Billboard JAPAN


Special

鬼才のキーボーディスト=アノマリー、日本デビュー&初来日公演記念インタビュー



インタビュー

 2018年11月23日、カナダのモントリオールを拠点に活動するキーボーディスト、アノマリーの最新アルバム『Metropole I + II (Japan Deluxe Edition)』がリリースされた。2017年の1st EPと10月にリリースされたばかりの2nd EPをコンパイルし、ボーナス・トラックも加えた本作には、チャーリー・プースやオースティン・マホーン、サンダー・キャットらも称賛する彼の才気が渦巻いており、日本デビュー作品に相応しいベスト盤的内容となっている。

 11月26日には初来日公演も控えている彼に、今回はメール・インタビューを実施。彼の音楽のルーツ、楽曲の制作アプローチの方向性、最新作の制作話などを語ってもらった。またApple Musicでは、彼の音楽に影響を与えた曲のプレイリストも公開中。併せてチェックしてもらいたい。

――アーティスト名「アノマリー(Anomalie)」の由来を教えてください。

アノマリー:フランス語で綴ることができて、なおかつ英語や他の言語でも発音することができる名前にしたかったんだ。それから、この言葉が持つ“型破り”という意味が、自分の音楽に対するアプローチの性質を表していると思ったから気に入ったんだよ。僕の奏でるエレクトロニック・ミュージックは、様々なスタイルや影響を掛け合わせながら作られているからね。僕はこのサウンドはもちろん、その制作手法を気に入っているんだけど、今では多くの楽器奏者や歌手がこのプロダクション・ゲームに足を踏み入れているから、現在はこのアプローチの仕方はそんなに変わったことではないと言えるね。

――あなたの楽曲からは様々なジャンルの影響を感じられますが、自分の原点だと思う作品やアーティスト、ライブは何ですか?

アノマリー:僕の家は音楽一家で、正確に言えばクラシック音楽の環境で育ったんだ。僕の母はピアノと音楽理論の先生で、父はクラシック音楽に関するラジオ番組をやっていてね。小さい頃から高校の終わりまで、コンサートやあらゆる分野のコンテストで演奏してきた。10代の頃は、Skrillex、Deadmau5、Wolfgang Gartner、The Bloody Beetrootsなどに影響を受けてエレクトロニック・ミュージックにハマっていったんだ。当初は、自分が聴いていた全てのサウンドがリアルタイム(その場)で演奏されていると信じていた。でもその後に、リアルタイムで演奏することが非常にレアだということを知ったんだよ。でも、この音楽は様々なスキルで構成されることが重要だから、それはそれでいいんだよ。

 だから、Herbie Hancock、Quincy Jones、Oscar Petersonの音楽を初めて聴いたときは、まるで天国にいるかのようだったよ。僕は3年間ジャズを学んで、モントリオールにあるヒップホップのジャム・セッションを毎週やっているハウス・バンドに参加したことで、ミュージシャンとして大きく成長できたんだ。これらの経験の全てが、今の「アノマリー」のサウンドとなっている。だから僕の音楽は、Dave Grusin、Herbie Hancock、J Dilla、Oscar Peterson、Skrillex、Brahms、Ennio Morricone、Vangelis、D'Angelo、Michael Jackson、Quincy Jonesから主な影響を受けたと言えるね。

――『Métropole Part II』は、前作『Métropole』のコンセプトを引き継ぎつつ、よりクールに洗練された印象を受けました。この1年で心境や制作方法に何か変化があったのでしょうか?

アノマリー:『Métropole Part II』を気に入ってくれたようで嬉しいよ! 今作も最初の作品と同じ世界観で、メイン・テーマは故郷のモントリオールに影響を受けているということは確かだけど、作曲の観点や音質がよりスムーズになった。前作『Métropole』の時はシンセがリード・サウンドだったけど、今作ではピアノがリード楽器としてより際立っていて、シンセはサポートのサウンドとして使用している。僕はこの選択にとても満足しているよ。これによって、バランスのとれたライブを行うことができるからね。ライブは常にハイプな状態でなければいけない、というわけではないからさ。

――あなたが作成したSpotifyのプレイリストには『Métropole Part II』の楽曲と共に同世代のアーティストの楽曲も追加されていましたが、それらは今作にどういった影響を与えましたか?

