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Metis『ONE VOICE ~Metis Best~』インタビュー



Metis 『ONE VOICE ~Metis Best~』 インタビュー

「みんなのことを家族だと思ってこれからも歌を届けていきますから、
みんなもずーっとメティのことを家族だと思って見守ってください」

 大切な人々の死や自分自身とボロボロになるまで対峙しながら、聴き手の胸に突き刺さる魂の歌を放ち続けた10年間。ようやく辿り着いた『ONE LOVE』を超えるアルバム『ONE VOICE ~Metis Best~』や、みんなと武道館で「母賛歌」を歌う夢など熱く語ってもらった。

Metisの10年間……「あります? 普通そんなこと!?」の連続でした

--今回の10周年記念ベストアルバム『ONE VOICE ~Metis Best~』で改めてMetisさんの音楽と歌声をじっくり堪能させて頂いたのですが、もう1曲目「梅は咲いたか 桜はまだかいな」のド頭からソウルフル過ぎて、エモーショナル過ぎて、とんでもないボーカリストだなと痛感させられました。素直に「なんでこんなに魂を乗せられるの?」と思いました。

Metis / 人類史上最大の愛
Metis / 人類史上最大の愛

Metis:ハハハハ! メティ、魂乗ってます? 嬉しいですね!

--本人的にはきっとあれがナチュラルなんですよね?

Metis:そうですね。ありのままの自分を伝えています。それはこの10年間の中でもっと本心というか、本音で歌ったりとか、本当の自分で歌えるように心掛けてきたからで、そういった気持ちで歌うとやっぱりこういう今の歌い方になっていく。そうすると、例えばライブに来てくれるお客さんも「魂が動いた」とか「魂が震えた」ってよく言ってくれるんですよね。私の歌はぜんぶ自分の経験、実話から作られていて、本当に苦しかったり、ツラかったり、そういったときに自分が乗り越えられるように書いてきたので、だからストレートに届くのかもしれないです。

--そのスタイルのルーツを探りたいんですが、元々なんで「歌おう」と思ったんですか?

Metis:ウチは母子家庭だったので、夜になってお母さんが帰ってくるまでのあいだ、近所のビデオ屋のお兄さんが「メティが寂しくならないように」っていろんなビデオをくれてたんですね。その中にマイケル・ジャクソン「スリラー」のPVが入ってて、子供ながらにゾンビが踊っている光景が楽しくって、そこで音楽とダンスが好きになったんです。

--なるほど。

Metis:あと、もうひとつの理由は、ウチのお母さんは化粧品会社の美容課長や先生をやってて、年に一度の社員旅行のときはメティも連れて行ってくれたんですけど、宴会の時間になったら、普段は厳しいお母さんがオカマちゃんバーから借りてきた変なカツラとかマツゲを使ってメイクして、山本リンダさんとかピンク・レディーとか面白おかしく歌い踊るショーを始めるんですよ。それにみんなが拍手喝采で、紙吹雪は舞うし、凄くみんなを楽しませていて、メティは子供ながらにそのステージの上で歌い踊るお母さんを見て「この人は先生でありながら芸能人なんだ? この人はスターなんだな」「私もお母さんみたいになりたい」と思ったんです。それも大きなきっかけですね。

--で、いざ自分も歌おうと思ったらいきなりソウルフルだったんですか?

Metis:そうですね。小学校3年生のとき、初めてマライア・キャリーとホイットニー・ヒューストンを聴いて「この人たちみたいになりたい!」と思ったんですけど、あんまり人前で何かをするような子供ではなかったので……人とのコミュニケーションが上手く取れないぐらいシャイだったんですよ。でもこの胸の中には「自分を変えたい」とか「もっと人前でこうしたい!」っていう熱い想いがあったんです。だから学校から帰ると、カセットテープでホイットニーの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を聴きながら、その歌詞を自由帳にカタカナで書いて覚えたりしてたんですよ。その頃からブラックミュージック、R&Bとかゴスペルが大好きになっていて、14歳のときに「歌手になろう」と心では決めていたから初めて「お母さんの前で歌ってみよう」と思って、カラオケボックスへ行って歌ったんですけど、お母さん相手なのに手の震えが止まらないんですよ!

