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ジョン・ハイアット 来日記念特集

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 アメリカン・ロックの伝説的シンガー・ソングライター、ジョン・ハイアットが今年5月、27年ぶりの来日公演を開催する。名盤『ブリング・ザ・ファミリー』や、ジム・ケルトナー、ライ・クーダー、ニック・ロウと結成したグループ、リトル・ヴィレッジの活動で知られるハイアットの足跡を改めて振り返る。

 ピーター・バラカン氏からのコメントも到着!

ナッシュヴィルへの移住~ソロデビュー

CD
▲ 『イン・シーズン』
/ ホワイト・ダック

 1952年、米・インディアナ州生まれ。11歳でギターを手にし、ティーンエイジャーの頃から地元インディアナポリスのライブハウスで演奏を行っていたハイアット。21歳でナッシュヴィルに移住したハイアットは、ソングライターとして活動を開始するとともに、自身もソロのほかナッシュヴィルのカントリー・ロック・バンド、ホワイト・ダックの活動にも参加し、精力的にライブ・パフォーマンスを行うようになっていった。1972年発表のホワイト・ダックのセカンド・アルバム『イン・シーズン』には2曲を提供、レコーディングにも参加している。

 1973年にソロ・アルバム『ハンギング・アラウンド・ザ・オブザヴァトリー』のレコーディングを行い、翌年、ついにソロデビューを果たす。スワンプ・ロックにピアノ・バラード、ラテン・ミュージックまでをも包括した多彩なソング・ライティングに、ホワイト・ダックのメンバーをはじめとするナッシュヴィルのスタジオ・ミュージシャンの演奏が光る同作は、弱冠22歳のシンガーソングライターのデビュー盤らしからぬ、いぶし銀の作品となっている。

パブ・ロックからの影響~ロックン・ロールへの回帰

CD
▲ 『スラッグ・ライン』

 70年代後半になると、ハイアットはエルヴィス・コステロやニック・ロウ、グレアム・パーカーら、イギリスのニューウェーブ / パブ・ロック系アーティストの影響を受け、シンプル&ストレートなロックン・ロールへと回帰していく。1979年発表のサード・アルバム『スラッグ・ライン』などは、まさに彼らの影響を直に受けたストレートなロック・アルバムとなっている。

「リヴィング・ア・リトル、ラフィング・ア・リトル」
▲ 「リヴィング・ア・リトル、ラフィング・ア・リトル」 MV

 その後もロック~パワー・ポップ寄りの作品をコンスタントにリリースし、ニック・ロウやコステロともレコーディング参加などで親交を深めていった。1985年リリースの『ウォーミング・アップ・トゥ・ジ・アイスエイジ』収録の「リヴィング・ア・リトル、ラフィング・ア・リトル」では、コステロとのデュエットが実現している。

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傑作『ブリング・ザ・ファミリー』とリトル・ヴィレッジ

CD
▲ 『ブリング・ザ・
ファミリー』

 そして、1987年に代表作『ブリング・ザ・ファミリー』を発表する。ドラムにジム・ケルトナー、ギターにライ・クーダー、ベースはニック・ロウという、まさに“いぶし銀界のオールスター”とでも言うべき最強メンバーをバンドに従え、たった4日間のレコーディングで作り上げたというこの作品。彼らの息の合った演奏はもちろん、ルーツ・ミュージックへの敬愛に溢れたアメリカン・ロックの神髄を感じさせてくれる傑作だ。そして、このレコーディングをきかっけに4人はリトル・ヴィレッジを結成、1992年にグループとして唯一のアルバムを発表している。

「シー・ランズ・ホット」
▲ 「シー・ランズ・ホット」 MV

 そんな経緯もあり、アルバム『リトル・ヴィレッジ』は、『ブリング・ザ・ファミリー』の続編的な要素を持った作品となっているが、こちらは決してハイアットが主役というわけではなく、個人のソロ演奏パートはもちろん、それぞれがボーカルを務めるなど、4人の個性と感性が随所に散りばめられた、多彩な楽曲の数々を楽しむことができる。

