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今年も開催!【START ME UP AWARDS】



【START ME UP AWARDS】

 エンタテインメント業界横断型の起業支援コンペティション【START ME UP AWARDS】(以下、SMUA)が2016年で3回目を迎える。ITベンチャーや起業志望者と、既存の大企業はもとより、音楽業界、メディア業界、アーティスト、デザイナー、サウンドクリエイターとのマッチングを視野に入れ、日本発のアイデアで世界を席巻するような新たなサービス創造や商品開発を応援するコンペティションとして年々その注目度は増している。今回は、SMUA実行委員長・山口哲一氏を司会として招き、過去の【SMUA】ファイナリスト3名に集まってもらった。ファイナリストたちが参加して感じたことや【SMUA】の魅力、自分たちのサービスの現状など語ってもらった。

人脈が無い人ほど参加したほうがいいですし、アイデアだけでも参加できます

山口:今回は、過去の【SMUA】ファイナリストのみなさんに集まっていただいたわけですが、いまの自分たちの事業の進捗状況や参加した当時のことなどいろいろと話しを聞いていければと思っています。まずは、それぞれが考えたサービスについて聞かせてください。


▲浅原啓之氏

浅原:株式会社3.0の代表取締役社長・浅原啓之です。2014年に『LIVE3』というアプリで最優秀賞をいただきました。この『LIVE3』は、“今夜なにする?”を解決するアプリです。東京都内のお笑いや音楽ライブ、フリーイベントなど様々なジャンルのイベントを紹介します。実は、これらのイベントの9割くらいが売れ残ってしまうという実情があります。その売れ残ったイベントをファンではないフラットなユーザーにディスカウントして販売しようというコンセプトで進めてきました。

園田:園田光弘と申します。2015年に『Feel Live!』というサービスで第一興商特別賞をいただきました。“あの行きたかったイベントに参加できる”というバーチャル体験サービスを考案しました。ホログラムでライブをリアル伝送して、例えば東京ドームでやっているライブを身近なクラブとかで体験できるというコンセプトです。

宮西:サウンドオンライブ株式会社の代表取締役・宮西洋充です。2015年に『SOUND ON LIVE』というサービスでファイルナルまで進むことができました。『SOUND ON LIVE』は、誰でも簡単に音楽をストリーミング再生や楽曲販売ができるサービスです。ファイルをアップロードして金額を決めて公開すれば、すぐに販売が始められます。このサービスを作ったきっかけというのは、“アーティストとファンの距離を縮めたい”という目標がありまして。アーティストが自分で販売する金額を決めることができて、その設定した金額以上の値段で購入者が決めて支払ができるというのが特徴です。それを使ってファンの方がアーティストや曲に対する思いを表現して、アーティストをサポートできるというものになっています。実際に、1枚1600円と設定されているアルバムを4万円で購入した方がいらして。購入時にメッセージを残せるのですが、「大阪までの新幹線代で使ってください」というメッセージだったんですね。その方は大阪在住で「また来てください」という意味がこめられていました。購入時に直接アーティストにメッセージを送ることができる新しい取り組みで、アーティストのみなさんから高い評価をいただいています。

山口:『SOUND ON LIVE』は、アーティストが好きに設定をカスタマイズできるのが特徴。中でも価格が自由に設定できるというのは、かなりめずらしいですね。こんなカスタマイズ化できる発想の配信サービスって世界を見てもそうないと思います。

浅原:これまで“エンタメ×IT”というフィールドで挑戦できるコンペがなかったんですね。私が応募したのは1回目ということもあり、とりあえず応募するしかないと思いました。これまでの多くのコンペは参加してきましたけど、【SMUA】のような企画のものは見たことがありませんね。

園田:私は他の2人とは違うかもしれませんけど、当時中小企業診断士の資格の勉強をしていたんですね。その時に「事業計画書を書いてみよう」と思っていて、たまたま【SMUA】を見つけて、応募期間にまだ間に合うし“エンタメ×IT”だったので「これだ!」と思って、そこから事業プランを書いて出場しました。

宮西:私は知人に紹介してもらいました。それまではまったく知らなかったのですが、エンタメ系という特徴がある唯一のコンペだったので参加しました。

山口:1次審査は書類審査。2次審査はキュレーターと呼ばれる審査員の前でプレゼン。最終審査はお台場の日本科学未来館で300人くらいの前でプレゼンという流れですが、やはり最終審査が1番緊張しました?