--それぐらい人前で歌うのは勇気が要ることだったんですね。

Metis:お母さん相手に緊張(笑)。それぐらいの子だったんですけど、歌い終えたら「あんたは天才!」って言ってすごく背中を押してくれたから、そこからはもうオーディションをガンガン受けたりとか、デモテープ送ったりとか、自発的に動くようになりました。

--そんな女の子がデビューして、10周年記念ベストアルバムをリリースするほどのキャリアを積んできた訳ですが、そのこと自体にはどんな感慨を持たれていますか?

Metis:それも見込んだ上で「歌い続けていこう」と小さい頃から思っていたので、10周年もひとつの通過点なんです。でも「やっとか」とは思いましたね。メティは自分の考えた通りの人生を叶えていこうとは思ってるんですけど、やっと10周年まで来た。そしてやっとここからスタートっていう感じ。自分に余裕を持ってもう一度歩き始める時期が来たなと思ってます。でもこの10年の間にはめちゃくちゃいろんなことがあって、自分を大きくしてくれた出来事……それは経験としてはツラかったり悲しかったりするもので、いろんな出逢いと別れを繰り返してきて、まだまだ10年ではあるんですけど、それでも大変な道程だったなと感じてます。とてもとても。

--10周年がスタートだとするなら、そのスタート地点に立つだけで「ここまでの想いをしなきゃいけないの?」っていう感覚ですよね、きっと。

Metis『ONE VOICE ~Metis Best~』インタビュー

Metis:「下準備、こんなキツいの!?」っていう感じです(笑)。

--本当にいろんなことがありましたもんね。

Metis:「あります? 普通そんなこと!?」の連続でしたからね。オフィシャルには公開してないところでもいろんな事があったし……うん。でもそういう経験があったからメティにしか伝えられないメッセージとか言葉がある。1曲作るだけでも「どれだけ大変なことがあったか?」って思うんですけど、今はそれに感謝をしているというか、すべての経験が音楽になってるなと思います。

--そもそも何故「10周年がスタート」だと感じたんでしょう?

Metis:20代の頃も私は自信を持って「こういうメッセージを伝えてるんですよ」と言ってたんですけど、でもやっぱり20代は私の心も頭も24時間興奮状態で、常に覚醒しちゃってる感じ。喜怒哀楽の波が凄すぎて、もうジェットコースターのような日々だったんですよ。それによって自分のメンタルがやられちゃったりとか、弱くなっちゃったりとかして、でもその中で感謝する気持ちだったりとか、やっと30代でそういったことに気付ける自分になれたんですよね。だから今は自分がそうして気付けたことを曲にしたりとか、もう1回余裕を持って再スタートできる気がして。自分が歌ってて楽しいことをもっとやって良いんじゃないかと思って、そういう新曲も10周年記念ベストアルバム『ONE VOICE ~Metis Best~』には入ってるんです。

--20代のときは「楽しいことをもっとやっていいんじゃないか」と思えなかった?

Metis:私はアンダーグラウンドからメジャーに行ったんですけど、聴いてくれる人たちが日本国民全体に変わったときに、やっぱり自分のスタイルというよりも誰にでも分かりやすいものを提示しなきゃいけない。それで「自分はもっとこうしたいのに、なんで「それだと伝わらない」って言われるんだろう?」とかすごく迷った時期もあって、100%の自分を出せなくて、自分を見失いそうになることもあったんです。でもそれは一番ダメなことだって気付いて、10年目のこのアルバムは元々好きだったことを突き詰めて「メティはこういうことも好きなんだよ」って提示したかった。その為に頑張って良い作品にできたと思うし、そういういろんなMetisの表現スタイルを楽しんでもらえるようになれたら良いなって。自分が楽しむことによって、お客さんも楽しんでくれる姿が最近は目に見えて分かるし、そういうモードだとライブしてても「昔のメティが戻ってきた感じだね。おかえり」って言われるんですよ。そういった反応も今は楽しいです。

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肉の特売398円のチラシと一緒になってるんですよ、メティの写真が(笑)

--そこに辿り着くまでの苦悩の中には、ひとつ代表曲やヒット曲が生まれる。でもそうなるとそればかり求められ続ける。といった状況もあったんじゃないですか?