コンスタントに新作を発表、今年のグラミーにもノミネート

 2000年代に入っても決してペースダウンすることなく、新作の発表にツアーにと精力的に活動を続けてきたハイアット。意外なところでは、ディズニーランドのアトラクション“ザ・カントリーベア・ジャンボリー”をモチーフにした映画『カントリー・ベアーズ』(2003年日本公開)への楽曲提供なども行っており、同作のサウンドトラックにはハイアットによる書き下ろし7曲が収録されている。

 そして昨年には22枚目となるスタジオ・アルバム『タームス・オブ・マイ・サレンダー』をリリースし、今年2月に行われた【第57回グラミー賞】において、惜しくも受賞は逃したものの最優秀アメリカン・ルーツ・ミュージック、最優秀アメリカーナ・アルバムの2部門にノミネートされるなど高い評価を受けている。

 デビューから40年が過ぎた今も、決して時代に左右されないソングライティングとプレイスタイルでファンを魅了し続けるジョン・ハイアット。奇跡といっても過言ではない27年ぶりの来日公演でも、誠実かつ良質なアメリカン・ロックで日本のファンたちを存分に唸らせてくれるだろう。

ピーター・バラカン氏からのコメントも到着!

ジョン・ハイアットの今回の来日は28年ぶりです!前回の1987年は彼が「ブリング・ザ・ファミリー」という名盤アルバムを発表した直後で、すでにソングライターとしてヴェテランというほどの存在になっていた彼がようやくアーティストとしても大きく注目され始めていたころでした。素晴らしい曲がぎっしり詰まったあのアルバムの期待に十分答えるライヴでした。因みにそのバックでギターを弾いていた当時無名のサニー・ランドレスのことを知ることができたことでも一生忘れない体験となったコンサートです。

ジョン・ハイアットのことをジャンル的に説明するのはなかなか難しいです。ぼくが初めて彼のことを認識したのは80年代半ば、「ポッパーズMTV」というテレビ番組で彼のヴィデオを紹介する際でした。その曲はフィラデルフィア・ソウルのスピナーズの曲「Living A Little, Laughing A Little」のカヴァーで、エルヴィス・コステロとのデュエットでした。そこから連想するイメージに加えて、もう少し激しいロックもあり、ザ・バンドの好きな人が好むようなカントリーッぽいフォーク調の曲もあり、声そのものは時間をかけて炭(とウィスキー?)で燻した感じです。2014年に発表したアクースティックな雰囲気の最新作「Terms Of My Surrender」でその声がとてもいい感じで響いています。今度は凄腕ギタリストなどが伴わない、一人だけの弾き語りになりますが、ボニー・レイトのヴァージョンで大ヒットした「Thing Called Love」のようなレパートリもあるこの骨のあるシンガー・ソングライターは聞き逃したくない人です。「ブリング・ザ・ファミリー」からの名曲「Have A Little Faith In Me」も、久々に生で聴くことが楽しみです。

会場でお会いしましょう.....

ジョン・ハイアット「ハイアット・カムズ・アライヴ・アット・ブドーカン?」

ハイアット・カムズ・アライヴ・アット・ブドーカン?

2013/04/24 RELEASE
UICY-75583 ¥ 2,934(税込)

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Disc01
  1. 01.スルー・ユア・ハンズ
  2. 02.リアル・ファイン・ラヴ
  3. 03.メンフィス・イン・ザ・ミーンタイム
  4. 04.アイシー・ブルー・ハート
  5. 05.ペイパー・シン
  6. 06.エンジェル・アイズ
  7. 07.ユア・ダッド・ディド
  8. 08.僕を信じて
  9. 09.ドライヴ・サウス
  10. 10.シング・コールド・ラヴ
  11. 11.パーフェクトリー・グッド・ギター
  12. 12.フィールズ・ライク・レイン
  13. 13.テネシー・プレーツ
  14. 14.リップスティック・サンセット
  15. 15.スロー・ターニング

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