 Days - Superbloom

―以前、テラス・マーティンのバンド・メンバーとしてビルボードライブ東京のステージにも出演しています。会場についてどんな印象をお持ちですか?

キーファー:ビルボードライブは、僕がこれまで演奏した中で一番好きなクラブの一つだ。インタビューだから言ってるわけじゃないよ(笑)。音響もスタッフも会場も最高。前回演奏したのは、とてもいい思い出だから、ツアーを楽しみにしている。今回演奏しようと思っている音楽のスタイルは会場に合うと思うし、世界中から選りすぐりのバンド・メンバーを選んだよ。キーボードのジェイコブ・マン、サックスのジョシュ・ジョンソン、ベースはアンディ・マッコーリーで、ドラムはウィル・ローガン。

―「Dungeon Sessions」の時に一緒だったメンバーが多いですよね。

キーファー:そう、ジョナだけ参加できなかったから、今回はジェイコブに来てもらう。だから僕を加えてキーボードが2人になるからクールだよ。過去に、みんなと別々には演奏したことがあるけれど、初めて全員で一緒にプレイしたのは、ここ1年以内の僕のUSツアーの時…いや、あの時は僕、アンディとウィルでリズム・セクションが一緒だっただけか。彼らとは1年ほど演奏しているけれど、ホーン系を担当してるミュージシャンがその時によって違うって感じかな。


▲Kiefer - Against The Clock

―朝霧JAMはフェスなので、一味違う演奏になりそうでしょうか?

キーファー:今の段階ではセットリストは同じ予定だけど、ジャズのライブだからパフォーマンスの内容は異なってくるよ。

―最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

キーファー:日本に行って演奏するのが待ちきれない。3度目の来日になるけれど、日本は僕が演奏するのが好きな国で、日本の観客は大好きだ。ベストを尽くし、最高の演奏をするから、ぜひライブを観に来て、楽しんで帰ってくれたら嬉しいよ。

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