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ミュージック・ソウルチャイルド 来日記念特集

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 ヒップホップ世代のR&Bシンガーとしてフィラデルフィアから登場したミュージック・ソウルチャイルド。スティーヴィー・ワンダーに通じるヴォーカルを武器にヒットを飛ばし続け、ネオ・ソウルの文脈にとどまらず幅広く支持されている、2000年代以降を代表するソウルスターだ。ストリートのエッジを持ちながら滋味深く温かい歌でリスナーのハートを掴んできた彼は、昨年でデビューから15年目を迎え、今年春に5年ぶりとなるソロ・アルバム『Life On Earth』を発表。2016年屈指のR&Bアルバムとの呼び声も高い同作を提げて、この8月、サマーソニック内で開催するBillboard JAPAN Party、およびビルボードライブ東京&大阪で来日公演を行う。そんなミュージック・ソウルチャイルドの歩みを改めて振り返ってみたい。

 ミュージック・ソウルチャイルドが我々の前に姿を現したのは2000年のこと。映画『Nutty Professor II:The Klumps』のサウンドトラックに収録された“Just Friends(Sunny)”がそれで、ボビー・ヘブの“Sunny”を下敷きにしたメロウなトラックにスティーヴィー・ワンダー風のヴォーカルを乗せるようにして歌う同曲のヒット(R&Bチャート6位)で早速スターの仲間入りを果たしている。




 1977年生まれで本名をタリブ・ジョンソンというこの男は米フィラデルフィア出身。2000年代前半のフィラデルフィアからは、ジャジーファットナスティーズ主宰のオープン・マイク・イヴェント〈Black Lily〉でのパフォーマンスなどをキッカケに、ジル・スコット、ジャグアー・ライト、フロエトリー、キンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル、ジャズミン・サリヴァンなどが登場したが、ミュージック・ソウルチャイルドもそんなひとりだった。

CD
▲『アイジャスウォナシング』

 2000年の11月には、デフ・ジャム傘下のR&B部門デフ・ソウルからデビュー・アルバム『Aijuswanaseing』を発表。DJジャジー・ジェフ率いるア・タッチ・オブ・ジャズ(ATOJ)の面々をはじめ、ジェイムズ・ポイザーやエリック・ロバーソン、そしてストリングス・アレンジを手掛ける元MFSBのラリー・ゴールドらが関わった同作は、“Just Friends(Sunny)”のほか、妹分となる双子姉妹のエイリーズと一緒に歌ったパトリース・ラッシェン“Settle For My Love”のカヴァーなどを含み、70年代ソウルの薫りがするアルバムとしてネオ・ソウルの文脈で話題を呼ぶ。特にR&Bチャート2位となった“Love”は、レゲエ・シンガーのサンチェスにカヴァーされたり、トリニティ5:7によるゴスペル版の替え歌“Lord”が登場するほどの人気曲となり、誠実なバラディアーとしての地位を獲得。当時、アンジー・ストーンやビヴァリー・ナイトの楽曲にフィーチャーされたこともそんな彼のイメージを後押しした。




CD
▲『ジャスリスン』

 新しいフィラデルフィアのムーヴメントとともに上昇気流に乗って放ったのが2002年発表のセカンド『Juslisen』だ。ATOJから独立したアイヴァン・バリアス&カーヴィン・ハギンズ(カーマ・プロダクションズ)と強力なタッグを組んだ同作からは、フランシス・レイ「パリのめぐり逢い」を引用した“Halfcrazy”(実はドゥルー・ヒルのジャズが最初に録音していたという話も)がR&Bチャート2位のヒットとなり、アルバムはポップ/R&Bの両チャートで1位を記録。この時はアーティスト・ネームから“ソウルチャイルド”を取り、単に“ミュージック”と名乗っていた彼だが、当時本人に訊いたところ、まだソウルチャイルド(ソウルの申し子)と名乗るほどソウル・ミュージックに精通していないからだと話していた。