Metis:そうなんですよ! 表に立つ方は皆さんそうだと思うんですけど、本当の自分と、世間の人たちが求めてくる自分のイメージって結構違ってて、でも応援してくれる人たちの為にそのイメージに合ったものを届けなきゃいけない。そういう苦しみはあると思うんです。ただ、私の場合「母賛歌」だけは作ったときの気持ちが色褪せないし、昨日のことのように思い出せるんですよ。しかも歌っている年数を重ねる毎に表現方法が変わってきて、もっともっと伝えられるようになっている気がしてて……お母さんはもう天国にいるんですけど、メティはお母さんのことをひとときも忘れたことないし。なので、そういう代表曲を歌っていくのは全然良いんです。でもあんまり気が乗らずに作った曲とかはやっぱり歌詞を忘れる(笑)。だから「大人の関係上でこういう曲を作らなきゃいけない」みたいなことは一切やめたんです。それは自分に嘘をつくことだし、自分の世界が汚されることだから、Metisがいつか死んでしまうと思って、今は自分に正直に歌える曲じゃないと出さない。なので、今まで100曲ぐらい出してるんですけど、その中でも自分に正直に歌える曲だけをチョイスして歌ってますね。

--10周年記念ベストアルバム『ONE VOICE ~Metis Best~』は、100%自分に正直に歌えている作品になってるんじゃないですか?

Metis『ONE VOICE ~Metis Best~』インタビュー

Metis:今までのアルバムの中で一番良いものが出来たと思います。それまで私の中では『ONE LOVE』というアルバムが最強だと思っていたんですけど、それを超えるものが出来たので良かったです。

--「10周年がスタート」とは言えど、よくここまで来ましたね。

Metis:そうですね。二十歳ぐらいのときは、やっぱりすごく狭い考えというか、レゲエだったらレゲエの場所でしか歌わないとか、そういう困ったちゃんだったんですけど(笑)、そんなトゲトゲしていた頃にショッピングモールで歌う機会があって。「そんなところで歌っても誰も聴かないし、CDも買ってくれないだろう。私はアンダーグラウンドの人間だからクラブで歌うんだ」って思っていたんですけど、でもいざショッピングモールで歌ってみたら、家族連れやおじいちゃん、おばあちゃん、そういう一般の人たちがちゃんと整列して、メティの曲を真剣に聴いてくれたのがもうめちゃめちゃ嬉しくて!「あ、私のメッセージが届いてるんだ!」と思って、そこでCDを販売したら物凄い数の人たちが買ってくれたんですね! メティのCDですよ?

--それは価値観変わりますよね。

Metis:凄い感動しちゃって、自分はクラブシーンだけじゃなくこの人たちに向けて歌いたいと思って、帰ってすぐママにその話を伝えて「メティはいろんな人に歌を届けることが出来るのかな?」って聞いたら、「もちろんそうよ! 私はカラオケであんたの歌を聴いたときからそう思ってた。これからはメティが日本全国の人に応援してもらえるような曲を書いたら?」ってそこでまた背中を押してもらって。それからレゲエやソウルフルな自分も大切にしながら、いろんなMetisを大切にして、いろんな場所も大切にして、誘われたらいろんなところで歌って、たとえミカン箱の上でも「歌いまーす!」みたいな。そういう感覚でどこでも歌ったんですね。そしたらいろんな人に支えてもらえるようになって……だから私は成長できたんだと思います。

--結果的にMetisを大きくしてくれた訳ですけど、でも最初はやっぱり「なんでショッピングモール?」ってなりますよね。おそらく当時のレゲエシーン的には有り得ない展開じゃないですか。

Metis:そのとき誰もいなかったんですよ、ショッピングモールで歌うレゲエシンガーなんて。フェスとかクラブとかレゲエはレゲエの括りの中。そういう例外な動きをするのはちょっとタブーみたいな空気が流れていたから「なんて言おう?先輩たちに」って思ったし、単純に結構恥ずかしかったし……肉の特売398円のチラシと一緒になってるんですよ、メティの写真が(笑)。でも「これは自分にしか降ってこない試練なんだろうな」と思ってやったんですけど、ショッピングモールでのライブというのは自分のメンタルを強くもしてくれましたし、ステージングがすごく磨かれました。メジャーデビューしてからの初ワンマンも、そのショッピングモールで私を知ってくれたお客さんがたくさん来てくれたんですよ!「会いに来たよ!」って。