アノマリー:毎週聴いている楽曲に間違いなくインスパイアされていて、このSpotifyのプレイリストはそれを象徴しているんだ。このプレイリスト以外では、できるだけ頻繁に楽曲を変えて聴くようにしている。そうしないと、クラシック、ラテン、ジャズ・フュージョン、そして僕にとってのアイドルたちの音楽に立ち返ってしまいがちだからね。でも自分の仲間がどんなことをしているのかを追うことは本当に重要なことだし、常に素晴らしい音楽が作られている時代に生きていることをとても幸運に思うよ!

――日本デビュー・アルバム『Metropole I + II (Japan Deluxe Edition)』には、ボーナス・トラック「No Way」「Hang Glide (With Rob Araujo)」が収録されます。これらの曲についてエピソードがあれば教えてください。

アノマリー:「No Way」は、これまでに自分のサウンドの一部ではなかったヴォーカル・チョップを探求することが軸だった。この曲はボーナス・トラックだから、つまりはサウンドの方向性をより探求することが許された曲。これはかなり有益な経験だったよ。今年から来年にかけて行うヴォーカリストや楽器演奏家とのコラボレーションのための道を舗装してくれたきっかけにもなったと思う。「Hang Glide」については、素晴らしいピアニスト/プロデューサーである友人のRob Araujoと一緒に作ったんだけど、純粋に嬉しかったね。彼は最初に、バース用にピアノのリフを送ってきて、僕がその波打つコーラスに合う異なる音のテクスチャ、リフ、音楽的要素を探していったんだ。このトラックは、僕たちにとって初めてのデュオ・ライブ・パフォーマンスに繋がるものだったし、そのあとも多くの作品を一緒に作り出すことができた。今もエキサイティングな作品ができあがりつつあつところだよ。



「Hang Glide (with Rob Araujo)」パフォーマンスビデオ


――『Metropole I + II』は、モントリオールの街に影響を受けたそうですね。あなたにとってモントリオールはどのような意味を持つ場所ですか?

アノマリー:モントリオールは本当に大好きな街だよ。僕はここで生まれ育ったんだけど、この街は文化的にとても豊かで、ここで生活できることをありがたく思っている。(英語とフランス語の)2か国語が公用語であること、季節ごとに代わる風景、ナイトライフ、食べ物、アンダー・グラウンドの音楽シーン、そしてフェスが好きだ。北米の中でも他と違って少し変わった都市だけど、ニューヨーク、トロント、ボストンに近くて、作曲のセッションやツアーをするのにとても便利な場所だよ。街のあらゆる部分に美しさがあり、その美しさに絶えずインスピレーションを受けているんだ。



――今作でいうモントリオールのように、音楽以外のものからインスピレーションを受けることは他にもありますか? あればその理由も教えてください。

アノマリー:感情的に記憶された思い出や、ある都市への旅行、交際関係など、具体的なアイデアを書くためにインスピレーションを与えてくれる瞬間は確実にあるけれど、分かりやすい言葉にして伝えることは難しいな。特に歌詞が無い音楽のサウンドは、一般的に感情や気分について書かれていて、それは大抵どこかの場所に関係している。そして、リスナーはそれぞれが各自の方法でその音楽と繋がる何かを感じることができると思うんだ。

――本作を引っ提げたアジア・ツアーが11月26日の日本公演よりスタートします。アジアを回ろうと思ったきっかけは何ですか?

アノマリー:生バンドとアジア・ツアーに回れることにとてもワクワクしているよ。ずっと前からアジアでライブをしたいと思っていたんだ。自分の音楽を聴いてくれるオーディエンスが増えることで、こういったツアーを開催することが可能になる。これは僕のようなインディペンデント・アーティストにとって非常にエキサイティングなことだ。それに、国境を越えて作品を広げることは、インターネットを通じてキャリアをスタートさせるクリエイターにとっては普通のこと。レコードを販売したり、特定の市場で自分を売り出していくために行う伝統的なキャンペーン・モデルとは対照的に、境界線という概念が無くなってきているということだろうね。



――今回はバンドセットを伴って来日されますが、バンドで演奏することはどのような刺激をもたらしますか?

