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2018/02/10

バラエティに富んだ、聴き応え抜群のシリーズ3部作の最終章にふさわしい1枚 / 『フィフティ・シェイズ・フリード』(Album Review)

 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015年)、『フィフティ・シェイズ・ダーカー』(2017年)に続くシリーズ3部作の最終章『フィフティ・シェイズ・フリード』が、2018年2月9日に全米公開される。

 同作が大ヒットした理由のひとつとして、サウンドトラックの売れ行きと完成度の高さが挙げられる。第一部『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』からは、エリー・ゴールディングの「ラヴ・ミー・ライク・ユー・ドゥ」とザ・ウィークエンドの「アーンド・イット」が2曲連続で全米TOP3入りし、第2部『フィフティ・シェイズ・ダーカー』からは、テイラー・スウィフトとゼイン・マリクによるデュエット曲「アイ・ドント・ワナ・リヴ・フォーエヴァー」が主要各国でTOP10入りする世界的ヒットを記録した。

 そして本作『フィフティ・シェイズ・フリード』からは、ワン・ダイレクションのリアム・ペインとリタ・オラのデュエット曲「フォー・ユー」、ヘイリー・スタインフェルド&ブラッドポップによるコラボ「キャピタル・レターズ」の2曲が先行発表された。どちらもテンション高めなエレクトロ・ポップで、両者の個性がぴたり噛み合った爽やかさが、映画の官能的なイメージを良い意味で緩和させている。

 その他にも、米アリゾナ州出身のシンガー/女優のキアナ・レデによる「ビッグ・スペンダーfeat.プリンス・チャールズ」や、個性的なボーカルのShungudzoが歌う「カム・オン・バック」など、同系のエレポップ・チューンから、キワどいパフォーマンスが話題を呼んだ、米アリゾナ出身の美女シンガー=サブリナ・クラウディオによるダンスホール調のナンバー「クロス・ユア・マインド」、マドンナなどのビッグネームを手掛けるスウェーデンのエレクトロ・デュオ=マイク・スノウによる80'sディスコ「チェンジ・ユア・マインド」など、否定的な要素が見つからないアップ・チューンが目白押し。

 ジェシー・Jが故エイミー・ワインハウスを真似たように歌う「アイ・ゴット・ユー」や、スピリチュアルでグルーヴィーなジェイコブ・バンクス&ルイス・ザ・チャイルドによる「ディディ・ボップ」、70年ファンク直球の「ザ・ウルフ」(ザ・スペンサー・リー・バンド)など、前述の最新のエレポップとは対照的な、古いサウンドを焼きなおしたレトロなナンバーも、随所に配置されている。

 デビュー曲「イシューズ」が大ヒットしたジュリア・マイケルズは、芯の強いミディアム・ソング「ヘヴン」と、猫なで声で歌うキュートなポップ・ソング「アー・ユー」の2曲を提供。ザ・ウィークエンドの「アーンド・イット」を彷彿させるエロチズムなR&Bトラック「サクリファイス」は、ブラック・アトラスとジェシー・エレイズのカナダ・コンビによるコラボレーション。本作の中でも、1、2位を争う傑作ではないだろうか。シーアが歌う幻想的な「ディアー・イン・ヘッドライツ」も、映画の世界観を美しく表現していてすばらしい。

 映画音楽を担当するダニー・エルフマンによるインスト「フリード」~「シーイング・レッド」や、映画用バージョンとして再び本作に収録されたエリー・ゴールディングの「ラヴ・ミー・ライク・ユー・ドゥ」、ボーナストラックとして収録される、主演のジェイミー・ドーナンがカバーしたポール・マッカートニーの「恋することのもどかしさ」など、本作も前2作同様、バラエティに富んでいて、聴き応え抜群。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『フィフティ・シェイズ・フリード』
(オリジナル・サウンドトラック)
VA
2018/2/9 RELEASE
デジタル配信