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2018/07/28

『ユー・シュッド・シー・ミー・イン・ア・クラウン』ビリー・アイリッシュ(Song Review)

女性シンガー・ソングライターのビリー・アイリッシュは、L.A出身、2001年生まれの16歳。マスキュリンな顔立ちも個性的だが、今年のトレンドカラーであるシルバーヘアに80年代風の太眉、10代を中心に再燃しているストリート・ファッションなど、ビジュアルも超独特。

ビジュアルのみならず、即座に彼女だとわかる声質と、終始脱力したようなボーカルワークも彼女の個性であり、魅力。学校には通わずホームスクーリングを利用していたり、コーラス隊として活動するなど生い立ちも“普通の女の子”とは違ったもので、そういった特殊な環境で育ったことが、唯一無二の世界観を生み出しているのかもしれない。

メディアや評論家からも絶賛されていて、過去にはジャネット・ジャクソン(1986年)やブリトニー・スピアーズ(1999年)も選出された、 米Vogue(ヴォーグ)の「イット・ガール」にも選ばれている。また、米ビルボードでも「次期ブレイク・アーティスト」21歳以下のアーティストとして取り上げられた。

今年は彼女の本格的なブレイクとなるか。注目度が高まったところでリリースされたのが、新曲 「ユー・シュッド・シー・ミー・イン・ア・クラウン」。プロデュースは、デビューからすべての楽曲を手掛けているフィニアス・オコンネル。フィニアス・オコンネルは、俳優としても活躍している音楽プロデューサーであり、ビリーの実兄。彼もまた、個性派のアーティストらしいアーティストだ。

兄と共同執筆というかたちで書かれた同曲は、今年4月にリリースした「ビッチズ・ブロークン・ハーツ」や、Netflix配信ドラマ『13の理由』シーズン2のサントラ盤に提供した、カリードとのコラボ曲「ラブリー」と同路線のドリーミー・バラード。おまじないをするように歌うボーカルと、めまいを誘う浮遊感あるサウンドに包まれながら、エリーの音世界に誘われる。サウンドは結構重いが、じっくり聴いていると眠気を誘うほど心地良い。

エネルギッシュさには欠けるし、万人受けするようなタイプの曲ではないが、他の10代と同じようなことをやったところで、使い捨てされてしまうだけだろう。彼女にしかできない音楽を演っているからこそ「期待の新人」として取り上げられ、固定ファンも着実に増やせている。過小評価されないアーティストは、誰しも独自の世界観をもっているから。

ストリーミング・サービス<Spotify>で9千万回近い再生回数を記録したデビュー曲「オーシャン・アイ」(2016年)や、アコースティック・ギターがアクセントになっている次曲「ベリーエイク」(2017年)も傑作。両曲はいずれもゴールド・ディスクに認定され、これらが収録されたデビューEP盤『ドント・スマイル・アット・ミー』は、米ビルボード・アルバム・チャート(Billboard200)で38位、トップ・ヒートシーカーズ・チャートで初のNo,1獲得を果たした。

本作と、今年リリースしたシングル3曲を引っ提げて、8月に開催される【SUMMER SONIC 2018】に出演するため初来日するビリー。原曲のイメージとはまた違う、生音を取り入れたライブ・スタイルは、ここでしか味わえない。Text: 本家 一成

◎リリース情報
ビリー・アイリッシュ
『ユー・シュッド・シー・ミー・イン・ア・クラウン』
https://youtu.be/1DJuFuKydn0