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『NEW ACOUSTIC CAMP 2014』Event Report

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 9月13日~14日に群馬県水上高原リゾートにて行われたOVERGROUND ASCOUSTIC UNDERGROUNDオーガナイズによる音楽フェスティバル『NEW ACOUSTIC CAMP 2014』を、写真とともに振り返る。

prologue

 「わらう、うたう、たべる、ねっころがる」

 そんなコンセプトで始まった音楽フェスティバル『NEW ACOUSTIC CAMP(NAC/ニューアコ)』には、遙か遠くにそのルーツとなる光景があった…フェスのオーガナイザーを務めるOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのVo/Vio/AGのマーティン・ジョンソンがかつてファミリーバンドとして出演していた、アメリカ・フロリダ州のフォークフェスティバルだ。

 5年目の開催となる『NEW ACOUSTIC CAMP』は、各々が自然に身を任せ、自由という風を存分に浴びながら思い思いに楽しめる、現在の日本のフェス・シーンにおいて異例であり、ひとつの進化系ともいえる音楽フェスティバルである。

 老若男女へだたりなく誰もが楽しめる居心地の良い空間、そして、そこに聴こえてくるのは、世の中の流行や熱狂に流されない、シンプルで心地の良い“生音”だけ。雄大な自然の中で展開された、たった2日間だけの特別な時間に、マーティンのロングインタビューを敢行したBillboard Japanが初潜入。日本を代表するInstagrammerたちが切り取った“最高の今”とともに振り返る。

day1

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 まさにニューアコ日和といっていい、最高のお天気の中、StageYONDERのトップを飾るSOIL&“PIMP”SESSIONSが登場。入場ゲートをくぐり抜けて大自然に囲まれたこの特別な空間へ訪れた人々を、ピアノとホーンの音色が心地よくお出迎え。会場内にはテントも次々と建ち並び、早くも周辺からはBBQのいい香りが!

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 StageHEREのトップバッターは、奇妙礼太郎。独特の歌声とその歌唱力で、歌謡曲もオールディーズも彼色に染めてしまう、奇妙ワールド全開の弾き語りショウ。大自然のなかリラックスして気持ち良さそうに歌う姿が印象的。

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 Stage VIAには、おおはた雄一とチャットモンチー福岡晃子によるユニット くもゆき。フードエリア「アコ飯」に隣接したこのステージならではの和やかな雰囲気が漂うなか、2人の優しい歌声に耳を傾けながら大人気のピザを頬張る。ニューアコならではの至福のランチタイム!

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 暖かな日差しが降り注ぐ昼下がりのSTAGE YONDERにバンアパことthe band apartが登場。バンドとしては2回目だが、なにかと理由をつけて毎年来ているというニューアコのステージに、パーカッションも加えた小気味よいビートと軽快なカッティングギターで爽やかな音を運んでくれました。

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 独自の世界観を貫く男女2人組 T字路sがニューアコ初登場。昼下がりの強い日差しとイトウタエコのブルージーな歌声が大地をじりじり照らす午後のVIA Stage。ウッドベースにのせて響く力強いヴォーカルと説得力溢れるパフォーマンスに思わずお昼寝中の男性も起き上がり、カッコイイ!!との声をあげていたほど。

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 軽やかなワンピースをまとった安藤裕子がStage YONDERに登場。大切な人に贈ってほしいという新曲「レガート」などスロー~ミッドテンポのナンバーを体を上下左右に揺らしながら感情豊かに披露。ふんわりとしたMCと伸びやかな歌声は、昼アコ飯を食べてお腹を満たしたオーディエンスに、極上の癒しを与えてくれました。

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 のんびりの時間を経て、Stage HEREにニューアコ初登場の押尾コータローがオンステージ。「リレーション」ではタオル回し、「Big Blue Ocean」ではウェーブを巻き起こす。ギター一本で繰り出される流麗なストロークとビートでオーディエンスを一体に。ラストに投じたフリスビーは「あんま飛ばへんかったな。笑」

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 太陽が山に落ち始め、日陰が伸びたVIA Stageは、まさにつじあやののためにある空間。「Clover」や「風になる」のほか、フィッシュマンズのカバーも披露すると、オーディエンスは広い芝生のど真ん中にドーンと寝そべり空を見ながら(たまにうたた寝しながら)ゆったりまったりと、その可憐な歌とウクレレに耳を傾けていました。