--そうなってくると、自ずと音楽も開けた内容になるでしょうし、歌を届けたい対象も一気に広がっていきますよね。

Metis:そこはめちゃくちゃ変わりましたね。どんな人でも気持ちをちゃんと乗っけて届ければ伝わると思えたから、それまでの「私はこういうスタイルなんで」みたいな感じは全部捨てました。

--そっちのほうが「ONE LOVE」というか、レゲエ本来の概念に近い感じがしますよね。

Metis:良いこと言ってくれますね! その言葉を歌詞にしたいです(笑)! 本当の「ONE LOVE」ってそういうことなんですよね。

--そんないろんなことがあった10年、今振り返るとどんな日々だったな思いますか?

Metis:ずーっと止まることなく、ピアノのコードの線みたいにピーン!って張り詰めたまま走り続けた10年で、間髪いれずに、休む暇なくっていう感じでしたね。……その中でいろんな人の死を見まして。20代でそういう経験が連続的に起きてしまったので、それが私をまた更に強くしてくれた。悲しくて悲しくて、人生最大の苦しみとか悲しみを経験して、本当に弱っちゃって、「自分は無力な人間だ」って思っちゃうぐらい弱っちゃって、そういったときに助けてくれる人とか、助けてくれた音楽とか、それは私に大きな力を与えてくれた。そして20代後半からはまた新しい人たちと出逢って、今はまた音楽をする上で新しい環境に恵まれている。何があっても諦めなければ、また新しく誰かがメティを支えてくれることを知りました。

--でもそれは人生最大の悲しみともちゃんと向き合った、気持ちを閉ざさず真正面から受け止めてきた結果でもありますよね、きっと。

Metis - 人間失格
Metis - 人間失格

Metis:閉じる暇がないぐらい続いたんですよ!「神様、そこまでやります!?」って思うぐらい、間髪いれずに続いたから……でもそれは多分「向き合え」ってことだったんだと思う。あと、閉ざす暇もないぐらいコテンパンに運命にやっつけられても、メティはそれで良い曲が書けると思ってるので、その曲の為にそういう経験をさせてくれたんだなって思うんです。例えば「人間失格」とか「花鳥風月」をリリースしたときは、メティの曲を聴いてくれるファンの層が広がったんですけど、メティなんかアマちゃんと思うぐらい、「そんなこと人生で起こります?」って思うぐらい凄い苦しい経験をした人たちが、メティに手紙を渡してくれたりしたんですよ。「メティだけには打ち明けたい」って。そういうギリギリの人たちが「人間失格」や「花鳥風月」を聴いてくれて「また新たに歩き出します」って伝えてくれたりすると、「自分の経験がギリギリの人たちを救う結果になったんだな、すべてに意味はあるんだな」ってプラスに思えるんですよね。

--本当にギリギリの人って言葉が届かなくなるじゃないですか。

Metis:届かなくなりますよね。「がんばって」とかそういう言葉は何も届かない。

--だから必要じゃないですか、Metisさんが形にしているような音楽って。みんなで踊って楽しむ歌もあっていいし、ポップに「がんばって」って歌ってもいいけど、心を完全に塞いでいる人に突き刺さる歌も存在してないといけない訳で、でも今の音楽シーンってそれが生まれづらいじゃないですか。その中でMetisは負けずにそういう歌を発信し続けている。

Metis:でも私も「人間失格」のときは広めようとしてくれる人が周りにいなかったんですよ。ひとりで「誰にも届かなくてもいい。でもこの曲を形にしたい」と思って作って……「母賛歌」のときもそうでしたね。でもそういうもののほうが意外とみんな聴いてくれたりして、メティのファンの人たちが広めてくれた。だからありのままの自分を伝えるほうが良いんですよね。「人間失格」のときはメティもギリギリの精神状態になってて、でも音楽は鏡になると思ってるから、聴いた人が自分と写し合わせたときに深いところで共感してくれた。だから当時のライブはお悩み相談室みたいになっちゃって(笑)。「助けてください、メティさん!」みたいな感じで、ギリギリの人たちを相手に自分もギリギリで歌う。その前のメティはイケイケでタオルをぶん回すスタイルで、すごくパワフルでタフなステージをやっていて「そういうメティも好きだよ!」って言ってくれる人たちもいるんですけど、でもそれがピークに達したときに「このままでいいんだろうか?」って思って。そんな毎回タオル振ってるばかりで良いんだろうかって(笑)。