CD
▲『ソウルスター』

 続くサード『Soulstar』(2003年)もミュージック名義でリリース。が、アルバムの表題で“ソウルスター”と打ち出したように、ソウル・シンガーとしての自覚も芽生えていく。前作に参加したエイリーズやキャロル・リディックのほか、ビラル、キンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル、シーローなどのゲスト陣やローリング・ストーンズ“Miss You”のカヴァーでも話題を呼んだこのアルバムからは“Forthenight”がR&Bチャート18位のヒットに。デビュー時からのスタイルだった、ラップするように歌う、いわゆるラップ・シンギングも定着。そんな歌唱の原点はアマチュア時代にフィラデルフィアのサウス・ストリートでフリースタイルのラップを披露していた経験からくるもので、その唱法が“ディアンジェロ以降”というイメージを一段と強くした。思えばミュージックが客演したザ・ルーツの“Break You Off”(2002年)は、その初期ヴァージョンに起用されたディアンジェロに代わって正式版をミュージックが歌うことになったという経緯があり、仲間内でもポスト・ディアンジェロ的な見方をされていただろうことは想像に難くない。彼のヴォーカルがヒップホップと親和性が高かったことは、後にゴーストフェイス・キラー、スキルズ、ロイド・バンクス、タリブ・クウェリ、アイス・キューブなどの作品に起用されていくことからも明らかだろう。

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CD
▲『ラヴアンミュージック』

 デフ・ソウルから3枚のアルバムを出した後は、マネージメントの交代やネオ・ソウル~フィリー・ブームが沈静化したこともあり少し間が空くが、彼をデビューに導いたデフ・ジャム社長のケヴィン・ライルズがワーナー・ミュージックの要職に就いたことでアトランティックに移籍。名義をミュージック・ソウルチャイルドに戻して発表したのが2007年の『Luvanmusiq』だった。盟友アイヴァン&カーヴィンのほか、新たにウォーリン・キャンベル(ルーサー・ヴァンドロス、メアリー・メアリー、ビヨンセ、スヌープ・ドッグなど、R&B~ゴスペル~ヒップホップを股にかけて活躍する西海岸の名匠)とも組み、ニーヨやラティーフ、BJスレッジ(後のBJ・ザ・シカゴ・キッド)もペンを交えた同作からは“Teachme”というスロウ・バラードの傑作(R&Bチャート2位)が誕生、アルバムもR&B/ポップの両チャートで首位に輝く。ダンス・クラシック~オールドスクール・ヒップホップ名曲を引用したアップ・ナンバーをアルバムの冒頭に置くスタイルが定着したのも同作からだ。




CD
▲『オンマイレディオ』

 こうして音楽的にも新しい道を歩み始めた彼は、故郷のフィラデルフィアを離れてアトランタに移住。続く2008年作『Onmyradio』の先行シングル“Radio”ではクランク・サウンドに挑戦してファンを驚かせる。ダミアン・マーリーとの異色コラボも含め従来のイメージから脱却しようとする姿勢がうかがえたが、メアリーJ・ブライジとデュエットした“Ifuleave”(R&Bチャート6位)や“Sobeautiful”(R&Bチャート8位)といったスロウ・バラードのヒットによって、誠実なソウル・ミュージックの歌い手というイメージはキープされた。アルバムもR&Bチャートで1位を獲得。その後は、“Radio”を手掛けたドゥルー・カストロの導きで友人であるインディア.アリーの曲(“Chocolate High”)に客演するなど、アトランタ勢との交流が盛んに。それでも、2008年後半にターゲットの企画商品として出されたクリスマスEPが『A Philly Soul Christmas』と銘打たれていたように、ミュージック・ソウルチャイルド=フィラデルフィアというイメージは、なおも人々の間で強まっていく。




CD
▲『ミュージックインザマジック』

 一時はアーティスト・ネームから外していたものの“ソウルチャイルド”と名乗ったことのインパクトも大きかったようで、デビュー以降の彼は、スティーヴィー・ワンダー、ジミ・ヘンドリックス、アース・ウィンド&ファイア(EW&F)、メイズfeat.フランキー・ビヴァリーの各トリビュート・アルバムに招かれてきた。初期にはサンタナの2002年作『Shaman』での客演やプリンスのアフターショーへの参加もあったし、2010年代以降もカーク・ウェイラムのダニー・ハサウェイ曲カヴァー集やブーツィ・コリンズの『Tha Funk Capital Of The World』に参加するなど、大御所からのラヴ・コールが続いた。こうした外部仕事をこなしながら2011年に発表したのが、プリンスへの憧憬も滲むパープルのジャケットが鮮烈だった『Musiqinthemagiq』である。ここでは制作/作家陣を一新、ジェリー・デュプレシスやジャック・スプラッシュ、オーガスト・リゴらと組んで新しい音と向き合い、“フィラデルフィア”というイメージから完全脱却。ただし、シングルもアルバムも以前ほどのヒットにはならず、これを最後にアトランティックから退社している。




