Billboard JAPAN

HotShotDiscs

藤本一馬/伊藤志宏「ウェヴニール」

ウェヴニール

藤本一馬/伊藤志宏               

2014/09/04 RELEASE

詳細・購入はこちら詳細・購入はこちら

風通しの良い音空間が広がる、藤本一馬と伊藤志宏による初コラボ作

 アコースティック・ギターとピアノによる透明感に満ちた音のダイアローグ。さざ波にも似た揺らぎを聴かせる鍵盤裁きや、潮風を思わせる爽やかな弦の爪弾き。繊細で清冽な響きが重なり合って、美しい音のヴェールを織りなしていく。心洗われる音楽とは、まさにこのアルバムのことではないだろうか。

 オレンジペコーのギタリスト兼ソングライターである藤本一馬と、Shima&ShikouDUOの活動でも知られるピアニストの伊藤志宏。2012年に初めて共演ライヴを行い、その後数々のセッションを重ねた成果を結実させたのが、この初のコラボ作品『ウェヴニール』である。藤本はソロ名義でも躍動感に満ちたアルバムを数枚制作しており、アルゼンチンのカルロス・アギーレやブラジルのアンドレ・メマーリといった精鋭たちとの共演している。一方の伊藤も、ソロだけでなくチェリストと共演した新感覚のチェンバー・ミュージックを奏でるなど、新しいスタイルのピアニストとして話題だ。

 そんな二人の共演だけに、このアルバムにはとても風通しの良い音空間が広がっている。いわゆるポスト・クラシカルといわれるような静謐な世界観を保ちつつも、ジャズのインプロヴィゼーションにも似たダイナミックな躍動も感じさせる。また、ブラジルのエグベルト・ジスモンチによる「Don Quixote」といった二人のルーツを感じさせるカヴァーもさらりと差し込んでくる。そこには二人の音楽に対する熱い想いが秘められ、音の粒の隙間から静かにその情熱がこぼれ落ちてくる。聴き終えた後にじんわりと暖かくなる感覚は、きっとそのためだろう。穏やかなグルーヴに心地よく揺られつつ、いくつものドラマを読み取れるのだ。

 なお、本作は姫路にある「HUMMOCK Cafe」が、新たに始動させたレーベルからの第一弾となる。ローカルとはいえ、店内でのライヴを含めて積極的に様々な音楽を紹介してきた名物カフェが発信するということもあり、丁寧に作られたパッケージが魅力だ。インストゥルメンタル・ミュージックということで決して派手ではないが、こういった良質の音楽がしっかりと世に出て行く環境は、本当に素晴らしいなとつくづく思う。(REVIEW:栗本 斉)

1
↑PageTop