アノマリー:生バンドとのショーでは、プログラミングやアレンジ、リハーサルのために多くの時間を必要とする。これは本当に有益なこと。バンド・メンバーとステージを共にすることはとても刺激的で、たとえこの世界の中にある何かと彼らを交換しろと言われても交換しないだろうね。彼らは人としてもミュージシャンとしても素晴らしい。それに彼らの演奏はパフォーマンスをしている時やオフを過ごしている時であろうと関係なく、とても新鮮だよ。ソロでの演奏も楽しいんだけど、生バンドでライブをより良いものにしようと思いながら演奏している時と同じ満足感は得られないね。

――最新のライブ映像で、鍵盤を客席に向けながら演奏していましたが、そのスタイルには何かこだわりがあるのでしょうか?

アノマリー:ライブをより面白くするためでもあるし、僕がどのパートを演奏しているか明確に見せるためでもある。楽器としてのキーボードは、オーディエンスの視点から見るとかなり複雑だと思う。特に様々なサウンドが混在している場合はね。それに、キーボードは僕の作品の中心だから、それをしっかりと見せることがショーをより面白くするための最良な方法だと感じたんだ。ビデオを撮る時も一貫性を保つために同じようにやっているよ。



「Notre-Dame Ouest」パフォーマンスビデオ


――今後コラボしてみたいアーティストがいれば教えてください。

アノマリー:実際のところ、僕はこれまで、そこまで多くのコラボレーション作品をリリースしていないんだ。だから来年はコラボすることに真剣に焦点を当てている。今まさにその途中なんだけど、いくつかのサプライズもあるよ。まだここでは名前を出せないんだけど、間違いなくバラエティに富んでいて、楽しいコラボレーションになるね。

――音楽に関連しなくても構わないので、他に挑戦してみたいことはありますか?

アノマリー:『Métropole Part II』に収録されている「MADISON」の制作中に再挑戦したクラリネットの演奏を向上させたいと思っているよ。それと、スタジオとバンドのリハーサル用に使えるもっと大きなワーク・スペースを手に入れようと思っているんだ。ドラムを実際に叩いて演奏したり、録音したり、練習することもできるようになるからね。

――日本のファンへメッセージをお願いします。

アノマリー:11月26日にWall&Wallでみんなに会えることが待ちきれないよ!今回、チケットを手に入ることができなかった人も、みんなが思うより早くまた日本に戻ってくるからね ;)

プレイリスト「アノマリーの音楽スタイルに影響を与えた曲」

Billboard JAPANのApple Musicプレイリストはこちらから>>>

アノマリー「メトロポール Ⅰ+Ⅱ JAPAN DELUXE EDITION」

メトロポール Ⅰ+Ⅱ JAPAN DELUXE EDITION

2018/11/23 RELEASE
LEXCD-18021 ¥ 2,310(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.OUVERTURE (METROPOLE PART 1)
  2. 02.METROPOLE (METROPOLE PART 1)
  3. 03.DAYBREAK (METROPOLE PART 1)
  4. 04.NEW SPACE (METROPOLE PART 1)
  5. 05.INTERLUDE (METROPOLE PART 1)
  6. 06.VELOURS (METROPOLE PART 1)
  7. 07.LE BLEURY (METROPOLE PART 1)
  8. 08.EPILOGUE (METROPOLE PART 1)
  9. 09.CANAL (METROPOLE PART 2)
  10. 10.MADISON (METROPOLE PART 2)
  11. 11.NOTRE-DAME EST (METROPOLE PART 2)
  12. 12.CRESCENT (METROPOLE PART 2)
  13. 13.NOTRE-DAME OUEST (METROPOLE PART 2)
  14. 14.PARC (METROPOLE PART 2)
  15. 15.FIN (METROPOLE PART 2)
  16. 16.NO WAY (BONUS TRACKS)
  17. 17.HANG GLIDE (WITH ROB ARAUJO) (BONUS TRACKS)

関連キーワード

TAG