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“世界を売った男”再現ライブが遂に日本に!名プロデューサー=トニー・ヴィスコンティ 来日記念特集

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 昨年、“ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ復活”として話題となった『世界を売った男』の日本公演を記念し、プロデューサー/ベーシストのトニー・ヴィスコンティの軌跡と、彼がこれまでに手掛けた作品の数々をここに改めて紹介したい。

NYからロンドンへ、プロデューサーとしてのキャリアをスタート

CD
▲『世界を売った男』
/ デヴィッド・ボウイ

 1969年の『スペイス・オディティ』から70年代、そして最新作『The Next Day』など、これまでにデヴィッド・ボウイの数々のアルバムを手掛けてきたトニー・ヴィスコンティが、グラムロック全盛期にボウイのバックバンドとして活躍したザ・スパイダーズ・フロム・マーズのドラマーであるミック・“ウッディー”・ウッドマンジーらとともに、ボウイの3rdアルバム『世界を売った男』の再現ライブを2015年7月に日本で行う。

 5歳でウクレレを手にし、ブラスバンドでチューバを演奏するなど、幼い頃から多くの楽器に親しんできたヴィスコンティだが、多くの若者同様、ある時期を機にロックンロールへと傾倒し、楽器をギターやベースに持ち替えてバンドを結成。その後、1967年に当時の妻とともにトニー&ジーグリッドという名の夫婦デュオでデビューを果たし、その翌年には早くもロンドンへの移住を決意する。

マーク・ボラン、デヴィッド・ボウイとの運命的な出会い

CD
▲『メイビー・トゥモロウ』
/ ジ・アイヴィーズ

 渡英後、バッドフィンガーの前身となるジ・アイヴィーズのアルバムを手掛けたことからプロデューサーとしてのキャリアをスタートさせ、やがてT.レックス(当時はティラノザウルス・レックス)のマーク・ボランと、彼らのツアーのサポートを務めていたデヴィッド・ボウイと運命の出会いを果たしたヴィスコンティ。のちにグラムロックと称されるムーブメントの代表格であり、最大のライバルである2組を同時にプロデュースしたことにより、“グラムロックの仕掛け人”として一気に知名度を上げることになった。

CD
▲『The Slider』
/ T.レックス

 ヴィスコンティのキャリアを語る上でボウイと並列、もしくはそれ以上に欠かすことが出来ないのがT.レックスの存在である。1968年のデビュー作『ティラノザウルス・レックス登場!!』以降、グラムロックが終焉を迎えたとされる1974年までの6年間にリリースされた全10タイトルのプロデュースを担当し、ストリングスを大胆に使用した華やかで少しエキセントリックな独自のサウンドを構築、「ゲット・イット・オン」「ジープスター」などのビッグ・ヒットを連発させていった。

ジギー・スターダストの起点となった『世界を売った男』

 一方、ヴィスコンティとデヴィッド・ボウイの関係はグラム・ロック全盛期から、何度かのブランクをはさみながら現在にいたるまで続いている。今回、日本で再現される『世界を売った男』は、1970年に発表されたデヴィッド・ボウイの3枚目のアルバムで、ヴィスコンティにとっては前作『スペイス・オディティ』に続き2作目のプロデュース作品だ。

 この作品で注目すべきは、のちにスパイダーズ・フロム・マーズとしてグラムロック期のボウイの右腕となったギタリスト、ミック・ロンソンとドラマーのミック・“ウッディ”・ウッドマンジーが、はじめてボウイのレコーディングに参加したアルバムだということ。当初、ボウイのコンサート用のバックバンド「ハイプ」として集められた彼らだが、コンサート後にボウイが楽曲制作に入り、そのままレコーディングに参加することになったという。そういう意味でも『世界を売った男』はボウイにとって転機であり、のちの最高傑作『ジギー・スターダスト』へのプロローグともいえる作品である。

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プロデュースを手掛けた個性的なアーティストと作品の数々

 ここでボウイとT.レックスのほかに彼が手掛けてきたアーティスト・作品をいくつか紹介したい。いずれも良い意味でクセのある、個性的なアーティスト揃いであることに改めて気付かされるだろう。