園田:もう手足が震えましたね(笑)「ここでスライド変えてこう!」みたいな形の完全台本を用意していてもすごく緊張しました。

宮西:みんなで控室でいる時に園田さんチームはいなかったんです。ずっと練習していたんですよね?


▲園田光弘氏

園田:そうです(笑)5分ぴったりで終わらせるためにギリギリまで練習してました。

宮西:私の場合は、最後時間が足りなくて終わったっていう…。緊張しすぎました…。

山口:2次審査を通過した人には、キュレーターがそれぞれについて、最終審査にむけてサポートをするようになっていますが、キュレーターとはどんなやりとりをしました?

園田:私は「とりあえずビデオコンテを作ってきて」って言われました。私はビデオコンテっていうもの自体を知らなくて「わかりました」と言って、友人と相談しながら2週間で作りました。それを元にどんどんプレゼンをブラッシュアップしてもらいました。

山口:FEEL LIVEのキュレーターはアニメ会社ゴンゾ社長の石川真一郎さんですね。ボストンコンサルティング出身でプレゼンテーションには一家言ありますからね。
宮西さんはどうでした?

宮西:私を担当してくれたキュレーターさんの熱い思いと具体的なアドバイスをたくさんもらいましたね。やり取りはたくさんして、直接会って話したりもしました。いまもそのキュレーターさんとは仲良くさせていただいています。

山口:SOUND ON LIVEのキュレーターは音楽コンシェルジュのふくりゅうさんでしたよね。2次審査を見て、興味を持ったサービスを選んでもらっているので、それぞれ個性があって面白いです。
具体的なアドバイスとしてはどんなことを?

宮西:プレゼンに関してのことがメインでした。自分のサービスを効果的にアピールするにはどうすればいいかとか。資料の作り方とかですね。

園田:私も主にプレゼンですね。アドバイスをもらって資料をまるごと変えました。「一目みてわかるプレゼンをしたほうがいい」って言ってもらってインフォグラフィックを使ったものに切り替えました。

山口 :キュレーター、いてよかった?

園田:いなかったらヤバかったです(笑)


▲宮西洋充氏

宮西:いてもらえて本当に助かりました!

山口 :コンペが終わった後には懇親会を開いていますがそれはどうでした?

園田:「あのサービスすごいね、実現してね」みたいな感じでたくさん話しかけてもらえました。あとは、私のサービスに関わりのある事業をやっている人に挨拶をさせてもらったり。
懇親会も参加した方がいいですね。

山口 :【SMUA】事務局として最終審査会に来場したベンチャーキャピタル14社のすべてにアンケートをしていて、先方が会いたい人がいたら連絡先を伝えるというサポートをしています。そこからどんどん繋がっていって事業を発展していってほしいですからね。それで、参加してみて全体的な感想としてはどうだった?

園田:私たちにとっては大きなプラスになりました。私の場合、サービスも何もないところからスタートしているので、貴重な経験をしながら、今後に繋がる人脈もそこで作ることができましたし。本当にゼロからイチをつくったようなイベントで、すごくいい取り組みだと思います。人脈が無い人ほど参加したほうがいいですし、アイデアだけでも参加できますし。


山口 :法人だけではなく個人のアイデアでも応募できて、それが面白ければファイナリストにもなれるという自由さがこの【SMUA】の魅力だと思っていて。エンタメ系なのでアイデアや企画者の面白さというのも大事になってきますね。若くてやる気があって面白い人をたくさんの大人が見ているというのが【SMUA】の面白さだと思っていて。参加自体のハードルは低いと思います。会社じゃなくてもいいし、会社員でも応募できます。熱意とアイデアがあれば誰でも大歓迎です!