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「イルカと戯れることができる海の近くで暮らそうかな?」と思ってました

--そういう感覚になったんですね。

Metis:もっと人間的に迫った詞を書きたいと思ったんです。ポジティブな曲ばっかりじゃなくて、人間は闇の部分もあるから強くなれる訳だから、そういった深いところまで階段を下りていった。そこで扉を開け続けたらいろんなものが見えて、自分の弱さ……なんていうレベルじゃなくて卑しさとか汚さ。人は生き抜く為にそういうものも持ち合わせているから、それを踏まえた上で「こういう自分なんだ」と認めて、理解して、それで曲を書きたかった。アーティストはステージに立てばみんな完璧を求めて、客席を見下ろしながら歌う訳ですけど、それだけじゃイヤだなって。それって本物のアーティストなのかなって。そう思って書いたのが「人間失格」。だから全部自分のことなんですけど、いざ完成させたら「これ、大丈夫かな?」って不安になっちゃって(笑)。結構ぶちまけちゃってるから……でもビックリしたのは、その曲を一番支持してくれたのが被災地の人たちで。全部を失った人たちがこの曲を聴いてくれて、すごく厳しい言葉の連続なんだけど、逆にその厳しさによって「また歩み始めることが出来ました」って言ってくれて。どんなに「がんばって」「がんばろう」と言われてもシャットダウンしちゃっていた人たちが聴いてくれたんですよね。なので、私にとっても「人間失格」は人生を変えてくれた、大きな1曲になりました。

--でも「人間失格」ほど人間=自分を掘り下げていく作業って、そこまでやったから絶望の淵にいたリスナーたちに突き刺さったのは間違いないと思うんですけど、自分自身にとっては精神的に危険な作業でもありますよね。

Metis『ONE VOICE ~Metis Best~』インタビュー

Metis:危なかったですよ! 死ぬかと思いましたもん(笑)。

--絶対ボロボロになりますよね?

Metis:なりました(笑)。でもボロボロになったのは発表してからで、そこから2年ぐらいは大変でした。深いところを見ちゃったし、歌う度に「自分はこうなんだ」「生きるとは? 死ぬとは?」って思いながら歌うことになるから、「あのポジティブなメティはどこに行ったのかな?」って思うぐらい落ちていっちゃったんですけど、今はそれもメティだし、ポジティブに「いぇーい!」ってやってるのもメティだし、別に自分をひとつに絞って狭い道を進まなくてもよくて「自分の全部を愛そう」と思えた。そしたらひとつひとつの言葉に気持ちを込めて大切に歌えるようになったんですよね。でもその迷いの時期は歌も書けなくなっちゃって、身近な人が亡くなったり、どんどん失っていくような気持ちにもなってしまって、夜寝るのも怖くなっちゃって。「眠りに落ちたらこのまま暗闇の中に自分が消えてしまうんじゃないか?」って怖くなって、だから明るくなって、いろんな音が聞こえ出して、朝9時頃になってから寝る。だからその時期はいったん歌詞を書くのも曲を作るのもやめたんですけど、それもそれでメティには耐えられなかったんですよ。ずーっと止まらず走り続けていたから。

--当然不安になりますよね。

Metis:でも立ち止まることも大事だと言い聞かせて、それからはただ川の流れをずーっとワンちゃんと眺めてたりとか、自然の中にもっと身を置こうと思って、海とか山にも行くようになって、初めてゆっくりした時間を過ごしたんです。それから2年ぐらい経って、その間も仲間からちょこちょこライブのお話はもらってたんですけど、やっぱり上手く歌えなかったりしてほとんど出なかったから、世間的には「Metisって活動休止しちゃったの?」っていう感じだったと思うんですよね。だけど、メティは「また歌いたい」と思ったから、その為には一回お客さんの気持ちになってみようと思って。いつもステージの上で「伝えなきゃ、伝えなきゃ」って自分を全部見せちゃうから、歌い終わった後は毎回からっぽになってたんですよ。

--だから今度は受け取る側にまわってみようと?

