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松尾潔&渡辺志保が語る“ソウル・ミュージックの遺伝子” ~ベイビーフェイス、RBRM、カーク・フランクリン…etc R&B/ソウル系アーティストの秋の来日公演に注目



 ケニー “ベイビーフェイス” エドモンズ、RBRM(ボビー・ブラウン+ベル・ビヴ・デヴォー)、カーク・フランクリン、ブライアン・ジャクソンなど、R&B/ソウル系のアーティストが続々と来日公演を開催する、この秋のビルボードライブ。その充実のシーズンを前に、作詞家/作曲家/プロデューサーとして活躍する松尾潔さん、ヒップホップを中心にブラック・ミュージックの現在地を伝え続ける渡辺志保さんへの対談インタビューを実施。その充実のラインアップに潜む“ソウルの遺伝子”を解き明かしてもらった。

秋の“R&B/ソウル系”ビルボードライブ来日ラインアップ

松尾:この秋のビルボードライブは、ソウル好きには充実のラインアップになりましたね。

渡辺:いろいろな世代のアーティストが登場してくれるのも魅力ですね。

松尾:ベイビーフェイス、RBRM……これはニュー・エディションと呼んでいいのかな(笑)……そしてSWVという80年代~90年代組はもちろん、ブライアン・ジャクソンがギル・スコット・ヘロンとのナンバーを披露するライブもある。こういう企画性の あるライブは、すごくビルボードライブらしいなと思います。

渡辺:それぞれ魅力的ですけど、私はシャソールに注目しています。彼は世界中の風景などの映像を流して、その中にある音とコラボするんですね。

松尾:かなり現代的ですよね。

渡辺:前回の来日のとき、その映像のひとつにニューオーリンズのセカンドラインが出てくるシーンがあって、彼なりに伝統を取り入れているのがすごくよかったですね。彼はソランジュの最新作にも参加していて、そのサウンドもすごく素敵だったので、今回のステージにも期待しています。


▲Chassol Live at AB - Ancienne Belgique

松尾:伝統的なブラック・ミュージックとヒップホップ以降の現代的なものとの関係性でいえば、僕はカーク・フランクリンが楽しみ。

渡辺:カニエ・ウエストのアルバムにも参加していますし、ヒップホップのシーンからリスペクトされるゴスペル・アーティストですね。

松尾:5月にリリースされたアルバム『Long Live Love』が大好きなんですよ。すでにヴェテランと呼んでいいんだけど、最新の曲もいいし、ゴスペルの中では音の選び方が圧倒的に洗練されていて、今あらためて「ゾーンに入っている」気がする。

渡辺:そのクロスオーヴァーしたセンスが愛されるポイントですね。

松尾:それこそカニエ・ウエストがゴスペルに回帰していたりするでしょ。もしかすると「ゴスペルを聴く」ということが彼らにとって「イン」な状態なのかもしれない。

渡辺:それは言い得て妙ですね。


▲Kirk Franklin - OK

伝統と現代性のバランス

渡辺:そういう意味では、BJ・ザ・シカゴ・キッドも前回の来日ステージでモータウンをカヴァーするコーナーを設けていました。彼はラッパーにフックアップされて、アフロジャックともコラボしている前衛的なシンガーなんですが、逆にそこがイマっぽいバランスだなと思ったんですよ。

松尾:「伝統と現代のバランス」または「伝統と現代の越境」というのは、ヒップホップ以降の世代にとっては当たり前になってきたんじゃないかな。もっと前の世代で小さい頃からゴスペルを歌っていたシンガーだと、商業的なR&Bは聴いちゃいけないものだったりして、ベッドで毛布をかぶってラジオを聴いていました、みたいな。

渡辺:そこから自分がR&Bを歌うようになったというヒストリーがあって、そのおかげで下の世代は、さらに越境できているんですね。

松尾:ヒップホップ以降という話でいうと、歌詞の内容がより個人的だったり、固有名詞がどんどん出てきたり(笑)、そういう時代になった。最速で音楽を聴くことはインターネットで可能になったけれど、その音楽の背景にある、いわゆる「芸能ニュース」をある程度知っていないと、今のシーンを理解しづらい部分もあるよね。

渡辺:SNS時代になって、私生活や主義主張を発信することが当たり前になりましたからね。アメリカのR&Bはポップスやラップとも似ていて、歌詞に社会的な意味合いを含めることも少なくないので、アーティストの背景にあるものと無縁ではいられないですね。

松尾:その音楽の「文脈を知る」ということだよね。そのためにも、例えばラジオ番組で情報を発信しなくちゃいけないな、と思うんですよ。


▲BJ The Chicago Kid - Reach (Audio) ft. Afrojack

「最新作」と「最高傑作」

松尾:ラジオの仕事をしていて思うのは「最新作」と「過去の最高傑作」をバランス良くキュレーションしたいっていうこと。R&B/ソウルも成熟期に入ってきたから、アーカイヴだけでも潤沢じゃないですか。ただ、アーティストに近い立場の人間としては、最新作も聴いてほしい。過去作を知っているからこそ、その最新作の良さを伝えられたら、と思いますね。

渡辺:最新作と最高傑作を楽しめるという意味では、ビルボードライブという場も、ひとつの媒体ですよね。

松尾:しかも、生身のアーティストが間近にいるわけだから、文脈を知っていると「ボビー・ブラウンって楽屋でどんな会話しているのかな」なんて想像も広がって(笑)、さらに楽しめるんじゃないかな。

渡辺:ライブならではの「現在のリアリティー」を感じてほしいですね。

松尾:過去のナンバーでファンになった方もビルボードライブに行く前に1時間だけでも、そのアーティストの最新音源に触れる時間を作ると、より楽しめると思いますね。もし、何を聴くかにお迷いでしたら、僕と志保さんのラジオ、インターネット・ラジオをぜひ聴いてください。


▲RBRM perform Roni live at the SiriusXM Studios

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