浅原:私は、最優秀賞をいただいたので「これはやらないといけないな!」という責任感が生まれました。他のコンペにも出てきましたけれど、参加する人間が全然違うんですよ。明らかに音楽関係の人がたくさん来るコンペってなかなかないんです。普段のスタートアップ業界では会えない人たちに会えることが大きな魅力ですね。

山口 :若いIT系の起業志望の人とエンタメ業界がすごく遠くなってしまっていると思っていて。そこを繋ぐ場所にしたいというのが【SMUA】を始めた想いですね。

浅原:正直、ミュージシャンの方たちとどこで知り合うのかって、わからないんですよ。知り合うきっかけがそもそもないですし。そんな世界の人たちと意見が交換できるのは、【SMUA】ならではです。

宮西:IT系に10何年もいて、エンタメ系の繋がりは全然ありませんでした。けど、参加してそのネットワークが作れたのは本当によかったです。キュレーターの方にもいろいろな方を紹介していただきました。ITでエンタメ系のサービスやプロダクトを創るならすごいものができると実感してます。

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山口:じゃあみなさんのサービスの現在の状況を教えてください。


浅原:音楽ライブなどのイベントをディスカウントして販売しようとしていたのですが、いろいろな壁があり、いまの私たちの力だけじゃ解決は厳しそうでしたので、方向転換をしました。いまは月額3900円で“都内の契約クラブの行き放題サービス”を始めました。訪日外国人向けに週額2900円のプランも準備中です。

山口:方向転換した話は聞いていて、いま都内18店舗のクラブと契約しているんだよね?1300人もの人があっという間に集まったと聞いて驚きました。月額3900円のサービスってITサービスにしては高額だと思うんですよね。それがスタートでその人数が集まったのはすごいと思います。何人のユーザーが実際に着金してくれるかはわからないですが、離脱しないようにサービスを充実させるのを頑張ってほしいですね。音楽業界の注目度は高くて、私のところに問い合わせをもらいます。

yournight
▲ホログラムで蘇る歴史の1ページ PV

園田:“ホログラムでライブをリアル伝送”という部分の実現性に問題が出てきてつまずいてしまいました。いまは、ホログラムでコンテンツを創る方向にシフトしています。最近、京都の神社でホログラムとプロジェクトマッピングを使った時代劇を行いました。いまは当初の予定とは少し変わっていますが、最終的には“ホログラムでライブをリアル伝送”というところに繋げたいですね。最近、ライブビューイングの延長のようなイメージでシネコンに導入できるかもしれないという話をいただいたので、そちらも進めていきたいと思います

宮西:7月にリニューアルを予定しています。いまは、アーティストと『SOUND ON LIVE』とB to Bのような形になっていますが、もっとプラットフォーム的に、“そこにアクセスすればといろいろなアーティストの情報が見られる”というような形にしていきたいです。あと、完成した曲だけじゃなくて、デモ音源なども配信することができるし、アーティストに限らず誰でも配信することができることをもっとアピールしていきたいです。

山口:では、最後に今年参加を考えている人に一言お願いします。

園田:エンタメ系のアイデアを持っている人は本当に参加するべきですね。アイデアを形にするのが大事だと思いますし、それができるかできないかというよりも、そこで培った人間関係でさらにアイデアをブラッシュアップして、違うものに変えていってもいいと思います。もし、1次審査で落ちてしまったら、なにか問題があるということにもなりますし。最初の一歩を踏み出すイベントになると思います。私がまさにそうでした。

浅原:参加して損をすることはまずないですね。準備の段階で、自分のビジネスで何がコアになるかっていうのがかなりわかります。デメリットはないのでやるだけのことはやって、それでダメだったらブラッシュアップしてもう1度やってみるくらいの気持ちでやってほしいです。審査員の人たちはエンタメ系のプロなので、その目線はとても貴重でした。あと、業界特有のルールなどわからないことがたくさんあって。ホテルなどでは“直前割”ということができますが、音楽業界ではできないとか。そのようなところでも、アドバイスもらえるのはとても助かりました。

山口:これがきっかけで業界内で様々な議論が始まればいいなと思っていて。デジタル化の流れで業界内で変わっていかないといけない部分もある。そこで、業界外から見た人が「だってこっちのほうがお客さん喜ぶでしょ!」という忌憚ない意見をくれれば、それが話し合うきっかけになればいいなと思っています。

宮西:少しでも【SMUA】が気になる人や新しいものを作りたい人は、とりあえず書類を出しておきましょう!結局、新しいことをやるには何かに飛び込んでいかないといけないし、そのいいきっかけになると思います。終わったあとに、「参加しなければよかった」と思う人はいないですね。確実に人脈や実績は残るので、エンタメ系で起業したいと思う人は是非。

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