Metis:自分がお客さんになって「いっぱい音楽をもらおう」と思って、昔からお世話になっていたKeycoさんとかMOOMINさんとかレゲエの先輩たちに会いに行ったんです。そしたら「メティ元気だった? 大丈夫だった?」って気さくにまた受け入れてくれて、そこから傳田真央さんとかMiss Mondayさんとかのライブも観に行って、自分でチケットも買って「あ、お客さんはこういう気持ちでチケットを買って、それからライブの日まで仕事をしたり、いろんな生活を過ごしながらこの日を待ってるんだ」ってお客さんの気持ちを知ったりして、それを繰り返していたら「やっぱり歌いたい。今の気持ちだったらもう1回出来るかも」と思えたんです。

--では、それがなければ引退していたかもしれない?

Metis:そうですね。今もただ川を眺めていたかもしれない。当時は「イルカと戯れることができる海の近くで暮らそうかな?」と思ってましたからね。喋る相手はイルカだけ(笑)。

--そこまでの紆余曲折があった10年間の中で、Metisはどんなアーティストになったと感じていますか?

Metis:Metisは……励ます、ずっと寄り添える曲がたくさんあって、全部自分自身の心に寄り添える曲を書いてるだけなんですけど、それが結果的に聴いてくれる人たちにとって生きる力になったりしてる。なので、生きることへの力になる、そんな歌をうたえるアーティストになってるんじゃないかなって思います。

--そういう要素が10周年記念ベストアルバム『ONE VOICE ~Metis Best~』にはたくさん詰まってますよね。ある意味、薬にもなるような楽曲たちが。

Metis『ONE VOICE ~Metis Best~』インタビュー

Metis:たしかに薬かもしれない。

--そんな歌をうたい続けてるMetisの10周年以降のヴィジョンは?

Metis:メティには夢があるんです! 川を眺めていた頃にもうほんまに諦めかけた夢なんですけど……でも「もう1回がんばろう」と思って。メティにはまだ果たしてないママとの約束があって、それは日本武道館でワンマンライブをすること。そのライブのアンコールで「母賛歌」を歌いたくって! スクリーンにお母さんの一番良いときの写真を出して、メティと同じ目線でママをたくさんの人たちに見てもらって、それは「自分はこんなにがんばったんだよ」ってことを見せたいんじゃなくて、会場に来てくれたひとりひとりが自分のお母さんを想って「母賛歌」を歌ってくれている光景。それを一緒に見たいんです。ママは世界で1人目の私のファンだったので、オーディションに落ち続けていたときも、どんなときもずっと支えてきてくれた人だから、最後は一番の親孝行がしたくて、その光景を叶えるのが私の一番の夢。その為に今はひとつひとつ「今回はこういうパフォーマンスをしよう、次はこうしよう」って考えながら、ただ歌うんじゃなくてもっともっとみんなに楽しんでもらえるようにがんばってる。歳を重ねるごとにどんどんどんどん勉強していきたいと思ってます。

--では、今回、テイチクに移籍したのは正解ですね。結成30周年にして「史上最遅武道館公演」と呼ばれた武道館ワンマンを実現したバンド・怒髪天がいますから。

Metis:そんな方々もいるんですね! その話はメティにとって励みになります。その方々をずっと応援し続けたテイチクさんと巡り合えて嬉しく思いますし、メティも絶対叶えたいと思います。そのときはぜひ最前列で!

--では、お母ちゃん連れて伺います(笑)

Metis:ぜひ! お母ちゃん連れて!

--では、最後にふたつ。まずこの10年間ついてきてくれたファンにメッセージをお願いします。

Metis:メティについてきてくれたファンの皆さんは、本当に家族みたいに接してくれているから、全国各地どこへ行っても「親戚の女の子が帰ってきた」みたいな感じなんですよ。優しく接してくれたりとか、生活に困らんように食べ物をくれたりとか(笑)。だからメティは本当にみんなのことを家族だと思ってこれからも歌を届けていきますから、みんなもずーっとメティのことを家族だと思って見守ってください。がんばります!

--では、これから出逢いたい、まだ見ぬリスナーの皆さんへメッセージを。

Metis:迷ったときはメティの曲を聴きましょう!

--明快ですね(笑)。

Metis:言いたい事はそれだけ。迷ったらMetisの音楽を!

Interviewer:平賀哲雄

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