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 少しずつ高原特有のひんやりとした空気が会場に漂い始めた17時過ぎ、Mini-Atusによる初パフォーマンスがスタート。その名の通り、細美武士率いるthe HIATUSのミニマム編成とあって多くのオーディエンスが期待を胸にステージ前に。それでも本人たちは、そんな空気をものともせず「こんなにユルくていいの?」と、いたってリラックスした様子。終盤には細美が持参したテントとウエノコウジのジャケットを(勝手に)羽織ったTOSHI-LOWが乱入し、ブルーハーツの「青空」をセッションするサプライズも。終始リラックスしたムードのなか、最後は名曲「紺碧の夜に」でしっかりと締めくくってくれました。

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 キャンドル・ジュン氏による無数のキャンドルに灯された幻想的なStage HEREにハナレグミがU-zhaanとともに登場。優しい歌声とタブラの音色が会場をムーディーに演出。ハイライトとなる「オアシス」では、会場を埋め尽くすオーディエンスがリズムに乗って回り、両手広げて回り大合唱。ハナレグミのハリのある歌とギター、そしてオーディエンスの歓声が響き渡る…本編ラストは「光と影」、アンコールは「明日天気になれ」と、ニューアコ初日の夜らしい希望と幻想に満ちたステージを披露してくれました。

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 深い闇にどっぷりと包まれたこの時を狙ったかのようにStage VIAに武藤ウエノが登場。「キリンの首」を皮切りに武藤のパーカッシブなガットギターが炸裂。お酒でイイ感じに出来上がった武藤とウエノの掛け合いも、いつも以上に絶好調でオーディエンスをぐいぐい2人の世界に巻き込んでいく。新曲も披露されるなど、30分という短時間ながら大いに見応えアリ。最後はギターを抱えてステージ後方まで練り歩いてファンにご挨拶と、酔いどれロッカーによる自由奔放で刺激的なステージで身も心もホットに!

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 Stage YONDER周辺が大勢の人でごった返すなか、いよいよこのフェスのオーガナイザー OAUの登場。やはり今年はファンの期待通りニューアルバムからのナンバーをたっぷりと披露してくれた彼ら。TOSHI-LOWによる「来年もやります」宣言後の「Follow The Dream」以降、終盤に向けボルテージは最高潮に。なによりも、彼らのNACに対する熱い思いと、今この瞬間、ここでそれを共有している喜びを全ての人が感じたはず。眩いライトに照らされた、無数の笑顔がなによりの証拠!

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 無数のキャンドルの中、大きな剥製の下にひとり佇むCARAVAN。独特の無国籍感を携えたさすらいの歌人に、あまりにも良く似合う光景すぎて、思わずため息が出てしまう。冷たく澄んだ空気に、アコースティックギターの音色とひとつひとつの言葉が丁寧に重ねられていく。一心に耳を傾けていると、寒さはもちろん、ここがどこなのかも忘れてしまう。

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 すっかり夜も更け、冷たい空気と大きな暗闇に覆われた午後10時。Stage HEREにこの日のラストを飾る中納良恵が登場。幻想的な光の中で、温かい歌声と優しいメロディに耳を傾け、そっと身を寄せ合うたくさんのカップルの姿が。凍えるような寒さだって、恋人たちにとってはロマンティックなもの。優しい時間がホットミルクのような安心感と心地よい眠りを誘ってくれました。

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 山々を照らす眩しい朝日に青空!最高のアウトドア日和で迎えたニューアコ2日目、朝一番のStage VIAに登場したのは石崎ひゅーい。ハートフルなナンバーの数々を太陽の光とともにたっぷり浴びて、爽やかな1日のはじまり。今日もいい一日になりそう!

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 Stage YONDER 2日目のトップバッターはYOUR SONG IS GOOD。アコースティック・セットながら目の覚めるようなスリリングで迫力溢れる演奏を披露。4つ打ちのリズムに吸い寄せられるようにステージ前には多くの人が集まり、ブレイクが決まるごとに大歓声があがるなど、オーディエンスのテンションも一気にアップ!

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 OAUのマーティン率いるJOHNSONS MOTORCARがStage HEREに登場!朝の爽やかな風にのせてアイリッシュの軽快なリズムが駆け抜けると、大人からキッズたちまで、誰もがみんな思わず踊り出す。マーティンの奏でるフィドルの音色がステージバックで見守る木々やオーディエンスの放ったしゃぼん玉と溶け合って、エリアいっぱいに広がっていく。ニューアコらしい、最高にハッピーでピースフルな光景がそこに。

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 「勝手にニューアコキャンペーンガールだと思ってやって来ました。」と片平里菜がStage YONDERのステージへ。ピンっと筋の通った歌声がしゃぼん玉とともに新鮮な風に乗って空に舞い上がっていく。ラストはOAUをステージに呼び、ともに制作した「Amaging Sky」でほどよく眠気の残るオーディエンスの目をビシっと覚ましてくれました。