CD

『大地の歌』 / メリー・ホプキン (1971年)

 ビートルズによるレーベル、アップル・レコードからデビューを果たし、“アップルの歌姫”と称されたメリー・ホプキンの2ndアルバム。デビュー作を手掛けたポール・マッカートニーに代わってプロデュースを引き受けたヴィスコンティは、デビュー後のポップ路線ではなく、彼女の原点である繊細なブリティッシュ・フォーク・アルバムに仕上げた。本作発表と同年にホプキンとヴィスコンティは結婚したが、1981年に離婚している。

CD

『スパーク・ショー』 / スパークス (1975年)

 60年代から現在まで、独自のセンスと音楽的嗅覚で活動を続けるアメリカ・ロサンゼルス出身の超個性派兄弟デュオ、スパークス。『スパーク・ショー』は、彼らがイギリスに渡ってブレイクを果たした70年代中盤の代表作。グラムロック全盛期からイギリスで異色の人気を誇っていたスパークスだが、この作品をもってイギリスから米国へ凱旋帰国を果たしている。

CD

『バッド・レピュテイション~悪名』 / シン・リジィ (1977年)

 ヴィスコンティのイメージからは少し意外とも思えるのが、アイルランド出身のHR/HMバンド、シン・リジィのプロデュース。この作品は、バンド崩壊の危機の最中に制作され、ブライアン・ロバートソンが参加しているのは一部のみ、ジャケットにもロバートソン抜きの写真が使用されているという、“いわくつき”の作品。バンドが最悪な状況下でもオーバー・ダブなどを駆使してサウンドをまとめあげ、全英アルバムチャート4位という結果を残している。

CD

『モンド・ボンゴ』 / ブームタウン・ラッツ (1981年)

 “バンドエイド”の提唱者として知られるボブ・ゲルドフ率いるアイルランド出身のパンク/ニュー・ウェイヴ・バンド、ブームタウン・ラッツの4作目。エスニックなサウンドを取り入れるなど、ワールド・ミュージックを意識したアプローチでバンドのさらなる可能性を追求した野心作。実験的な内容から好き嫌いの分かれる作品ではあるが、バンド史上最高位となる全英6位を記録しているヒット作でもある。

CD

『ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ』 / プリファブ・スプラウト (2001年)

 パディ・マクアルーン率いるプリファブ・スプラウトによる7thアルバム。タイトルの通りアメリカの開拓時代をコンセプトに、シェールに提供した「ザ・ガンマン」などセルフカバーを中心に構成された作品。マクアルーンならではの繊細でロマンティックな世界観を保ちつつカントリーの要素を取り入れたサウンドは、プリファブ作品のなかでも一際異彩を放つものとなっている。

CD

『リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』 / モリッシー (2006)

 モリッシーのソロ通算8枚目のアルバム。ヴィスコンティの全編プロデュースに加え、『ニュー・シネマ・パラダイス』で知られるイタリア映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネがストリングスのスコアを担当したモリッシー渾身の作品。本作で自身3度目の全英アルバムチャート1位獲得を果たしている。

ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ復活!

 そしてヴィスコンティは、2013年3月に突如発表された10年ぶり最新作『ザ・ネクスト・デイ』で久々にデヴィッド・ボウイのプロデュースも手掛けており、リリース時にはボウイに代わってインタビューなどのプロモーション活動を一手に引き受けている。このことからも、ボウイが今も彼に全幅の信頼を寄せていることは明らかであり、だからこそ『世界を売った男』の再現ライブもボウイ本人の承諾のもと実現されたのだ。

 今回の来日公演には、ザ・スパイダーズ・フロム・マーズでドラムを務めたミック・“ウッディー”・ウッドマンジーのほかにも、リード・ヴォーカルにヘヴン17のグレン・グレゴリー、ジェネレーションXのジェームズ・スティーヴンソン、さらにミック・ロンソンの娘、リサ・ロンソンも参加することが決定している。昨年、ロンドンで同公演が行われた際に「ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ復活!」として話題となった豪華メンバーが時空を超えて奏でる『世界を売った男』の再現ライブは、ボウイ・ファンならずとも絶対に見逃すわけにはいかないだろう。

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