 その後の彼は、長年のファンにとって“迷走期”と映ったかもしれない。2013年にはシカゴのR&B歌姫シリーナ・ジョンソンとの共演となるレゲエ・アルバム『9INE』を発表。ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートでは1位を獲得したものの、それまでの彼を知るファンの多くは困惑したようだ。一方、それと前後してプロデューサー/ソングライターとしての活動にも力を入れ始め、一児を儲けた元702のカミーラ・ウィリアムズ(akaミーラ)のソロ曲を手掛けたり、ロバート・グラスパー・エクスペリメント『Black Radio』(2012年)で共演したクリセット・ミシェルの2013年作『Better(Deluxe edition)』にもプロデューサーとして参加。さらに2014~2015年には、ザ・ハッスルを名乗ってオートチューン加工の声でラップするサウス・ヒップホップ仕様のアルバム『Husel Music』を出したり、パープル・ワンダーラヴ名義でオルタナティヴな内容のEP『tHe“eTeRnAl pEaCe”eP』を発表し、溢れ出る創作意欲を屈折した形で爆発させている。もっとも、こうしたオルターエゴ(別人格)での活動は、法的な問題でミュージック・ソウルチャイルドという名前が使えなかったからだとも言われており、これを“迷走”と判断するのは早計かもしれない。だが、ファンの多くは、果たしてミュージックはどこに行ってしまうのか?と思ってしまったことも確かだろう。

 しかし、2013年9月にウォーリン・キャンベルが主宰するマイ・ブロックと契約していた彼は、ウォーリンの妻でメアリー・メアリーの片割れであるエリカ・キャンベルのソロ作やウォーリンがバックアップするラッパー、ダマーニ(・エンコシ)のアルバムに参加するなどしながら、新作に向けてウォームアップをしていたのだ。こうして2016年春、eOneが配給するマイ・ブロックから届けられたのが、約5年ぶりとなるソロ・アルバム『Life On Earth』である。




 新作はアトランティックでの2作でも好相性を示したウォーリンとの共同制作で、テナー・バリトンの地声と多重コーラスを活かしたテンダーなスロウの先行シングル“I Do”からデフ・ソウル~アトランティック初期のムードが蘇っていた。また、セカンド・シングルの“Heart Away”はア・トライブ・コールド・クエスト“Jazz(We’ve Got)”を想起させるスネア・ドラムの音にエレピが絡むミッド・ダンサーで、得意のラップ・シンギングも絶好調。他に、スティーヴィー・ワンダー風、EW&F風、そしてトニ・トニ・トニ“Lovin’ You”のリメイク的な曲もあり、リスナーの懐古趣味を刺激しながら2016年という時代にしっかりと着地させている。ゲストにはウォーリンの妹ジョイスターに加え、ケンドリック・ラマーやアンダーソン・パックとも絡んでいた女性ラッパーのラプソディも参加。ロバート・グラスパー・エクスペリメントやテラス・マーティンの作品に客演した勢いも反映したアルバムは、デビューから16年目とはいえ、“熟した”という表現が似合わないフレッシュで尖った内容となっていた。

 ビルボードライブでは女性オンリーのバック・バンドを従えたライヴをやるなど、たびたび来日しているミュージック・ソウルチャイルド。が、ニュー・アルバムからの曲が披露されるであろう今回の公演は、当然ながらこれまでとは違った展開となるはず。新作同様、キャリア集大成的な側面と現行感が絶妙のバランスでミックスされたステージになることを期待したい。

 

ミュージック・ソウルチャイルド「ライフ・オン・アース」

ライフ・オン・アース

2016/04/27 RELEASE
VICP-65383 ¥ 2,700(税込)

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Disc01
  1. 01.ウェイト・ア・ミニッツ (フィーチャリング・ウィリー・ハイン)
  2. 02.フー・リアリー・ラヴズ・ユー
  3. 03.ハート・アウェイ
  4. 04.ラヴィング・ユー
  5. 05.アイ・ドゥ
  6. 06.チェンジド・マイ・マインド
  7. 07.ウォーク・アウェイ
  8. 08.ファー・ゴーン (フィーチャリング・ラプソディー)
  9. 09.パート・オブ・ミー (フィーチャリング・ジョイスター)
  10. 10.アライヴ・アンド・ウェル
  11. 11.ザ・ガール (フィーチャリング・ジョイスター)
  12. 12.ライフ・オン・アース
  13. 13.アイム・ゴーン (ボーナス・トラック)
  14. 14.ゲーム・オブ・ラヴ (ボーナス・トラック)

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