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 日差しを和らげる心地よいそよ風が通り抜けるStage VIAにorange pekoeがオンステージ。2人だけのシンプルなセットだからこそ、彼らの洒脱なナンバーが一層際立つ。名曲「やわらかな夜」など、繊細なメロディーとナガシマの涼しげな歌声が風に乗ってオーディエンスの体をハンモックのように優しく揺らしてくれました。

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 暑いくらいの日差しが照りつけるStage VIAにmabanua with 関口シンゴが登場。OvallのバンドメイトだけあってMCも演奏も息はピッタリ。オーディエンスは立って体を揺らしたり、座って耳を傾けたり、寝っ転がって子守歌代わりにしたり…誰にも邪魔されることのない空間を、リバーブがかった歌とタイトな演奏がふんわりと包み込んだ。ここで聴く「talkin' to you」は最高のひと言!

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 いよいよフィナーレに向けて加速しはじめる正午ちょうど。Stage YONDERにフラカンが登場。ニューアコ史上最強の雨バンド?との異名を払拭する晴天のなかで演奏スタート。名曲「深夜高速」も飛び出し狂喜するファンの姿も。後半にかけてやや空の雲行きが…とはいえ今回は雨はナシ!ニューアコならではの程よい脱力感をプラスした彼ららしいエモーショナルなステージを演じてくれました。

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 午後のうららかなStage HERE。純白のドレスに身を包んだsalyu x salyuと3人のシスターズが一列に並ぶ姿は、まるでこの山に住む精霊のよう。一度歌を放てば、瞬く間に豊かなハーモニーを包む。これまでのラインナップの中でも異色の演出で初見のオーディエンスに衝撃と不思議な昂揚感を与える。時に静かに、時に荘厳に、時にエキゾチックに。ミニマムなバックミュージックの上に、木々の間に澄み渡るように広がる透き通ったハーモニーで、オーディエンスをsalyu x salyuワールドにどっぷりと惹き込んだ。

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 再び太陽が青々とした芝生を照らし始めたStage YONDERにスガ シカオがソロ・セットで見参。ニューアコ初登場ながらマイペースなステージングで、すぐに空間をホームへと変えていく。「夜空ノムコウ」「Progress」など珠玉のバラードナンバーが繰り出されると、オーディエンスからは思わずため息が。改めて秀逸なソングライティングの才能にうっとりと浸る、至福の昼下がりとなりました。

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 夕暮れ前。Stage VIAの大トリを飾るべくPredawnが登場。和製ノラ・ジョーンズとも称されるその柔らかい歌声とアンニュイなオーラが、エンディングに向け休息をとるオーディエンスの身体や染み渡っていく…一音一音優しく紡ぎ出されるアルペジオと囁くような歌声、そしてハンモックではしゃぐ子ども達の声もアクセントにしてしまう音色は、寝ながら聴いているとそのまま宙に浮かんでしまいそうな、心地よい浮遊感を生み出す。「このステージのトリなので、バシっと〆てくださいと言われたんですけど…」と不安を語った通り、ふんわりとした幕閉じだったが、それこそがこのStage VIAならではの親密な雰囲気を象徴する光景でした。

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 通り抜ける風が心地よい、午後のStage HERE。ステージのラストを飾る真心ブラザーズがウッドベースに岡部晴彦を迎え3人編成で登場。ニューアコのロケーションをアドリブで歌うも詞の辻褄が合わなくなるなど、序盤から独特のゆるりとしたコンビネーションで会場の空気を和ませてくれる。ブルースハープの音色と2人の味のある歌声、傾きかけた太陽の柔らかな光、贅沢な午後のひとときうっとりしていたのも束の間、最後は「どか?ん」そして「サマーヌード」と出し惜しみナシのヒットパレードでキッチリ〆る!さらにアンコールはまさかの「サマーヌード」2回目。ベテランならではの余裕と貫禄を見せつけてくれました。

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 夢のような2日間もいよいよフィナーレの時が…大トリを飾るのは、EGO-WRAPPIN'の2人。バンドにビブラフォンを加えた華やかなサウンドと、中納良恵のパワフルな歌声が生み出す一流のグルーヴに思わず体が動き出す。最後の瞬間まで思う存分音楽に身を委ねる、オーディエンスの笑顔を傾き出した夕陽がまぶしく照らす、魔法の時間。Wアンコールを終えた後には心地よい脱力感に包まれた体を、2日間一度も雨を降らすことなく見守ってくれた大自然が優しく包み込んでくれました。

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